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大阪のたんころりん

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第三章

「住職さんに実を貰ってくれって言われました」
「それで食べてくれと」
 敦弥も話した。
「言われました」
「そうか、では持って行けるだけ持って行くといい」
 たんころりんは二人の返答に笑顔で応えた。
「そしてじゃ」
「食べるんですね」
「柿の実を」
「住職殿もご家族も今は腹の調子が悪くてのう」
 たんころりんもこのことを話した、それも不機嫌そうに。
「今年は食わぬのじゃ」
「柿って身体冷やして」
「しかも硬めで消化によくないですからね」
「美味しくて栄養もあるんですが」
「そこが問題ですよね」
「それで今年は木に残ってじゃ」
 実達が寺の者達に食べられずというのだ。
「遂にわしが出た」
「遂にですか」
「そうじゃ、わしが出るということはな」
「それだけ残ってるってことですか」
「この通りな」
「全然取られてないですね」
 見れば木には実がたたわに実っていた。
「こうなるとですか」
「わしが出る、だからよいな」
「私達もですか」
「取っていってくれ」
「それで食べることですか」
「そうじゃ、宜しくな」
 こう言ってだった。
 二人で実を取れるだけ取ってそのうえで帰った、この時たんころりんはかなり嬉しそうであったが帰る途中だった。
 敦弥は結衣にだ、こう言った。それぞれ貰ったビニール袋の中に柿の実がこれでもかと収められている。
「すぐにね」
「あの柿の実はなの」
「なくなるよ、ご近所にも配るって言われてたから」
 住職がというのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「もうね」
「すぐになのね」
「なくなってね」 
 そうしてというのだ。
「妖怪さんもだよ」
「喜ぶのね」
「そうなるよ」
 こう言うのだった。
「有り難いことにね」
「そうね、すぐになくなるならね」
 それならとだ、結衣も話した。
「妖怪さんにとっても有り難いわね」
「たんころりんさんにとってもね」
「ええ、しかしね」
「しかし?」
「暫くおやつには困らないわ」
 笑顔でだ、結衣は敦弥に話した。 
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