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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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あと1つ

<ランシール>

リュカ達は昨日の疲れが抜けぬまま、宿屋に併設された食堂へ集まり、遅めの朝食をとっていた。
本来であれば、パーティー内の良心…アルルとティミーはみんなと共に集まっているはずなのだが、今朝に限っては寝坊で現れてこない…

皆、分かっているのだ。
2人が疲れ切っている事を…
アルルは1人(自称)で洞窟へ入り、ブルーオーブを手に入れてきた。
ティミーは1人(自称)で町中を彷徨い、ナンパしていた。
しかもそれは建前であり、昨晩の2人の行為の激しさを…
みんな重々承知しているのだ!


カンダタなどは、食堂へ現れリュカを見るや『流石は旦那の息子!地球のへそって洞窟を探検しただけでは物足りず、今度はアルルのへその下の洞窟を探検した様だな!アルルも青い宝玉1個じゃ満足出来ず、ティミーの宝玉にまで手を出したぜ!』と、ヤラしくニヤつきながら昨晩の事を話題に出す。
するとリュカが、持っていたコップを握り潰し、カンダタを殺しそうな勢いで睨み付ける!

世界から音が失われたのかと思うような静けさの中、リュカの怒気だけが食堂内を支配する…
全く無関係な別の客も、リュカの怒気に晒されて、胃痛を起こす程の…
そんな状態を救ってくれたのは、出来る男ウルフ…
「ア、アルルは1日中…1人で洞窟を探検してたんだ!寝坊もするよ!ティ、ティミーさんだって、アルルが心配で、1日中町中を彷徨ってたんだもん…い、今はゆっくり眠らせておこうよ…そ、そんな事より、オーブも後1個だね!」
優秀なる義息はその場の空気を読み、ベターな建前を前面に押し出し、尊敬する義兄カップルの話題に触れないように話を逸らす。


皆、微妙に胃痛を起こしながら、見た目和気藹々と朝食をとるリュカ達に、随分遅れて合流してきた勇者カップル。
「すみません…寝坊してしまいました…」
「何…気にするなよ。昨日の試練は大変だったのだから、もっとゆっくりしてても良かったんだよ」
ティミーが謝りながらアルルと食堂へ入ってきた為、リュカは優しい表情と口調で労いの言葉をかける。
その瞬間、完全に消えたリュカの怒気に、食堂内の全員(無関係な客も含む)が安堵の表情を浮かべた。

「そんなワケにもいかないわ…後1つのオーブの事も話し合わなければならないし…」
「うん、そうだね…それに皆さん、食事をせずに待っていてくれたみたいだし」
アルルとティミーは席に着き、テーブルの上に置かれた、ほぼ手付かずの料理を見て、気遣いに恐縮している。
しかし真実は、あまりの緊張感に、誰も食欲が湧かなかったのが、料理が残っている本当の理由だ。
勿論、そんな事は誰も言えない…


「さて…残りはイエローオーブだけだけど、カンダタに何か情報はある?」
空腹ではあるものの、誰も食事に手を付けないので、遅れてきた自分が食べるわけにもいかず、ともかく今後の話し合いに移るアルル。
彼女が最も当てにしている、カンダタの元盗賊情報に期待を寄せるが…
「悪いなアルル…俺の元にも、イエローオーブの情報は入って来ないんだ…」
「アタイの所にも、イエローオーブの情報は無いねぇ…」
もう1つの情報源、元海賊情報にもそれらしき情報が見あたらないらしく、早々に話し合いは暗礁に乗り上げた。

すると…
「あれぇ~…そう言えば、マリーは何処かでイエローオーブの話を聞いたって言ってなかったっけ?」
急にリュカが娘に情報提供を求め、無茶振りをする!

「え!?な…えぇ!?………あ…その…え~と…そ、そう言えば、何処でだったか忘れましたけど、以前聞きましたわ…と、思いますわ…多分…」
マリーは皆を導く為に、それなりのプランを考えてあったのだが、父に無茶振りをされプランを開始する前に、嘘くさい言い訳を余儀なくされた。
「マリーちゃん…それは本当なの?」

「あ…え、えぇ!た、確か…イ、イエローオーブは…人の手から人の手へと、移り渡っているらしいんです…ですから…え~と………そう!エコナさんの町に行って、情報を集めましょうよ!」
何とも強引な展開…
水夫等を使い、もっと自然な形で情報をモニカやカンダタの元へ流すつもりだったのに、DQの事を解っていない父の所為で、苦し紛れのご都合主義に頼らざるを得なくなったマリー…
珍しくリュカの事を睨み付けている。

「確かにそうだな!エコナさんの町なら、出来たばかりで世界中から人が集まりそうだよね!」
「なるほど…そうね!エコナの所なら、大勢の人が集まるだろうし、情報も大量にあるかもしれないわね!」
基本的に根が素直なティミーが、妹の胡散臭い情報を鵜呑みにすると、彼程ではないが素直なアルルも同意する。
父にピンチに追いやられ、兄に窮地より救われたマリー…
今、心の底から兄に感謝しているだろう。



<船上>

取り敢えずの目的地も決まり、船へと戻るアルル達。
ネクロゴンドでの事もあるので、リュカにルーラの使用を願わなくなった一行は、モニカに次の目的地はエコナバーグであると伝え、出港の準備をしてもらう…
船旅を続けるのであれば、食料や水等の買い出しも必要となり、アルルやティミー等も人手として駆り出されるのである。
言うまでもないが、このパーティーの最年長者の男は、出港の準備などの船に関わる事柄を手伝いはしない…
そして誰も、その事に突っ込みを入れない…
何故なら、あの男に手を出されると、余計な仕事が増えるからなのだ!


ある程度の準備が整い、残りの事はモニカと水夫等に任せると、アルルは彼氏の手を引き、一切何もやってない彼の父の元へとやって来た。
「あのリュカさん…お話があります!」
少し決意を帯びた表情で、リュカの前に立つアルル…
ティミーの方は、何故連れてこられてのか分かってない様子…
「何?…孫が出来たとかの報告じゃないよね!?」
普段なら『真面目に聞いて下さい!』と激怒するような物言い…
だがアルルは怒らない。
「…似たような物ですが、ちょっと違います。………私達…結婚します!」


 
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