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義実家の方が遥かに

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第二章

「そうさせてもらうわ」
「有り難いな、若しそうなった時は宜しくな」
 夫は笑顔で話した、そしてだった。
 数年後その義父母と同居することになったが光莉は二人に非常によくしてもらった、だが実家の方がだ。
「大変なことになってるのか」
「ええ、お父さん飲み過ぎで身体壊して」
 妻は夫に話した。
「お母さんもね、更年期障害で」
「そうなんだな」
「けれど二人共親戚中でも嫌われてるから」
 だからだというのだ。
「誰も助けないし」
「お前もか」
「全く考えてないから、向こうが言って来ても」
 親がというのだ。
「絶対にね」
「助けないんだな」
「そうするわ、だからあなたもね」
「ああ、お前がそう言ってるって返せばいいな」
「そうしてね」
 こう夫に言った、そしてだった。
 光莉は実際に実の親を助けなかった。二人はどんどん身体を壊し金もなくなり困窮の末に遂に亡くなったが。
 葬式に出ただけでだ、妻は一緒にいる夫に言った。
「帰りましょう」
「そうだな、しかしな」
「ええ、哀しくも何ともね」
「ないんだな」
「もうね、結局ね」
「親子でもか」
「酷い親だと」
 それならというのだ。
「こうしてね」
「情もないんだな」
「そういうことね、じゃあね」
「家に帰ってな」
「今日はすき焼きよね」
 夫に笑顔で話した。
「お義父さんお義母さんとね」
「仲良くな」
「皆で食べましょう」
「ああ、そうしような」
 夫は笑顔で応えた、そして家に帰ると実際に一家で楽しくすき焼きを食べた。翌年二人の間に男の子が生まれたが光莉は彼に一緒に暮らしている祖父母のことはよく話した。だがもう片方の祖父母のことは彼が成長するまで語らず語ることもいいものはなかった。


義実家の方が遥かに   完


                  2022・9・23 
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