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お金はまさに命

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第二章

「買って聴けないなんてね」
「残念か」
「そうなのか」
「そうだよ、昨日お祭りがあって」
 それでというのだ。
「出店で一杯買って食べたから」
「お前そうだったな」
「本当に食ったな」
 一緒にいる友人達はこう応えた。
「焼きそばにたこ焼きにな」
「たい焼きに林檎飴も食ったよな」
「あとベビーカステラにクレープ」
「フランクフルトも綿菓子もだったな」
「そのせいでだよ」
 出店で買いまくったからだというのだ。
「今は無念だよ、無駄遣いだったかな」
「そうだな、買いたいものが買えないならな」
「そうだよな」
「もうこうなったら」
 それこそと言うのだった。
「僕は二度とだよ」
「無駄遣いしないか」
「そうするんだな」
「この無念さ忘れないから」
 だからだというのだ。
「二度としないよ」
「ここでわかるなんてな」
「無駄遣いしたら駄目か」
「いざって時にお金がない」
「そうなるからか」
「買いたいものも買えないし」
 宮野は考えつつ話した。
「他に必要な時にね」
「ああ、ないとな」
「本当に困るな」
「それじゃあな」
「これからはか」
「お金は大事にすよ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 実際に彼は無駄遣いをしなくなった、そのうえで。
 トスカニーニのオテロについて学校で語った。
「いやあ、流石だよ」
「あのCDよかったか」
「そうなんだな」
「最高だよ」
 こうまで言うのだった。
「やっぱりトスカニーニは違うよ、歌手だってね」
「何か凄いみたいだな」
「トスカ何とかって人は」
「それでそのCD自体もな」
「そうなんだな」
「うん、それでこれからはね」
 まさにというのだ。
「変に無駄遣いはしないで」
「貯金しておいてか」
「いざという時に備えておく」
「そうするんだな」
「そうしていくよ」
 宮野は確かな笑顔で答えた、そうしてだった。
 以後彼は無駄遣いをしなくなった、それはプライベートだけでなく受け継いだ家の仕事でも同じだった。それが安定した経営にもつながり家業は安泰であった。


お金はまさに命   完


                 2022・11・22 
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