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猫とインスタ

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第二章

「いい子よ、白い雄よ」
「犬はそうね、けれどね」
「猫は違って」
「すぐにあれしろこれしろで」
 今はクッションの上に丸くなって寝ているシロを見て話した。
「無視したら噛んだり引っ掻いたりで」
「暴力振るってくるのね」
「そうよ、ご飯頂戴とか遊んでとか」
「そんな娘なのね」
「そう、それでこの娘インスタに撮ってるけれど」
 シロを見続けつつさらに話した。
「撮りたい感じにはね」
「撮れないの」
「それどころか撮ろうとしたら」
 その時はというのだ。
「怒るのよ」
「撮られるの嫌いなの」
「そうなの、本当にね」 
 こう言ってだった。
 桜はスマートフォンを出した、そうして。
 シロを撮った、すると。
 これまで寝ていたが顔を上げてだ、怒った顔で鳴いてきた。
「ニャア」
「この通りよ」
「さっきまで寝てたのに」
「それがよ」
「すぐに起きてなのね」
「寝ててもね」
 それでもというのだ。
「起きてよ」
「文句言ってくるのね」
「これが猫よ、けれどね」
 笑ったままだ、桜は紅葉に話した。
「一緒にいたら楽しいし退屈もね」
「しないのね」
「寂しいなんてね」
「思わないのね」
「シロが来てから」
 まさにその時からというのだ。
「一度もね」
「なかったのね」
「ええ、だからこれからもずっとね」
「その娘と一緒にいるのね」
「そうするわ」
 自分のところに来たシロの頭を撫でて言った、すると。
 シロはさっきは怒っていたが今は喉を鳴らした、桜だけでなく紅葉もそんな彼女を見て目を細めさせた。
 桜は結婚して子供が出来てもシロと暮らした、時々彼女を連れて実家に帰って親兄弟と合わせたりもした。そうして彼女との生活をずっと楽しんだ、しかしシロはずっと我儘でインスタの画像を撮ると怒った。そのことは変わらなかった。


猫とインスタ   完


                   2022・7・28 
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