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ハイプレッシャー・ヒット座衛門

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ハイプレッシャー・ヒット座衛門

背筋腹筋横着筋の痛みにハイプレッシャー・ヒット座衛門が出張おなら治療をしてくれるという。しかも鹿がいないとシカとされる歯科衛生士の学校からしっかり説明していた。しかめっ面としかえしは、歯周病治療がうまくいかなかった患者で、その歯周病治療に自信がないらしい。
「歯医者さんて、もっと優しいところだと思っていました」
「でも、痛くなかったでしょう?」
「ええ、それはそうですけど……」
「じゃあ、それでいいじゃないですか」
「……」
「私だって好きでやってるわけじゃないんです。だから、嫌な顔をしないでくださいよ」
「はい……すみません」
「とにかく、もうちょっと通ってくださいね」
「分かりました」
しかし、歯科の入れ歯は歯科医でも少ししかできない。たしか滋賀県に鹿しか司会しない歯科医がもしかしたらいるかもしれないと噂があった。だが、その歯科医は本当に鹿しかやらないのだろうか? もしそうなら、その医院に行ってみたいものだ。そして、その歯科医が言うには、
「入れ歯を作ったら、必ず合掌して『ありがとうございました』と言ってくれますか?」
と言うのだそうだ。その歯科医は合掌しないとどんなことになるのか教えてくれなかったそうだ。だが、合掌しないとどうなるんだろう? そんなことを考えているうちに、私はだんだん怖くなってきた。
ある日、私は朝から晩まで仕事だった。夕方六時に仕事を終わらすと、会社近くの商店街へ買い物に行った。
商店街では、肉屋の前で、七十歳ぐらいのおばちゃんが牛一頭分ほどの牛肉を買っていた。私は、おばちゃんの後ろに並びながら、 〈この人はきっと牛肉を食べたいに違いない〉 と思った。そこで、私はすかさず、「ハイプレッシャー・ヒット座衛門助けて」と叫んだ。じゃんじゃんジャンガリアン♪~。ヒット座衛門のテーマが鳴り響く。そして、肉屋の主人が私の方を振り向いた。
〈さぁ、これでおばちゃんの腹痛は治ったぞ〉 と思った瞬間、おばちゃんは買ったばかりの牛肉を一口食べてしまった。
〈あーあ! なんてことをするんだ!ヒット座衛門~。悪い肉屋をやっつける。
「おー!」
「うわ、なにをする。やめろ。私は肉屋だぞ。私がいなくなったら誰が牛を買うんだ」
と主人は言った。
〈大丈夫だ。ヒット座衛門がいる限り、肉屋は安泰だ〉 と安心していると、今度は八百屋の前に来た。すると、そこにいた客のおじさんが突然倒れた。おばさんがあわてて駆け寄る。北海道伊達市大滝区。長流川《おさるがわ》の支流にナイアガラの滝がある。
そこから車ですぐの場所に広大な牧場が切り開かれている。
大滝パイロットファームの看板が赤く染まっていた。
「大変だー。ホロホロ山が噴火したよー」
「こわいねぇ。どうするんだろうねぇ」
地元集落民が爆発炎上する山頂を望遠鏡で眺めている。
すると自治会長が酒瓶を風呂敷に包んで持って来た。
「あんたら、何辛気臭い顔してる? 御通夜みたいだ」
「何言ってんだ。天変地異だよ。一大事だ」
住民の一人が突っかかる。
「は? ありゃーお寺さんの護摩でないかい?」
会長はどっかりと集会場の縁側に腰を下ろした。
「お寺さんって……あんたが許可したのか? 山火事になったら……!」
「何だ。一週間前から回覧板まわしてるだろ。滞っているんじゃねえよ」
会長が一喝した。そして回覧板のコピーを広げる。

そこには「臨済宗相克寺亜派《りんざいしゅうそうこくじあは》・金楽寺《きんらくじ》開刹《かいさつ》のお知らせ」と書いてある。
「そんな話、聞いてねぇぞ! 勝手に話を進めるんじゃねえよ」
男たちが突っかかる。すると会長は「だったら総会に出てこいや」と叱った。

格差拡大による分断が集落を蝕んでおり村営牧場に支障を来たしていた。
その修復に内地の偉い坊さんが名乗りをあげた。親鸞聖人の教えで解決できるという。心を一にして祈ればよい。崩壊の危機に瀕した集落は寺にすがった。

「どっちにしろ満場一致で決まったことだ。聞く耳持たないお前らが悪い」
会長が落ち度をあげつらうと反対派は黙った。
俺も噂には聞いていたが、まさか本当にやるとは思わなった。もっともバブルの余波で潰れた廃寺が立ち直ることに意義はない。荒れ放題だったからな。
頃合いを見計らってお盆のおさがりを出すと反対派どもは拒んだ。
「だから食べなさいってばあさんが……」
「こんなもん食ったら餌付けされたといわれるじゃねーかよ」
「カネは出さずに口は出すっていう輩にはご飯をあげろって、ばあさんが」
イライラは血糖値の問題だと祖母がいうのだ。
「うるせえ!  親父は酒代ぐらいは出すからって言ってたからな!」
男は不承不承ながらも慶事なので慣習どおり祝い酒代ぐらい出すという。
「……親父じゃなくても言ってるよ」
俺がチクリと刺す。 
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