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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第10章 アルバレス帝国編
  第47話 マグノリア防衛戦

マカロフ、メイビス、そしてアレン、ヒノエ、ミノトからの話と情報を聞いたフェアリーテイルメンバーは、戦いに備え、各々がそれぞれの夜を過ごすこととなった。
アルバレス帝国との戦いが控えていることもあり、マカロフより単独での行動を控えるように言われていたギルドメンバーは、皆誰かしらと一緒に夜を過ごすこととなった。
さて、そんな中、唯一単独での行動を許されたアレンは、用を済ませたのち、すぐに帰還することを条件に首都クロッカスへと赴いていた。
アレンが姿を現すということで、連絡を受けた王宮は静かに活気に沸いていた。アルバトリオンとアクノロギアとの戦いから、一切の消息がつかめなかったこともあり、王女ヒスイはじめ、皆がその安否を心配していたのは言うまでもない。
王宮へとたどり着く前に、クロッカスの住民から歓迎受け足取りを止めることを危惧した王宮側は、首都クロッカスの検問所にてアレンの到着を待ち、そこから宮廷の籠にて王宮へと入ることとなった。
王宮に到着してすぐ、玉座の間へと通されたアレンは、慣れたように片膝を着いて頭を垂れる。そんな様子のアレンを見て、ヒスイ達も慣れたように声を掛ける。
「頭をお上げになってください…」
ヒスイの言葉にアレンはゆっくりと頭を上げる。それを見届け、ヒスイは屈託のない笑顔をアレンへと向けた。
「ご無事で何よりです…アレン様!」
「ヒスイ王女もお変わりなく…いえ、少し大人びましたな…」
アレンの言葉を聞き、ヒスイは少し顔を赤らめる。
「少しは…成長しましたでしょうか?」
ヒスイはもじもじといった様子で、恥ずかしそうに俯いて見せる。そんなヒスイの様子に、アルカディオスは少し笑いを生むと、毅然とした態度でアレンへと口を開いた。
「アレン殿、ご無事で何より…しかし、やはりその腕…」
アルカディオスが放った言葉に、ヒスイはじめ、皆の表情が暗くなる。
「ええ…でも、三天黒龍2体を相手取って腕一本で済んだのです…安いものでしょう…」
「…ナツ殿から、いにしえの秘薬なるものの話は?」
アレンの言葉に沈黙で返していた国王トーマであったが、先日のナツの話を思い出し、それを口にする。
「はい、聞き及んでおります。私を救ってくれたスタークから譲り受け、エルザが持っていた物…あれは間違いなくいにしえの秘薬でした…ですが、今はまだ飲む時ではありません…」
「な、なぜですか…?あれを飲めば、腕も目も、治るのではないのですか?」
ヒスイはアレンの発言に酷く困惑して見せる。
「確かに、あれならば失った腕も目も治すことはできましょう…しかし、皆さんもご存じの通り、この地に、アルバレスの大軍が攻めてきます。その際にもし万が一、私の大切な者が死に瀕するような機会がないとも限りません。幸いにも、私の傷は命にかかわるものではない…。飲むのは、すべてが終わり、それでも残っていた時にと結論付けました」
「むう…確かに主の言うことは一理あるな…」
アレンの説明に、ダートンは納得した様子を見せる。
「じゃが…片手では本来の戦闘行為は難しいのではないか?」
「その点も大丈夫です。フェアリーテイルの仲間にも心配されましたが、このように、魔力で腕を生成できますので…」
国王の心配に対し、アレンは魔力で腕を形どって見せた。
「なるほど…圧倒的な魔力だけでなく、それを制御する精密ささえ持ち合わせているのですね…さすがはアレン様です!…しかし、やはり私は…アレン様に本来の身体を取り戻してほしく思います…」
ヒスイはどこか悔しそうに言葉を述べる。そんなヒスイの様子を見て、アレンは小さく笑って見せた。
「ありがとうございます。ヒスイ王女…ですが、それは平和が訪れてからに致しましょう…。して、先ほども申し上げた通り、近々アルバレス帝国がこのフィオーレ並びにイシュガルに進行して参ります…」
「ああ、分かっておる。我々も1年、準備を進めてきた…。奴らの動向含め、様々な策を講じておる」
アレンの言葉に、アルカディオスが力強く答えた。
「さすがです。アルカディオスさん…では、私は一度マグノリアに、ギルドに戻ります。必ずや、この戦い勝ち抜いて見せましょう…」
アレンはそう言って、玉座の間を去ろうとする。だが、そんなアレンの後姿に、ヒスイが小さく声を掛ける。
「アレン様…」
「なんでしょうか?ヒスイ王女」
アレンはヒスイに呼び止められたことで、ゆっくりと向き直る。
「この1年で、私は虚の力について調べました。その凶悪性も、人間にとっての影響力も…」
ヒスイの言葉を聞き、アレンは些少の驚きを見せる。そんなアレンの様子を見て、ヒスイはどこか心配そうに言葉を続けた。
「…虚の力は…制御できたのでしょうか?」
アレンはヒスイの目をじっと見つめ、真剣な表情をして見せる。そんなアレンの姿を見て、ヒスイは少し顔を赤らめるが、アレンがニカッと笑いを生んだことで、目を見開いた。
「もちろんです…和解、とでもいうんですかね?完全に制御下にありますよ」
ヒスイにとってその言葉の真意を読み解くことはできなかったが、アレンが虚に飲み込まれないと知り、安心したように俯いて見せた。

アレンが首都クロッカスへ赴いている頃、皆がそれぞれの夜を過ごしていたところに、スプリガン12が一人、アジィール率いるアルバレス帝国の魔導飛空艇約50隻がフェアリーテイルへと進軍してきた。
魔導飛空艇からの攻撃に対し、フリードの術式でマグノリアの街を防衛しつつ、エルザとカグラの2人がアジィールの乗る艇へと降り立ち、戦闘を始めた。
さらに、戦闘の喧騒を聞き、自身もと準備を進めていたルーシィであったが、自身の自宅の風呂で入浴を楽しんでいたスプリガン12が一人、ブランディッシュを発見し、驚愕していた。
加えて、ウォーレンの魔法により、東西南北それぞれの方向から100万を超える大軍勢が押し寄せてきていることが発覚する。さらに、マグノリアに3人、東側、南側、北側からそれぞれ3人ずつのスプリガン12を捉える。
「西側はまだ無事ってことか!」
「…いや…ちげえ…」
マカオの言葉に、ウォーレンはレーダーを見ながら大粒の涙を零す。その様子を見て、皆が驚愕の表情を向ける。
「に…西からは天彗龍だ…首都クロッカスの上空に差し迫ろうとしてる…ッ!逃げ場は…ねえ…」
その言葉に、マカロフやメイビスは悲鳴を表現したような表情を見せるが、すぐに何とか正気を取り戻す。
「西側には、アレンさんがおられます…。ウォーレン!今すぐにアレンさんに念話を!!バルファルクとの戦闘を行うよう伝えてください!!我々はまず、眼下の敵を殲滅します。その後、事前に組んでいた部隊で徹底抗戦にでます!」
メイビスは威厳のある声を口にすると、目を見開き、キリっとした表情を見せた。

アジィールとの交戦をしていたエルザは、カラトール島の時と同じように換装の魔法が使えず、本来の力を出せてはいなかった。しかし、カグラの剣戟と魔法、加えて空間魔法ではないスサノオを用いることで、何とか互角の戦いを繰り広げる。
そんな風に戦闘を行っていたが、急に換装の魔法が使えるようになったことで、拮抗していた戦いに力の差が生まれ、アジィールをはるか遠方へ吹き飛ばし、勝利を収めることに成功する。戦いに勝利した安心で、エルザは張り詰めていた気持ちを緩める。
「くっ!」
「エルザ!」
エルザは床に膝を着き、小さく息を荒げている。そんなエルザの様子を見て、カグラが駆け寄る。
「…スサノオ、強力で汎用性も高いが…魔力の消費量が激しすぎる…」
「私の肩に掴まれ…暫し休もう…」
エルザの言葉に、カグラは一瞬怪な表情を見せる。あのアレンと同じ魔法だ。高度な魔法であることはわかりきっていた。
エルは、カグラに肩をかりる形で、フェアリーテイルのギルドへと向かった。

自宅の風呂場にまさかのスプリガン12が鎮座している様に、酷く驚いたルーシィであったが、ブランディッシュの圧倒的な魔力に加え、マリンの空間支配に対抗する術がないと判断し、「一緒に入りなさい」という命令を受ける形で共に入浴をする。
そんな中、ブランディッシュから発せられた「レイラの娘?」という発言に、自身の母であることを打ち明けたルーシィであったが、それが良くなかった。ブランディッシュの雰囲気が一瞬で殺気立ったものとなり、ルーシィの借家が足元に収まるほどに小さくなる。
ルーシィは済んでのところで外に脱出し、事なきを得る。ブランディッシュに母のことを聞くが、有益な返答は帰ってこない。
そんな折、カナがルーシィの元へと助けに来る。その隙をつき、ルーシィは小さくなったマリンを見つけ、踏みつぶす。小さくなっていたことで、ルーシィに踏まれただけで気を失ってしまったマリン。先のエルザが換装を急に使用できるようになったのはルーシィのおかげであった。
ルーシィは、アレンとの修行含め、最近習得した星霊の力をわが身に纏う力『星霊衣』をもってブランディッシュと対峙する。カナも同じように戦闘態勢を取るが、ブランディッシュが大きくくしゃみをしたことで、呆気にとられる形となる。
「…花粉症?」
「さっきの砂嵐で…町中の花粉が舞ったんだね…」
ルーシィとカナがポカーンとした様子でブランディッシュを見つめる。
「もう!イライラするわ!!クシュン!クシュン!…ぎゃう!!」
…花粉症で苦しむブランディッシュを、カナが一撃拳骨を決め込むことで勝利を収めた。

ミラ、エルフマン、リサーナ、グレイ、ジュビアは、カルディア大聖堂付近でスプリガン12の一人、ワールの弱点を見て的確な兵士を生成するウィークネスの魔法に苦戦を強いられていた。
しかし、その兵士たちは、忽然と姿を消すことになる。
ミラたちの相手を自身が生み出した兵士に任せたワールは、カルディア大聖堂前に入る。そこには、マグノリアの街を術式魔法で守るフリードとそれを援護するビックスロー、エバーグリーンがいた。ワールとの戦闘に苦戦を強いられる3人であったが、一夜が駆けつけたことで戦況は一気に好転する。
一夜の、弱点が多すぎるという特徴に狼狽を見せたワールは、戸惑っていたこともあり、一夜とフリードのコンビネーションによって倒れる。
だが、このワールが、実は本体ではないことを知るのは、もう少し先の話。

首都クロッカスを後にしてすぐのこと、ウォーレンから飛んできた念話を聞き、アレンは急いできた道を戻っていた。
「くそっ…ウォーレン!バルファルクはもう首都クロッカスにいるのか!」
『ああっ!レーダーでは今さっきクロッカスに到着したって表示されてる!』
アレンはウォーレンの声を聴き、苦悶の表情を浮かべる。
「わかった!そっちの状況は?」
『大丈夫とはいいがたいが、絶望的ではねえ!』
「よし、ならなんとしてでもアルバレスを叩きのめせ!…バルファルクは俺に任せろ」
アレンはそう言い放ち、ウォーレンとの念話を切った。
「くっそ…タイミングが悪すぎる…あともう少し早く来てくれていれば…」
アレンはそう悪態を付きながら、疾風の如き速さで首都クロッカスへと向かっていった。

首都クロッカスは、天空に出現した赤き流星にパニック状態となっていた。およそ1年半前、『ドラゴンレイド』と呼ばれる戦いに見たものと同じものが、圧倒的な速度で首都クロッカスの上空を旋回している。そして、暫し旋回を見せていた赤き流星であったが、地面を割るほどの衝撃をもって王宮前広場に着陸する。
速度は重さ…そして力である。音速をも超える速度で広場に衝撃を果たしたことで、王宮前広場は先ほどまで誇っていた情緒あふれる雰囲気は失われ、瓦礫と砂ぼこりが舞う様相を見せていた。
玉座の間にいたヒスイ、トーマ、アルカディオス、ダートンも、空を旋回する赤き流星にいち早く気づく。そして、王宮前広場に衝撃を果たした流星を見て、酷く狼狽した姿を見せる。
「そ、そんな…まさか…」
「バルファルク!!」
ヒスイとダートンは大きく目を見開いた。
「くっ!餓狼騎士団を呼べ!!そして、桜花聖騎士団もだ!!」
アルカディオスの怒号に、玉座の間に控えていた衛兵が一目散に駆けていく。アルカディオスは、ヒスイ王女とトーマ国王へと向き直り、焦った様子で口を開く。
「ヒスイ王女!今すぐにアレン殿へ連絡いたしましょう!」
「で、ですが、アレン様がクロッカスから去られたのは1時間ほど前…。まだマグノリアにはついていなにのでは…」
「くっ!最悪のタイミングじゃな…」
アルカディオスの言葉に、ヒスイは狼狽したように、国王は苦虫を噛んだような表情を浮かべて言葉を漏らす。
そんな風に会話をしていると、一人の衛兵が玉座の間の扉を焦った様子で開いて入ってくる。ヒスイ達は、その音に反応するようにして視線を向ける。
「報告申し上げます!!天彗龍バルファルクが王宮前広場に出現!!桜花騎士団、餓狼騎士団全軍をもって戦いに挑みましたが、すでに壊滅状態!!死傷者も多数!!」
報告にきた衛兵も、桜花聖騎士団の団員であり、その身体に多くの傷が見て取れた。恐らく、バルファルクの一撃に直撃はしなかったものの、ダメージを受けていることが見て取れる。そして、先の惨劇を報告しようと、この場へとやってきたのだ。
「バカなッ!餓狼と桜花、その全軍をもってして、数分と持たぬのか!!」
「天彗龍…なんという強さだ…」
先の桜花騎士団員の報告に、アルカディオスとダートンは酷く怯えた様子を見せる。そして、同じく報告を聞いたヒスイが声高らかに口を開く。
「ッ!住民の避難は!どうなっていますか!!」
「王宮兵士により、首都クロッカス中を駆け巡っておりますが、強襲故に未だ避難は完了しておりません!」
桜花騎士団員の言葉に、ヒスイは苦悶の表情を浮かべる。そして、その後すぐにその表情は衝撃のものへと変わる。
「さ、さらに、バルファルクはこの…ガッ!!」
桜花騎士団員が思い出したように言葉を発したが、それは玉座の間の窓から飛来した赤き流弾によって遮られる。赤き流弾を喰らった桜花騎士団員は低い悲鳴をあげたのち、玉座の間の壁へと激突する。
その様相に驚いている暇もなく、先ほど赤き流弾が飛んできた窓を携える壁が一気に崩壊する。
「キャーッ!!」
「な、なんじゃ!!」
「姫様!!!」
「ぐっ!!」
ヒスイ、国王、アルカディオス、ダートンがそれぞれに悲鳴をあげる。衝撃が収まりを見せ、視界を開くと、そこには1年半前と同じ絶望が鎮座していた。
「久しいな…小娘…」
「バル…ファルク…ッ!きゃあっ!!!」
バルファルクは、ヒスイに向けて小さく呟くと、腕でヒスイをつかみ取る。ヒスイは一瞬にして自らの身体の自由を奪われたことで悲鳴をあげていた。
「「っ!姫様!!」」
「ヒスイっ!」
バルファルクによってヒスイが拘束されたのを見て、アルカディオスとダートン、国王が悲痛の叫びをあげる。
「ぐっ…いやあッ!!」
バルファルクの強大な手の中で悶えるヒスイであったが、か弱き少女がバルファルクの拳から逃げれるわけもなく、その犯行は無意味に終わる。
「貴様っ!姫様を離せ!!」
「ふふっ!この小娘は首都クロッカスの中央で握りつぶしてくれる…」
アルカディオスの声をあざ笑うかのように、バルファルクは低く唸るように、それでいて嘲笑するかのようにして言葉を発する。
「よ、よせ!!」
「お父様!!…あぁっ!」
バルファルクの発言に、酷く狼狽しながら国王が口を開くが、ヒスイの叫びと共に、バルファルクは一気に玉座の間から姿を消す。
「くっ…い、いや…」
ヒスイは、圧倒的なスピードで首都クロッカスの中央上空で滞空するバルファルクの手の中でこれまでにない悲鳴をあげる。高さは50mほどであろうか。バルファルクの腕から逃れられたとしても、この高さから落ちればひとたまりもない。だが、このままバルファルクの腕の中にいても握りつぶされて終わりだ。
ヒスイはそんな絶望的な中、ある男の姿を思い浮かべる。
「(アレン様…アレン様…)」
ヒスイは自身が愛する男の姿を思い出しながら、大粒の涙を零す。
「フィニスの時のお返しだ…小娘―!!!」
バルファルクはそう言い、ヒスイを掴む腕に力を込めて握りつぶそうとする。しかし、刹那、ヒスイを掴む感覚を失い、力を込めて拳に肉が、骨が潰れる感触も感じない。
そして、ある男が少し離れたところに滞空しているのが見て取れた。その男は、先ほどまで自身が腕に納めていたヒスイを抱きかかえるようにしてこちらを見据えていた。
「ちっ…またすんでのところで…貴様は実に運がいいようだな…小娘…」
バルファルクは、その男を眺めながらヒスイに声を掛けた。ヒスイは自身に襲い掛かる痛みや恐怖に身を固めていた。しかし、優しく抱きかかえられる感覚とバルファルクの言葉を聞き、ゆっくりと視界を開く。そして、目を見開く。そこには、先ほどまで心で頭で思い浮かべていた男がいた。
「ア…アレン…様…アレン様―!」
ヒスイはその男を確認すると、まるで子どものように泣きじゃくり、アレンへと抱き着く。「…何とか間に合ったな…。しかし、バルファルク…お前、やっぱいい趣味してるわ…」
「はっ!それは皮肉と取っていいのかな?」
アレンは戦闘態勢を整えるバルファルクを見据えながら小さく呟く。
ヒスイは暫く泣きじゃくってアレンに抱き着いていたが、アレンが魔力で形成した腕でもって自身の腰を強く手繰り寄せたことで、幾ばくかの正気を取り戻す。それは愛しい男に強く抱きしめられた喜びであり、嬉しさであった。
「ア…アレン様…///」
ヒスイは王女という性質上…異性から強く抱きしめられた経験がない。故に、このアレンの行動に、酷く困惑し、赤面していた。だが、それは更なる恥ずかしさと嬉しさに変わることになる。
「…ヒスイ…俺から離れるなっ!」
アレンは、王女に向けて放つとは思えない言葉と口調でもって声を掛ける。アレンに呼び捨てで、それも命令口調で言われたヒスイは大きく目を見開く。不快感はない…。それ以上に、幸福がヒスイの心を支配する。愛する男が、アレンが、自身を王女としてではなく、一人の女として見てくれている。先の口調から、ヒスイはそんな風に思ってしまった。
「ひゃ、ひゃい…」
ヒスイはあまりの驚きと恥ずかしさ、そして嬉しさにまとも返事ができなかった。変な返事をしてしまったことに、更なる恥ずかしさを生むが、そんなことを気にしていないかのようにバルファルクを睨むアレンの顔を見て、さらに赤面する。そして、思わず思ってしまったことを言葉にしてしまった。
「ッ…一生…一生離れません…アレン様…///」

さて、マグノリアに進軍してきたアルバレス帝国軍とスプリガン12の3人を一応は撃退して見せたフェアリーテイルの魔導士は、戦闘の終結を感じ取り、各々が少しずつ安心と安堵を漏らしていた。
しかし、そんな折、ハルジオン近海に控えていたアルバレスの艦隊の軍勢。その一隻から奇妙な笑い声が巻き起こる。その笑い声を聞き、スプリガン12が一人、ディマリアが呆れた様子で口を開く。
「その気持ち悪い笑い方やめてくれるか?」
「いやー、予想以上に面白いことになってますれば…ひゃーひゃひゃひゃ!!」
ワールの本体である男は、人形とは違い、スラッとした見た目をしていた。
ワールの人形、もとい作り出した兵士が全滅したこと、そして同じスプリガン12のアジィールが倒され、ブランディッシュが囚われたことを聞き、ディマリアが面白おかしく笑いを見せていた。
「しかし、中々やるようだぜ…フェアリーテイルってのは…」
「皇帝が全軍を出撃させるほどだからな…」
ワールの言葉に、ディマリアはどこか嬉しそうに答える。
「だが…アレンがいない今…さすがにこれは防ぎきれねえだろ!!」
ワールはとある魔法を発動しようと、魔力を展開し、狙いを定める。
「バカが…港を粉々にするつもりか?まだ30kmはあるぞ」
ディマリアの制止も聞かずに、ワールは魔法の展開を進める。
「いや…狙いはフェアリーテイルだ!」
ワールがそう言うと、先ほどまで展開していた魔力が強大な魔導砲へと姿を変える。
「200㎞以上離れているぞ…当たるモノか!」
「ワール様を…舐めるなー!!超長距離遠隔魔導砲…発射―!!」
ディマリアの言葉に、ワールは激高しながら声を上げる。かつてファントムが放ったジュピターをも超える力を持つ魔導砲が、フェアリーテイルのギルドに向けて発射された。その魔導砲は空を駆け抜け、ギルドに迫らんとしていた。

魔導砲の脅威をいち早く察したのは、レーダー魔法によって警戒網を展開していたウォーレンであった。自身の持つ端末、そして魔法が警告音を発していることに気付き、驚きを見せる。
「南東より、巨大な熱源!!なっ…魔力か!!…とにかく、ものすごい速度で向かってくるぞ!」
「なんだと…新手か…」
「いや、恐らく、アルバレスの攻撃…」
ウォーレンの言葉に、ラクサスとマカロフが反応を示す。マカロフが通信でフリードにもう一度術式を展開しろと声を掛けるが、フリードから反応はない。
「くそっ!退避…退避じゃ!!!」
「ッ!またギルドが壊されるのか…!」
マカロフの声に、ジェラールが苦悶の表情を浮かべる。しかし、それを阻止するかの如く、とあるものの声が聞こえる。
『そうは…させんぞー!!』
「この声は…」
聞き覚えのある声に、レヴィが目を見開いて反応する。そして、フェアリーテイルに向かって迫る魔導砲に真っ向から向かうクリスティーナが現れる。
「クリスティーナか!!」
「い、一夜さん!?」
突然の登場に、リオン、レヴィが驚いた様子を見せる。
『メエーン!!』
一夜のいつもの掛け声とともに、クリスティーナがフェアリーテイルのギルドを庇うようにして魔導砲の直撃を受ける。
魔導砲の直撃を受けたクリスティーナは中破程度のダメージを受けるが、地に落ちることなく何とか滞空して見せる。
「なんでクリスティーナが!」
「一夜が盾に…」
ナツとハッピーがその様子に驚いていたが、一夜の声が響くことでその驚きを止める。
「これは戦いだ…しかし、君たちだけの戦いではない…フィオーレ通信網…ON!!!」
一夜はまるで必殺技を放つかの如く大声で、とあるボタンをポチッと押す。すると、フィオーレ王国にあるギルド、そして魔導士たち全員に一夜の声が届く。
『聞こえるか…諸君…』
各地で、一夜の声に反応するかのように多くの魔導士が反応をしめす。
ミネルバ、スティング、ローグ、レクター、フロッシュ、シェリア、トビー、ユウカ、シモン、ミリアーナ…多くの魔導士が一夜の声を認識する。
『これは…私たち皆の戦いだ…!』
その声を聴き、ナツやエルザ達フェアリーテイルのメンバーは、感極まったという表情を見せ、些少の笑みを浮かべた。 
 

 
後書き
次回更新日は、明日の9月20日(火)朝7時となります。
ストック話数は8話分となっております。
よろしくお願い申し上げます。  
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