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ウルトラマンカイナ

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外星編 ウルトラホピスファイト part4


 ――遡ること、数分前。弘原海達とは別行動を取り、洞窟内を探索していた男性隊員達は、キングジョーの起動に伴う洞窟の崩落に巻き込まれ、落石の下敷きとなっていた。

 それは、決して助かる見込みのない絶対的な「死」。彼らが歩んで来た人生は、そこで永遠の終焉を迎える――はずであった。

 だが、彼らが次に瞼を開いた時。
 眼前に広がっていた景色は、天国でも地獄でもなく。そこに居たのは、天使でも閻魔でもなかったのである。

「……誰だ、そこに居るのは」
『M78星雲の宇宙人だ。……君達にとっては、「ウルトラマン」という名の方が通りが良いのかも知れないが』
「ウルトラマン、だと……!?」
『君達は洞窟の落石に巻き込まれ、死に瀕していた。君達を救うためには、我々と一心同体になって貰うしか方法がなかったのだ。驚かせてしまい、申し訳ない』

 「ウルトラマン」を名乗る光の巨影達は、死んだはずの男達の魂に語り掛けると。赤と白銀の2色を基調とする、ペンライト状の物体――「ベーターS(スパーク)フラッシャー」を落として行く。
 思わずそれを手にした男達は、予期せぬ事態の連続に戸惑うばかりであった。そんな彼らを他所に、巨影達は抑揚のない声で口々に事の経緯を語る。

『……この次元の地球には今、凄まじい脅威が迫ろうとしている。今の君達では決して太刀打ち出来ない、恐るべき破壊者達だ』
『だが、本来ならば別次元の宇宙を守護していなければならない我々の立場では、この次元の人々に多くを語ることは出来ない。こうして干渉することさえ、掟に反する行いなのだ』
『それでもせめて、この瞬間だけは君達のために働きたい。これは、そのための「ベーターSフラッシャー」だ。困っている今こそ使うといい。それを使うと……』
「使うと……どうなる!?」
『ヘッヘッヘ……心配することはない』
「おい、待て! 待ってくれッ! 君達は本当にッ――!?」

 男達は巨影達を呼び止めようと懸命に手を伸ばすが、その前に彼らは眩い光の向こうへと消えて行き――男達もまた、その閃光の中に飲み込まれて行く。

 そんな夢のような世界が、終わりを告げた時。死んだはずの男達は、落石の山の中で目を覚ましたのだった。

 ◇

「く、うッ……! こ、ここは……! 皆は、無事なのかッ……!? くそッ、通信機も壊れてるッ……!」

 落石の下敷きにされた状態で、最初に意識を取り戻した士道剣(しどうつるぎ)隊員。彼は光一つ差さない暗黒の世界の中で、懸命にもがいていた。
 視界を塞ぐ岩石を力任せに退かしているその膂力は、すでに「人間」の域を「逸脱」している。

 弘原海達と別れた先で遭遇した大地震と、その衝撃による落石。そこに巻き込まれた「彼ら」は、確実に死んだはずだった。
 だが実際のところ、彼らはまだ生きている。それどころか、生身の人間とは到底思えない馬鹿力を発揮して、自力で落石を排除しようとしているのだ。

(あれは……やっぱり、夢なんかじゃなかった……! 「俺達」は本当に、「彼ら」と……!?)

 そんな自身の力に驚きながらも、大岩を押し退けている士道は、「ウルトラマン達との邂逅」という荒唐無稽な夢を思い出していた。
 あれが単なる幻ではないということは、己の身に宿る常軌を逸した膂力が証明している。そうでなければ、身の丈に迫る大きさの岩石を、腕の力だけで退かせられていることへの説明がつかない。

 ウルトラマンとの一体化。その効果は、この時点からすでに顕れていたのだ。全身に漲る力の奔流から、その真実に辿り着いていた士道は、ごくりと息を呑んでいる。

「皆……! 生きているのか!? 皆ッ!」

 そんな彼はハッと顔を上げ、懸命に周囲を見渡そうとする。真っ暗な闇の中でも、彼ははぐれた仲間達を見つけ出そうとしていたのだ。

 だが、返事はない。それでも彼は仲間達の生存を諦めることなく、落石の山から這い出ようとしていた。
 ここを抜け出して、すぐに彼らを探さねばならない。その決意を、胸に宿して。
 
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