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Fate/WizarDragonknight

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邪神降臨

 
前書き
六章はそもそも、今回の話の元ネタを原作で見たところから始まりました。
今まではサーヴァントのクラスから合うキャラを探していましたが、今回は逆に、このキャラを出したいから、ムーンキャンサーをあてはめました。原作のこのシーンを見ていただければ、ムーンキャンサーだって感じます。

そして、ムーンキャンサーの原作、特に今回のシーンは、特撮好きの方には是非見ていただきたいです 

 
 満天の夜空。
 雲海を突き破り、満月の夜空にそれは現れた。
 大きな翼を広げた、天女。見る者の息を奪うようなそれは、空を泳いで移動する。
 ゆっくりと、音もなく。あたかも水の中を泳ぐそれは、雲を切って進んでいく。
 サーヴァント ムーンキャンサー。
 新条アカネが召喚した、第二のサーヴァント。
 それは、マスターである新条アカネを求めて、見滝原の上空を泳いでいく。
 見滝原と呼ばれる街を見下ろすムーンキャンサー。その特異なる出自を持った身体能力は、ムーンキャンサーに最強の五感を与えてくる。

「待って!」

 その後を追いかける、三つの光。
 ムーンキャンサーは、静かにそれに振り向いた。
 紅、桃、黄の光。
 それは自らと同じ、聖杯戦争の参加者。クラスも名前も知る由のない参加者。
 祭祀礼装、満開、絶唱。
 それぞれが用いる最大戦力で、三人の参加者はムーンキャンサーに相対しながら宙に浮いていた。

「あなたは……一体何?」
「これは、参加者なの?」
「ムーンキャンサー……っ!」

 三者三様の反応を見せる参加者達。
 唯一、ムーンキャンサーを知るのは、花びらを舞わせ、巨大な腕の装備を持つサーヴァント、セイヴァーである勇者。
 そして、残りの二体の敵を睨み、その正体も理解した。
 セイヴァーのマスター。その正体は刀使であると、聖杯によりインプットされた知識が語る。
 もう一人、白と黄の姿を持つランサーのサーヴァント。奏者と呼ばれる、自らの出自にも通じる聖遺物と呼ばれるものの力。
 勇者へ、二人の参加者は目線を向けている。

「友奈ちゃん、アイツのこと何か知ってるの?」
「……昨日、戦ったんだよ。トレギアのマスターを取り込んでいたけど、助けて今はわたしたちの家にいるはずなんだけど……」
「トレギアのマスター!?」

 えその言葉に、強く振り向く刀使。
 だが、それ以上、彼女たちの会話を許す道理はない。
 ムーンキャンサーの触手より放たれた超音波メスが、彼女たちの会話を斬り落とす。

「とにかく、まずはアイツを止めよう……!」

 刀使は白い衣装を振り払う。
 巫女服を思わせる形をしているのに、どこにその力があるのだろうか。超音波メスは裾に阻まれ、霧散していく。

「よし……! 祭祀礼装なら、アイツの攻撃も防げる……!」

 刀使はさらに、ムーンキャンサーへ接近してくる。三人の中で特にスピードに秀でた刀使は、そのままその赤い刃を振るう。

「迅位斬!」

 無数の触手を掻い潜り、ムーンキャンサーの身体へ赤い斬撃を放った刀使。彼女のその斬撃は、ムーンキャンサーの動きを鈍らせたが、それはほんの少しだけ。
 ムーンキャンサーはすぐさま、胸元にいる小さな刀使を見下ろす。無数の触手が、一斉に超音波メスを放った。
 だが。

「させない!」

 それを防ぐのは、勇者。
 巨大な腕を盾にして、超音波メスを防ぐ勇者。
 またしても彼女に阻まれたムーンキャンサーの攻撃。即座に、夜空は桜の花びらに支配された。

「満開! 勇者パアアアアンチ!」

 無数の花びらの中から、勇者が巨腕の拳を放つ。
 それはムーンキャンサーの顔面に命中。大きくその顔を揺らし、雲海に落ちていく。
 だが、それはまだムーンキャンサーへのダメージにはなっていない。そのまま雲海へ方向を定め、一気に急降下していく。

「あっ!」
「待って!」

 三人の参加者は、ムーンキャンサーを追って雲海を飛び込んできた。
 雲海の下となれば、そこにあるのは当然見滝原の街並み。
 その直上を滑空するムーンキャンサー。自らを驚愕と恐怖の表情とともに見上げる小さい人間たちを見下ろしながら、ムーンキャンサーは摩天楼の中を突き進んでいく。
 ムーンキャンサー速度はマッハ9を誇る。その動きを中心にソニックブームが発生、見滝原のビル群のガラスを破壊し、町に破片の雨を降らせていく。

「いけない!」
「嘘でしょッ!」
「危ない!」

 刀使、奏者、勇者が口々に叫ぶ。
 彼女たちは落ちていく窓ガラスの下に先に入り、その身を挺してガラスの雨から人々を庇っている。

「ねえ! どうしてこんなことするの!? 話し合えば、私達だって協力できるかもしれない! お願いだから、話してよ!」

 ガラスの雨を一身に受けながら、奏者が訴える。
 だが、ムーンキャンサーは耳を貸さない。再び雲海を抜け、上空へ舞い戻る。

「逃がさない!」

 そのすぐ後を追随する刀使。少し遅れて、奏者と勇者もそれに続く。
 ムーンキャンサーは身を翻して刀使の斬撃を避け、急直下。勇者の装備に体当たりでダメージを与え、奏者に真っすぐ向かっていく。
 奏者は、両腕のシリンダーを解放させる。
 彼女の後方へ長く伸びていくシリンダー。それは、引き金のように、ムーンキャンサーとの接触と同時に伸縮された。

「我流・特大撃槍!」

 奏者が繰り出した、最大威力の拳。かつては月の欠片を破壊することにさえも貢献したその力は、ムーンキャンサーを弾き返し、その進撃を食い止めた。

「ねえ! あなた、参加者なの? 目的があるなら、協力するから攻撃を止めてッ!」
「響ちゃん! ダメだよ!」

 ムーンキャンサーは、奏者へ反撃として、その触手より火球を吐き出した。
 高温のあまりプラズマと化した火球は、奏者の前に割り込んだ勇者の拳によって打ち砕かれる。

「話が通じる相手じゃない! ここは、戦うしかないよ!」

 さらに、満開によって装備している剛腕の攻撃。ムーンキャンサーの巨体であっても、無視できない大きさの拳。それは、何度もムーンキャンサーとぶつかり合い、やがて触手によって薙ぎ払われた。

「友奈ちゃん!」

 飛ばされていく勇者を、刀使が受け止める。
 二人を一網打尽にしようとムーンキャンサーは触手を放つが、その前に刀使が再びその剣を赤く染め上げる。

「太阿之剣!」

 赤い光が、オーラとなってその剣の刀身を伸ばしていく。それは、ムーンキャンサーの大きさにも匹敵するほどのものとなり、ムーンキャンサーの触手を切り裂いていく。
 即座に触手は再生され、ムーンキャンサーはさらに刀使へ攻撃を加えていく。
 体勢を立て直していない刀使は、そのまま触手の打撃を受け、弾かれる。

「可奈美ちゃん! やるしかない……ッ!」

 右腕を突き上げる奏者。
 彼女を包む唄が右腕に集い、その形を変貌させていく。
 拳を、より鋭く、より長い槍へ。

「我流・超級撃槍烈破ッ!」

 まさにランサー。彼女のクラスの名前に違わぬ勢いで、それはムーンキャンサーが防御として繰り出した触手の壁を貫く。
 ムーンキャンサーは痛みから声を上げるが、致命的とは程遠い。
 一度天に翻り、再び奏者へ牙を向ける。黄色の超音波メスを集中的に放ったが、またしても勇者がその巨大な腕で防御する。
 超音波メスが一切通じない勇者。それを確認したムーンキャンサーは、優先的に倒す対象を勇者に切り替えた。

「友奈ちゃん! 危ない!」

 勇者を守ろうとする刀使。振り抜くその刀に、虹色の光が集っていく。

「無双神名斬!」

 彼女の剣より放たれる、虹色の斬撃。
 無数の斬撃を内包するそれ。一目見た途端、ムーンキャンサーはその脅威を認識し、上空へ回避。
 刀使の頭上を横切り、一気に勇者に肉薄する。

「っ!」

 勇者は歯を食いしばりながらも、拳でムーンキャンサーと応戦してくる。
 大きな質量同士がぶつかり合い、夜空に打撃音が響き渡る。 だんだんとムーンキャンサーが優勢になっていく。

「「友奈ちゃん!」」

 勇者の救援に駆け付ける刀使と奏者。
 彼女たちの気配を察したムーンキャンサーは、触手で勇者を掴まえる。そのまま二人に勇者を投げつけると、その巨大な腕に刀使と奏者がぶつかり、その動きが止まる。
 その隙に、ムーンキャンサーは触手の先端を開いた。
 生成されていく火球。それは、太陽の表面温度さえも突破し、プラズマとなる。
 放たれる、二つのプラズマ火球。
 刀使が再び虹色の斬撃を放ち、火球の威力を減らすが、それでも彼女たちを焼き尽くすことができる威力であることに変わりはない。
 三人の表情が火球に照らされて絶望が露わになった途端。
 夜の空を、より暗い闇の柱が立ちはだかった。
 突然の色の変化に、ムーンキャンサーもまた驚きを示す。
 闇は、やがてプラズマ火球を吸収していく。
 そして、闇が晴れた時。その場に、それがいた。

「キャスター……さん!」

 それは、彼女たちのうち誰の声だったのか。
 夜よりも尚深い闇を体に纏わせた参加者、キャスターの姿がそこにはあった。
 これまで戦ってきた参加者の中で、まだ成長前だったとはいえ唯一ムーンキャンサーが敗戦を喫した相手。
 彼女はムーンキャンサーを油断なく見つめながら、背後の三人の参加者たちへ告げた。

「お前たちは下がれ」

 キャスターの登場により、ムーンキャンサーに緊張が走る。
 漆黒の翼を広げる甲冑の彼女は、一度縮めた腕を広げる。すると、漆黒の闇が彼女の両手から放たれていく。
 ムーンキャンサーは大きく触手の膜を広げ、その起動能力でキャスターの攻撃を回避。そのまま、キャスターへすべての触手を向けた。
 一方キャスターも遅れてはいない。最初の触手を後退して回避し、その傍らに浮かぶ本がページを開く。
 ページに現れる赤い魔法陣。どことなく恐竜の顔を模した模様のそれが顕現すると同時に、キャスターの正面にも同じく赤い魔法陣が出現した。

「ジェノサイドブレイザー」

 魔法陣が恐竜の頭部の形へと歪んでいく。
 それは、その口から巨大な炎を放ち、夜の雲海を赤く染め上げる。ムーンキャンサーもプラズマ火球を数発放ち、彼女の攻撃と相殺させた。
 燃え広がっていく炎。
 刀使、奏者、勇者。そしてキャスター。敵対している参加者たちの姿が、炎の影に見えなくなっていく。
 やがて空一面を覆っていく炎が、視界そのものを埋め尽くすころ。
 ムーンキャンサーは、目的を優先させることにした。
 そのまま、雲海に下降していくムーンキャンサー。その目的地は、この聖杯戦争の舞台である見滝原の中心、見滝原中央駅。
 人々が集まる夜の中心街に、巨大なサーヴァントは降臨したのだ。



___その日、見滝原上空に現れた謎の巨大生物。それは、満月の光を受けながら、オーロラのような光を地上に齎した。その大量に撮影された映像、写真。その色合いの美しさから、虹の女神と同じ名を与えられた。すなわち、その正式名称は___



___邪神イリス___ 
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