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善良な猫なぞいない

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第二章

「暴力に耐えつつ従う」
「家族?」
「それか使用人ね」
 猫から見てと言うのだ。
「ご主人様に仕える」
「そうね」
 沙都美はそう言われて否定せずに述べた。
「言われてみれば」
「そうよね」
「それになるわ」
 実際にというのだ。
「私は。実家で生まれた子のうち一匹引き取って」
「一緒に暮らしてるのね」
「五年ね、けれどその間」
 その五年の間というのだ。
「本当によ」
「思った通りの画像撮れなくて」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「いつもあれしろこれしろで」
「しないと暴力ね」
「そうした毎日よ」
「そうなのね」
「猫って我儘よ」
 心からの言葉だった。
「まさに悪の獣よ」
「悪ね」
「いい猫なんてね」
 それこそと言うのだった。
「他の人を聞いてもね」
「いないのね」
「どの猫も悪よ」 
 そう言っていいというのだ。
「善良な猫なんてね」
「この世にはいない?」
「一匹もね」
 それこそと言い切った。
「いないわ、そう信じているわ」
「うちは犬飼ってるけれど」
 文音は自分のことをここで話した。
「犬はね」
「そんなことないわね」
「うちは柴犬だけれどいい子よ」
「犬はそうなのね」
「可愛くて素直でね」
「性格いいのね」
「家族思いでね」
 それでというのだ。
「あんないい子いないわ」
「犬はそうなのね」
「猫と違うわね」
「全く以てね、しかしね」
 沙都美はあらためて言った。
「猫は違ってよ」
「どの子もなのね」
「当然うちもそうで」
 ここでもマロンを見て話した。
「それでよ」
「他のお家でもなのね」
「そうよ、悪も悪で」
 それでというのだ。
「いい猫なんてこの世に一匹もよ」
「いないのね」
「もうそう言えるわ」
「わかったわ、けれどね」
 文音は沙都美の話をここまで聞いてあらためて言った。 
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