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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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解けない誤解

 クラス対抗戦後最初の日曜日。

 あの襲撃後は予想通り結構な騒ぎでした。
 クラス対抗戦は当然のように中止となり、データ収集だけは行うということで模擬戦だけを行い終了しました。
 戦闘を行った私たち4人は2,3日聴取を受けて改めて口外しないことを約束。
 幸いにもあの謎のISのおかげで外部への通信、映像は流れていなかったので他のクラスメイトの人たちから特に聞かれることもなく(一夏さんと凰さんはそうはいかなかったみたいですけど……)実験中のISの暴走ということで話は収束していきました。

 そして今日は一夏さんが家を見に行くというのでIS学園にはおらず、私は久しぶりに静かに部屋の中で読書をしています。

 前から一夏さんがいるとISの練習だ、勉強だといって押しかけてくるのでこういう時間は久しぶりです。
 いえ、私もついでに勉強させてもらっているので迷惑ではないんですけど……偶にはゆったりとした時間も欲しいですよね。

「あ、もうこんな時間ですか」

 ふと時計を見るといつの間にか11時になっていました。8時に読み始めたのに、やっぱり集中していると時間が経つのが早いですね。
 読みかけの本に栞を挟んで部屋を出ます。
 目的地は食堂。休日は寮に留まっている人は大抵が部活動や自分の部屋で趣味に耽っているためいつもより人が少ないです。

 遠くから部活に勤しむ人たちの声が聞こえてきてきます。それでさえも小さく、別の場所にいるような気になってしまいますね。

 食堂へ行くとやはり人は疎らでした。
 まだ少しお昼には早い時間だからかもしれません。こういう時は人気のある、普段あまり食べれないものを注文できるので得した気になります。
 
「あれ? あんた……」

 トレーを持って定食を待っている時、後ろから声を掛けられたので振り返るとそこにはいつも通りの制服を着た凰さんが立っていました。

「ああ、凰さん。今からお昼ですか? 早いですね」

「あんたもね」

「まあ、そうですね」

 そう言って私の後ろに並びました。

「凰さんはまたラーメンですか?」

 この間……というより食堂で凰さんを見るときは必ずラーメンを食べていると思います。見たのは3回だけですけどね。
 そういえば一夏さんも凰さんはラーメンが好きだって言っていたような気が……

「何よ? 文句ある?」

「文句はありませんけど栄養が偏りますよ?」

「大きなお世話よ」

「まだまだ育ち盛りなんですからバランスよく食べないと……」

「なんですって~」

 あ、あれ? なんか地雷踏みましたか? 凰さんは自分の胸の部分をトレーで隠しながら私のほうを睨んできます。
 いえ、確かに凰さんの胸囲は他のクラスメイトの方々と比べてもあまりないと言えますがそれがいいという人もいるわけで……
 それ以前に私も似たような感じであるわけで!

「あ、ほら、ラーメン来ましたよ」

「む……仕方ないわね。この件は聞かなかったことにしてあげるわ。ほら、行くわよ」

「はいはい」

 そもそもそういう意味で言ったわけじゃないんですけどね……凰さんにこの話題を振るのはやめておきましょう。私も言ってて悲しくなりますしね……
 というよりいつの間にか一緒に食べることになってるんですね、私たち。
 窓際の日当たりのいい席に陣取って昼食を取り始めます。

「やっぱりここの食堂はおいしいですね」

「そう? まあまずくはないわね」

「それ以前に凰さんってラーメン以外頼みます?」

「私をなんだと思ってんのよ……」

 一瞬昔見せてもらった日本の漫画でラーメンマンというキャラがいたのを思い出してしまいました。凰さんの場合は女性ですしラーメンウーマン?

 頭の中でおでこに『中』の文字が書かれて特徴的な髭の生えた凰さんを想像してしまった……

「くっ……ぷぷ……」

「あんた……絶対なんか失礼なこと考えてるでしょ……」

「そん……なこと、ふふふ……」

 ふ、腹筋が……

「ええい! 笑うのをやめい!」

「いふぁふぁふぁふぁ! いふぁいでふふぁんはん!」

 凰さんにほっぺを抓られて思うように言葉が出せません。
 っていうか痛いです! 爪を立てないでください!
 私の目から涙が出始めてようやく凰さんは解放してくれました。

「すいませんでした」

「ふん、分かればよろしい」

 再びラーメンを食べ始める凰さん。

 凰さんは見た目が他の人たちと違って小さいので妹のように思ってしまうのだがそういう扱いをされるのがすごい嫌みたいですね。
 それは誰にでも言えるかもしれませんが、凰さんは特に顕著に現れてると思います。

 そんなことを思っていると凰さんはラーメンを食べ終わったのか、スープを飲み……

「ちょ……ちょちょちょちょっと凰さん!?」

「んあ? 何よ?」

「レンゲあるんですから使いましょうよ!」

 あろうことか凰さんはラーメンの丼に直接口をつけてゴクゴクと飲んでいます。

「嫌よ」

「な、何でですか?」

「だって何か女々しいじゃない」

 あなたの性別は一体なんなんですか……


――――――――――――――――――――――――――――――


 昼食後、凰さんはやることもないというので一緒に私の部屋に来ています。と言っても私もやることはないので基本は本を読むか銃器の整備をしているだけです。
 凰さんはベッドの上で寝転がりながら私の本棚から面白そうな本を探して読んでいます。

「あんたさあ、休日っていつもこんな感じなの?」

 本に目をやったままベッドに寝転がって足をパタパタさせながら凰さんが聞いてきました。それよくやりますけど下着が見えてしまうので人前ではあまりやらないほうがいいですよ。

「そうですね。IS学園にくる前なら本を読むか銃器の整理かで一日終わっていましたよ」

「銃器って……そういえばそんな趣味持ってたわね」

 凰さんが顔を上げて飾り棚にある拳銃を見て言いました。そんなマジマジ見ないで下さいよ。恥ずかしいじゃないですか。

「ん? 来る前ってことは、ここに来てから変わったの?」

「というより変えられたといったほうが正しいんですけど」

 変わらざるをえませんよね。

「なによそれ?」

「ええ、一夏さ」

「一夏がなんですって!」

「ひい!」

 一夏さんという言葉に反応して凰さんが跳ね上がって私に詰め寄ってきました!

 あまりに突然だったので変な声を上げてしまいましたが……

「あんたの休日と一夏となんの関係があるって言うのよ! ま、ままままさかもう一夏とそういう関係とか言うんじゃないでしょうね!?」

「ああああああああ、頭を揺らさないでくださいいいいいいいいいい」

 その上襟首を掴んで前後に揺さぶるものだから話なんて出来ません!
 それに気づいたのか凰さんが手を離してくれました。

「あ、ごめん」

「お昼を戻すかと思いましたよもう……」

「で?」

 そこは無視なんですね……

「一夏さんの部屋が隣なのは知ってますよね? それに加えて私は一夏さんの席の後ろなのでよく授業のことやISのことを聞かれるんです。最近の休日はずっと授業のことを教えたり、一緒にISの練習をしたりしてるんです。それだけですよ」

「そ、そう……それだけなのね」

「それに凰さんが来る前の話ですから。セシリアさんや箒さんも一緒でしたし」

「あの二人も一緒だったの!?」

 ですから襟首を掴まないでくださいってば!

「え、ええまあ。同じクラスですし」

「そう、そうよね。同じクラスだもんね」

 襟首から手を離した凰さんは少し下を向いてしまいました。
 なんか寂しそうですね。
 それはそうかも……一人だけクラスが違うせいでこういう風に頼られないし、私たちに比べて話をする時間も相当少ないはずですから。

「でも凰さんが来てから一夏さんは嬉しそうでしたよ? 話し相手ができたって」

「なんかあんたに言われても同情されてるみたいで嬉しくないわね」

「そうですか?」

 そう言いながらも頬を染めてソッポを向いてしまう凰さんはやっぱり可愛いんだと思います。

「来週また一夏さんが誘ってくれると思いますし、凰さんも一緒にどうですか?」

「い、いいの!?」

「まあ一夏さんなら私が提案する前に誘ってくれると思いますよ?」

「ん……んん……そう、一夏の頼みならしょうがないわね。仕方ないから私も手伝ってあげるわ!」

 これが所謂ツンデレ………というやつですか……

 エッヘン! と腰に手を当てる凰さんを見て私はそれしか思いつきませんでした。

「それにしても……えらい余裕ねあんた」

「ふえ?」

「そうか……これが強者の余裕ってやつね。あの二人と比べてよっぽど……ブツブツ」

 あ、あのー、鳳さーん? 何かすごい誤解してませんか? 乱入騒ぎの時も誤解してましたけどもしかしてそのままだったりします? 今なら邪魔も入りませんし誤解を解くチャンスですね。
 私が弁解しようとしたとき、凰さんが何かを思いついたように呟きました。

「そういえばカストの部屋って一夏の隣なのよねえ……」

「は? はい、そうですけど……凰さん?」

 何か物凄い嫌な予感が……!

「ああ、いいのよ! 凰さんなんて他人行儀な物言いしなくて! 一夏と同じように鈴って呼んで、カルラ(・・・)!」

 物凄い笑顔が怖いんですけど!
 そういえば笑顔って元々攻撃的なものって聞いたことありますよ!

「でね? カルラ。私たちって友達よねえ?」

「え、ええっとぉ……」

「今日から私の部屋もここにしたいんだけど良い? 良いわよね! 良いと言え! 返事は聞いてない!」

「拒否権無しですか!?」

 ひどい! ここに小さな鬼がいます!

「あったり前じゃない! 友達の頼みは聞くものよ!」

「まあ……いいですけどね。私は」

 元々二人部屋のせいで持て余してる状態でしたし別に鈴さんが入ってきても……

 そう思ったとき……


コンコン


 誰かが扉を叩く音が……最近このノックの音がすごい怖いんですけど病気でしょうか?

「カルラいるか? 少し話があるのだが……」

 扉の向こうから聞こえた声は……箒さんの声ですね。

「はい。開いていますのでどうぞ」

「うむ、では失礼する……っ! 何故貴様がいる!」

 箒さんは入るなりベッドに寝転んでいる鈴さんを指差して叫びました。

「何よ? 私がいちゃいけないの? さっさと用件すませなさいよ」

「む……その言い方は気に入らないが……確かにもっともだ。カルラ、折り入って頼みがあるんだが……」

「はあ、なんでしょう?」

 嫌な予感しかしません。

「その……だな……実は部屋変えが言い渡されてな。相手の部屋も決まっているのだがどうもその……何というか……そう! 私が行くと上手くいかなさそうでな! カルラの部屋に入れさせてもらえないか!?」

 嫌な予感的中! そんなの的中しなくていいんですよ本当に!?

「あ、ごめん。それ無理」

 しかもなんで鈴さんが答えるんですか!

「……私はカルラに聞いているのだ。お前には聞いていない」

「関係あるわ。今日から私がこの部屋のもう一人なんだから」

「なんだと!? それは本当かカルラ!」

「あわわわわわわわおおおおおおちいちちちついててててて!」

 ですから鈴さんも箒さんも人の襟首を掴んで頭揺らさないでくださいってば!

「あ、すまん」

「もう………」

「で?」

「正確にはまだです。確かに私は許可はしましたけど先生にちゃんと許可取ったわけでもありませんし……」

「よし! ならばここは同じクラスの私が………」

「後から来て何言ってるのよ! ここは私が住むの!」

「ふん、ならさっさと先生の許可を取ってきたらどうだ? 織斑先生の………な」

「う………な、ならあんたもさっさとその織斑先生の許可を取ってきたらどうなの!?」

「そ、それは……」

 そうなんですよね。一年生の寮長はなんと言ってもあの織斑先生。
 二人から見ればそれは要塞対歩兵の戦いです。どう考えても勝ち目はありません。

 そう思ったとき……


コンコン


 誰かが扉を叩く音が……デジャヴ!? デジャヴなんですか!?


「カルラさん? お話があるのですけどいらっしゃいますか?」


 扉の向こうから聞こえた声はセシリアさんのもの……誰か助けて……


 結局その後セシリアさんも交えて誰が私のルームメイト……一夏さんの隣の部屋になるかの大論争。

 しかし『三人寄れば文殊の知恵』と言いますが、あの鉄壁要塞(織斑先生)を崩す算段は全く出ず、近日中にIS勝負で勝った人が織斑先生に直談判に行く、ということで決着が付きました。

 ちなみに3人の大論争の間、私は完全に蚊帳の外で弁解を行う余地がなかったのは言うまでもありません。 
 

 
後書き
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