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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
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SAO編 主人公:マルバ
四人で紡ぐ物語◆レッドギルド
  第二十八話 アイリアの覚悟

 
前書き
段落をインデントしたほうが読みやすいようなので、今回から一文字下げるようにします。 

 
「戦闘開始ィッ!!」
 うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉォォォォッ!!!

 ボス部屋にプレイヤーたちの叫び声がこだました。
 先陣を切り、風の様に走るのは血盟騎士団副団長のアスナ。その隣に、血盟騎士団団長のヒースクリフが併走する。二人を追いかけるように全レイドメンバーが走った。
 事前の調候戦の報告通り、今回のボス戦はかなり苦労することは簡単に予想できた。ボスの身体は錆色の甲冑で覆われ、なんとその甲冑には一切の攻撃が通らないからだ。甲冑の隙間を縫って攻撃する必要があり、よって今回のボス戦の主役はアスナやシリカ、アイリアたち刺突属性武器使いやマルバたち投剣使いとなる。今回ばかりはキリトもLAを取れないだろう。なにせ直剣ではどう頑張っても鎧の隙間を狙えないからだ。


 《リトルエネミーズ》はかなり良い戦いっぷりを披露した。武器の相性もあり、マルバとシリカの息のあったスイッチの繰り返しはそれだけで五人組のパーティーの攻撃力を軽く凌ぐほどだったからだ。
 斬属性がほとんど効かないボスを前に、斬属性武器であるチャクラムを使えないマルバはシリカほど活躍できなかったが、短剣と手刀のみで十分なダメージを与えていた。

 しかし、ミズキとアイリアも二人に負けてはいない。

「うおおおおおぉォッ!!!」
 胸いっぱいに吸い込んだ空気をすべて吐き出す勢いでミズキは叫んだ。狙い通り敵がミズキを狙う。
 ボスの手に握られるのは二本の刀だ。甲冑に刀……武士でも気取っているのだろうか? ミズキは振り下ろされる二刀の片方を避け、もう片方を盾で受け止める。
「へっ……お返しだッ!」
 盾が攻撃を受け流す方向に傾く。ボスの持つ刀の刀身がミズキの盾から滑り落ち、床に突き刺さった。受け流した勢いを殺さずにミズキはそのまま盾を斜めに振りぬいた。盾が甲冑に覆われていないボスの顎を打ち抜き、ボスは思わず数歩後ずさる。

「後ろに注意だよ、ノロマさん!」
 後ろから飛び上がりざまに放たれたアイリアの全力の突きは肩のあたりに命中した。甲冑の隙間から入り込んだ攻撃でボスのHPゲージが最後の一本となる。


「総員、出口方向に十歩後退!!」
 アスナの指示が飛んだ。凶暴化したボスの攻撃は確認できていない。

 全員が出口に近づき、武器を構えてボスの動向を伺う。ボスは大きく息を吸い込むと……空気がびりびりと振動するほどの大音量で吠えた。
 それと同時にプレイヤーを散々手こずらせた甲冑が弾け飛び、ボスの上半身が顕になる。吹き飛ばされた甲冑は大きな音をたてて落下し、二度ほど石造りのダンジョンの床を跳ねると、ポリゴンの欠片となって消え去った。

 プレイヤー全員が愕然としてボスを見つめる。
 それはなにもボスが上半身の筋肉だけで甲冑を吹き飛ばしたためばかりではない。落下した甲冑が大きな音を立てた、それが意味することは……甲冑はかなり重かったということ。そして重い甲冑を脱ぎ捨てたボスは当然それまでより身軽になり、移動速度を増す。
 調候戦によってそれほど壁役(タンク)が要らないと分かったため今回のボス戦に参加しているタンクは非常に少ない。盾を持っているのはミズキを含めて四人のみ。素早いボスを相手に、タンクなしで攻略するなど自殺行為だ。

 つまり、この場において最も最適な判断は……
 「総員、撤退! 盾持ちはしんがりを務め、軽装備の者から先に脱出せよ!!」
 アスナの指示に反対するプレイヤーはいなかった。全員が指示にしたがって退却を開始する。軽装備の者は比較的重装備の者に背中を任せて走りだし、重装備の者は後ろ向きにじりじりと後退を始めた。

 しかし、その時だった。ボスが二刀を振り上げて飛びかかってきた。その刀の先にいるのはミズキ。同時に振り上げられた二刀は横薙ぎにミズキの盾に叩きつけられる。斬属性ではない、破壊属性攻撃。ただでさえ筋力値の低いミズキは盾ごと側方に吹き飛ばされた。アイリアが慌ててポーチから回復結晶を取り出しつつミズキに駆け寄る。
 一見タンクに見えるミズキが一撃で吹き飛ばされた姿を目の当たりにして、全員がかなり久しぶりの死の危機を感じ、軽いパニックに陥った。ほとんど全員がむしゃらに逃走を図り、一気に戦線が瓦解する。あちらこちらで青色の光の柱が立ち上がり、司令役のアスナが見つめる簡易マップからプレイヤーを示す緑色の光点が次々に消え失せる。

 そんな中、ボスはミズキとアイリアの二人に向き直った。顔面を蒼白にしたアイリアは半ば無意識に槍を握り直す。
 吹き飛ばされたミズキはスタンを喰らってしまっていた。すぐにフウカが飛んできてミズキに『キュアウィンド』をかける。状態異常アイコン右下のカウントダウンが加速し、ミズキはすぐに立ち上がった。

「ミズキ、これはまずいんじゃない……?」
「ああ、これはヤベぇな……」
 ミズキとアイリアは二人、ボスと対峙する形で取り残されてしまっていた。
 シリカとマルバはアスナの指示どおりすでに扉付近まで退却してしまっている。ここまで応援に来るのに二十秒はかかるだろう。たった二人でボスに応戦しなければならない。

 ボスが二人に向かって二刀を振り上げた。
「俺が受ける。そうしたらお前が飛び込んでノックバックさせるんだ。」
「……分かった。死なないでよ」
「こんなところで死ねるかよ」
 ミズキは盾を振り上げると身体の正面に構えた。
 ボスが二刀を先ほどと同じく横薙ぎに切り払う、ミズキはその刀を前傾姿勢で受け、バックステップを踏みながらもなんとか受け止めた。すかさずアイリアが飛び出そうとしたが、信じられない光景に一瞬動きを止めてしまった。
 攻撃を防がれてノックバックしているはずのボスは動きを一切止めていない。身体を半回転させて放った横薙ぎを更に加速し、身体を完全に一回転させて同じ体勢からもう一度二刀の横薙ぎを繰り出そうとしている。
 ミズキに再びボスの凶刃が迫った。こんどこそ受け流しきれずにミズキの盾は横に吹き飛ばされ、ミズキ自身も尻餅をついてしまう。特殊状態異常、転倒(ファンブル)
 ボスの一撃はソードスキルによるものではないので、スキル発動後のディレイは一切適用されない。再び刀を振りかぶったボスに対し、防御態勢をとれないミズキの代わりにアイリアが前へ進みでた。アイリアは防御には向かない槍で対抗するしかなかった。勝ち目がないのは誰の目にも明らかだった。視界の端で、マルバとシリカがこちらに駆けつけているのが見えるが、この一撃には間に合わないだろう。

 アイリアは死を覚悟した。……いや、覚悟などできるものか。アイリアにはただ死を恐怖する暇さえ与えられなかったのだから。

 二刀を振りかぶったボスが槍を掲げたアイリアに攻撃をしようとした瞬間。
 ミズキの影から飛び出した一匹の黒猫がボスに飛びかかったように見えた。ちりん、という澄んだ音が響く。その音は一瞬その場の全ての者の動きを遅くしたように感じた。

 ……いや、実際に遅くなっている。ボスの動きが明らかに遅くなり、振りかぶった二つの刀がアイリアのすぐ近くで減速した。アイリアは驚きつつも、ボスの二刀の片方が内側へ寄りすぎていることに気づいた。
 アイリアは減速した時間の中でボスの片方の刀を側面から思いっきり叩いた。

 それと同時に、減速した時間が一気に加速した。なぜかとても重くなっていたアイリアの片手槍はすっと軽くなり、その先端が敵の刀を強く叩く。槍の先端の刃が火花を散らすと、側面の弱い方向から叩かれた刀は途中からぽっきりと折れた。もう一方の刀はアイリアの足元にいた何かを斬り飛ばし、小さな破砕音と共に青いポリゴン片をあたりに飛散させた。
 アイリアはそれから先のことをよく覚えていない。ただ自分が何か強大な力に引きずられているかのように武器を振り回し続けたことをおぼろげに思い出せるだけだ。


 結局、LAを取ったのはアイリアだった。駆けつけたマルバとシリカは、修羅と化して槍を振るうアイリアの攻撃範囲に入れず後方から支援するしかなかった、とアイリアは後で聞いた。
 ボス戦後しばらく考えたけれど、アイリアは自分がなぜそれほど、自分を失うほど激高したのか自分でも結論が出せずにいた。
 あの時ボスが斬り飛ばしたのは、他でもないクロだった。トレードマークの鈴付きの首輪を残してクロがポリゴン片と化した時、アイリアは自分の仲間が死んでしまったという恐怖に取り憑かれたのだ。その恐怖に我を忘れ、敵討ちをするかのように敵に向かっていったのだった。
 アイリアはこの時、仲間の死を初めて目の当たりにした。アイリアは、昨日ミズキが言った通りこの世界が殺すか・殺されるかの世界なのだと悟ったのだ。
 そしてアイリアはもう二度と仲間を失いたくないと思った。仲間を失うくらいならどんな敵だって、例えボスだって殺してみせる、そう覚悟を決めた。
 そうした覚悟をして初めて、アイリアはマルバとシリカの覚悟を少しだけ理解した。マルバとシリカの覚悟は、アイリアが今日初めてした、敵を殺して仲間を守る覚悟の延長線上にあるものなのだ。

 ボス戦の翌日、アイリアはミズキと共に第四十七層の『思い出の丘』を訪れていた。光のなかから顔を出したクロを抱きしめ、彼女は何があってもこの子を守ってみせると誓った。


【New Monster Skill Discoverd!!】
クロ《Black Kitten》:減速(半アクティブスキル)
 鈴の音が届く範囲内に存在するプレイヤー/NPC/オブジェクト/モンスターの移動速度を三分の一に減速する。効果時間は2.5秒。
 制限:モンスターが装備中のアイテム『小さな銀の鈴』を一つ消費。また、このスキルの起動はプレイヤーの指示ではなくモンスターのAIのみに依存する(プレイヤーの意志で起動できない)。 
 

 
後書き
クロ、ついに死にましたね。前回死亡フラグがバリバリ立ってましたが、今回しっかり回収しました。

今回初登場のスキル『減速』ですが、非常に便利な技だけにすごくキツい制限がついています。
え? そんなに便利な技に見えない、ですって? そんなことないですよ、遅くなるのは移動速度だけなのでクーリングタイムの減り方は単純に三倍になったも同然ですし、相手を驚かせたり集中を途切れさせたり、今回みたいに一見回避不能な攻撃を回避したり。

最近どんどん新しいSAO二次小説が増えてますね。後から参加した小説たちに抜かれていく私の小説の総合評価。なんてことだ。まあ、総合評価が欲しくて書いてるわけではないですが。
ところで、私の小説って他の執筆者の方々に比べて長いですかね?今回は約4000文字で、原稿用紙換算だと十三枚です。長い時だと二十五枚とか行くこともあります。
長すぎるようなら短くしますが、どうしましょうか?


さて、次回予告です。次回の前半はつなぎの話なので大して面白くないかなあ、と思います。連続公開してもいいようなどうでもいい話かもしれませんが、連続公開してしまうと更新のペースが途絶える可能性があるため止めておきますw
次回、クラディールとコーバッツ初登場! そして、コーバッツとシリカの因縁とは!? 乞うご期待!! 
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