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潰れるに決まってる店

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第二章

「噂通り」
「ああ、凄いな」
 小此木も言った。
「いらっしゃいませもないな」
「シカト状態ね」
「俺達が学生徒見てな」
「この態度ね」
「まあまずは座ろうぜ」
 小此木はわかっているので怒ることなく述べた。
「それで注文しような」
「それじゃあね」
 見れば静奈もわかっているので怒らない、そうしてだった。
 二人はラーメン、税抜きで千円のそれを注文してだった。
 食べた、そのうえで店長を見ると。
 昔の寿司屋の親父の様にふんぞり返っているだけだった、店員達がどんな態度でも何も言わない。それでだった。
 勘定を払う時も店員達のライドは最悪だった、挨拶もせず無言でしかも嫌々という感じで睨んでさえいた。
 店を出てだ。小此木は静奈に言った。
「味はいいな」
「そうね、かなりね」
「けれどな」
 小此木はそれでもと言った。
「あの店もうすぐ潰れるな」
「そうなるわね」
 静奈もそうなると答えた。
「絶対に」
「わかるだろ」
「ええ、あのお値段とね」
「味さえよければいいっていう店長でな」
「店員さん達があれだとね」
「潰れない筈がないさ」 
 小此木は言い切った。
「実際お客さんいなかっただろ」
「私達以外にね」
「味だけじゃないんだよ、お店は」
「お値段にね」
「接客もだよ」
「あのお店は味だけね」
「味は確かに大事でもな」
 それでもというのだ。
「それだけでいい筈がないからな」
「その通りね、じゃあね」
「ああ、あのお店はな」
「すぐに潰れるわね」
「そうならない筈がないさ」
 小此木は言い切った、そして大学でも店に行ったことと噂通りの店だったことを話した、そしてだった。
 彼等にもすぐに潰れると言い切った、すると。
 実際にその店は間もなく潰れた、小此木は静奈と共にテナント募集中となったその店の前まで来て言った。
「こうなってな」
「当然よね」
「ああ、あんな店じゃな」
 こう言うのだった、そこには何の感慨もなかった。
 そして次に出来たうどん屋は味はそこそこだったがマナーのいい店員達で繁盛した、小此木はそれを見てこうなるのは当然だと言ったのだった。


潰れるに決まってる店   完


                    2022・9・19 
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