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ボディコン傷

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第一章

        ボディコン傷
 五十代になってもだ。
 佐田玲子は顔立ちが整っている、はっきりとした明るい感じのやや大きな目にである。
 顎の先が尖った細面で白い肌、紅の小さめの艶やかな唇に奇麗な細長い見事なカーブを描いた眉がある。黒髪は長く年齢を感じさせないツヤがある。
 背は一五九程でこちらも年齢を感じさせない、だがいつも職場の制服を真面目に着こなしていてである。
 穏やかで丁寧な仕事をしている、それで社内でも評判だった。
「佐田さんっていいよな」
「しっかりとしたお仕事してくれるし」
「しかも年齢を感じさせないし」
「奇麗だよな」
「まだまだ三十代前半でいける?」
「毎日ジム通いしてるらしいし」
「性格も穏やかで真面目で」
 それでというのだ。
「いい人だな」
「お家でもいい奥さんでお母さんらしいし」
「ああなりたいよな」
「そうよね」
「ただね」
 ここで一人の若いOLが同僚達に話した。
「佐田さん大学生の頃は遊んでいたらしいわ」
「大学生の頃は皆そうだよな」
「俺だってそうだったし」
「私もよ」
「遊びたい年頃だし」
「皆遊ぶな」
「佐田さんが若い頃っていうと」
 ここで皆玲子のその頃のことを考えた。
「確かバブルか」
「平成の最初の頃だし」
「やたら派手な時代だったわね」
「もう何でもありの」
「ジュリアナとか」 
 ここでバブルを象徴する単語の一つが出た。
「アッシー、メッシー、ミツグ君?」
「ティラミスが出て来て」
「それでトレンディードラマ観て」
「服も派手で」
「そうした時代だったわね」
「特に東京が凄くて」 
 自分達が今いる街がというのだ。
「もういつもお祭りみたいで」
「悪く言うと浮かれていた」
「そうした時代だったわね」
「佐田さん東京生まれの東京育ちで」
「ずっと東京にいたっていうし」
「だったらね」
「佐田さんの学生時代も」
 バブル期に大学時代をその東京で過ごした彼女もというのだ。
「かなりのもの?」
「派手だったのかしら」
「所謂イケイケの」
「そんな人だったのかな」
「佐田さん奇麗だし」
「今もそうなところ見るとスタイルもよかっただろうし」
 それでというのだ。
「大学時代はかなりだった?」
「そうかもね」
「今の佐田さんからは想像出来ないけれど」
「それでも」
 若い社員達はこんな話をしていた、だが玲子はそんな話を気にすることはなく仕事をしているだけだった。
 家庭でもそうだった、仕事が終わるとまっすぐに家に帰り家事に子育てに励んでいた、だが大学生の娘の日夏母親そっくりだが胸はさらにあり背も五センチは高くなっている彼女がだ。
 今は黒いセーターに茶色のスラックスの上にエプロンを着けて一緒に食器を洗っている彼女に対して言った。
「お母さんの背中にね」
「傷あるっていうのね」
「あの傷どうしてあるの?」
「若い時の傷よ」
 母は何でもないといった声で答えた。 
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