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李広杏子

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第一章

                李広杏子
 漢の将軍であり弓の達人で知られている李広はこの時匈奴との戦の為軍を率いて敦煌に来ていた、だがこの地は周りは砂漠でこの辺りの地理に詳しい者もいなかった。
 その為彼も彼の軍勢も道に迷ってしまってだった。
「将軍、もう水が」
「なくなったか」
「はい」
 士官の一人が面長で白く長い髭を顎と鼻の下から生やししている鋭い目を持つ鎧兜そしてマントに身を包み馬に乗った李広に話した。
「そうなりました」
「迷った中でそうなるとはな」
「困りましたな」
「全くだ、どうすればいい」
 歴戦の武人である李広もこれには困った、危ういと内心思った。
 彼も部下達もそう思ったが別の士官が彼方を指差して言った。
「あれは」
「?あれは布か」
 李広は指差された方を見た、するとだった。
 そこに虹色の二枚の布が浮かんでいた、しかも。
「いい香りだな」
「そうですね」
「実にいい香りです」
「甘い蜜の様な」
「かぐわしい香りです」
「あちらに行ってみるか」 
 李広は将兵達に話した。
「そうするか」
「はい、若しかすると神の助けかも知れません」
「それではですね」
「これよりですね」
「あちらに行きますね」
「そうしよう」
 こう言ってだった。
 李広は軍を率いて布の方に行った、するとだった。
 布は追っても追っても遠くにある、幾ら向かってもだ。
 それでだ、李広は言った。
「神の助けではなくあやかしが化かしているのか」
「そうかも知れないですね」
「これは」
「我々を化かしているのか」
「なら許せん、成敗してやる」
 李広は弓を構えてだった。
 そうして二枚の布のうちの一枚に矢を放った、漢きっての弓の名手と言われる李広の腕は確かでだった。
 布の一枚を射抜き布は砂の上に落ちた、李広はすぐに軍をその布のところにやると。
「杏子か?」
「杏子の林だな」
「そうだな」
「これは有り難い」
 李広もその杏子の林を見て言った。
「丁度喉が渇いていたのだ」
「はい、水がなくなり」
「どうしようかとなっていました」
「それならですね」
「ここはですね」
「皆これを食するのだ」
 杏子の実をというのだ。 
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