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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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R10話 Ocean【夢の海】へDive!

 
前書き
まんまですね、はい。 

 

「はーい、はんぺん?ご飯ですよ〜?」
「にゃーん。」


キャットフードにかぶりつく捨て猫…もとい虹ヶ咲学園公認のマスコット はんぺん。

そしてその様子を見つめる璃奈と愛。


「『飼うのはダメだけど、学校の一員として迎え入れるのは校則違反じゃない』って屁理屈だけどいい屁理屈だよね♪」
「うん…生徒会長、いい人だった。」
「にゃーんにゃーん!」


猫語で肯定するはんぺん。なおコイツは許しがたい冒涜行為を行ったのだが…それで怒るのは語り手として相応しくないのでやめておこう。

ところで愛は少し不安そうな顔で璃奈に相談する。


「そう言えばはるが言ってたんだけど、しばらく忙しくて家に帰るのが遅くなりそうって。なんか変な感じしちゃってさ〜」
「スクールアイドル……関係あるかな?」
「スクールアイドルかぁ———なんかあるよね。SNSとかでよく怪人とかなんとか……それと仮面ライダーって人が戦う動画とか。」
「私も見たことある……けど、ほとんど消されちゃってる。」


仮面ライダーが身体強化システムとして一般に知られているのに対して、怪人の話は悉く一般人に知られることはない。仮に知っていてもすぐ忘れるような場末の動画のうちに削除されている……


「なーんかきな臭いなぁ…はる大丈夫かなぁ———」



愛は空を見上げながら呟いた。





————※————





「本日は以上です。」
『お疲れ様でした。』


生徒会はいつも通り機械的に終わった……機械のように議題を出し、機械のようにそれを解決し、機械のようにその場を去る。

中川菜々はそういうふうにあるべき人間。親からも、皆からもそのように生きるべきと思われているはず————だからレールを外れた行為をしてはいけない。

そう言い聞かせた。


そんな時……

〜〜♪


『普通科2年 中川菜々さん、優木せつ菜さん。至急西棟屋上まで来てください。』


聞き心地の良い声で呼び出される———この声は何となく聞き覚えのある菜々。そしてせつ菜と菜々という特定の人たちしか知らない『組み合わせ』……しばらく呆然としてしまう。


「会長…?呼ばれてますよ?」
「……すいません。ちょっと行ってきます。」


生徒会役員の1人が声をかけたことでせつ菜はとりあえずその席から立つ。



〜〜〜〜〜



「よりによってせつ菜と一緒に呼び出すなんて……エマさん———あるいは朝香さんか。もしくは……」


菜々に浮かんだもう1人の存在……それは「伊口イフト」その人である。彼女だけが知っている彼の得体の知れなさ…内情を見透かす様子から見ても可能性はなきにしもあらず。

そんな予想を張り巡らせて西棟屋上までやってくる…


そこには————


「はじめまして……優木せつ菜ちゃん?」
「!———高咲…侑さん。」


そこに立っていたのは意外な人物———侑だった。少し拍子抜けするせつ菜だったが、すぐさまその理由を察する。


「朝香さんたちに聞かされましたか……?」
「それもあるんだけどさ、前に音楽室で話した時になんとなく……そうじゃないかなって。」
「そうでしたか…それで——どういうつもりですか?」


菜々が意図せず低い声音で要件を聞き出そうとすると、突如として侑は潔い謝罪をする。


「ごめんなさい!!」
「!…どういうことですか?」
「あの時『そんなこと』知らなかったからデリカシーのないこと言っちゃったかなって……」
「気にしてませんよ。正体を隠していた私が悪いんですから———話が終わったのならこれで。」
「あ、まだあるの!!」


この場から離脱しようとする菜々を侑は引き止める。


「なんですか?」
「私は……せつ菜ちゃんにスクールアイドルとして同好会に戻って欲しいんだ。」
「え…」


拍子抜けするせつ菜……拳に力が入る。


「なんでわかってくれないんですか……!」
「?」
「私は…!スクールアイドルが大好きだから!!『だからスクールアイドルを辞めたのに』!!」
「1人で勝手に抱え込まないでよ!!」
「!」


せつ菜の悲痛な叫びを理解しつつもそれを批判する侑。真剣な眼差し……同性であっても惚れてしまいそうなキリッとした眼差し。

侑は続ける。


「せつ菜ちゃんが抱えてることも聞いたよ……でも1人犠牲になるなんて『僕』は許さない!」
「侑さん……」


『見つけたぞ……ゼロワン!』


「「!!!」」


突如話に水を差すように現れた狼藉者……すぐ上の階から侑の半径5メートル地点まで着地する。


「お前は……仮面ライダーランス!」
「この前は世話になったなぁ。」
「今はお前なんかと戦いたくないんだ……とっととこの場から離れて。」
「そんなことはカンケーないね。今日はお前から受けた借りを返そうと思ってな。」


低調な声で彼に嫌悪感を露わにする侑。しかし仮面ライダーランスことシンはそんなことお構いなしに戦いをおっ始めようと企んでいる。

しかし……シンは菜々に目線をやると、少し驚いた様子を見せる。


「お前は……優木せつ菜ってのはお前だな?」
「っ!———何であなたが……」
「何でって……お前に脅迫メールや実際に怪人の被害を与えてんのは『俺たち』だからなぁ。」
「は——?」


侑は先ほどまでとは比べ物にならぬ威圧感のある声を出してしまう。その言葉に侑の背後にいた菜々も少したじろぐ。


「お前たちが……そっか。じゃあ『僕』も戦う理由ができたよ。」
「?」
「菜々さん……いや、せつ菜ちゃん。今———証明してみせる。」


ツインテールに縛られた侑の髪が……今、解かれる。


【JUMP!】

【Authorize!】


「僕が……トキめくみんなを『守ることで応援する』———それが僕のトキメキ!!」


「変身!!」


【プログライズ!】

【飛び上がライズ!ライジングホッパー! 】

【A jump to the sky turns to a rider kick.】


侑は……仮面ライダーゼロワン。夢を守る存在へと姿を変える。


「さぁ……行くよ!!」
「ようやくやる気になったか…変身!」


【OPEN UP!】


シンは仮面ライダーランスへと姿を変える。


怒りに燃えるゼロワン……その怒りを戦いにぶつける。



〜〜〜〜


ドサッ

「ぐっ……!」

ゼロワンの強烈なキックがランスを屋上から地上へと突き落とす。それを追ってゼロワンもコンクリートへと着地する。

もうすぐ部活が終了する時間……長引けば他の生徒を巻き込んでしまうかも知れない———しかし侑はそんなこと考慮に入れる余地はなかった。


「絶対許さない……はぁっ!」
「ぐはっ!」


黄色いエフェクトを伴った高速移動で、ランスの視界から消えた———刹那、背後に回ってその首元を空中からの薙ぎ蹴りを御見舞いする。

流石に急所の1つでもある首を思い切り蹴られてはランスのダメージは大きいものとならざるを得ない。


「く、クソっ…前よりパワー上がってねぇか?」
「隙は与えないよ——!」


間髪入れずランスに膝蹴りを入れて、その勢いのまま回し蹴りでランスの体を吹き飛ばす。


「調子に…乗るな!」


さらに追撃を試みようとするゼロワンに対し、リーチの広いランスラウザーがゼロワンの体を斜めに斬り裂く———少し怯んだところを鋭利な槍の先端がゼロワンを貫いた……

しかし———


「はぁ…はぁ……その程度———効かないよ。」
「なっ…!お前どうやっ…ぐはっ!」


槍で貫かれても、有効打にならないと突きつけられて怯んだところをランスは腹を思い切り蹴られる。

以前から侑の体は異常さを醸し出していた……最初ムテキゲーマーに腹を殴られた時も体のアザが異常なスピードで回復した。そして昨日は戦いで追った傷が直後に回復した。

そして今……負ったダメージをすぐに回復している———


「馬鹿な……俺は———!」
「これで終わらせる……!」


【ライジングインパクト!】


跳躍は大空にてライダーキックへと変わる……その言葉通りの必殺技。

ランスは尚も抵抗を試みようと、ゼロワンが突き出した足に対抗するようにランスラウザーを突き出すが……


「トキメキの力を‥‥思い知れ!!」


何か追い風のような勢いがゼロワンを後押しして……勝負に競り勝つ!


「なっ———ぐわァァァ!!!」


大きく吹き飛ばされたランス————その体は大空の彼方へと消えていく……無論、校舎から出て行ったに違いない。


「ふぅ……」


ジャンプして菜々の元まで戻ってきた侑……変身を解除する。


「わかった…?僕が———キミを守る。だから———せつ菜ちゃんの大好きを叫んでほしい!他の人なんて気にする必要なく、思いのままに、自由に叫んでほしい!!」

思いのままを伝えた侑———菜々はツギハギな言葉を紡いでいく。

「いいんですか……?私のワガママを———大好きを貫いても…いいんですか?」
「もちろん!」
「っ!……あなたみたいな人——初めてですよ♪」


頬を赤らめる菜々……そして微笑と共に三つ編みをさっと紐解き———優木せつ菜へとその姿を変える。


「わかっているんですか…?あなたは今とんでもなく凄いことを言っているんですから!!」


せつ菜は侑に向かって拳を突きつける。


「どうなっても知りませんよ!」
「-----/////!」
「これは……始まりの歌です!!!」



Dive!(歌:優木せつ菜)




————Fin————



「はぁ…はぁ…はぁ……虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会!優木せつ菜でした!!」


息を切らしていることすら忘れ、ただ歌うことに没頭していたせつ菜……無論、観衆は大喝采する。


「せつ菜ちゃん!」
「うわっ!」


感極まった侑はそのまませつ菜へと飛び込むように抱きつく。


「もうっ……だーいすき!!」
「ちょ、ちょっと…!」


困り顔のせつ菜だったが侑と目が合うと、互いに微笑み合う……

流石にくっつきすぎたのか、嫉妬するようにかすみが横に割って入る———続々とスクールアイドル同好会のメンバーも。


「先輩!いつまでくっついてるんですか?」
「かすみさん…それにみんな———みていたんですか。」
「おかえりなさい♪」
「でも……ちょっと盛り上がりすぎかも(^^;;」


しずくが興奮冷めない観衆を横目で見る。


「どうするぅ〜?生徒会長?」
「彼方さん、今の私は正体不明のスクールアイドル 優木せつ菜……さ!正体がバレない前に撤収しますよ!!」
「「「「「おー!!!」」」」」」




スクールアイドル同好会は————あるべき姿を取り戻した。


虹を渡り、夢を泳ぐStoryは……いま、始まったばかりだ。
















 
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