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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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56話 悪のLabyrinth【迷宮】

 
前書き
 
仮面ライダーディープスペクター

パンチ力 640t
キック力 1,275t
ジャンプ力 420m(ひと跳び)
走力 0.5秒(100m)

上記の値はあくまで初期値である。
 
主な能力の変化はなし。自身の心理とライダーシステムが同期し、怒りなどでエネルギーが《《本人の意志を無視》》してチャージされる。そのため感情という名の爆弾を抱えながら戦っている。
 
また、別の諸刃の剣も抱えている。 

 





「ふぅ............」
「ヘビースモーカーね..........」
「このタバコに有害性も依存性もないぞ。」
「知ってるわよ...........ホント、あなたって何しても絵になるのね。」
「当然だろ?逆にそうでないと完全無敵の男は間違っても名乗れねぇよ。」


危険地帯から抜け出した鞠莉と共に浦の星校舎の裏側にある駐車スペースで2人黄昏れる。普通の人なら腰を抜かしていてもおかしくない状況でいたにもかかわらず、彼女はそれを微塵も感じさせない。流石は俺たちの戦いを見てきただけあるのか................


「ねぇ..........才は知ってるんでしょ?稜に起こったこと...........」
「あぁ。でも奴は『実の』父親のことしか言わなかった——————その意味はもう答えるまでもない。自分の弔い合戦にわざわざ俺たちを巻き込む必要はないと...........」
「——————それってさ。私のせいじゃない?」
「あ?」


月影で目元が暗くした鞠莉が、僻んだ言葉を口にする。


「だって私が稜に関わらなかったら、稜のパパは死ななかったんでしょ?私と一緒にスクールアイドルに関わらなかったら稜のパパは殺されなかったかもしれないのに———————」
「———————否定はできないが肯定はもっとできない。」
「え?」
「お前がスクールアイドルをやってなかったらAqoursはないわけだし、稜もいなかった。偶然ではあるが、稜の父さんは俺たちの夢のために戦ってくれていたのかもしれない...........そんな犠牲の上に立つ俺たちが夢を諦めちゃいけねぇんだよ。」
「でも——————————」
「滅にどんなことを言われたか知らないが、今あることが現実。俺たちは現実の中にも夢を持って進まないといけない!たとえ夢が叶わないと知っていても、夢想家(ドリーマー)でいなきゃいけねぇんだよ!————————奇跡は諦めない者にのみ舞い降りるからな。」


咥えているタバコの煙はすぐ消える。だが人の想いはそんな風には消えない。諦めれば一生後悔する。中途半端など最悪だ——————特に3年生には未練を残してほしくない。そう思っているから果南やダイヤは無理にでもライブをやりたがっていたのだ。その無茶を応援しないでAqoursの管理人が務まるかよ。


「才..........」
「今日はもう寝ろ。花火大会まであと2日しかないんだ。この2日間でダンスの最終調整に、演出を兼ねてのリハーサルもしなきゃいけない。」
「そうさせてもらうわ————————あっ!」
「ん?」
「曲名って............決まってなかったわよね?」
「お前が作曲した曲だし、それが決まる前にはAqoursは一時解散してたからな。」
「じゃあ今決めるね。私たちの船出の曲—————————!!」



————————※—————————




「はぁ...........はぁ.........まだまだ!」
「———————————」


魁もといダークキバはアルティメットクウガとの戦いが熾烈さを増す度に森の奥へと入っていく。樹海とも構造が少し似ているようなこの地帯は、夜になると非常に暗くなる。不気味さがより一層増す。ただ好都合。闇の住人である彼にとっては。

才から託されたガシャコンキースラッシャーが連撃する。後退を見逃さずガンモードに切り替えて追撃の光弾を放つ。ダークキバの専用武器でないにも関わらず、こうも使いこなせているのは彼のセンスがあるのだろう。

センスで言えば才、魁、竜介が3強と言える。ただ状況判断や経験値のようなものをうまく使いこなしているのは稜と虎太郎、そしてまたもや才だろう。


「アーク、ちょっと昔まで俺はお前を信じていた。俺が王になれるならそれを進められるのならどうでもよかった。でもお前の本性はこれだ!!人間を貪り支配する..............父親とお前を盲信していた以前の俺がつくづく愚かだったか思い知らされるよ。」
「———————————」
「虎太郎.......こうなってしまったのは俺の責任でもある。だから........せめて俺がアークの呪縛から解き放つ!!」
「——————————!!」


押し寄せた闇の波動を間一髪で避ける。そして再び光弾をアルティメットクウガに放つ。しかし効果はちっとも出ない。


「やっぱりこれを使うしかないか——————」


≪マキシマムガシャット! キメワザ!≫

≪ MAXIMUM MIGHTY CRITICAL FINISH!!≫


遺伝子の螺旋構造に巻き付かれたレーザービームがアルティメットクウガに向かう...........が、空間転移のような技を使われて回避されてしまう。手を翳して起こした爆発をダークキバは見逃さず避ける。


「避けた.........!ということはこのリプログラミングってのは本当に効果あるらしいな........!」


しかしながらこの攻撃も当たらなければ意味がない。瞬間移動という回避の最上級の技がある以上、それも困難に——————————


「諦めるのはまだ早ぇぞ!!!!!」
「!!!!!」


≪ ボルケニックナックル! アチャー!≫ 

≪オメガ斬り!≫


薄紫の妖炎を纏った斬撃が悪意のクウガを縦に紫電一閃。ノックバックを喰らったのを見逃さずに、ライトフルボトルの電撃パンチを灼熱の拳に乗せておみまいする。


「竜介先生........稜!」
「随分と苦戦してるみてぇだったからな!俺が助けに来てやったぞ!」


ちょっと憎ったらしく言う竜介に仮面の中にある顔を赤くする魁。


「うるさい!今考え中だ!」
「ライダーバトルでは咄嗟の状況判断が物を言う。咄嗟にしてはちょっと長すぎないか?それに、あのクウガには遠距離近距離どちらもアタッカーがいないと厳しいだろ?しかもその攻撃手が脳筋バカとちょっとイタい王様だから..........」
「あぁ!?誰が脳筋バカだぁ!?」
「よそ見するなよ!!」
「うぉっ!」


ダークキバの警告で気づいたクローズを含め、発生した爆発を3人はしゃがむ、左右に身を投げることで回避する。


「危ねぇじゃねぇか!!前もって言っとけよ!!」
「いや言っただろ!?てかこんなことで油売ってる暇はないんだ!!」
「かぁ〜!!」


ちょっと喧嘩しながらも突撃するダークキバとクローズマグマ。それを前もってディープスラッシャーブラスターモードで銃撃するスペクター。しかしそれも闇の引力に飲み込まれてしまう。

左右からビートクローザーとキースラッシャーの刃が闇のクウガを襲い、見事一閃を描く。しかしまたもや闇に吸収されてしまう。


「どっちにしろ物理攻撃は基本的に効かないのか—————どの道そのリプログラミングを当てる以外に方法は無さそうだな...........さっきは戦略立案が長すぎるとか言ったが、これは相当苦戦するかもしれない。」
「俺の推測だが、あの闇の力はムテキゲーマーのような攻撃の無効化ではなく吸収だろう。と言うことはそこに必ず限度があるはず。だがそれには————————」
「ああ!マジ強ぇダメージ与えればいいってことだな?」
「あぁ........まぁ..........そういうことだ。」
「(語彙力..........)」
「だったらこれでやるしかねぇ!!」


≪マックスハザードオン!≫


ハザードトリガーをドライバーの空白部分にセット。そしてレバーを回すごとにクローズのマグマが燃え盛る燃え盛る。


≪Ready go! オーバーフロー!≫

≪ヤベーイ!≫


「うぉぉぉぉ!!!俺のマグマがほとばしる!!行くぞ!!」
「ってオイ!1人で突っ込んでも—————!」
「魁。チャンスを窺う。」
「え?」
「ハザードレベルがさっきのの9.0から20.0以上まで上がっている........通常でも人間離れしているが、それにしてもこのハザードレベルは未踏の域まで来ている。もしそこに少しでも隙ができたのなら、さらに大きな隙につなげることができるかもしれない。」
「ウォォォォォォ!!!」


燃え上がれ燃え上がれと言わんばかりの拳が闇を消し去ろうとする。その手は一向に緩まる気配はない。拳を打ち込むごとに燃え盛るマグマ。ほとばしるマグマ。


「魂が燃える........俺のマグマがほとばしる!!!もう誰にも止められねぇ!!!!!!ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!うりゃぁァァァァァ!!!」


拳の連打の最後に全霊をかけたような拳をアルティメットクウガに打ち込む。するとクウガの体がシステム不良を起こしたかのように、赤色の電流が流れる。

その機会を窺っていたスペクターがそれを見逃すはずがない。その合図を受けたダークキバが緑色の紋章でアルティメットクウガを拘束する。


「いまだ!!竜介先生!!ここで一気にキメる!!」
「お、おう!!」


≪ゲンカイダイカイガン! ディープスペクター!≫

≪ギガオメガドライブ!!≫


≪Ready go! ボルケニックフィニッシュ!≫

≪アチャーアチャアチャ!!≫


燃え上がる紫炎と溶岩。それを混ぜ込むことでより強力な炎に紫電をも付与されたダブルライダーキックが悪意をぶっ飛ばす。

アルティメットクウガの不具合状態は先ほどよりももっとひどくなっているように思われる——————それどころか、瞬間移動も闇の展開も自由自在であったアルティメットクウガが機能停止・行動不能のような状態に陥っているようにも見える。


「チャンスだ!!行け!魁!!」
「言われなくてもそのつもりだ—————-!」


≪ MAXIMUM MIGHTY CRITICAL FINISH!! ≫


螺旋系のレーザービームが今度は外れない。確実にその黄金のボディに命中する。

するとクウガの体からバリアのようなものが展開されると同時に、纏わりついていたドス黒い悪意は体から剥がれ落ちていく................


「虎太郎!」
「うっ..........魁?」
「特に何も無さそうで良かった...........これでようやくアークの呪縛から解放される——————」


ギザギザの仮面の下でスペクターは少し安堵するが、虎太郎は重たい表情のままスペクターを見つめる。


「いや.........本当の勝負はここからだ。」
「え?どういう..........」
「あの闇はまだ.........生きている。」
「「「!?!?!?!?」」」


虎太郎が疲労困憊の様子で指差す先にはクウガのアークルから抜けた闇が空中をグルグルと夜の暗闇よりも黒くいた。そしてその闇が足をつくと............その完全なるメタリックボディが闇とは打って変わってミステリアスに現れる。


「—————————」
「なんだあいつ!?」
「仮面ライダー———————なのか?」
「私は次期創世王シャドームーン.........我が神アーク様の命により貴様らを倒す。」
「危ない!避けろ!!」
「!!!!」


虎太郎の珍しい大声に3人は慌てて回避準備をする。その一瞬後にシャドームーンは緑色の光線を手から放つ。4人とも喰らいこそしなかったが、シャドームーンを爆炎で逃してしまう................しかし、何故逃げたのか変身解除した稜及び他3人は疑問に思う。


「?——————何故逃げたんだ?」
『逃げたわけではない。』
「テメェ!!どっから話してんだ!?!?」
『貴様に答える義理はない。何せこのままこの森で迷って死ぬ男どもだからな!』


竜介の怒号に嘲笑ってそう答えるシャドームーンの声。続けてこう続けて、4人の緊張感や不安感を煽る。


『アーク様は貴様らに最高の場所をプレゼントしたのだ。せいぜい楽しむがよい。このエビルラビリンスを......』
「クソっ!!何なんだよ!!!」
「!?!?——————これは............」


侮辱の声に怒る竜介とは対照的に稜はスマホを見て青ざめ...........いや、一瞬硬直する。その様子に魁は嫌な予感を感じ、虎太郎はすでに諦めていたような態度を取る。


「————————ない。」
「え?」
「稜、まさか..........」
「ああ。GPSが機能しない。」
「GPSが!?——————GPSって何だ?」
「ちょっと竜介先生黙ってくれ——————じゃあ俺たちは!!」
「..............当然だな。アークがアルティメットクウガという依り代を解放する腹いせとしての冥土の土産か.........」


「4人で迷子とか勘弁してくれよ..............!!」


『はぁ』とこの先を案じてついうっかりため息を吐く稜であった。




———————————※————————————




こちら伊口邸。そしてこの家の主人 伊口才とは俺のことである——————と冗談はさておき、俺は果南と電話中。果南には鞠莉を淡島まで送ってもらう役割を果たしてもらった。おそらくその任務完了の連絡だろう。


『鞠莉は淡島に帰ってきたよ。そのあとぐっすり眠ってる。』
「そうか.........よかった。いや、これは感覚麻痺なのかもしれない。が、体に不調をきたすことが唯一の心配事だ。それがなくてよかったよ。ところで淡島へは水上バイクか?」
『うん。そうだよ。』
「わかった。じゃあ、もう明日からは仕上げだ。早く寝ろよ。」
『—————————ねぇ?』


いつもの落ち着いた果南の声のトーンとは少しかけ離れた暗く小さい声というのが電話からも伝わってきた。ただ俺はその不安要素というのが大方予想できていたので動揺はしなかった。


『稜と魁はまだ帰ってこないの?ていうか竜介先生と虎太郎も............明日は終業式なのに—————————』
「ああ。アイツらはまだ帰ってきていない。俺の推測だが、何かしら別のトラブルが起こる。もしこの夜に帰ってこないということがあれば《《そういうこと》》だ。」
『じゃあ——————!!』
「勘違いするな。『帰りが遅くなるだけの話』だ。絶対にアイツらなら帰ってくる。俺がいなくても———————いや、俺たちはアイツらとは物理的に離れていてもどこかで繋がっているんだ。俺たちがそう信じている限り帰ってこないということはない。」


果南に有無を言わせず返答する。理屈は通っていない——————だがそれがいい。理屈が通るのは机上だけでいい。現実は理屈ばかり通していては面白くもない。そして運命を変える力は理屈だけで生まれるわけがない。


『そっか...........そうだよね!』
「というわけだ。アイツらの心配は忘れてくれ。そのことが引っかかってステージでミスなんて俺たちが申し訳ない。それに俺たちにはお前らを守り、支えることが使命。俺たちの事情に入るのは許したが、深入りは許さない。世の中には知らなくていいことだって『それでいいの?』——————え?」


最後の単語を述べようとしたところで割り込まれる。この諭される感じは好きじゃない。


『このことで前にもちょっとぶつかったよね。ごめん。でもそれで本当にいいの?才は............そんな《《距離》》でいいの?』
「これが本当の距離だ。これまでもそうだったし、これからもそうしていく。」
『でも私はそんなの...........才は本当に私たちにもヒーローじゃなきゃダメなの?』
「————————時間だ。」
『ちょっ————』


無理やり切ってしまったが致し方ない。アイデンティティの崩壊こそ俺のムテキの唯一無二の弱点だからな。これ以上は............《《入らないで》》くれ。


prrrrrr................


『オハラエンタープライズ本社ビル』




AqoursにはAqoursの。アイツらにはアイツらの。俺には俺の使命がある。



 
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