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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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54話 Deep【ギザギザ】なハート





「借りは——————返すべきだ。」


俺はマキシマムガシャットを魁に投げ渡した。魁は不思議そうな面持ちでこちらを見る—————————ゲームでの借りはゲームで、戦いでの借りは戦いで返すべきだ。


「これってお前の変身に使うガシャットじゃないのか?」
「俺のはこっちだ。お前に渡したガシャットに変身機能はないが——————リプログラミング機能に特化したガシャットだ。」
「お前が結構前から作っていたヤツか————————」
「そういうこと———————でもそれだけじゃない。」
「え?」
「俺は東京である人に出会ったんだ。μ'sを1番知る男であり、原初の仮面ライダーにな。どうやらそいつ曰く、悪意の塊のアークがこの世界に存在するのと同じように善意の集合体のルーっていう人工知能がいるらしい。」
「ルー?」
「ああ。そしてその善意の人工知能にも協力してもらって作成したのがそのガシャットだ—————まぁ色々と宣っているが論より証拠、使ってみるのがいいだろう。」


しかし一向に魁の顔は晴れない。


「だが、ガシャットはお前にしか使えないはずだ。だからこれを渡されても———————」
「だったら答えは一つじゃねぇか。」
「え?」


ガシャコンキースラッシャーの刃を魁に向ける。魁はたじろぐ様子もなく、その刃を見ていた。俺は威張り気に魁との話を続ける。


「普段のお前ならこんな結論くらい出せるはずだろ?」
「————————」
「今のお前からは闇のオーラも何も感じない。」
「何?」
「さっきも言ったが、覚悟がなくなったからな。」
「くっ..............」
「己に絶望すれば待っているのは敗北だけだ。諦めない限り—————俺たちは1000兆%勝利する。」


ザスッ!!


濡れた校舎の外壁にもたれかかった魁の前に深く、深く突き刺した。

俺はそんな理想論を並べたような他の者たちからすれば詭弁以外に何者でもない、そんな言葉を残していった—————————





でも彼の心には。









—————————※——————————





「OH.......ここはどこかしら?」


目を覚ました鞠莉は状況を飲み込もうとする。鞠莉は自分に金属の拘束具で上半身を拘束されていて、小広い廃屋のような場所に監禁されているという現状だ。何せ急に気を失ったかと思えばこんなところに監禁されているので、頭の整理に時間がかかる。

そんなことをしているうちに大柄な男が廃屋の扉から入ってくる。


「起きたか、小原鞠莉。」
「!!—————あなたは?」
「俺は名は滅————アークが作り出した人工知能だ。」
「AI?それにアークって..........!」
「アークは絶対—————しかし、《《同じような存在》》に対してのラーニングは遅れているそうだ。」
「同じような存在?————————!!!!」


滅の背後に広がる暗がりから突如としてアルティメットクウガが現れる。その黄金のボディを覆い隠すほどの悪意を纏っているのが、鞠莉の目にもよくわかった。


「虎太郎..............何が狙いなの?」
「お前には聞きたいことがある。小原の人間としても..........エグゼイドの仲間としてもだ。」
「——————————」
「では聞こう——————お前らは何者だ?」
「え?」
「お前たちはアーク曰く、お前たちは浦の星学院の生徒数人で徒党を組んでいる。なぜお前たちはそんなことをする?」
「そんなことでいいの?—————私たちはスクールアイドルAqours。浦の星学院存続のためにスクールアイドル活動をしているの。」
「ほう...............」


鞠莉は至極当然のように、また誇りを持ってスクールアイドルであるということを宣言する。鞠莉の性格上、滅とは反りが合わないと言えよう。滅は淡々とデータに基づいて動く人工知能。ユーモアもない。社会的立ち位置である小原家の長女という肩書きを出されるのは、まだ小原兆一郎の影が自分にあるということを言われているのと同じなのだ。

鞠莉のアイロニーじみた発言の意味もも当然滅には理解できないのだろうが。


「ねぇ、いつになったらここを出してくれるの?」
「何..........?」
「3日後に沼津花火大会でライブするの。だから本当はあなたに付き合う時間はないのだけど?」
「———————随分と高飛車な態度だな。」
「そう?でもそうなっても仕方ないわよ。私は絶対に悔いは残さないつもりだから。2年前じゃいなかった仲間も沢山いる。」
「.............2つ目の質問だ。なぜ深天稜が仮面ライダーになっている?」
「—————そんなことどうだっていいじゃない?」
「質問に答えろ。そのライブとやらに間に合わなくなるぞ。」
「なら答えは『知らない』よ。それに、たとえ知っても意味ないし。」


滅はその質問に黙り込んでしまう———————すると、滅の瞳が悪意を宿した赤へと染まったかと思うと、すぐに元に戻った。


「なるほど。」
「????」
「本来死ぬべきであった人間が——————どういうわけか仮面ライダーになっている。まぁ、時間が経てばわかることだろう。」
「何言ってるの?死ぬべきって............一体どういうことなの!?」
「では最後の質問を————『答えてよ!!』


鞠莉の怒声に滅は人間ではおおよそ考えにくい無表情で応答する。


「いいだろう————————」


滅の瞳の奥に眠る悪意。この閑静で暖かい町に息を潜めている悪意は今も嘲笑を続けている——————————







——————————※——————————





≪ダイカイガン! オメガファング!!≫


大鎌から発せられる水色の斬撃。しかしムテキゲーマーには全くもって効果ゼロ。裏拳のスイングでその斬撃はあしらわれる。すぐさま超光速で面前まで迫られ、顔面にストレートを喰らってしまう。諦めずに黄金の胸部装甲を崩そうと試みるも、できるわけがない。

ムテキゲーマーはガシャットギアデュアルを左方向に回す。


≪キメワザ!≫

≪KNOCK OUT CRITICAL SMASH!!≫


ファイターの熱意が籠った赤色の拳がスペクターの腹部にクリーンヒットする。岩をも粉砕する威力のパンチがムテキゲーマーの拳から発せられるのだから、一撃必殺だ。案の定スペクターは変身を強制解除させられる。


「ぐっ..........まだまだ!!!」
『——————これで変身解除は何度目だ?もうこの世界の時間では3日はゆうに経っているぞ。』
「!?—————その声は.........スペクター魂か?」
『そうではあるが———————我はお前の心にある者。決してお前と独立しては存在できないのだ。』
「なら黙ってろ。俺はこの偽物を倒さなきゃならない。」
『————————なぜ偽物だと言い切れる?』
「随分と単純なことを聞くんだな?このムテキゲーマーは弱い。立ち回りも...........殴り方も..........全てにおいて才に負けている。全てがムテキの才には程遠い。いつか勝てる——————絶対に。」
『———————そうやって戦っている内はお前の負けだ。』
「何..........!?」


どういうことだと言いたげな顔で、稜は虚空から聞こえてくる声の元に耳を傾ける。スペクター魂は


『言っただろう?我はお前の心の一部だと。つまりこの世界—————しいては目の前にいるムテキゲーマーはお前の心の写鏡のようなものだ。お前がそうやって戦っている間は————————言わずともわかるだろう?』
「何?」
『お前の迷いの本質..............それは《《お前が何者なのか》》ということだ。』
「俺が何者かだと———————?」
『そうだ。答えはその《《深み》》にある。』
「!!!!」


自分の手にあるスペクター魂が浮き上がり、稜の体から出る闇の筋のようなものを吸収する。そしてアイコンにはジロッと自分を睨む目玉が刻印されていく———————闇を睨みし深淵からの使者。


「これは—————」
『お前の深層心理——————それを内包した眼魂だ。本質を違えているのはともかく、敵に対してそこまでの自信があるのなら。《《覚悟》》があるのなら...............』
「—————————!!」


眼魂を起動すると妖しい青紫の炎が眼に宿った。不安を感じさせる演出を無視して、アイコンをゴーストドライバーにセットする————————がしかし、感電したような痛みが稜を襲う。


「ぐわぁぁぁぁ!」
『覚悟が足りない。一つ言い忘れたがそいつは他の眼魂よりも危険だ。仮に使えたとしても、生半可な気持ちで使えば死ぬぞ。』
「まだまだ!!———————ぐわァァァ!!」
『お前の覚悟は何だ?お前の心にはその覚悟があるだろう!?』
「俺は————————








ずっと見てきたかけがえのない友のため!!


一緒に戦う仲間のため!!


Aqoursのため!!


内浦のため!!


そして—————————






父の意志を知ることだ!!!!






『—————————それでいい。』
「俺は負けない!!これが——————俺の生き様だ!!!!」




「変身!!!!」







——————————※——————————






「どういうことですの!?」
「どうもこうもない。俺の言った通りだ。」
「2年前の未解決殺人事件の被害者が稜君のお父さんって..........!?」
「じゃあ稜のお父さんを殺したのは——————」
「当然、オハラエンタープライズの人間だ。」


場に釈然としない空気が元々暗かった部室に流れる。特にダイヤや果南は納得どころか受け入れることもしたくないかのように。俺はマッチの火でコーヒーの薫り漂うタバコを点灯し、一息つく。


「でもどんな証拠にそんなこと言えんだよ?」
「身元不明の遺体は一年以内にその身元がわからない限り、沼津市が荼毘に付すことになっている。そしてその遺骨は県内数カ所にある納骨堂に納められることになっている。」
「じゃあその中から———————」
「ああ............気配がしたんだよ、そのお骨からは。伊口ファウンデーションのコネで調べさせてもらったら案の定、遺骨の顔予測は俺が見たことのあるとうさんだった—————————————これは動かぬ証拠だ。」
「そんな——————」
「わたくしも誰が亡くなったかは聞かされておりませんでした。稜さんのお父様ならお父様と関係があっても不思議ではありませんわ。」
「稜君は不憫ずら.................」
「うゆうゆ..............」
「でもどうして稜君は................」
「これはアイツ自身の問題だ。俺たちが関わるべきじゃない———————少なくとも心の奥底に留めておこう。」


さっき花丸が言ったように稜に起こった境遇は不憫でしかない。たとえそれが仕組まれた不憫であってもだ。それを誰にも言わず、1人2年間耐えてきたのだ。


「でもそれじゃ辻褄が合わないよ。」
「曜さんの言う通りですわ。だったら先ほど稜さんを襲わせた科学者というのは一体誰なのですか!?」
「————————なら答えは1つしかない。育ての親と生物学的な親が違うということだ。」
「「「「「「!?!?!?」」」」」」」
「小さい時何度か稜の父親に会ったことがあるが、稜とは明らかに似ている要素がなかった。つまり生物学的な親から育ての親が稜を救った——————そして逃避行の末にたどり着いたのがこの内浦なのだろう。」
「酷い...........何で自分の子供を平気で殺せちゃうのかな?」
「わからねぇよ———————わかりたくもないな。」


小原兆一郎然り、それ以上だ。逆に育ての父親はたとえ自分と血が繋がっていなくてもそんな行動に出られたことに敬意を感じる。その人に比べたら《《俺たち》》はまだまだ未熟だ——————————


「それよりどうすんだよ。3日後にはライブだぞ!?」
「それよりってお前.............その3日後の晩に鞠莉を解放するという非通知メッセージを受け取った。その日程をずらすとも考えずらい。」
「そんなぁ!!その期日を守ってたらライブに間に合わないじゃん!!」
「仕方ないよ千歌ちゃん。もし催促なんかして鞠莉ちゃんにもしものことがあったら—————————」
「曜ちゃんの言う通りよ。ここは諦めるしか『私は嫌だよ。』え!?」


曜と梨子が発したネガティヴな言葉に果南は一刀両断する。諦めモードに入っていた部室にピリッとした空気を同時にもたらしてくれた。


「その程度で諦めるの?千歌たちがどう思ってるかは知らないけど、私はやる気だよ?」
「鞠莉さん抜きでライブするんですか!?」
「最悪————————ね。」
「ルビィはみんなでライブしたいよぅ..............!」
「ルビィ、自分が拐われたことでライブが台無しになった自分のことを考えてください。ここは何としても実行するべきですわ。」


ざわざわざわ.............


「——————オイオイ、いつ俺がどれか諦めるなんて言ったんだ?」
「「「「「「!?!?!?!?」」」」」」」
「魁はもう鞠莉を探しに行ったし、祝にも捜索するように頼んである。俺も世界中のサテライトの静止写真を確認してる。監禁場所を割り出すのは時間の問題———————明日にも鞠莉を取り返す。」
「でもそんなことできるの?鞠莉はその滅亡迅雷の手の中でしょ?迂闊にはては出せないわよ。」
「そんなことはさせない。そう決めた俺の運命に変わりはない。」
「相変わらずすごい自信家だね〜チカ感激だよ〜」
「———————————俺は馬鹿にされてんのか?バカチカに?」
「あはは...........でも本当にうまくいくのかなぁ?」


曜にまで疑問符をつけられる始末。全く、俺を誰だと思ってるんだ?運命を作り出す伊口才だぞ?

さて、長話は不要だ。竜介先生にもあのガジェットで捜索依頼を出す。


「竜介先生もクローズドラゴンを。」
「お、おう。」
『〜〜〜〜〜』


クローズドラゴンはサンバ風の音楽を奏でながら空彼方へと飛んでいった。


「俺はやると言ったことは必ず成し遂げる————————絶対だ。」
「「「「「「「「はぁ..............?」」」」」」」」
「いやそこはすごいって言うところだろ...........」




何はともあれ.............反撃開始だぜ。アーク。







 
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