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<ポケットモンスター トライアル・パレード>

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1章「新しい旅先」
  2話「次の旅路へ」

 
前書き
ポケモンの二次小説です。主人公はサトシです。ご興味あれば、1話からお読み下さい。 

 
オーキド博士の元で、サトシの次なる旅先が決まった。
サトシは、アハラ地方とシントー地方に向かう為、オーキド研究所で自分のポケモン達に顔を出した後、すぐさま家に帰った。早速、家で母親のハナコにことの説明をすると、旅の仕度をはじめた。
それから2日後の朝。今日は、ピカチュウのお陰でもあるが珍しく早起きをして、朝食を済ませて、出発前の準備をはじめた。今回も、サトシが旅で着ていく服を、母親が新しく手作りで用意した。ズボンや上着の他、いつもサトシにとって欠かせないもの帽子もだ。
その服へ、着替え終わったサトシは、荷持を背負い、ピカチュウと家から出た。家の前では、母親とバリヤード、それと家までわざわざ見送りに来たオーキド博士が待っていた。
「サトシ。ちゃんと着替えや寝袋、ピカちゃんの餌とか全部持ったわね」
「大丈夫だよ。俺は、もう11歳なんだよ」
「11歳でも、まだピカチュウと私に起こされているのに、どこが大丈夫なの」
「今日は、ちゃんと起きたよ」
「毎日起きなさい」
「ウッ」
「もう。本当に、気をつけないよ」
「う、うん」
そうやって親子の挨拶をするが、母親であるハナコは少し心配な顔をしていた。これから暫く、一人息子の顔が見られない。1年前に、サトシがポケモントレーナーとして旅に出る時は、元気に旅立ちを祝い、応援して見送った。けど、不安はやはり心の中にあったようだった。息子が、様々な地方に旅に出る度に、何度も味わい経験していた感覚。次第に慣れていき、急に旅立つことを言われても、応援して見送ることが出来ていた。本人も、サトシの旅出は、当たり前のように、思っていた。しかし、1年ぶりに、その不安が出てきてしまった。
「ハハハ、サトシのママさん。サトシは、ポケモントレーナーになって旅をして、もう1年が経つんじゃ。まだ、心配する点は多いが、この子は大丈夫じゃよ」
「博士」
オーキド博士がそういって宥めると、ポケットから赤い何かの取り出しサトシに渡す。
「サトシよ。新しい地方でまた新しいポケモンとの出会いもあるじゃろ。これを持っていくといい」
「これって」
「今年出た最新のポケモン図鑑じゃあ。今回は、新しい機能も付いておるから、きっと役に立つはずじゃ」
「ありがとうございます」
「それと、留守番をしているケンジも、頑張るよう言っておったぞ」
「はい、ありがとうと伝えて下さい」
「バリヤード、母さんと家のこと頼むぜ」
「バリバリ」
「ピカチュウ、サトシのことお願いね」
「ピカァ」
家族や博士との別れの挨拶を済ませたサトシとピカチュウは、早速出発することにした。
「じゃあ、行ってきます」
「ピッカピカチュー」
サトシとピカチュウは、みんなに手を振り、家を離れていく。
「気をつけるんじゃぞ」
「バリリー」
「こまめに連絡頂戴ね」


今回、旅の目的となるアハラ地方とシントー地方の合同ポケモンリーグ「ソウテン大会」出場のため、サトシは対象となる地方内にあるジム戦を回らなければならない。それで、サトシは、ホウエン地方の東側にあるアハラ地方へ行くことを決めた。まずは、カントー地方からジョウト地方に移動する為、ヤマブキシティからコガネシティを走るリニアに乗る必要があった。
サトシは、マサラタウンから徒歩でトキワシティに向かった。トキワシティでは、ヤマブキシティ行きのバスがある為、それに乗車し、2時間弱でヤマブキシティの駅前に到着した。
「久しぶりのヤマブキシティだなぁ。ピカチュウ」
「ピカ~」
「さて、早速チケット買うか」
そう言って、駅内に入り券売機でチケットを購入し、落とさないように財布に挟み、ポケットに仕舞った。
「リニアの出発時間は・・・あと40分か。今のうちに、駅弁買っとこうかな。なぁ、ピカチュウ。弁当買いにいこうぜ」
「ピカピカ」
二人で、駅内にある弁当売り場に向かった。この駅の弁当売場には、人間用の弁当も普通に売っているが、最近ではポケモン用の弁当も打っていて、ポケモンフーズを改良したものから様々な好みに合わせた弁当が作られて売っている。
「お、ヤマブキ名物のトンカツ弁当か。新しい旅のはじまりだし今のうちに願掛けでカツにしようかな」
「ピカピ」
「お、ピカチュウは、その卵かけトマトソース風味のフーズにするのか」
「ピッカァ」
二人で弁当を選び終えると、レジで会計をするサトシだが、財布を出す際に、先程買ったチケットが滑り落ちてしまった。その事に気付かないサトシとピカチュウは、弁当を購入してすぐに早速改札口に向かった。その後、レジで会計をする人が、足元のチケットに気づく。
「さて、まだ時間あるし、次の町に備えて道具とかも買っとくか」
「ピカ」
二人は、駅内にあるアイテムショップで少しだけ買い物をした。
「よし、10分前だけど行くか。さぁ、ピカチュウ。久しぶりのリニアだぜ」
「ピカ~」
それから改札口に到着すると、駅員に購入したチケットを渡すため、財布を取り出した。
「お客様、乗車券を拝見します」
「はい、えぇと・・・あれ」
財布の中を見ても、チケットが見当たら無かった。
「あ、小銭入れに入れたかな」
そう言って小銭入れの中を見る。
「あれ?」
「ピカ?」
続いてカード入れの中、もう一度お札入れの中も見た。そして、両手で自分のポケットに突っ込んでみた。だが、手には何も触れるものがなかった。ただ、ポケットの生地だけの感覚が伝わる。
「う、嘘だろ」
サトシは、ポケットの隅から隅まで手探りで探す。そして、奥の生地を摘んでポケットから引き抜き、中身を全て出す。しかし、チケットはなくあるのはただ1本の糸くずだけ。
「も、もしかして・・・チケット落とした?!」
「ピィ・・・カー!!!」
サトシは、慌てて周りを探した。だが、チケットは見当たらなかった。
「くそ、どこだ。どこに落とした」
改札口から離れたサトシとピカチュウは、床や壁の端を見回りながら、先程歩いてきた道や階段、駅弁売り場まで探して行った。念のため、店員に落とし物を聞いたが無いと答えられ、そのまま駅の中で歩いた場所を順番に回っていき探した。
ただ時間だけが過ぎて行った。余裕を持って10分以上前に、改札に行ったのに、その余裕は、一刻一刻と減っていく。
「やっぱ、さっきの改札口かな」
サトシはそういうと改札口に戻った。だが、やはりチケットは見当たらなかった。
「くそ、あと2分も切ってしまった」
「ピカピ」
「勿体ないけど。買い直して、次のリニアに乗るしかないか」
「チュー」
「ごめんな、ピカチュウ。俺のミスで」
「チューチュー」
ピカチュウは、サトシに首を振るが結局見つからなかった事にサトシ同様に残念な顔をする。そして、二人は諦めて券売機まで戻り買い直そうとした時だ。
「君」
突然、後ろの方から誰かに呼び止められた。サトシは、振り返り今の声の主を探した。すると、一人の男の人が立っていた。
「こっち、こっち」
男は、サトシに手招きしながら話かけた。サトシは状況がよく分からなかったが、言われるがまま男に近づいて行く。
近づいて顔をよく見ると青年だった。見た目は、好青年というような良い人に見え、年は少し大人のような雰囲気はあるが、サトシとそう余り変わらないよう若さだった。
男は、近づいたサトシに右手を差し出す。
「これ、君のチケットだろ」
「え?」
サトシは、男の右手へ視線を移すと、そこにはチケットが掴まれていた。
「もしかして、俺のチケット?」
「あぁ」
「けど、どうして?」
「さっき弁当売り場のレジ前で拾ってね。君、さっき会計する時に落としただろ」
そう言われて、サトシは先程のレジの時に、財布を取り出す際のことを思い出す。
「チケットの発車時間を見て、一応ホームで待って探したけど、見当たらなかったからさ。最悪駅員に渡しても良かったんだけど、そしたら誰のチケットなのか確認したりする手続きで時間取られるだろうから。ここで待っていたんだよ。ほら」
サトシは、彼の手に持っていたチケットを受け取る。
「あ、ありがとうございます」
「ピカピカチュウ」
「どう致しまして」
そして、サトシのピカチュウは、改札口を渡り、無事リニアに乗車出来た。
先程の男も、同じく改札口を通り入っていった。


それからコガネシティ行きのリニアは、予定時刻通り出発した。
座席についたサトシとピカチュウは、窓から景色を眺めて旅の気分を味わっていた。出発してから20分が過ぎた頃には、二人のお腹が空き始めていた。
「なんだか、お腹空いてきたしお昼にしようぜ。ピカチュウ」
「ピカ」
ヤマブキ駅の弁当売り場で買った弁当を広げ、サトシはトンカツ弁当を、ピカチュウはポケモン用トマト風味の卵かけフーズ弁当を食べて、楽しい時間を送った。
それからリニアが発射して、約1時間でジョウト地方のコガネシティに到着した。
リニアから降りたサトシとピカチュウは、駅から出て久々のコガネシティの地に足を着けた。
「久しぶりのコガネシティだ」
「ピカピカ」
「だけど、町を回る時間はないから、いつかまたの機会だな」
「ピカァ」
サトシは、そのまま駅の前にあるバス乗り場に向かった。この駅から目指すアハラ地方のすぐ隣にある地方、ハルタス地方「ミョウコシティ」行きのバスが出ているのだ。サトシは、早速バスの乗車券を購入し、また落とさないように注意して、今度は胸の蓋付きポケットにしまい、しっかりボタンをして蓋をした。次に、乗り場を回って行き、ハルタス地方「ミョウコシティ」行きと書かれたバス停の行列に並んだ。それから5分程で、バス停にバスが停車して運転手が降りてきた。
「よし、これだな。ピカチュウ、このバスに乗るぞ」
「ピカ」
一人ずつ乗車券を見せて、乗っていく十数人が乗っていくとサトシの番が来て、チケットを渡した。
「はい、ありがとうございます。それでは、5のDにお座り下さい」
「はい」
サトシは、バスに乗り込み早速自分の指定された席を探した。
「えぇと、5のD、5のD、5のD」
チケットを持ちながら、席を探す。向かって左側がCとDの列だと分かり左の方を3、4と順番に数えながら進んでいく。そして、5のDの書かれたプレートを見つけた。
「あ、ここか」
サトシが席に座ろうとすると。サトシの隣になる通路側の席に、既に男性客が座っていた。サトシの席は、窓側の席のため、その客の前を通らないと行けない。それで、サトシが一言言おうとした時だ。
「ん?あれ、君は」
サトシは、自分より先に男の方から話しかけられた。そして、男の顔を見て気が付いた。
「あれ、貴方は、さっきの」
リニアに乗る前に、サトシが無くしたチケットを拾ってくれた人だった。
「もしかしてお隣さん?」
「あ、はい」
「そうか。すまない。はい、どうぞ」
席から立ち上がり、道を開けてくれた。
「ありがとうございます」
「ピカピカ」
「どういたしまして」
そして、サトシの後に続いて彼も席に座った。乗客全員が乗り終えると。
「それでは、お客様出発致します」
バスの運転手により、アナウンスが鳴り、ハルタス地方のミョウコシティへ発車した。
それから暫くして、サトシの隣側の男から話かけられた。
「君たちは、どちらで降りるのかな?終点?」
「はい、ミョウコシティまで行きます」
「そうか、なら一緒だね」
「あの先程は、本当にありがとうございます」
「チケットのこと?別にいいよ。偶然拾っただけだから」
「あ、俺、マサラタウンから来たサトシと言います。こっちは、相棒のピカチュウ」
「ピーカピカ」
「そうか、俺の名は、ヒョウリだ。ちょっとだけの間だろうが、宜しく」
それからサトシは、ピカチュウと外の景色を楽しみながら、ヒョウリと度々話を続けることになった。


バスは、次第にコガネシティを抜けて、森の道へと入っていった。徐々に人里から離れ、北西へ進んでいく。発車してから、1時間程が経過した。バスは、右側に丘や森があって、左側が谷になっている道に入っていた。見ると不安な予感もあるだろうが、安全対策としてガードレールや補強などがあり、道もバスの倍近くある幅で、安全性はあるように思える道ではあった。一方、バスの中はそんな道の様子を無視して、眠っていたり、隣と談笑したり、ゲームをしている等と30名程の乗客はそれぞれで過ごしていた。無論、サトシやヒョウリも話を続けていた。
「そうか。1年前にポケモントレーナーとして旅立って、リーグ戦に出ているのか」
「はい、カントー地方やジョウト地方とかのリーグ戦にも出場しました」
「それは、凄いな。ところで、サトシくんは、マサラタウンの出身と言っていたが、ハルタス地方まで観光とかかい?」
「いえ。今度、アハラ地方とシントー地方で合同で開かれるソウテン大会に出るんです」
「あぁ、あの合同リーグ戦か。ということは、まずアハラ地方に行くんだ。ジムバッチ狙いで」
「はい」
「あの、ヒョウリさんは観光ですか?」
「俺は、観光というより旅かな」
「旅ですか」
「あぁ、ちょっと仕事で休暇がやっと取れたからハルタスやフィオレ、アハラとか見ていこうかなと思って」
「へぇー、ヒョウリさんも旅ですか。いいですよね旅。俺もポケモントレーナーになってあちこち旅をしたんですけど、凄く楽しく。それで、今度いくアハラ地方やシントー地方とか凄く楽しみなんです」
「そうか。きっと、いい旅が出来るよ」
「ありがとうございます。ヒョウリさんも、いい休暇が出来ますよ」
「ふっ、そうかい?」
話がドンドン弾んで言ったのが、それからも話しを続けた。そんな中、バスに突然の衝撃が走った。
「うわっ」
「きゃあ」
「え?」
突然、バスの急ブレーキが掛かったのだ。そのせいで、バス全体が前に慣性の法則で力が加わり、中の乗客達は前の方へ倒れそうになった。
「痛、一体どうしたのよ?」
「な、なんだ?なんだ?」
「どうした?」
「うぇぇぇ」
乗客は、頭を撃ったり、驚いたり、子供の乗客が泣き出したりとパニックになった。
「あぶねぇ」
「ピカチュウ!怪我はないか」
「ピカァ」
「良かった。ホッ、けど一体なにが」
「分からん」
サトシやヒョウリたちも突然のことで、驚いていると、運転手が運転席から立ち上がり乗客へ話かけた。
「申し訳ございません。お客様、お怪我はありませんか?」
そう言って、客の安否確認をする。
「ちょっと、一体何よ?」
「運転手さん、どうしたんだ?」
「す、すいません」
乗客の何人かは怒り、運転席に問いただし文句を言う。すると、ヒョウリは席から立ち上がり、運転手のところ向かった。
「皆さん、落ち着いて。一体、どうしたんですか?」
「それが、道の先でポケモンが」
「?」
運転手に言われたヒョウリは前の方へ向かい、正面ガラス越しに前方を確認した。
「あれは」
目線の先には、バスから前方約50mの先、道の中で、複数のヘルガーと複数のリングマが争っているのだ。
「ヘルガーの群れと、リングマの群れか。野生っぽいな」
ヒョウリは、ポケモンたちを確認していると、後ろからサトシもやって来た。
「あ、ヘルガーとリングマが」
「あぁ、どうやら喧嘩のようだが。だが、なぜここに」
そうしていると、他の客も同じように見てきた。
「うわ、ポケモンの喧嘩だよ」
「リングマじゃあ。あんなにたくさん、ヤバいな」
客がそう驚いていると、ヒョウリは話し出す。
「この辺りは、野生ポケモンがそれ程多くない地域だったはずだ。それに、この道は、野生のポケモンで凶暴なものが生息していない地域で選ばれていたはずだ。だろ、運転手さん?」
「はい、確かにそうです。私も、この道を5年以上走っていますが、リングマやヘルガーなど見たことありません」
二人はそう話あっていると、今度は傍観していた乗客の一人の女性が、二人に話賭けてきた。
「あの」
「はい?」
「私、この先の村に住んでいるのですが。最近、この辺りの山で何かの開発工事が行われたんです。そのせいで、縄張りを失った野生のポケモンたちが、あちこちで争いはじめたと」
「そんなことが」
その説明を聞いたヒョウリは、そう言葉を漏らす。
「運転手さん、どうします?」
「そうですね。一応、本社に連絡して迂回か、引き返すしかないですね」
ヒョウリと運転手は、相談していると。戦っていた一体のリングマが、バスに気付いた。
その視線を感じたヒョウリは、険しい顔をし、リングマを見た。そのリングマは、側にあった大きい岩を持ち上げて、バスに目掛けて投げてきたのだ。
「うわぁぁぁ」
それに気付いた運転手も、驚いて大声を上げるが、運良く岩は、バスの横へズレて道に落ちた。
「ふぅー。不味いな」
ヒョウリは、そう言うと。
「奴らは、人間のせいで縄張りを失った。なら、俺たちを恨んでいるはずだ。運転手さん、早くバックして、ここから離れましょう」
「あ、はい」
すると、戦っていた一匹のヘルガーもこちらに気付いて、突っ込んできた。
「運転手さん。早くバック」
「は、はいぃ」
運転手は、ギアを入れてペダルを踏んで、ゆっくりバックし始めたが、遅かった。
突っ込んで来たヘルガーが<かえんほうしゃ>を吐き出したのだ。そのわざは、バスの車体前方の底部に命中した。その衝撃で、バスはバランスを崩し、運転がしずらくなり、右側の壁に激突してしまった。
「うわぁ」
「きゃあ」
「いて」
乗客たちにも、その衝撃を伝わった。よりパニックになっていった。席から倒れそうになった人をサトシは、助けて起こして上げた。
「大丈夫ですか」
「あ、ありがとう」
運転席の側で立っていたヒョウリは、運転手に対して促した。
「運転手さん、早く」
「はい・・・あれ、あれ」
「どうしました?」
「タイヤが動かない。まさか?」
先程のヘルガーの<かえんほうしゃ>で前輪の2つのタイヤが溶けてしまい、走行が難しくなってしまった。
「タイヤがやられたみたいです」
バスの運転手がそう言っていると、今度は先程とは別のヘルガーもやってきて、再びこちらへ<かえんほうしゃ>を放った。バスの右側の壁に命中した。
「うわぁ」
「くっ」
「このままじゃあ。バスが燃えて爆発してしまう」
運転手は、そう叫んでいると、ヒョウリは何かを決した。
「仕方ない。あいつらとバトルするしかないな。運転手さん、貴方は無線で状況を言って、救援を呼んで下さい」
「はい、分かりました」
ヒョウリは、後ろの乗客に向かって話しかけた。
「この中で、ポケモンを持ってるトレーナー、バトルが出来る人いますか?」
突然、ヒョウリに言われた乗客達は、中々状況が理解出来ないのか。誰も答えようとしなかった。
「今、バスは動けないです。それには、あのポケモンとバトルをして、他の客と一緒に逃げる必要があります。俺は、戦いますが、相手の数多いんです。トレーナーやバトル経験者がいれば、一緒に戦ってくれ」
ヒョウリから説明と説得を受けた客たち、それから数秒ほど間を置いてから客の中から声が上がった。
「あ、はい。俺、元トレーナーでポケモン持ってるっす」
「わ、私も。ポケモンバトルしたことあります」
「僕も。ポケモン、今持ってます」
彼らに続いてサトシも、名乗り上げた。
「俺もやります」
「ピカァ!」
「よし、では早く動きましょう」
「サトシくん?手持ちは?みずタイプのポケモンを持っているか?」
「え、えぇと。今はピカチュウだけで。けど、俺のピカチュウは滅茶苦茶強いです」
「ピッピカチュ!」
「わかった」
そして、バスからヒョウリとサトシをはじめ、バトル参加者たちは次々と降りた。
「運転手さんは、念のためお客さん達をバスから降ろして離れるよう行ってください」
バスの中にいる運転手に
「俺とサトシくんで、正面のポケモンたちの相手をしますから。皆さんは、自分や他の客に近づいたポケモンの相手をお願いします」
「「「はい」」」
そして、運転手の指示のもと、乗客は一人ずつ降りていき、トレーナー達は自分のポケモンを出して陣を構えた。
サトシとヒョウリは、そこから前にいるヘルガーやリングマ達に向かっていった。
「サトシくん?準備はいいか?」
「はい、大丈夫です。それと、俺のことは、サトシでいいですよ」
「・・・OK。なら俺もヒョウリでいい、サトシ」
「ん?」
「君、年は11歳だと言ったな。俺は2個上だが、そんなに変わらん。それと、敬語を余り使われると、ちょっとむず痒い」
「よし、分かった。いくぜヒョウリ」
「あぁ。相手は、リングマ7体、ヘルガー8体。うち、こちらに向かっているのが1体と2体だ。俺は、ヘルガー2体を相手にする。サトシは、リングマ1体を頼む」
「わかった。いくぞ、ピカチュウ」
「ピカ!」
ピカチュウは、サトシの肩から降りて、前に飛び出しリングマに向かって行った。
「さてと」
ヒョウリは、サトシ達から目の前にいるヘルガー2体に視線を戻した。
ヘルガーは、デルビルから進化した(ダークポケモン)で、タイプは(ほのお・あく)。
口から炎を吐き出すことが出来て、その炎はヘルガーの体内にある毒素を燃やしたものらしく、鼻に突き刺す様な臭いがする。また、頭から角が2本生えていて、一番大きく反り返っている個体は、そのグループのリーダーの証だと言われている。
「いくぞ」
ヒョウリは、腰につけたピンポン球の大きさのモンスターボールの1つを掴み取り、ボール中央の出っ張りのスイッチを押す。すると、野球ボール程の大きくなった。
モンスターボールは、野生ポケモンを捕まえ捕獲する世界中で使われているポケモントレーナー必須アイテムであり、捕まえたポケモンや手持ちにするポケモンを保管する為に使われる。その製造企業や構造は、表向きには秘密とされていて、一部の開発者はポケモン研究者しか知られていないトップシークレットとのこと。
ヒョウリの投げたモンスターボールは、空中で開き、中から光が溢れ出て、地面に向かっていった。その光が、徐々に形作られていって、光の中からポケモンが出てきた。
(あれは)
サトシは、ヒョウリが出したポケモンを見た。
それは<ラグラージ>だった。
ラグラージは、ヌマクローが進化した(ぬまうおポケモン)で、タイプは(みず・じめん)。
重さが1トン以上もある岩を持ち上げる力持ちで、更に両腕は岩のように固くて一振りで相手を叩きのめす程のパワーのあるポケモンだ。
ヒョウリは、出したラグラージに合図をする。
「行くぞ。ラグラージ」
それに答えるラグラージ。
「ラージ」
「ラグラージ、右の奴にハイドロポンプ!」
ヒョウリに指示されたラグラージは、<ハイドロポンプ>を2体のうち、右側のヘルガーへ放った。ハイドロポンプは、ヘルガーに向かっていくが、すぐさま躱した。
「ラグラージ、一気に突っ込め」
「ラージ」
次の指示で2体に突っ込んでいくラグラージ。
「かわらわりだ」
指示を受けるとラグラージの右手が光り出し上へと振り上げた。そして、先程のとは別の一体のヘルガーに対して、勢いよく腕を振り下げた。<かわらわり>は見事に命中し、そのままヘルガーは地面にめり込んだ。結果は、一撃で戦闘不能となり、目を回している。
「ガウ」
その光景を見ていたもう一体のヘルガーは、警戒心を強めて背後からラグラージへと飛びかかった。今度は、<かみつき>攻撃のようだ。その状況を見たヒョウリ。
「ラグラージ、後方!ワイドガード!」
すぐさま次の指示を出し、それに従うラグラージ。左腕をヘルガーに向けると、力込める。そして、<かみつき>をしてきたヘルガーの攻撃を防いだ。
「今だ、かわらわり!」
再度、ラグラージは<かわらわり>をヘルガーに対し攻撃、見事に命中し奥へ吹き飛ばした。
そのヘルガーも見事に、一撃で戦闘不能となった模様。
「さて、次は」
奥で戦っているリングマやヘルガーの群れに見る。


一方、サトシとピカチュウは、一体のリングマとバトルをしていた。
リングマは、ヒメグマから進化した(とうみんポケモン)で、タイプは(ノーマル)。
どんな匂いも嗅ぎ分ける嗅覚を持ち、深く埋まった食べ物も残らず見つけ出す程。
また、縄張りにある美味しい木の実や果物のある木に、自分の爪で傷跡をつけ、マーキングを付ける習性がある。
「ピカチュウ!でんこうせっか!」
「ピカ、ピカピカピカ」
サトシの指示を受けて、ピカチュウは体を瞬時に早く移動し、わざの名前の如く電光石火で動き、相手であるリングマに直接ぶつかり物理的ダメージを与える。
「グァ」
攻撃を受けたリングマは、声を出して体がよろける。
「よし。次は、10マンボルトだ!」
「ピィカァーチュー」
サトシのピカチュウの得意技である10マンボルトがリングマを襲う。一気に、強力な電撃を食らうリングマはついに両膝をついた。
「よし、続いてアイアン」
その時だ。リングマの真横の丘の草木から小さい何かが飛び出し、リングマに近づいたのだ。
「!」
「ピカ?!」
突然、現れた何かを見たサトシとピカチュウは、すぐにその正体が分かった。
「あれは、・・・ヒメグマ」
姿を見たサトシは、そう言葉に出す。かつて旅の中で、リングマと同じく見たことがあるポケモンだからだ。ヒメグマは、リングマの進化前で(こぐまポケモン)と言われているノーマルタイプのポケモン。
「ヒメヒメ」
サトシは、ヒメグマの様子を伺っていると、ピカチュウのダメージを受けたリングマを必死に助けようとしていた。すると、ヒメグマはピカチュウの方を見て、前に出てきた。どうやら、戦おうとしているのだ。
「ヒメェ!」
「もしかして、あのリングマの・・・子供?」
そう考えると、ヒメグマの目から涙が出ていることに気が付いた。泣いているのだ。そして、凄く体が震えていた。恐らく、今までまともにバトルをしたことが無い個体なのだろう。
「・・・」
サトシは、迷った。今は、非常時だからと野生のリングマやヘルガーの群れと戦うことにしたが、ヒメグマの状況を見ると、どうしても攻撃を続ける気持ちが無くなって言ったのだ。
「ピカピ」
「あ、分かってる。けど」
「ピィー」
サトシの表情を見たピカチュウも次第に戦う意欲が薄れて行った。このままでは、自分たちが弱いものいじめをしているようだと。けど、このままだと後ろのバスの乗客達に被害が出てしまうかもしれないと、任された以上守らなければいけないと、2つの気持ちがぶつかる。
サトシがそう悩んでいると、バトルをしていたリングマとは別のリングマが突然、丘の上から現れた。そして、ピカチュウに向かい飛びかかってきたのだ。
「あ!」
「ピカ!」
リングマは、<きりさく>を使ってきた。
「不味い」
サトシは、すぐにピカチュウに指示を出そうとしていたが、時は遅かった。
「ピカァァァ」
リングマの<きりさく>は見事に、ピカチュウにクリンヒットした。突然のことに、ピカチュウ自身も躱すことが出来なかった。そのまま、攻撃を受けたピカチュウは、吹き飛ばされ、地面に転げた。
「ピカチュウ!」
攻撃をしたリングマは、続けてピカチュウに突っ込んでいき、もう一度<きりさく>攻撃を仕掛けようとしていた。ピカチュウは、先程の攻撃で立てる様子は無かった。
「くっ」
サトシは、すぐさま迷うことなくピカチュウを助けに走った。
「おぉぉぉ」
大声を上げながら、ピカチュウに向かうサトシは、途中で地面をスライディングし、そのまま倒れたピカチュウを抱え込む。だが、リングマはほぼ目と鼻の先まで迫っていて、サトシとピカチュウを共に<きりさく>で攻撃しようとした。
「!」
サトシは、ピカチュウを守るように抱きしめ、背中をリングマへと向ける。
「ラグラージ、ワイドガード!」
間一髪だった。ヒョウリの指示で、ラグラージはリングマの<きりさく>を防ぎ、サトシたちを庇うことに成功した。
「あ」
「ラグラージ、かわらわり」
リングマに<かわらわり>の攻撃を行い、吹き飛ばした。
「よし、ハイドロポンプだ」
更に、ハイドロポンプを受けたリングマは、そのまま先程の倒れたリングマと側にいるヒメグマまで飛ばされた。
「グァ」
「ヒメヒメ」
ふっ飛ばされたリングマに駆け寄るヒメグマは、泣きながら、リングマの体を揺する。すると、ピカチュウによってダメージを受けていたリングマが再び立ち上がり、戦闘態勢を取った。
「まだ、やる気か。仕方ない、ラグラージ・・・トドメにまとめて、れいとうビームだ」
「ラージ」
ラグラージは口を大きく開いた。口の前に青白い光が現れ、徐々にそれは大きくなる。(れいとうビーム)の光が貯まると攻撃をする。
「待ってくれ!」
攻撃寸前で、サトシがピカチュウを抱えたまま、ラグラージの前に駆け寄ってきた。
「待て!ラグラージ」
咄嗟に、ヒョウリはラグラージに攻撃中止を命令する。
「なんだ?!どうしたサトシ?」
いきなりのことに、声を上げるヒョウリ。それに対して、サトシは答える。
「あのリングマたちを攻撃するのは、待ってくれ。俺に、・・・任せてくれないか。頼む」
「・・・何をする気だ?」
「あいつらと話す」
「・・・あいつらは、野生の中では人を襲う傾向があるポケモンだぞ。それに、さっきの地元民が言ってただろ。開発工事、人間のせいで、縄張りを失ったと。いわば、俺たちは復讐の対象なんだぞ」
「だからだよ!だから、こんなやり方じゃあ。やっぱり駄目だと思ったんだ。これじゃあ、結局」
サトシは、訴えた言葉を聞いたヒョウリは、一言で突き返した。
「綺麗事だ」
「!」
「事情は、分かってる。俺たち人間の都合で、野生のポケモンたちに迷惑をかけて、この様な事態になったこともだ。だが、それで俺たちが襲われても抵抗、反撃しないのとは訳が違う」
「それは、分かってる。ただ」
「サトシ。お前は、俺たちの後ろにいるトレーナーでもない民間人がいるのを、分かって言ってるのか?」
「あっ」
「俺達が駄目だったら、次はあっちに向かうんだぞ。今、あっちに護衛としてついてるトレーナー達とポケモン。パッと見て、正直、宛にはならない。群れ全員で襲われたら全員負けるだろう」
「ッ」
「そして、お前のピカチュウだ。これ以上、ダメージを受けると取り返しがつかないぞ」
「・・・」
ヒョウリの正論に、サトシは黙った。今、抱えているピカチュウが、ダメージを受けて、危険なこと、ヒョウリが言っている内容も、サトシは、分かっている。自分の我儘で、自分が正しいと思ったことをやろうとする事で、他の人や、ピカチュウにも迷惑がかかることも。サトシは、悩んだ。一番大事な事が何なのかを。
「ピ、カピ」
「!。・・・ピカチュウ」
「ピカ、ピカピ、ピカピカ、チュウ」
「・・・あぁ」
サトシに、ピカチュウは話かける。ポケモンであるピカチュウの言葉は、普通なら人間には理解出来ない。だが、その声と仕草、そして目と目で通して、長い付き合いのあるサトシには、ピカチュウの気持ちが伝わった。そんな二人が、やり取りをしているのを見たヒョウリは、サトシに告げた。
「一度だけだ」
「!」
「もし、上手くいかないなら俺がやる。いいな?」
「・・・あぁ」
「ラグラージ、下がれ」
「ラージ」
ヒョウリはそう言って、ラグラージを下げた。サトシは、そのままヨロヨロで立ち上がるリングマに近づいた。
「グァ」
「リングマ、落ち着いてくれ!」
サトシは、リングマに話しかけた。
「さっきは、悪かった。俺たちは、別に君たちと争う気はないんだ」
「ピカピカ、ピカチュ、ピカピカチュ」
サトシとピカチュウは、必死にリングマを説得しようとする。リングマは、サトシとピカチュウの顔を見た。そして、二人が全く敵対することも悪意がないこともポケモンとしての本能で理解は出来たのだ。
「グゥ」
「分かってくれたのか」
サトシがリングマと通じたようで、話を続ける。
「俺たちは、ただこの先に向かうだけなんだ」
「・・・」
「お前たちが、縄張りを失ったことは聞いた。本当に申し訳がないと思う」
「・・・」
「だから、頼む。もう、辞めてくれ」
「・・・グァ」
リングマが突然、何かの気配を感じた。それは、説得をしているサトシの側に、一匹のヘルガーが近づいていた。
「ピィカ」
「あ」
サトシは驚き、少しだけ警戒をする。だが、一切攻撃をしてこない。そして、そのヘルガーの角は、大きく反り返っていた。恐らく、この群れのリーダーだろう。その事に、サトシは気付いてはいないが、ヘルガーにも話をはじめた。
「ヘルガー、俺たちはお前らと戦う気はないんだ」
「ガウ」
「それと頼む。リングマと争ったりしないでくれ」
「ガァウ、ガァ、ガァァ」
「もしかして、縄張りのことを怒っているのか。確かに、俺たち人間が悪いことをしたと思う。俺は、そんな事をやってないけど、同じ人間として責任を感じる。けど」
サトシは、必死に話す。このまま、平和的に解決することが出来るかもしれないと信じていた。実際、話しているリングマもヘルガーもそう望んでいた。だが、不幸な出来事が起きた。
先程、ヒョウリのラグラージが倒したヘルガーの一体が、目を覚ました。そのヘルガーは今丁度、サトシの後ろ斜めに位置した。その事、サトシもピカチュウも、そのヘルガーやリングマも気付いていない様子。そのヘルガーは、敵対していたリングマより、人間の目が移り、睨んだ。出来るだけ音を立てずに、ゆっくり起き上がり、足に力を入れた。
「・・・ガァァァ!」
そのヘルガーは、遂にサトシへ飛び掛かって行った。
「ピカピ」
「ッ」
咄嗟に気付いたのは、ピカチュウだ。しかし、先程のわざの怪我でまともに動けない為、サトシを助けれない。振り返ったサトシは、ヘルガーに気付き。ピカチュウを右手で庇い、左手でヘルガーから攻撃を防ごうとした。
「クッ」
サトシは、目を閉じて身構えた。それから10秒経過しても痛みも何も感じない。サトシは、不思議に思い、恐る恐る目を開けた。そこには、氷漬けになったヘルガーの姿があった。
(氷漬け)
「例え、ほのおタイプでも、全身凍らされたら動けないだろ」
後ろを振り返ったサトシ。やはり、ヒョウリのラグラージによるもの(れいとうビーム)だった。
「・・・ガウ、ガァァァ」
「!」
氷漬けになった仲間の見て、怒りを顕にした。すぐさま、ラグラージへ走り出し、攻撃をしようとした。
「駄目だ。やめろ!」
サトシの声は、もう届かない。走りながらヘルガーは(かえんほうしゃ)を吐き出す。
「ハイドロポンプ」
ヒョウリの指示で、(ハイドロポンプ)を放ち、(かえんほうしゃ)を相殺。激しい水蒸気が発生し、その煙の中を1体のヘルガーは突き抜ける。今度は、近接戦に持ち込もうとしてきた。そのヘルガーの牙から、僅かに電気が放っていた。でんきタイプの物理わざ(かみなりのキバ)だ。恐らく、(ハイドロポンプ)を放つラグラージが、みずタイプだと分かり、そのわざを選択したのだろう。だが、ラグラージはみずとじめんの2つを併せ持つポケモン。じめんタイプのあるラグラージにでんきわざは、殆ど効かない。野生のヘルガーには、その知識や経験が無いのだろう。ヘルガーのリーダーは、そのまま突撃して(かみなりのキバ)で、ラグラージの左腕に噛みついた。噛みつくダメージを受けるが、ラグラージは平気な顔をしている。そして、肝心な牙に覆う電気は、ラグラージに通じていない。
「残念だ。・・・かわらわりだ」
ラグラージは、噛みつくヘルガー目掛けて右手で殴った。見事に、クリンヒットしたヘルガーは、宙を舞い、そのまま道路の左側の谷へずり落ちていった。
「あぁ」
その光景を見た、サトシ。彼の元に、ヒョウリとラグラージが近づいて来た。
「サトシ」
「・・・」
「悪いが失敗だ」
「そんな、まだ」
サトシは、ヒョウリに悲痛な顔で見ていると。奥で戦っていたヘルガーとリングマ達が、こちらに向かってきたのだ。
「!」
「ハッ」
それに気が付いた、ヒョウリとサトシ。
「争いを辞めて、こちらに向かって来るだと?・・・どうやら、余程俺達(にんげん)を恨んでいるようだな」
そう判断していると、向かってきたヘルガー達は、(かえんほうしゃ)で攻撃してきた。
「ハイドロポンプ!全て撃ち落とせ!」
(ハイドロポンプ)で(かえんほうしゃ)を全て相殺していく。
「続けて、れいとうビームだ」
ヘルガーやリングマ目掛けて放たれる(れいとうビーム)が次々と、彼らを凍らせていく。
「くそ、こんな」
サトシ、それを見て、悲しい顔をする。そうしていると、(れいとうビーム)を抜けた一体のリングマが近くに居たサトシに襲いかかった。
「グァァ」
「あ」
「ピカチュー」
ダメージを負っているピカチュウは、必死に動き、(でんこうせっか)でリングマを押し返した。
「ラグラージ、れいとうビーム」
そして、そのリングマも凍らせた。残るは、リングマ2体とヒメグマだけとなった。
「グァァァ」
先程、話していたリングマは、いきなり大声を上げて、サトシやヒョウリを睨んだ。そして、側にいたヒメグマと倒れているリングマに話しかけ、怪我を負ったリングマを抱えて、ヒメグマをと共に、丘の向こうへ逃げて行った。
「やった!逃げていくぞ」
「助かった」
「すげーぞ。あのトレーナー達」
バスの後ろで隠れていた乗客達が、その光景を見て、喜んでいた。誰も怪我もせずに良かった。そう喜んでいる空気が賑わっていた。ただ、その場の一人と一体のポケモン、サトシとピカチュウだけは凄く悲しい顔をしていた。
「大丈夫か」
後ろから、ヒョウリが地面に座るサトシに近づいて来た。
「ほら、キズぐすりだ。応急処置だが、ピカチュウに使え」
そう言って、サトシにスプレー系のポケモン用回復道具であるキズぐすりを差し出す。
「あ、ありがとう」
サトシは、目を合わさず、それを受け取る。手渡したヒョウリは、バスへと戻ろうとした際、サトシへ一言告げた。
「サトシ、・・・お前。いつか、後悔するぞ」
「・・・」
その言葉にサトシは、ただ黙っているしか無かった。


騒動の発生から1時間が過ぎた。連絡を受けて、ハルタス地方側から警察やバス等がやってきた。サトシや乗客たちは、迎えに来た救助隊によって、無事に保護された。 
 

 
後書き
今回は、サトシが新しい旅へ出た話でした。
(アハラ地方・シントー地方)で開かれる合同リーグ戦に参加する為、手前の地方ハルタス地方へ移動する時の話です。

そのうち、登場する人物やポケモンが増えたら、キャラまとめ一覧も掲載予定です。
また、オリジナル関連については、別途設定まとめも掲載を考えています。
話としては、この先最終話まで続ける予定ですので、ご興味がある方は、最後までお読み下さい。

掲載された作品で、文章・誤字脱字などに気付きましたら、後日改めて修正する可能性もあります。 
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