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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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のほほん伝説

 第二グラウンド。
 転入生二人の紹介の後、今日は2組と合同での実習です。

 既に一夏さんとデュノアさん以外の1組と2組の人は全員揃っています。
 しかも時間は既に開始時間5分オーバー。いつもは間に合っているのにどうしたんでしょう?
 デュノアさんが手間取っているんでしょうか?

「遅い!」

 ようやく現れた一夏さんとデュノアさんに織斑先生が一喝しました。

「くだらんこと考えてる暇があったらさっさと並べ!」

 どうやらまた一夏さんは考え事をしていたようで出席簿で叩かれていました。
 そして一夏さんが並んだ位置はセシリアさんと凰さんの近く。先ほどのボーデヴィッヒさんとの悶着が鈴さんに知れたらしく少し声が……

「アンタなんでそう馬鹿なのよ!」

 鈴さん! 声、声が大き…

「安心しろ、馬鹿は私の前にもいる」

 ああ、ご愁傷様としか言いようがりません。

 バシーン! バシーン…バシーン………

 出席簿が振り下ろされ、広い第二グラウンド全体に響き渡る程の大きな音が響き渡りました。

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

『はい!』

 メンバーが2組と合同なのでいつもより気合の入った声が響きます。
 あれ? そういえば山田先生がいませんね? どこいったんでしょう?

「まずは戦闘を実演してもらおう。凰! オルコット! 専用機持ちならすぐに始められるだろう。前に出ろ」

 先ほどので完全に目をつけられたようです。二人はブツブツ言いながら前に出ました。

 ? 何か織斑先生が二人に囁きましたね。

「やはりここは、イギリス代表候補生、わたくしの出番ですわね!」

「私の実力を見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」

 何を言ったんでしょうか? 急にやる気になりましたね。恐らく一夏さん繋がりでしょうけど。

「それで、相手はどちらに? わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが?」

「ふふん。それはこっちのセリフ。模擬戦の借りは返させてもらうわよ」

 そういえばセシリアさんが勝ったんでしたよね。本当にギリギリでしたけど。

「慌てるなバカども。対戦相手は……」

 ビービービービー!

 な、何!? 急にISの警告が……

「あああーっ! ど、どいてください~!」

―直上より接近するISを確認。速度、角度より計算。衝突コース―

 見れば分かります! そういう情報はもう少し早く!

 瞬時に両手の手甲を部分展開しながら……

「セット!」

 両腕を言葉と共に振るう!

「オープン!」

 手甲内部から『ユルルングル』が射出され、落下してくるIS装備の山田先生を絡め取る。

「え? え!? ええ!!?」

「くう!」

 絡め取った瞬間にIS全体の展開が間に合い、どうにか山田先生を受け止め……

「ひゃあああああああああああああ!」

「ふにゃ!?」

 られませんでした。『ユルルングル』でこっちに無理やり誘導したため山田先生は受身を取ることすら叶わず、私は私で無理に急展開したため受け止める態勢が整っておらず、空中衝突して一緒に地面を転がってしまいました。

「痛たたたたた……」

「や、山田先生……大丈夫ですか……?」

「は、はい。ありがとうございます」

 ほ、どうやら山田先生は無事なようです。クラスメイトの方々も皆無事ですね。
 山田先生はIS装備なので絶対防御がありますがクラスの皆さんはありませんからね。無事で良かったです。

「ん……あ、あれ?」

「山田先生? どうしました?」

「う、動けません……」

「は? そんなバカ……な……?」

 本当です。私も動けません。私と山田先生は完全に向かい合って密着状態で動けない状態です。
 む、腕が何かに引っかかって……うーん……?

 ふむむむむ!

「ひゃあ!」

「あ、すいません」

 何か縛られてる感じが……か、体が引っかかって動けませんし、下を見れない……
 目の前には山田先生の顔があります。
 
 わ、こうやって密着してると山田先生の胸すごい大きくて柔らかい……いいなあ……
 一緒にくっついてる私の胸なんかとは大違い……いいなあ!
 思わず私の顔はそのヘヴンへと突入して……

 ムニュムニュ

「ひん!」

 ああ、柔らかい……このまま眠ってしまいたい……

 モニュモニュ

「やっ…あっ……ちょ、カルラさん!?」

「はっ!」

 わ、私は何を……

「何をやっている馬鹿者」

「あ、織斑先生! 助けてください!」

 見かねたのか織斑先生がこちらに来てくれました。助かった。

「何を言っている。縛っているのはお前の鞭だ。さっさと武装をしまえ」

「へ?」

「さっさと解除しろ。授業が進まん」

「は、はい!」

 慌てて手甲ごと『ユルルングル』の展開を解除すると私と山田先生の体が離れました。どうやら衝突した瞬間に絡まってしまったようですね。これは素直に謝るしかありません。

「申し訳ありませんでした!」

「か、カルラさんって意外と強引なんですね……」

 あ、あの山田先生……何で頬を赤く染めるんですか?

「はあ……模擬戦の相手は山田先生だ。時間も押しているしさっさと始めるぞ。カストはISを解除して列に戻れ」

「あ、はい!」

 織斑先生に促されてISを解除して列に戻る。どうやら2対1でやるみたいです。しかも2はセシリアさんと鈴さんの組み合わせ……っていくらなんでも無理なのでは……

 ああ……でも山田先生柔らかかったなあ……
 などと考えていると周囲のクラスメイトの人に話しかけられました。

「ねえねえ、カルラさん! どうだった?」 

「ど、どうとは?」

「しらばっくれないでよ! 山ちゃんの胸よ! おっぱいよ! パイオツよ!」

 やっぱり同姓でもあの胸は興味の対象みたいです。そういえば箒さんもお風呂一緒に入りたがらないんですよね。大浴場もほとんど行きませんし、多分好奇心の目で見られるからなんでしょうね。

 そう、ですね……………あの感触は……そう……例えるなら……

「マシュマロを薄い袋に目一杯入れて揉んだような感じ……でしょうか」

「な、なんか生々しいわね……」

 いえ、でもそれ以外は……プリンとか?

「私帰ったらスーパーのマシュマロを買い占める!」

「業者に頼んでマシュマロ製造機を買わなきゃ!」

「ふふ、甘いわ皆。話題のマシュマロ並みに甘いわ!」

 クラスメイトの谷本さんの声が聞こえます。

「何よ! あなたは気にならないっていうの!」

「モチ気になるわ! でもその考えが甘うぃのよ!」

「何が甘うぃよ! じゃあどうやって確かめるの!?」

「ふふふ、君たちは私たちが何者か忘れているのではないかね?」

『へ?』

 谷本さんの言葉に近くで聞き耳を立ててた人たちが全員疑問の声を上げました。でも何者かって……?

「人間?」

「違う」

「生徒?」

「違う!」

「ISが使える?」

「惜しい!」

「分かった! 女!」

「そう、私たちは女! 女なのよ!」

 ぐっと手を握って力説する谷本さん……一体それがどう関係するんでしょう?

「私たちは女! 男がやったら犯罪なことも女がやったら許されることがある!」

 ???

 関連性が全く分からないんですが……

「そんなマシュマロを買うなんてまどろっこしいことをしなくても……」

 ま、まさか……

「直にあの胸にダイヴすればいいのよ!」

 や、やっぱりーーーーーーーーーー!

「そ、それってまずいんじゃない?」

 で、ですよね。やっぱりまずい……

「なに言ってるの! 女同士で胸の触りあいなんてスキンシップだよ!」

「そうよ! ならあなたはマシュマロで満足してればいいわ。私たちはあのヘヴンへ挑戦する!」

「わ、私もマシュマロなんて嫌よ! 直にいくわ!」

「うむ、その意気やよし!」

 ああああああ! 何故かドンドン感化しています!

「オールハイルおっぱい!」

「「「「「「オールハイルおっぱい! オールハイルおっぱい!」」」」」」

 へ、変態が……変態さんが一杯います。火付け役は私だったとしても……これはなんというか…………

『オールハイルおっぱい! オールハイルおっぱい!』

 うわあああああああ! 何か周りの人が更に感染しています! とりあえず声を抑えてください!声を……

『オールハイルおっぱい! オールハイルおっぱい!』

「どうやら貴様らには元気が有り余っているようだな……」

 そりゃあれだけ騒げば織斑先生が気づくのは当然なわけで。
 全員の首がギギギと機械のような音を立ててそこに立っている般若を見ました。

 予想通り……いえ、これは予想外です。肩を震わせながらいつもの顔からは想像できない笑顔を浮かべ、額にはしっかりと青筋を浮かべた織斑先生がそこにいました。

『オールハイル織斑! オールハイル織斑!』

 今更変えても遅いわけで!

「貴様ら全員グラウンド100週をくれてやろう。そうだな、制限時間は3時間もあれば十分だろう」

『……………………………』

 ちなみにIS学園のグラウンドはISが十分活動できるようにと一周5km。つまり100週は500kmであり500kmを3時間で走るためには時速170㎞を出さないと間に合わないわけで……貴方たち人間じゃねえ! 状態になるわけですね。

「時間内に走れなかった奴にはもれなく私が鍛えなおしてやろう。どうだ、嬉しいだろう?」

『サ、サーイエッサー……』

 織斑先生の言葉が終わった途端、アリーナの一部に何かが落下しました。

「あんたねえ! 何ポンポン回避先読まれてるのよ!」

「鈴さんこそ無闇に突っ込むのがいけないのですわ!」

「セシリアだってポンポンビット出すじゃない! エネルギー切れ早いし!」

 落ちてきたのはセシリアさんと鈴さんでした。どうやら山田先生の勝利のようです。
 なんというか……どっちも代表候補生だけあって的確に弱点を言い当てているので余計評判を落としているような……
 言い合いを続ける二人を織斑先生がいつものように出席簿で叩いて黙らせました。痛がってる二人は当然IS装備ですけど何か?

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 織斑先生の言葉を聞いて私は後でセシリアさんたちに記録映像見せてもらおうと心に決めました。そうしないとダメな気がします。

「よし、それでは実習を始める。専用機持ちは6人だな。では6~7人のグループに別れろ。専用気持ちがリーダーとなってやること。いいな?」

 あの~織斑先生……そのやり方だと……

 予想通り大半の人が一夏さんとデュノアさんに突進。
 織斑先生がしまったという顔をして面倒そうに額を指で押さえながら言いました。

「まったく……出席番号順で一人ずつ各グループに入れ!」

 日本には『鶴の一声』ということわざがあると言いますがまさしくそれでしょう。今まで統率性の無かったクラスの皆さんが一斉に分かれます。その時間1分ジャスト。

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を1班1機取りに来てください。数は『打鉄』、『リヴァイヴ』が3機ずつですから、好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」

 珍しく皆さんが山田先生の声に何も茶々を入れずに従っています。やっぱり実力を見せるというのはそれだけ自信を生むんでしょうね。

「ではこの班は『リヴァイブ』ということでいいですね?」

『異議なーし』

「ないよー」

 最後誰? ってのほほんさん……布仏本音の略でのほほんさんらしいです……でしたか。妙に間延びしてたから誰かと思いましたよ。
 何人かに手伝ってもらって『ラファール・リヴァイブ』を持ってきます。
 ちなみにISは専用機じゃないと待機状態には持って行けないので訓練機などではカートで運ぶわけです。
 そしてそのカートは何と人力。しかも重量が滅茶苦茶なんですからここは動力が欲しいところですよね。

『各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので、設定でフィッティングとパーソナライズは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいね』

 ISの開放通信で山田先生の声が聞こえました。
 
「じゃあ出席番号順で装着と起動と歩行まで行きましょう」

『はい!』

「は~い」

 のほほんさんがいると場が和むというか緊張感がなくなるというか……これも一種の才能ですね。
 ちなみにISの装着までは皆さん授業でやっているので問題なく行けるのは確認済みです。

「えっと、一番出席番号が早いのは……」

「ん、私」

「岸原さん。じゃあどうぞ」

 岸原さんから順に装着、起動、歩行、解除まで問題なく進みます。ちなみに一夏さんの班が途中でISが立った状態で解除してしまうというアクシデントもありました。そういう場合は運んでもらうか踏み台を探すしかないので一夏さんお姫様抱っこで運んでいましたが……
 周りから怨嗟、憎悪、嬌声と言った声が上がったのは私の気のせいじゃないはずです。

 最後はのほほんさんですね。

「カルカルー、よろしくねー」

「は、はあ……では装着から……」

 カルカル。これがのほほんさんが私につけたあだ名です。まあ……いいです。もう慣れました。
 周囲を見るとボーデヴィッヒさんの班以外はほぼ最後の人のようですね。ボーデヴィッヒさんの班は会話すらないようでお通夜状態です。ご愁傷様です。

 今上手いこと言いましたかね?

 はっ!
 いけないけない。一夏さんのセンスが移っている気がします。

「お、お~……」

「へ?」

 ガシャン!

「はわぁ!」

 不穏な声に振り向いた瞬間、のほほんさんが転びました。
 世界転んだ人格好ランキングでいったら間違いなく一位を取れるくらいの転びっぷりでした。そんなものあるかどうか知りませんけど。

 しかも当然ISを装備した状態で……
 って……姿勢制御システムがあるのにどうやったら転ぶんですか!?

「えへへへー……ごめんー、カルカルー」

「け、怪我は……ありませんよね?」

「うん、大丈夫ー」

 ほ……それなら大丈夫ですね。

「なら立ってもう一度歩行をしましょう」

「おっけー、任せてー」

 のほほんさんはゆっくりとISを立たせてもう一度歩行を……

「おろろろろ?」

 フラフラ~

「はわわわわー」

 ヨタヨタ~

 ガシャン!

「ふぎゃ!」

 転びました。

 だからどうやってるんですか! 
 

 
後書き
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