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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第10章 アルバレス帝国編
  第48話 変異個体

 
前書き
いつもご覧いただきましてありがとうございます。
さて、この度私事ですが、『新型コロナウイルス』に罹ってしまいました…。
ついに来たか…と言った感じです。
症状としましては軽症ではありますが、仕事を休み且つ日常生活を送るのも億劫なほどですので、執筆も難しいと考えております。
幸い、本日分を投稿してもまだ7話分は残っておりますので、今週中の投稿には支障はありませんが、それ以降は…。
上記内容を鑑みまして、9月24日(土)分の投稿を最後に(この時点でのストックは3話)、暫く投稿のお休みを頂ければと思います。
世間一般的な治癒時間を考えますと、1週間後の10月2日(日)には一週間間隔での投稿が再開できるかと思われます。
…まあ、フェアリーテイルの原作的にはもはや終盤で、オリジナルの展開を含めてもあと10数話もないのですが、どうぞご理解いただければと思います。 

 
東西南北それぞれから進軍してくる敵に対して、フェアリーテイルの魔導士はじめ、多くの魔導士が迎え撃つこととなった。
北側から進軍してくるアルバレス軍に対しては、ミネルバ、スティング、ローグ、シモン、オルガを始めとした剣吠の虎とイヴ、ヒビキ、レン、ジェニーたち青い天馬が迎撃していた。加えて、妖精の尻尾からもミラジェーン、リサーナ、エルフマン、レヴィ、ガジル、リリーソラノ、ユキノが向かう。
南側にはトビー、ユウカ、シェリー、シェリアを始めとした蛇姫の鱗とアラーニャ、ミリアーナ、ベス、フレアたち人魚の踵が迎撃。加えて妖精の尻尾からはエルザ、カグラ、ジェラール、ナツ、ハッピー、グレイ、リオン、ジュビア、ウェンディ、シャルル、ラクサスが向かう。
西側にはウル、ウルティアの2名のみでの行動となった。理由は、大きく分けて2つ。1つは西側にはすでにアレンがいること。そしてもう一つは西側の進軍が最も遅いこと。恐らく、西側の軍勢が、ゼレフ率いる本体であると予測したメイビスは、北南東それぞれを制圧したのち、全戦力を西側に向けようとしていた。西側に向かうウルとウルティアの使命は2つ。1つはバルファルクと戦闘を行うアレンに対し、可能なら戦闘支援、難しければ戦闘終了後の援助であった。そしてもう一つは、首都クロッカスを第1防衛ラインとし、もし皆が終結を果たす前にアルバレスの軍勢がクロッカスに到達した場合、アレンと共に可能な限り食い止めるというモノであった。
この2つの使命を達するにはいささか人数不足な気もするが、メイビスはアレンがバルファルクを討ち取ることを前提に考えていたため、それ故の人員配置である。
そして、東側は、すでに隣接するボスコの魔導士ギルドの全てが陥落したことに加え、敵との物理的な距離も近く、現在一番の脅威となっている。そのため、メイビスはウォーレンに指示を出し、アレンを除きフィオーレにおける最高戦力を向けた。聖十5位及び蛇姫の鱗のジュラ、4位のウォーロッド、3位のウルフヘイム、2位及び新生評議員議長のハイベリオン、が向かっていた。
残るフェアリーテイルメンバー、ヒノエ、ミノト、フリード、ビックスロー、エバーグリーン、アルザック、ビスカはギルドの防衛、そしてルーシィとカナは捕虜としているブランディッシュの見張りを任される。

さて、アルバレスの第一陣を凌いだフェアリーテイルのメンバーたちであったが、先の通り四方を囲まれていることに加え、首都クロッカスに出現した天彗龍が未だ健在という状況から、楽観できない状況が続いていた。
そんな折、各方面で動きがみられる。
メイビスより南方へと向かうよう指示のあったナツとハッピーであったが、2人はそれを無視する形で首都クロッカスより西方、ゼレフ率いる本体へと攻撃を仕掛ける。
ゼレフは、ナツのが自分を殺せる最後のチャンスと捉え、ナツとの一騎打ちを受け入れる。そして、最後と言わんばかりにゼレフはナツとの関係やイグニールとの関係。自身の目的、更にはENDの悪魔がナツ本人であることを告げる。加えて、ENDを作ったゼレフを殺せば、ENDであるナツも死ぬという話をする。その話に、ナツとハッピーは信じられない様子で酷く驚いていた。だが、ナツは「例えそうだとしてもお前を倒す」とゼレフに言い放ち、イグニールが最後に自身に残してくれた力を解放し、ゼレフを追い詰める。あと一歩でゼレフを仕留められるところまで行ったものの、ナツを失いたくないというハッピーに制止され、戦闘を終了させる。
ゼレフは、ナツが自信を殺せる最後の機会を逃したとして、本格的な進行を開始することになる。

フィオーレ東方では、聖十のジュラ、ウォーロッド、ウルフヘイム、ハイベリオンの4人が強大な敵と相対していた。それはスプリガン12でも最強と言われる魔導王オーガスト、そして暗殺魔法の天才ジェイコブに加え、元聖十大魔道士序列1位ゴット・セレナであった。ゴット・セレナはその身に8個の竜のラクリマを埋め込んでおり、文字通り8つの滅竜魔法を扱える。故にその力は強大で、イシュガルの四天王と言われる3人とジュラの4人で相手取っても全く歯が立たなかった。
先の4人は、地面に伏して身動き一つとれないほどのダメージを追っており、ゴットセレナたちがフェアリーテイルに進軍するのを阻止できなかった。
だが、それは驚くべきものの乱入により、一時止まることとなる。
なんと、黒闇竜アクノロギアが、人の姿で先の3人に近づいてきたのだ。その存在がアクノロギアであることを察知したゴットセレナは戦いを挑もうとするが、たったの一撃、それも片手で命を刈られることとなる。ゴットセレナが死亡したこと、そしてアクノロギアの圧倒的な力を目にし、その場にいるもの全員が驚愕の表情を浮かべた。

フィオーレ南方では、アルバレスによって制圧されているハルジオン港を解放すべく、蛇姫の鱗のトビー、ユウカ、シェリー、シェリアたち、人魚の踵アラーニャ、ミリアーナ、ベス、フレアたちが戦闘を行っていた。少し遅れて、妖精の尻尾のエルザ、カグラ、ジェラール、グレイ、リオン、ジュビア、ウェンディ、シャルル、ラクサスも参戦。スプリガン12であるワール、そしてディマリア含め、全力で戦っていた。ワール、ディマリア共に強大な魔力と魔法を持ち合わせており、楽な戦いではなかった。しかし、ワールに対してはラクサスが魔法の覚醒による赤い稲妻を、ディマリアの時を止めるという力に対しては、リオンの魔法の覚醒である『魔法そのものを凍結させる』という力を発揮し、何とか勝利を収める。
それにより、ハルジオンの街並びに港にたどり着いたエルザ、カグラ、ジェラールの3人は
スプリガン12が一人、ナインハルトと相対する。今すぐにでも飛び掛かってきそうな3人に、ナインハルトは制止するように声を発する。
「そう殺気立たなくても大丈夫だよ…君たちの相手は僕じゃないから…」
「…どういう意味だ…ッ!」
ナインハルトの言葉に、怪訝な様子を見せたエルザであったが、前方の甲板の扉から一人の男が出てきたことで、会話を止める。
「へえ…こいつらが、この世界のアレンの仲間なのか…」
「…貴様は一体…ッ!」
「ジェラールと瓜二つ…兄弟か?…それにこの男、アレンを知っているのか…」
「いや、俺に兄弟はいない。全くの別人だ…それに、この世界…だと?」
その男の容姿は、顔に刺青がないだけで顔のパーツも髪も、ジェラールと瓜二つであった。男の容姿と発言に、エルザ、カグラとジェラールは驚きと怪訝を組み合わせたような表情を見せる。
「僕の魔法さ…僕の魔法は他人の思いを具現化する…その男は…」
ナインハルトがそう言葉を続けるが、それを遮るようにして男が口を開く。
「俺はコウタ…コウタ・ホーク…アレンの親友だ…」
その言葉に、エルザ達はこれ以上にないと言った様子で驚きを見せる。聞き覚えがあった…。いや、忘れるはずもない…ヒノエとミノトから語られた、アレンの親友の名だったからだ。だが、同時に疑問が生まれる。
「…アレンの友であるコウタは…死んだはずだ…」
「言ったろう?他人の思いを具現化するって…僕の魔法でアレンの心の中の記憶を具現化したのさ…アレンの中で、もっとも強い人物をね…」
エルザの問いに、ナインハルトは微笑しながら答える。その答えに、またも驚きを見せたのアは言うまでもない。3人は瞳孔を開きながらコウタを見つめる。
「そうか…アレンから聞いたのか?…俺がドラゴンに殺されたってことを…」
その発言に、3人は目を細めて怪訝な表情を浮かべる。間違いない…アレンの親友がドラゴンに殺されたということを知っているのは、フェアリーテイルのメンバーだけだ…それを知っているということは…。
「本物なのか…本当に、アレンの友であるコウタなのか…」
「ああ、本物だよ…幻覚でも何でもない…1年前、アレンが直接アルバレスに足を運んだことがあってね…その時に記憶を覗かせてもらったんだ…いやー、驚いたよ。まさかこんな強者がいたとはね…。だが、そのせいで、彼を具現化するときは彼だけしか具現化できないんだけどね…」
ナインハルトの言葉に、3人は冷や汗を流す。目の前の男は、アレンと共に歩んできた男…。そしてこの得も言われぬ圧倒的な力…。まるでアレンやウルキオラと対峙しているかのようなプレッシャーであった。
「あなたのことは…ヒノエとミノトから聞いた…」
カグラは小さく呟くようにして、先のコウタの質問に答える。その答えに、コウタは目を見開いて見せる。
「ヒノエとミノトもいるのか!おー、そうか…会いてえもんだな…」
コウタはその名を聞き、どこか嬉しそうに答える。だが、そんな雰囲気もナインハルトの声によって遮られる。
「積もる話もあるみたいだけど…今の君は僕のものだ…こいつらを始末してもらうよ…」
ナインハルトは、不敵な笑みを浮かべてコウタに声を掛ける。
「ああ…まあ、残念ながらそうするしかねえみてえだな…」
コウタはそう言うと、一本の太刀を出現させ、手にする。その太刀を見て、エルザ達は驚いたように警戒する。アレンが換装せしめる武具と、同じ力を畏怖を覚えたからだ。本物だ…。3人は改めてそう思う。
「さて、アレンすらも凌ぐ君の力…とくと…ガッ!!」
ナインハルトは、高みの見物とばかりに艦隊の帆を支える木の上に座り込んでいたが、先ほどコウタが持っていた太刀が自身の腹に刺さったことで呻き声を上げる。
コウタが目にも止まらぬ速さで、ナインハルトに向けて太刀を投げたのだ。その様子を見て、エルザ達も驚愕の表情を浮かべる。
「…まあ、始末するのはお前だがな…」
「な、なぜ…術者である僕に攻撃できるはずが…」
ナインハルトは、痛みで体勢を崩し、コウタ太刀のいる甲板へと落下する。
「…まさかとは思うが、お前如きヒヨッコが本気で支配できると思っていたのか?」
「くっ…なぜだ…僕の魔法で生み出した存在であるのにもかかわらず…」
コウタの発言に、ナインハルトはこれまでにないほどの動揺を見せる。
「支配…されていないのか…」
「さすがは、アレンの友だな…」
「なんという…」
エルザ、カグラ、ジェラールも心底驚いている様子であった。コウタはそんな驚きに目も向けず、ゆっくりとナインハルトの元へと歩み始める。
「お前らに一ついいことを教えてやる…。俺たちハンターには、ランクというモノがある。下から下位、上位、そしてG級…またの名をマスターランクともいうが、俺やアレンはその最高位であるG級ハンターだ…」
ナインハルトは、痛みに耐えながらコウタの話を静かに聞き及んでいるい。先ほどから魔法を解除しようとしているが、完全に制御下から外れたのか、コウタの姿が消えることはない。
エルザ達も耳を澄ませるようにしてコウタの話を聞いている。ハンターというモノにランクがあったことは初耳であったが、アレンの力を近くで見てきたエルザ達にとって、アレンが最高位のハンターであるということに驚きはなかった。
「そして、そのランクにはそれぞれ序列が設けられている。単純な強さもそうだが、狩ってきた竜やモンスターの数、そして功績によってそれらは決められるんだが…アレンは当時、18歳という若さでG級ハンター序列3位の力を誇っていた…」
コウタの言葉に、ナインハルトだけでなく、エルザ達も驚愕の表情を見せる。
「バ、バカな…あのアレンが…3番…」
「それってつまり…」
「アレンより強いハンターがあと2人も…」
エルザ、カグラ、ジェラールはコウタの発言を信じられないと言った様子を見せていた。
「…そして、俺も同じくG級ハンター…アレンに加え、カリンって女と共に『妖精の翼』という名でチームを組んでいた…もちろん、カリンって女もG級ハンターだ…」
コウタの発言に、エルザ達はまたも驚愕の表情を浮かべる。
「カリン…って…」
「アレンの恋人の…」
「彼女もアレンと同じG級ハンターだったのか…」
エルザ、カグラ、ジェラールの言葉に、今度はコウタが驚きを見せる。
「おお、カリンについても聞いてたのか…って、俺のことを話してんだ、カリンのことも話してて当然か…」
コウタはヒノエとミノトのことを想いだしながら、少し呆れた様子を見せる。
「でだ…俺は序列4位…カリンは序列2位だ…アレンの中で、もっとも強い存在を具現化した…って言ってたが、俺たち3人の中で一番強いのはカリンだ…まあ、アレンの記憶から具現化したって話だから、アレンにとってカリンは強い人というより愛する人って感情の方が強かったのかな…」
エルザ達はまたも言葉を失ってしまう。アレンの愛する女は、恋人はアレンよりも上位のハンターだったのだ…。アレンの恋人だという話を聞いた当時、「アレンが救った女の一人」と考えていたエルザ達にとっては衝撃であったからだ。
「くっ…だ、だが、僕を殺せば、いや僕が意識を失うだけでも…君も消滅するんだぞっ!いくら支配を逃れているとはいえ、魔法そのものは僕のモノだ…」
ナインハルトの言葉に、エルザ達は大きく目を見開く。
「そんなこと、わかってるよ…俺はすでに死人だ…アレンやヒノエ、ミノトに会いたいって気持ちはあるが…3人の辛い記憶を呼び起こしかねないからな…」
コウタは少し悲しそうな様子で口を開いた。そして、ナインハルトの腹に刺さる太刀の柄を掴み、一気に引き抜く。強烈な痛みと出血で、ナインハルトはゆっくりと意識を手放していく。
「心配するな…殺しはしない…」
コウタの身体には、バチっと静電気のようなものが発生し、次第にその身体を消滅させるようにして薄めていく。
そして、エルザ達にゆっくりと向き直る。
「…アレンのこと…頼むぜ…」
エルザ達は消滅していくコウタへと手を伸ばし、歩み寄ったが、コウタが言葉を発し終えたと同時に消滅したため、その身を捉えることはできなかった。

首都クロッカスの上空では、アレンとバルファルクによる戦いが繰り広げられていた。
時間は少し遡り、戦いの前、ヒスイを安全なところへ移動させるため、影分身を用いて分身を作り出す。本来であれば影分身は、分身した数と同じだけ魔力を分割してしまうという欠点があるが、アレンアはこの1年の間に、虚化の制御と合わせて、影分身の精度を高めていた。そのかいもあっり、影分身体に分割する魔力の量を調節できるようになった。つまり、本来1体の影分身を発動させた場合、半分ずつに分けられる魔力を、本体9割、分身1割などに任意で調整できるようになったということだ。
先の割合で、ヒスイを1割の魔力を分けた影分身体に預け、玉座の間におろす。中々アレンから離れないヒスイを、半ば強制的に引きはがすようにして、アレンは一つの魔法を展開すした。それは縛道の94番である、『円弧絶界(えんこぜっかい)』という強大な丸い防壁であった。首都クロッカスを綺麗に包むようにして強大な球体が現れる。もちろん、その球体の結界内にバルファルクは存在しない。
バルファルクは突然現れた圧倒的なまでの結界に驚いた様子を見せていたが、目の前にいる本体であるアレンが一本の太刀と防具一式を換装したことで平常を取り戻すに至る。
そこから両者とも激しい戦闘を繰り広げることになるが、すでに戦闘開始から相当な時間が経っているということもあり、アレンもバルファルクも共に疲れが見え始めている。しかし、肉体的な疲れより、アレンには精神的な疲れが見て取れた
「まさか…1年半前の戦いが、全力ではなかったとはな…」
「ふっ!全力だと思っていたのか?…お前が元の世界で戦った同種と一緒にするな…」
アレンの悪態をつく様な言葉に、バルファルクはニヤッと笑って見せる。
「ああ、そういえば…ゼレフから知恵と力を貰ったんだっけか?確かにそれなら…」
「愚かなッ!!!」
アレンが思い出したかのように呟いたその言葉に、バルファルクは激高して声を荒げる。続けざまに咆哮を放ったこともあり、アレンは大きく目を見開く。一頻り方向を終えたバルファルクは、ゆっくりとアレンへと向き直る。
「我は()しき赫耀(かくよう)のバルファルク…変異個体だ…。通常個体のバルファルクと一緒にされては困るな…」
「…なるほど…異様な深紅色をしているのはそのためか…」
「…はっきり言おう…単純な戦闘能力なら、我はアクノロギアと同等だ…」
バルファルクの発言に、アレンは小さく目を細める。
「つまり、アクノロギアとの差は…魔法が効かないという点だけということか…」
「そうだな…貴様ら人間からすれば、魔法が効かぬアクノロギアの方が脅威と言える…だが、それでも貴様ら人間にとって大差はない!!」
バルファルクはそう言い放つと、赤き龍気を纏った槍翼をアレンへと突き刺すように振りかぶる。それを見たアレンは、太刀を構え、迎え撃つ。
衝撃。
且つて、ドラゴンレイドによって齎された両者の衝突よりも激しい閃光と轟音がクロッカスの空を駆け巡る。これは推測ではあるが、もしアレンが結界を張っていなければ、首都クロッカスの街並みは完膚なきまでに吹き飛ばされ、破壊されていただろう。それほどの衝撃であった。

分身体であるアレンは、そんな様子を見守りながら結界の安定を図る。まずは発動が優先であると判断し、詠唱を破棄して発動した。そのため、結界が些少の揺らぎを持っていたため、後術詠唱を用いて結界を確固たるものとしていたのだ。それを終えた時点で、分身体アレンは分けられた魔力の半分、つまりは5%を消費していた。
「アレン様…」
ヒスイは、魔力の放出と発動を終えたアレンの右手を掴み、その身体を手繰り寄せる。結界を発動、そしてその後に何らかの作業をしている時は、ぐっと我慢していたが、それが終わったことを理解すると、一目散にアレンへと抱き着いたのだ。
だが、そんなヒスイの幸せな時間はすぐに終わりを迎えることになる。アレンはゆっくりとヒスイを引きはがすと、優しく語り掛けた。
「申し訳ありません…ヒスイ王女…相手が相手だけに、分身を解かせていただきます」
「えっ…お、お待ちください…」
分身体とは言え、アレンが遠ざかってしまう…。先ほどのバルファルクの恐怖と、アレンにくっついていたいという気持ちが、ヒスイの中で渦巻き、アレンを制止する言葉を放ってしまった。独りよがりな欲求であることはわかっていた。だが、それでもヒスイはアレンに傍にいて欲しいという気持ちを隠さなかった。アレンは、そんなヒスイの気持ちを汲んでか知らずか、ヒスイの頭に優しく手をのせ、ゆっくりと撫でる。
「あっ///」
ヒスイはその優しい感触を確かめながら、顔全体を真っ赤に染上げる。
「大丈夫です…この結界がヒスイ王女を、クロッカスを守ります…。そして、私が必ずや、バルファルクを仕留めて見せましょう…」
分身体のアレンはそう言って、真っ白い煙に包まれたかと思うと、一瞬で掻き消える。分身を解いたことを察したヒスイは、些少の不安を胸に抱きながらも、本体のアレンへと視線を向ける。結界に加え、先ほどよりも高い位置で佇んでいるためか、その姿ははっきりとは見えない。
ヒスイは、祈るようにして両の指を絡め、胸の前で組んだ。
「…どうか…ご武運を…」

ウルとウルティアは、首都クロッカスへとあともう少しと言った地点で、とんでもない波動を感じ取る。それは、かつてアレンとバルファルクが衝突を果たした時とは比べ物にならないほどの力の波動であった。
「う、うそでしょ…」
「これ…本当にバルファルクなの…」
ウルとウルティアは、酷く狼狽した様子を見せる。バルファルクの力は理解している。一介の魔導士では全く歯が立たないことも、アレンですら油断ならない相手であることも。だが、それでも、ドラゴンレイドの戦いが終わったのち、旧評議院が掲げた『三天黒龍には劣る』という結論と、自分たちが実際に見て感じた者から、バルファルクの力をそう判断していた。だが、この力の波動は、その判断を悉く崩してくる。そう、まるで…。
「アクノロギアと…変わらないじゃない…」
「まさか…本気ではなかった…?」
ウルとウルティアは酷く狼狽した様子を見せていたが、互いに顔を見合わせると、一目散に首都クロッカスに向けて歩みを再開した。

フィオーレ北方、ここではミネルバ、スティング、ローグ、シモン、オルガを始めとした剣吠の虎とイヴ、ヒビキ、レン、ジェニーたち青い天馬に加えて、妖精の尻尾からもミラジェーン、リサーナ、エルフマン、レヴィ、ガジル、リリーソラノ、ユキノがアルバレスの軍勢と戦っていた。
この場には、スプリガン12のブラッドマンとラーケイド、それに緋色の絶望と言われるアイリーンが控えていた。
ミネルバたち他ギルドの勢力が帝国軍勢を蹴散らす中、小手調べとばかりにブラッドマンが相対する。ブラッドマンの身体から発せられる魔障粒子に驚きつつも、レヴィが立体文字によって生み出したマスクを皆に付与したことで事なきを得る。その後は卑怯な手ではあるが、圧倒的な物量でブラッドマンを責め立てる形で勝利を収める。
ブラッドマンが下されたことを知ったラーケイドであったが、自身は北方の丘から動くことなく、敵が来たら迎え撃つという姿勢を取っていた。
一方、アイリーンは、ブラッドマンやラーケイドとは違い、とある目的をもって歩みを進めていた。
アイリーンはそうして暫くたった一人で歩みを進めていると、とある男と遭遇する。その男は圧倒的な魔力を誇り、人の形を取ってはいるが、その正体は竜である。
「お初にお目にかかります…」
「うぬは…」
人の姿であるアクノロギアは、自身の正体を知りながら近づいてくる目の前の女に些少の怪訝を抱く。
「申し訳ありませんが、陛下の邪魔立てはさせませぬ」
「陛下…そうか、うぬは黒魔導士の駒か?」
アイリーンの言葉に、どこか納得した様子を見せるアクノロギアであったが、小さく笑うと、アイリーンに向け絶望的な魔力を浴びせる。
「我と戦うつもりか?」
「ええ…」
アクノロギアの魔力をその身に受けても、アイリーンは眉1つ動かさない。
「少しは楽しませてれるのかね?」
「…十分に」
アイリーンはそう言い放つと同時に、辺り一帯に魔力を拡散させる。そしてそれは、地面を、空を駆け巡る。
「ッ!これは付加術…高位付加術か!」
アイリーンは、アクノロギアの不敵な笑みに対し、小さく微笑する。不敵な笑みを浮かべたまま、アクノロギアはアイリーンの足元へと魔力を展開させる。アイリーンの足元には金色に輝く魔力が吹き荒れる。しかし、アイリーンは跳躍をもってそれを華麗にかわすと、空中を舞い、綺麗に着地する。
「ふぅ…」
「黒魔導士仕込みの魔力にしては中々だ…面白い…」
アクノロギアはアイリーンの魔力を評価し、軽く称賛を述べる。
「それはそれは…どうもありがとう」
アクノロギアの誉め言葉に、一瞬呆気にとられたアイリーンであったが、素直に感謝を述べる。
「そなたは噂以上ですわ…陛下が恐れるのも無理はないわね…しかし、妖精の心臓を手に入れた陛下ならどうかしらね…」
「…黒魔導士が我を…三天黒龍を超える存在になると?」
「可能性はありますわ…アレンやウルキオラ様と同じように…」
アイリーンは特に抑揚をつけずにアクノロギアに答える。
「それまで人間共に手を出すなという話なら…聞く気はない!」
「あら…そなたも元は人間と聞いてますわ…おかしな言い方をするわね…」
アイリーンの言葉に、アクノロギアは目を細め、さらに不敵な笑みを浮かべる。
「けど…そなたの予想通りよ…。邪魔してほしくないの…陛下はね…どこかゲーム感覚なのよ…。しっかりしてもらわないと…」
アイリーンはそう呟きながら杖を地面へと突く。すると、地面が真っ赤に染まり、それはアクノロギアの足元に、辺り一面に広がりを見せる。そして、アイリーンは少しドスの効いた声を上げる。
「戦争を…早く終わらせるためにね…」
地面を真っ赤に染上げる魔力は、辺りに鎮座する岩を飲み込み、赤き平野を作り出す。アクノロギアはそんな様相を見ながら怪訝な表情を見せる。
「なんだ…これは…我が知らぬ魔法だ…」
「そう…400年前にも、それ以前にも存在しなかった魔法…これは新時代の魔法なの…」
アイリーンは俯きながら静かに口を開く。
「大地…大地全体に付加したというのか…」
「そうよ…フィオーレ王国全土にね…」
アイリーンの言葉に、アクノロギアは些少の動揺を見せる。
「うぬは…一体…」
「アイリーンと申します。また会えるといいわね…アクノロギア様…」
アイリーンとアクノロギアは真っ赤な光に包まれる。そして、フィオーレ王国全域にその光は発生し、全ての魔導士たちをゆっくりと包み込む。
フィオーレ王国の西方でその様を見たゼレフは、目を見開いて驚く。
「アイリーン…君はあの魔法を使ったのかい…世界再構築魔法…ユニバースワン!」 
 

 
後書き
次回更新日は明日の9月21日(水)朝7時となります。
ストック話数は7話分となっております。
よろしくお願い申し上げます。  
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