| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

乱暴だった母猫が

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第三章

「それでもね」
「捨てられてずっと山の中にいてな」
「獣に追いかけられたりご飯も必死に自分で何とかして」
「子供まで生まれてだったからな」
「何かと大変で」
「警戒して攻撃的になるのも当然だな」
「けれど」
 それがというのだ。
「気長に時間をかけて」
「どうすればいいかを勉強したうえで接していけばな」
「きっとね」 
 必ずというのだ。
「少しずつでもね」
「心を開いてくれるな」
「ええ、だから」
 それでというのだ。
「この娘、ステラもね」
「少しずつでもな」
「私達に懐いてきているわね」
「だからこれからもな」
「優しくね」
「接していこうな」
 夫婦で話してだった。
 そのうえでステラに接していった、すると。
 保護して一年経った、だがその頃には。
 ステラは夫婦にすっかり懐いて客達にも普通に接する様になっていた、それでだった。
 ある客は夫そして子供達と一緒に自分のところに来て喉を鳴らすステラを見て笑顔で言った。
「いい娘ですね」
「そうなったんです」
「最初は怖かったんですよ」
「ですがそれがです」
「少しずつ心を開いてくれたんですね」
「そうなんですね、大変でしたか?」
 客は夫婦に尋ねた。
「やっぱり」
「いえ、それも猫ですから」
「そうしたものだとわかっているつもりですから」 
 夫婦は客ににこりと笑って答えた。
「大変とは思っていません」
「絶対に何時かはと思っていました」
「そう思うこと、わかっていることが大事ですね」
「そうなりますね」
「じゃあその娘も可愛がって下さい」
「そうさせてもらいます、じゃあステラちゃんこれからも宜しくね」
「ニャオン」
 ステラはこちらこそという風に親しく鳴いて応えた、そうしてだった。
 店で他の猫達と同じく仲間の猫達と客達そして店員である夫婦にも親しくして懐いた、もうそこにはかつての警戒し乱暴なものはなかった。何があるかというと。
 愛情があった、皆そのステラを見て笑顔になったのだった。


乱暴だった母猫が   完


                 2022・9・26 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧