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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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君の為なら…

<地球のへそ>

ランシールの神殿の廊下から外に抜けると、広大な砂丘地帯が広がっている。
イシスの砂漠ほど灼熱ではないが、砂の足場は動きにくく、戦闘でも苦戦を強いられる。
幾つかの砂丘を越え、洞窟の入口が見えた所で何度目かの戦闘に巻き込まれるアルル。
この地域のモンスターは、どれも今のアルルにしてみれば強敵ではないのだが、地形条件と数の差で撃破が難しくなっているのだ!

「くっ!…地の利も、数の利も敵にあって戦いにくいわね!…つくづく仲間のありがたみが解る試練ね!」
後ろに回り込み襲いかかる敵を打ち倒し、疲れた口調で吐き捨てる。
直ぐさま敵の集団に向き直り、隙無く出方を伺うアルル!

すると遠くから、叫び声のような物が聞こえてくる…
しかも徐々に近付いて来るではないか!
思わず振り返るアルル!
その瞬間「スクルトスクルトスクルトォォォォ…………」と、叫びながら何かがアルルの右上を高速で通過した!
そして、今まさに襲いかかろうとしてたモンスターの一団を薙ぎ倒し、砂中に突き刺さる!


「……………」
事態が把握出来ないアルルは、呆然と固まっている。
すると砂に突き刺さったソレが、自ら這い出し起きあがる。
「いてててて………ったく!スクルトの重ねがけをしなかったら大惨事だったぞ!」

「…な…何でティミーが!?」
何と、空から振ってきたのはティミーだった!
彼は此処には居ない誰かに文句を言いながら、体に付いた砂を払い周囲を見渡す…
「あれ、アルル!?…すげーコントロールだな…」
「え、コントロールって?何?…何で此処に居るの?」
混乱の収まらないアルルが、些か取り乱し気味に質問する。

「えっと…コントロールってのはこっちの話だから気にしないで!」
「そんな事より、どうしてアナタが飛んできたのよ!?それを説明して!」
「うん、あのね…神殿でアルルを見送った後、父さんに『暇だから町へナンパに行こう』って誘われてさ…一緒に町へ出たんだ。そうしたら美女の匂いがして、その方向に向かったんだ!…でも僕って方向音痴じゃん!だから迷いに迷って、どっちに行って良いのか分からなくなっちゃったから、美女の匂いに向かって飛んできたわけ…」
「はぁ!?もしかしてリュカさんがティミーに化けてるんですか?」
あまりの言い訳に、変化の杖使用を疑いティミーの顔をこね回すアルル。

「い、いや…僕だから…僕はティミーだから…本物のティミーだから!」
彼女の腕を掴み、ジッと瞳を見つめるティミー…
「ど、どうやら本物のティミーね…」
変化の杖で化けても、瞳だけは偽れない…
だから瞳を見せ納得させるティミー。


モンスターも消え去り、静かになった砂丘で見つめ合う2人。
「ティミー…私は洞窟に入らなきゃならないの。手を…手を離して」
たった数10分会えなかっただけで、不安で気が狂いそうになったティミー…
やっと掴んだアルルの腕を、離す事が出来ないでいる。
「アルル…僕は「この試練は、私一人でやり遂げなければならないの!ティミーは神殿まで引き返して…」
アルルは優しくティミーを諭す。

「……………」
ティミーも分かっているのだ…
無理に付いていってもアルルが困る事を…
この試練は神が定めた決まりがあるのだから…
「…分かった…僕は帰るよ…でも僕は方向音痴なんだ!1人で神殿へ帰っているつもりでも、気が付いたら洞窟にいるかもしれない!それは仕方ないよね!」
ティミーは父と違い無神論者ではない。
だが彼は、アルルの為に神を拒絶する!

「その言い訳を、本気で押し通すつもりなの!?」
「今更だけど、僕にも父さんの気持ちが分かるようになってきた。好きな人の為ならば、神も悪魔も怖くない!世界の全てが敵になっても、愛する君を守りたい!だから父さんは神を信じない…そして僕も神を信じなくなった!…大切なアルルを危険にさせる神なんかを!」
そしてティミーはキスをする。
アルルを愛おしむ感情を抑えきれないから。

「…ティミー………ふふふ、分かったわよ。じゃぁ私は試練を続行するわね。ティミーは1人で帰りなさい…方向音痴のティミー君は1人で!」
そう言ってアルルはティミーと手を繋ぎ、ゆっくり洞窟へと進んで行く。




<ランシール>

リュカとティミーが町へ出てから半日…
夕焼けが世界を黄金色に変える頃、神殿内では神官とビアンカ等がただ黙ってアルルの帰りを待っている。
1度、神殿側からお茶と軽食を出されたが、それ以外はほぼ飲まず食わずで待ち続けている。


「あっれぇ~!まだアルルは帰ってこないの?」
永遠に続くかと思われた沈黙を、緊張感の欠落した声で破ったのは、町から戻ってきたリュカだった。
「リュカさん…今まで何してたんですか!?」
待ち惚けのストレスから、強めの口調でリュカに当たるウルフ。

「何って…ナンパだよ。あれ、言わなかったけ?」
リュカは女物の香水の匂いを漂わせながら、みんなの元へと戻って行く。
「お父さん…本当にナンパをしてたの?」
その場にいる全員から、冷たく蔑んだ目で睨まれるリュカ…
「い、いや~…その~…だ、だってそう言って出て行ったでしょ!最初っから伝えておいたじゃんか!何で今更そんな目で睨むの!?」
流石のリュカも、この視線にたじろぎ後ずさる。

そんなリュカを軽蔑した目で睨んでいた神官が、もう1人の存在が見あたらない事に気付き、リュカへ質問をする。
「貴方と一緒に出て行かれた方は、どうしましたか?…一緒に行動をしていたのではないのですか?」
2人出て行き、1人帰る…
神官の疑問は当然だろう。
皆がリュカの答えが気になった…ビアンカでさえも!



 
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