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自分にも懐いた犬

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第一章

                自分にも懐いた犬
 獣医に診せたら十歳だという、子安英細面で丸坊主でまだあどけなさが残る中学生の彼は家に来た茶色の雄の柴犬っぽい犬を見て父の祐二髪の毛は前からつむじのところまでなくなっている自分によく似た顔の小柄な彼に言った。
「その犬飼うんだよな」
「ああ、お母さんと話して決めた」
 父は息子にその犬を撫でつつ話した。
「そうしようってな」
「そうなんだな」
「あのままにしておけないしな」
「捨て犬だったんだな」
「駅前をうろうろしていたんだ」
「ったく、酷いことする奴いるな」
 捨て犬と聞いてだ、息子は顔を顰めさせて述べた。
「犬を捨てるなんて」
「全くだな、十歳っていうからな」
「結構飼ってたな」
「そんな子を捨てるなんてな」
「ああ、それで放っておけなくてな」
 それでというのだ。
「うちで飼うぞ」
「そうするんだな」
「名前はガンツにする」 
 父はこの場で名前も決めた。
「何かそんな感じだからな」
「それでか」
「ああ、これからこいつは家族だ」
 こうしてだった、家に老犬が来た。ガンツと名付けられた彼は父以外には懐かず不愛想であった。それで息子はガンツにご飯を少しおあずけしたり殴る仕草をしてみたりと軽い嫌がらせをする時もあったが。
 ある日だ、休日の散歩の時に。
 父と一緒にガンツを連れていたが彼は自転車に乗っていた、だが不注意でだ。
 こけて怪我をした、それも頭をであり。
「お前血が出てるぞ」
「漫画みたいだな」
「すぐにお医者さんに来てもらうからな」 
 父は息子に血相を変えて言った。
「待っていろ」
「危ないか」
「頭から血が出てるんだぞ」
 血相を変えたまま話した。 
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