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ボディコン傷

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第三章

 真っ赤なボディコンと網タイツ姿で友人達と一緒にいて笑っている若き日の妻の写真を見て娘に話した。
「この頃はな、ジュリアナ東京なんてあってな」
「そんなのもあったの」
「そこに皆行ってな」
 そうしてというのだ。
「踊っていたんだ」
「何か凄い時代ね」
「その頃はそうだったんだ」
「そうなのね」
「これよこれ」
 ここでだ、母の玲子は。
 家の柱にある釘を見て言った。
「私これ使っていたのよね」
「釘?」
「そう、これわざわざ入れてね」 
 娘にその柱にある釘を見て話した。
「その写真のボディコンを着ていたのよ」
「そんなの何に使うのよ」
 日夏はその釘を見て首を傾げさせた。
「一体」
「ボディコンはまず着て背中のチャックを上げるのよ」
「そうしていたの」
「それでね、背中にあるチャックって上げにくいでしょ」
 このことを言うのだった。
「だからあそこの釘にね」
「どうするの?」
「だからチャックの穴の部分をかけて」
 母は娘に具体的に話した。
「腰を下げたらね」
「あっ、チャックが上がって」
 ここで日夏も理解した。
「それでね」
「ちゃんとなるでしょ」
「そうよね」
「それで私はいつもね」
「ボディコンをそうして着ていたのね」
「それで遊んでいたの、けれどね」 
 玲子は苦笑いになった、その顔で日夏に話した。
「ある日釘に近寄り過ぎていて」
「チャックを上げたら」
「そこで背中が素肌だったから」
 それでというのだ。
「ずりっていって」
「釘で傷が付いたのね」
「そうなったのよ」
「それでお母さんの背中に傷があるのね」
「背骨のところに一直線にね」
「そうだったのね」
「あの時は痛かったわ」
 玲子は苦笑いのまま話した。
「暫く傷が治るまでボディコンを着なかったわ」
「そんなに痛かったの」
「凄くね、それで治ったら」
 その時はというと。
「自分で上げる様にしたのよ」
「そうする様にしたの」
「それで私も就職してね、忙しくなってジュリアナとか行くこともなくなって」 
 玲子はさらに話した。 
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