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鳥の嫁入り

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第三章

 その木の実には名前がなかった、それで村人達は言った。
「火晶は四子が助けた火鳥だ」
「その火晶がもたらしてくれたんだ」
「わし等は二人のお陰でこの木の実が食える」
「だったら二人のお陰だ」
「それなら二人の名前を付けないとな」
「そうじゃないと駄目だな」
「全くだな」
 こう話してだった。
 村人達はその木の実を火晶四子と名付けた、そしてだった。
 村はその実で知られる様になった、その後で。
 その話を聞いて村に来たある詩人が実を食べてこう言った。
「これは柿だな」
「そうなのですか」
「この実は柿というのですか」
「そうでしたか」
「そうだ、火の様な色でだ」
 橙色のその実を見て話した。
「宝石の様だな」
「この実は」
「そう思われますか」
「そうだ、だからだ」
 詩人は柿を食べつつさらに言った。
「この柿をもたらした二人の名に一字加えたい」
「そうされますか」
「ここは」
「そうして火晶柿子とな」
 その様にというのだ。
「呼びたい」
「これからは」
「そうされたいですか」
「これだけ美味いのだからな」
 詩人はこう言ってだった。
 この火晶柿子という名を伝えた、そうしてこの村の柿はこう呼ばれることになり。
 今もだった。
「へえ、これがか」
「そうだよ、火晶柿子だよ」
 西安の街で出店で果物を売っている老婆が上海から来た男に言っていた。
「この西安の名物のね」
「柿か」
「美味しいよ、歴史もあるしね」
「聞いてるよ、火鳥と四子からはじまったね」
「そうだよ、じゃあ買ってくね」
「そうさせてもらうよ」
 男は老婆に笑顔で応えた、そうしてだった。
 その柿火晶柿子を買って食べた、それは実に甘く美味かった。男はこれが火晶がもたらしてくれた味かと食べつつ喜び老婆にもう一個どうだいと言われて笑顔で頷いた。


鳥の嫁入り   完


                   2022・4・12 
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