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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第8章 冥府の門編
  第37話 三つ巴の戦い

ウルキオラ・シファーとアレン・イーグル。
バルファルクとグランディーネ、メタリカーナ。
アクノロギアとイグニール、スキアドラム、バイスロギア。
1人の人間と1人の破面。そして7体の竜が、それぞれに空を舞い、戦闘を開始する。
そんな世界の終わりを告げるような戦いを見上げているフェアリーテイルのメンバーの表情は、絶望と悲観が渦巻いたようなものとなっていた。
「なんの…冗談だ…これは…」
「こんな…こと…」
「どうして…こんな…」
「ッ…帰りたい…マグノリアに…ギルドに…」
エルザ、カグラ、ウルティア、ルーシィが今にも泣きだしそうな表情で言葉を発する。
「力の差はあれど…全ての竜が古龍種並み…」
「はい、姉さま…。これはあまりにも危険かと…」
ヒノエ、ミノトが空を舞台に戦闘を続ける7体のドラゴンを見ながら、低く唸るようにして言葉を発する。
「…そして何より…あの者…」
「ウルキオラ・シファー…いったい彼は何者なのでしょう」
ミノトとヒノエはその視線を、同じく地上から空へと戦闘の舞台を変えた2人に向ける。そんあ風にして、各々が感情を露にしていると、一人の黒い男が近づいてきた。
「彼は…ウルキオラは虚という種族の中でも最上級の虚さ…」
急に現れたその男に、ヒノエとミノトだけでなく、フェアリーテイルの皆が視線を向ける。そして、目を見開く。
「その中でも、最も殺戮能力、いわば戦闘能力に優れた10体の破面。名を『十刃(エスパーダ)』というが、彼はそのうちの1人さ…」
「てめえは…」
「…黒魔導士…」
「ゼレフッ!」
淡々とウルキオラについて話をするゼレフに向かって、ラクサス、レヴィ、ミラが苦悶の表情を浮かべて言葉を発する。
「…あなたの話が本当なら、彼と同等の存在があと9人いるということになりますが…」
「うん、そうだよ」
先のゼレフの言葉に、ヒノエは一つの疑問をぶつけると、ゼレフはそれを肯定する。
「バ、バカな…あんなものが…あと9人だと…」
「そう、分かりやすく言えば、イシュガルの君たちの大陸にいる聖十大魔道士と似ているね。まあ、似ているのは人数と序列があるってだけだけど…」
エルザの狼狽した様子に、ゼレフは嘲笑を込めて言葉を発する。
「序列…ですか…」
「うん…さて、彼は…ウルキオラは十刃の中で何番目の強さだと思う?」
ミノトの低く唸るような声に、ゼレフはある質問を投げかけた。
その質問に、その場にいるもの全員がトップに決まっているだろうという予測を立てる。だが、聡明なエルザやミラ、何人かのものは、わざわざそんな含みのある言い方をするということは、何かあると感じていた。つまり、ウルキオラより上の序列であるものがいるかのようなその言い草に、怪訝な表情を浮かべる。あのアレンと同等かそれ以上の存在であるウルキオラ。そんあウルキオラが、信じられないが、2番目ではないのかという思考が数人の頭をよぎる。しかし、その予想は、ゼレフの言葉により、更に信じられないものとして否定されることとなる。
彼は、片手の親指だけを折り、4本の指を立てたのだ。その姿に、皆が徐々に目を見開く。
「第4十刃…ウルキオラ・シファー…彼の十刃内での力の序列は…4番目だよ…」
その言葉に、皆がこれでもかと口を大きく開け、目を見開く。驚きなんてものではない、それはつまり…。
「…ウルキオラより上の存在が…更に3人…」
「そ、そんなもの出鱈目よ!ありえない!」
フリード、エバが酷く困惑した様子で口を開く。
「まあ、別に僕の言葉を信じなくてもいいけど…。もし機会があったら、彼の左胸を見てみるといい。魔導士が身体のどこかにギルドマークを刻むのと同じように…序列を表す『4』の数字が刻まれているから」
ゼレフはふっと笑いながらフェアリーテイルを見つめ、さらに言葉を続ける。
「そしてもう一つ、この世界に、彼以外の十刃は存在していない…今はだけどね…」
「この世界?…まさか…」
ゼレフの言葉に、ヒノエは驚いた様子で言葉を放つ。
「そう、彼はこの世界とは別の世界から来た…ヒノエとミノトだったかな?君たちとアレンと同じ存在さ…」
「別の世界だと!?ヒノエ、ミノト、一体どういうことだ!」
ヒノエとミノト、そしてアレンも、ウルキオラと同じ別の世界から来たというゼレフの言葉に、エルザは酷く動揺して見せる。
「おや?アレンは何も言ってなかったんだね…これは失言だったかな…」
「別の世界…エドラスのようなものってこと?」
ゼレフの言葉を意に介さず、ルーシィはとある疑問を口にする。だが、それはゼレフによって悉く否定されることになる。
「いや、エドラスとは全くの別物だよ…エドラスとアースランド…まあ、まだ他にも世界はあるのだけれど、その二つはどちらも同じ世界線において存在する世界さ。アレン、ヒノエとミノト、そしてウルキオラはこの世界線の外から来た存在…」
「…何を言ってやがんだ…てめえは…」
全く話の意味が分からないラクサスは、唸るようにしてゼレフに言葉を放った。
「少し難しかったかな?つまり…」
ゼレフはゆっくりと言葉を繋ぎながら、その手を空へと向け、人差し指を立てる。
「空に浮かぶ星々…彼らは、遠い宇宙の彼方からやってきたのさ…」
ゼレフの言葉に、フェアリーテイルのメンバーは更なる驚きを見せる。
「そ、そんな話…」
「信じられるわけが…」
ウルティアとレヴィが、狼狽した様子で口を開く。だが、ヒノエとミノトが真っ向から否定しないことに、怪訝な様子を見せる。
「さすがは、黒魔導士ゼレフ…」
「一体どうやってそこまで調べられたのか…興味がありますね…」
ヒノエとミノトの発言に、フェアリーテイルのメンバーは身体を震わせ驚きを表現する。
「お、おい…何言ってんだ、ヒノエ…ミノト…」
「まさか…本当に…」
「奴の言ってることが真実だとでもいうのか!?」
ラクサス、エルザ、ジェラールがこの上なく困惑した様子で口を開く。
「そうだね…あれは僕がまだ…ッ!!」
ゼレフはその経緯を語ろうと小さく呟く様子を見せたが、急に空を見上げて目を見開く。
「…?どうしましたか?」
ゼレフの驚いた様子に、皆が怪訝な表情を見せ、ミノトが語り掛ける。
「まさか…いや、だかこれは…」
ゼレフは暫く狼狽した様子を見せていたが、思考を放棄するようにしてくくっと笑い始める。
「なんだ…どうしたってんだ!」
「おい、ゼレフ!」
ビックスロー、フリードがそんなゼレフに激高するが、ゼレフが2人を視界に入れることはなく、ただただ空を見上げていた。
「ふふふっ…はははっ…これは予想外だ…まさか、まさか直接姿を現すとは…!」
ゼレフの言葉に、皆が同じように空を見上げる。すると、厚い雲に覆われた空の一点が、渦を巻いて小さい穴を形成していた。
「…いや、違うか…奴が…アクノロギアが呼んだのか…」
ゼレフの言葉と同時に、ヒノエとミノトが何かに気付いたように目を見開く。
「この感じ…古龍!!」
「まさか…」
ヒノエとミノトの言葉に、ゼレフはゆっくりと視線を2人に移す。
「そうか、そうだったね…あれは、あいつらは…元々君たちの世界の龍だったね…」
ゼレフの言葉に、ヒノエとミノトは、空から襲来する古龍を断定するに至る。
「そうか…全てを終わらせに来たのか…煌黒龍、アルバトリオン…!!」
その言葉に、その場にいるもの全員が、恐怖と驚愕、信じがたいといった表情を見せた。

アクノロギアとの戦闘を始めたイグニール、スキアドラム、バイスロギアは、1対3という数の優位性を生かし、アクノロギアに攻撃を仕掛けるが、そのダメージは微々たるものであることを察する。
「やはり、さらなる力をつけておったか…アクノロギア…」
「ふふっ…我は竜の王アクノロギア…貴様らも他の竜と同じように滅してやろう…」
アクノロギアはそう告げると、大きく咆哮を上げる。
「自らの力を過信しすぎだ…アクノロギアよ…いくら貴様でも、我らと同時に戦って、無事で済むはずがない…」
スキアドラムの言葉に、アクノロギアは、ニヤリと笑みを零す。
「貴様らこそ過信しすぎだ…数で攻めれば我を倒せると思ったか?…それに、我は過信などしておらぬ…その証拠に、そろそろ同胞も来る頃だろう…」
アクノロギアの含みある言葉に、イグニール達は驚いた様子を見せる。
「なんだと…まさか…」
そんな風に驚きの声を上げたイグニールであったが、それは地上から火を吹いてこちらに向かってくる一人の青年によって遮られることになる。
「……けんなー、イグニール!!」
その声に、イグニールは呆れた様子で口を開く。
「バカが…話は後と言ったろうが…」
「今…言えー!!」
イグニールの言葉に、ナツは反発するように言葉を発すると、イグニールの翼にしがみつく。
「なんで急にいなくなった!しかも、俺の中にいただと!」
「ぬう…」
イグニールは言葉を詰まらせて呻き声に似た声を上げる。
「それに、お前らはスティングやローグに殺されたんじゃないのか!!」
「このガキ…」
「状況をわきまえられないのか…」
バイスロギアとスキアドラムも、ナツの様子に酷く困惑している様子であった。
「777年、7月7日に何があったんだ!!!」
その怒号は、地上にいるフェアリーテイルのメンバーや、その場にいる全ての者の耳に届く。
ガジルやウェンディ、スティングやローグも、ナツと同じ疑問を持っていたことから、イグニールの言葉を待っている様子であった。そんな様子を横目で見たアレンは、ウルキオラとの戦闘をしながらも、苦笑いを浮かべる。
「こりゃ、ゲロッちまうしかないんじゃないか!!イグニール!!!」
アレンの、何かを知っているような口調に、ナツ、ガジル、ウェンディ、スティング、ローグは目を見開く。
「アレンの奴…何か知ってやがんのか…」
「アレンさん…まさか…」
ガジル、ウェンディはそんなアレンの言葉に、困惑を見せる。そんな折、アクノロギアがイグニールへと突進してくる。
「やかましい!貴様は黙っとれ!!アレン!!!」
その攻撃を避けるようにして、イグニールは大きく身体を動かし旋回する。
「う、うわあ…!」
その圧倒的なスピードに、ナツはイグニールの翼から振り落とされ、空中に投げ出される。だが、だが、イグニールの左手がそんな投げ出されたナツをしっかりとキャッチする。
「お前たち!!!」
「「ああ!!」」
イグニールは、スキアドラムとバイスロギアに声を掛け、その意図を読み取った2体は、イグニール同様大きく息を吸いこむ。そして、3体の竜は、吸い込んだ息を思いっきり吐くようにしてブレスを発動させる。そのブレスは融合したように重なり合うと、アクノロギアを包み込むように、強大な球体を形成する。その様相はまるで天に輝く星のように、圧倒的な熱と光、力を有していた。その力をまじかで見たナツは、驚きのあまり、目を座らせる。
同じように、その強大な力を感じ取ったフェアリーテイルのメンバーは、狼狽したように口を開いた。
「…あれが…」
「火竜の咆哮…」
「白竜…影竜の咆哮か…」
エルザ、ルーシィ、ミネルバが驚愕の表情をもってそれを言葉にする。
マルドギールとの戦闘を終えたグレイ、ジュビア、スティング、ローグそしてエクシードの3人もフェアリーテイルが集まる場所へとたどり着く。
そして、アクノロギアがそのブレスを受けながら地面へと撃墜するのと同時に、イグニール、バイスロギア、スキアドラムがフェアリーテイルのメンバーが集まる場所の前方へと着地する。
それを見計らったかのように、バルファルクと戦闘を行っていたグランディーネ、メタリカーナ、そして、ウルキオラと戦闘していたアレンも、地に足をつける。
アレン、イグニール、メタリカーナ、グランディーネ、スキアドラム、バイスロギアはそれぞれ背中を預けるようにして円陣を形成する。
「ふう…まさか、本当にお前らとこうして戦う時がくるとはな…」
「まあ、想定していたものとはだいぶ違うが…」
「それに、更なる強敵も現れそうですし…」
「お前らも感じ取ったか…」
「参るね…どうも…」
「こいつらに加えて、煌黒龍とは…」
アレン、イグニール、グランディーネ、スキアドラム、バイスロギア、メタリカーナがそれぞれ口々に言葉を漏らす。
「それにしても、アレン、その姿は一体なんだ…」
「似合っていないな…」
「うるせー!斬り殺されたいのか!お前は!!」
「あら、綺麗で美しいじゃない…ふふっ!」
イグニールがアレンの妖精の皇帝の姿を見て、言葉を放ち、それを補うようにしてメタリカーナが言葉を発する。それに対し、アレンは激高したように答えると、グランディーネが嘲笑に似た笑いを漏らす。
「しかし、中々の魔力だ…」
「奥の手というやつか…」
「…まあ、そんなところだ…」
続けて、スキアドラムとバイスロギアが冷静な口調で言葉を発すると、アレンもそれに答えるようにして口を開く。
そんな風に、ドラゴンと歴戦の盟友のような会話を繰り広げているアレンの姿に、フェアリーテイルのメンバーは驚きを隠せない。
「おい…アレンの奴、知り合いなのか?あのドラゴンたちと…」
「うそ…グランディーネとあんな仲良さそうに…」
「あの野郎…知ってやがったのか…」
ラクサス、ウェンディ、ガジルは、心底信じられないと言った様子を見せる。
「おい、アレン!イグニールと友達なのか!!何で黙ってたんだ!!!」
「「お前は黙ってろ!ナツ!!」」
アレンとイグニールが、図ったようにして同じタイミングで同じ言葉を言い放つ。ナツは、父親であるイグニールと、憧れであるアレンの2人に同じ言葉を掛けられ、思わず目尻に涙を浮かべる。
「なんだ…怒鳴られて涙を浮かべるとは…」
「弱っちい奴だな…」
ナツがなぜ涙を浮かべているのか、なんとなく察しのついた2人であったが、あえてそれを口には出さず、挑発するような言葉を送る。
「ッ!うるせー!くそっ!!」
ナツはそれを隠すようにして涙を拭う。そんあナツの姿を見て、フェアリーテイルのメンバーも思わず目尻に涙を浮かべたり、嬉しそうにしている。
だが、その感慨深い様相も、そう長くは続かなかった。
背中を合わせるようにして鎮座するアレンとイグニール達の周りに、先ほどそれぞれが相対していた敵が現れる。アレンの前にウルキオラが、グランディーネの前にバルファルクが、イグニールの前にアクノロギアがゆっくりとその身を表す。
「むう…さすがの貫禄だな…」
「なんだよ…さっきのブレス、全然効いてねーじゃねーか…」
「お前の馬鹿力と一緒にするんじゃない…」
メタリカーナ、アレン、イグニールがそれぞれに会話を繰り広げるが、グランディーネが思いつめたように口を開く。
「…そんなことより、皆もうわかっているわね…」
「…ああ」
「して、問題は誰が誰の相手をするかだ…」
グランディーネの言葉に、スキアドラムとバイスロギアがゆっくりと言葉を発する。
「…ウルキオラは、俺がやる」
「わしは、アクノロギアだ」
「なら、同じ天の名を有する者として、バルファルクは私が相手をしましょう…」
アレン、イグニール、グランディーネがそれぞれに相手にするものの名を口にする。そして、メタリカーナ、バイスロギア、スキアドラムは、空を見上げながら口を開く。
「となると…」
「残るわしらは…」
「アルバトリオンじゃな…」
「まあ、一抹の不安もあるが…それが一番理にかなった配置ってとこだな…」
3体の竜の言葉を聞き、アレンがその旨を伝える。
「「「「「「んで、ナツ…お前は…」」」」」」
アレンと5体の竜に声を掛けられたナツはビクッと身体を震わせる。
「フェアリーテイルの皆と一緒に、ゼレフをやれ…」
「そして、奴の持つENDの書…あれを奪うのだ…」
「破壊しても、傷つけてもダメ…いい、奪うのよ」
「…任せたぞ…」
アレン、イグニール、グランディーネ、メタリカーナは、ナツだけでなく、フェアリーテイルのメンバーにも届くようにその言葉を発した。
暫く驚きの様子を見せていたナツだが、ニヤッと笑いかける。
「報酬は?」
「む…?」
「それ、つまりは依頼だろ…じゃあ報酬がなきゃなー…」
ナツの言葉に、困惑していたイグニールであったが、グランディーネがナツとウェンディを交互に見ながら口を開く。
「あなたたちの知りたいこと全て…でどうかしら?」
その言葉にナツだけでなく、ガジル、ウェンディ、スティング、ローグ、そしてフェアリーテイルのメンバーも小さく笑いかける。
「その依頼…引き受けたー!!」
ナツはそう言って、足から火を吹きながらゼレフの元へと突進していった。

ナツが攻撃を仕掛けてくるのを、ゼレフはどこか嬉しそうにしてそれを受け止める。対してナツは、自身の攻撃が全く通用していないことに驚きを見せるが、同じようにゼレフも驚きを見せていた。その理由は、自身の攻撃がナツにダメージを与えられていなかったせいである。
「そうか…これがアレンの覚醒の二段階目…卍解の能力か…」
ゼレフはその力を値踏みするように言葉を発する。そんな風にしてナツを眺めていたゼレフであったが、後ろから声を掛けられたことで、その視線をそちらに移す。
「あなたは一体どこで、私たちの秘密を知ったんですか?」
「どこって…アレンから聞いたんだよ」
ゼレフの言葉に、ヒノエは目を見開いて驚きを見せる。
「どういうことだ?」
ゼレフの言葉に、グレイが怪訝な表情を浮かべる。
「君たちは知らないかもしれないけど…僕とアレンは、親友なんだ」
その言葉に、ヒノエやグレイ、ナツだけでなく、皆が驚愕の表情を浮かべる。
「アレンが、てめえなんかと親友なわけねえだろうが!」
「…君たちは、4年程前、アレンとアクノロギアがエーテリオンによって死んだとされていたあの日以降、アレンがどこにいたか聞かされているかい?」
ゼレフの言葉に、エルザとミラが目を見開いて驚きを表す。
「…過去…」
「よかった、それは聞いていたんだね…。アレンは今からおよそ100年前のこの世界にタイムスリップした…。そして、その世界で、僕とアレンは出会った」
かつて、アレンから過去に行っていたという話を聞かされていたエルザ達は、次第にゼレフの言葉に耳を傾ける。
「僕とアレンは4年間、毎日共に過ごし、アレンが元居たこの時代に帰れる研究をしていた。もちろん、互いに研鑽しあったり、魔法の勉強をしたりしてね…。わかるかな?君たちがアレンと再会できたのは、僕のおかげなんだよ…」
「そんな…まさか…」
カグラが酷く困惑したように言葉を漏らす。それは、他の皆も同じであった。
「そして、君たちは…一体どれほどの時間をアレンと過ごしたのかな?まあ、ヒノエとミノトに関しては、例外だけど…。僕は知っている…君たちがたいしてアレンと共に人生を歩んできていないことを…」
ゼレフの言葉に、皆が苦虫を噛んだような表情を見せる。フェアリーテイルのメンバーの中で、ヒノエとミノトを除けば、一番アレンと長い付き合いなのはエルザとジェラールである。そんな2人がアレンと出会って凡そ10年くらいになるだろうか…。しかし、一緒に過ごしたという問いになると、1年にも満たないだろう。10年クエストや100年クエスト、そして死んだとされていた空白の時間…。フェアリーテイルのメンバーは、思うほど長くアレンと交流を持ってはいないのだ。
「君たちはアレンのことを何も知らない…。強さの秘密も、胸に秘める思いも…そして、その目的も…」
「なにが言いたいの…」
ウルティアは、ゼレフを睨むようにして言葉を漏らす。
「…はっきり言おう…。君たちフェアリーテイルは目障りなんだ…。アレンの足を引っ張り、邪魔しかしていない。対して実力もない癖に仲間面している君たちがね…」
ゼレフの言葉に、フェアリーテイルの皆の顔に怒りの表情が浮かぶ。
「仲間面だと…。俺たちは正真正銘、アレンの仲間だ!」
ジェラールが激高したように言い放つ。
「そう思っているところが、腹立たしいんだ…。君たちでは、アレンの力にはなれない…。現にさっきも、アレンが意識を取り戻さなければ、ウルキオラに殺されていただろう」
ゼレフの言葉に、皆は言い返せないのか、苦悶の表情を見せる。
「…あなたはウルキオラの仲間でしょう?なら、あなたはウルキオラがアレンを虚化させることを知っていたはず…」
「そうだね、もちろん知っていたよ」
ミラは、気付いたようにゼレフに言葉を投げかけた。そして、その問いに対して帰ってきた言葉に、酷く怒りを滲ませる。
「アレンにあれほどの苦しみを与えること容認したあなたが、どの面下げて親友と呼べるんだッ!」
ミラは、普段の様子からは想像もつかないような怒号をゼレフにぶつける。その様に皆は目を見開いていたが、ミラの言うことはもっともだと思い、ゼレフを睨みつける。
「それだよ…その言葉こそ、君たちがアレンのことを何も知らないという証拠さ…」
「どういう意味だ…」
ゼレフの呆れたような口調に、エルザが低く唸るように言葉を言い放つ。
「アレンが、虚の力を制御できないと思っているのかい?僕はアレンならきっと使いこなせると思って、ウルキオラの計画に乗ったんだ」
ゼレフの言葉に、エルザは身を震わせて拳を握りしめる。
「…お前のその勝手な思いが…アレンを苦しめた!片目を失わせた!仲間をその手で殺させようとした!」
「キョウカの仕業だね…その点は済まなかったと思っているよ。彼女の残虐性を見抜けなかった僕の責任だ。でも、さっきから言っているように、君たちはアレンの仲間じゃないって言ってるじゃないか…」
「き、貴様…」
エルザは全く話の通じないゼレフに、激高して詰め寄り、更に言葉を投げかけようとしたが、ナツの手が、エルザの歩みを止める。
「ナツッ…」
「もういい、エルザ…。お前の思いは、皆の思いは…こんな奴には届かない…」
ナツはエルザの、皆の気持ちを汲み取りながら言葉を放つ。エルザやカグラ達の目には、小さく涙が溜まっているのが見える。
「…アレンが無事に俺たちのいる時代に帰ってきた。それがもし本当にお前のおかげなんだとしたら…素直に礼を言う…」
「な、なにを言っているんだ…ナツ…」
エルザは、ゼレフに礼を述べるナツに怪訝な表情を浮かべる。
「だが、それだけだ…。これから先のアレンの人生に、お前も、ウルキオラも…必要ねえ!お前らの思考が、存在こそがアレンを苦しめる!!」
ナツはそう言い残すと、その拳に炎を纏わせてゼレフを威嚇する。
「そうか…もう何を言っても理解してはもらえないみたいだね…。だけど、最後に一つだけ…君たちに伝えておくよ…」
「あ…?」
ゼレフの言葉に、ナツは挑発的な返答をする。
「後から来たものはわからないだろうが…。さっき僕が言った、アレン達はこことは別の世界…遠い異世界から来たという話を覚えているかい?」
「それがなんだ…」
エルザは抑揚をつけずに、ゼレフに言い返す。
「アレンのこの世界での使命は…三天黒龍を倒すこと。そしてその使命を終えたとき、彼は元の世界に帰ることになる…。そうだよね?ヒノエ、ミノト…」
ゼレフの言葉に、皆が驚愕の表情を浮かべる。
「な、何だと…」
「アレンが、ヒノエとミノトが…いなくなる…」
エルザとミラは、酷く困惑した表情を見せる。
「っ!なら、私たちも一緒に行けばいいだけよ!」
ウルティアが思いついたように言葉を放つが、それは悉く否定される。
「言ったろう?世界線が違うと…例えアレン達の元居た世界…星を見つけられたとしても、一体そこまでどうやって行くつもりだい?」
ゼレフの言葉に、皆がお手上げといった様子で黙り込む。だが、ウルはそんな皆を掻き分け、ゼレフに問いかけた。
「解せないわね…。それだけ離れている場所…世界に行けないとして、アレン達はどうやって帰るってんだい?」
ウルの言葉に、皆が気付いたように目を見開く。
「ああ、そうか。そういえばまだ話していなかったね…」
「なにをだ…」
ゼレフはウルの短い問いに、ふっと笑いを漏らす。
「そもそも、アレンやヒノエ、ミノトにウルキオラは一体どうやってこの世界に来たと思う?」
その言葉を聞いて、皆は更に驚いた様子を見せるが、それを超えるような驚きをヒノエとミノトは露にすることになる。
「まさか…あなた…」
「知っているのか…」
ヒノエとミノトの焦りように、フェアリーテイルのメンバーは怪訝な様子で3人を交互に見つめる。
「うん、知ってるよ。アレン達はめが……おっと…どうやらお喋りはこれくらいかな…」
「なんだ!何を言おうとした!!答えろ…ッ!」
エルザは途中で口を閉ざしたゼレフに、激高した様子で答えるが、空に現れた絶望に同じように口を閉ざす。
「なっ…まさか…あいつが…」
「嘘だろ…」
「こんな力…」
「あれは…本当に竜なのか…」
エルザ、ラクサス、カグラ、ウルティアが狼狽した様子で小さく呟く。今までも、強者という者には多く会ってきた。そう、それこそアレンやアクノロギア、今さっきであったウルキオラやイグニールなど、自分の力など遥かに超える存在など上げればきりがない。だが、今あの空に出現したあれは、そのどんな強者とも常軌を逸脱していた。そう、まるで…。
「…黒き光を放つ神の登場だ…さて、いくら3体のドラゴンで立ち向かうとはいえ、倒せるかな…」
黒き光を放つ神…その言葉に、その場にいるものはどこか納得してしまう。そう、これほどまでに感じる畏怖と圧倒的な威圧…そして自身との差を推し量ることすらできない実力…『神』と言われても、疑う余地のないものであった。そんな風に、皆が我を忘れて空を見上げている中、ゼレフは小さく言葉を口にする。
「いや…そもそも戦いになるのかな…ウルキオラ…君ほどの力を有する者が、なぜアレンを求めたのか…今、理解したよ」
ゼレフは含みある言葉を言い放ち、アルバトリオンへと立ち向かう3体の竜の後姿を見守るようにして眺めていた。 
 

 
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