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人とライオンの絆

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第二章

 この国に拠点を持つ動物保護団体で活動をしているとだった。
 ブロンドの髪の毛を後ろで束ねた三十代前半と思われる青い目の美女が施設に来た、そのうえで自分のことを話した。
「ルチア=グルベローヴァさんですか」
「はい」
 女性はバビントンに答えた。
「夫婦で居酒屋をやっていてです」
「以前雌ライオンの姉妹をですか」
「保護活動もしていまして」
 生きもののというのだ。
「その中である家で飼えなくなったライオンの姉妹を引き取りました」
「ライオンですね、ひょっとして」
「はい、ララとナナのです」
「元飼い主さんですね」
「一時引き取りましたが」
 その彼女達をというのだ。
「うちではです」
「ライオンは猛獣ですしね」
「長い間保護出来ないので」
「こちらに任せてくれましたね」
「そうしたのですが」
「会いに来られたのですね」
「そうです、あの娘達は元気でしょうか」
 女性はバビントンに尋ねた。
「後で主人も来ますが」
「ではご主人が来られたら案内させてもらいます」
 バビントンは微笑んで答えた。
「その時に」
「それでは」
「はい、ご主人を待ちましょう」
 程なくして禿げ上がった頭と黒い髭が顔の下半分を覆った太った大柄な中年男が来た、彼の名はイワノフといった。
 バビントンは二人を姉妹のいるところに案内した、すると。
「ガウッ」
「ガウガウッ」
 すぐ二匹の雌ライオン達が来た、そしてだった。 
 フェンスに駆け寄って後ろ足で立ち上がって二人の前に来た、そして二人は彼女達と抱き合った、バビントンはその光景を見ながら夫婦に話した。
「ライオンもちゃんと心がありますから」
「だからですか」
「こうしてですか」
「助けてくれて育ててくれてです」
 そうしてというのだ。
「幸せな場所に連れてきてくれた恩を忘れません」
「そうなのですね」
「こうしてですね」
「そうです、人と同じです」
 こうしたことはというのだ。
「この娘達はずっとです」
「私達のことを覚えてくれていて」
「感謝してくれているんですね」
「そうです、ずっとです」
 まさにというのだ。
「そのことを忘れないです」
「そうですか、では」
「私達も」
「はい、覚えておいて下さい」
 笑顔で話した、そうしてだった。
 二人と二匹の再会を温かい目で見続けた、そのうえでこれからもこの活動を続けていこうと決意した。そして活動していったのだった。


人とライオンの絆   完


                   2022・10・29 
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