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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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51話 近づくUnknownなもの





「西木野総合病院って...........!」
「あなたも一回来たことあるんじゃないの?」
「確か——————じいちゃんが用があるからと一回連れてこられたような気記憶があるな——————」
「私も一瞬見かけたけどあなたのことは薄らと覚えてるわよ?」
「え?」
「幼稚園くらいの子供なのに、妙に大人びた子がいるってパパが言うから見に行った時にね。」


記憶はたった今薄らと蘇った。前世の記憶こそもうほとんどないものの、未だ此方での俺の記憶は完全ではないのかもしれない。

その話はさておき、俺が子供の頃はμ'sが現役の時。すなわち俺が当時の虎太郎ぐらいの年齢だ。あの時にもう俺は日本の最高学府をぶっちぎりの首席で卒業できるくらいの知識はあっただろう。IQ測定不能とはそういうことだ。

そしてその頭脳がある一つの結論を導こうとしている。それすなわち————


「とすると、西木野総合病院と伊口ファウンデーションとのつながりでお前とオーマジオウは...........」
「オーマジオウって........実の祖父によそよそしいな。」
「うっ、ま、まぁな。」
「半分当たっているが.........これ以上言い当てるのはそれこそプライベートをも把握する神レベルでないと不可能だろうな。オーマジオウとかじゃないとな。」
「そうか..........」
「まっ、何はともあれ中に入ろうぜ。約束の時間はとっくに過ぎてるんだ。」
「あぁ...........」


スナイプに先導されて俺と祝、そしてμ's9人は西木野総合病院の病棟に入っていく。フロントを抜け、入院病棟から遠ざかり、治療病棟や医者サイドのフロアへと進む。どうやら約束の相手は病人ではなさそうだ。むしろこの病院の運営者に近い存在。俺が知っている人かもしれない...............

俺は足を進ませながら祝に小声で尋ねる。


「なぁ、祝。今から会う人のことはお前も知ってるのか?」
「知っているというか—————しかしこれも我が魔王がもたらした因果。全ては君と覗君、しいてはμ'sと関係を持たせるための計らいだ。その意図は我が魔王のみぞ知ることさ。」
「上手く逸らし上がった............」


今言ったように、全てはオーマジオウの掌で踊っているに過ぎないのだ。俺も。この世界も。ただ、踊らせたくないものもあるのだろうが。覇道を行くような風貌と態度を見せながら、王道を進んでいく彼もまた冷酷で優しい人格者だ。

どの道、俺にはこれから起こる未来を教えてはくれないのだ。そしてこの世界にいる以上俺も知りたくない。



自分の未来は自分で切り拓くものだ——————!



ガチャ———



「えっ!稜!?」
「才——————とうとうここまで辿り着いたか。」


面会室と呼ばれる少し広い部屋の真ん中に堂々と座っていたのは、俺の幼馴染で同じくAqoursのサポートメンバーの仮面ライダースペクターの深天 稜だった。


「あぁ、稜君!久しぶりやん!」
「久しぶりって...........そんな気もしますけど、東京事件以来だからまだ1ヶ月ぐらいしか経ってませんよ。」
「それやったらわざわざあの時身を隠さんくても良かったんとちゃう?」
「あの時こそ時期尚早ですよ。」
「あの時?」
「お前らが神田明神まで礼拝に来た時だ。ちょうどそうだな........Saint Snowって奴らと話してる時かな。」
「あの時か———————って!あの瞬間をμ'sに見られていたとなるとなんか恥ずかしい............」
「AqoursとSaint Snowの邂逅!あのショットは飾り物だよ〜」
「え?ショット?どういうことですか花陽さん!?」
「Aqoursが神田明神に来るっていうから希ちゃんに写真を頼んでおいたの。そしたら偶然にも...................!!」


偶然問わず、それは盗撮っていう立派な犯罪だぞ...........まぁ、それくらいAqoursが成長している証なのかもしれないが。

そういえばSaint Snowの2人は東京以来どうしているのだろうか?パフォーマンスができたのはSaint Snowだけなのだ。その経験は重要なものだ。今度探ってみよう。


「そんなことより!今は話があるんでしょ?スクールアイドルの話をするためにパパから待合室を貸してもらったわけじゃないんだからね。」
「あぁ、そうだな。」


ガヤガヤしていた待合室の空気が徐々に落ち着き始める。そして数秒後には静粛がもたらされた。その間、俺は待合室にある冷たい緑茶を湯呑みに注ぐ。


「で?どうして稜とμ'sが繋がってるんだ?まずはそこからだ。」
「———————俺が一時期東京に居た事は知ってるよな?」
「あぁ。」
「その当時にちょうど怪人と戦っている時に鉢合わせたって事だ。それ以降、東京で情報収集する中で度々協力もしたし、戦闘経験も積めた。俺の人生の先輩として尊敬できる人たちだったんだよ。」
「お前、エグゼイドの前では妙に正直だな——————」
「覗さん、才にどこまで話したんですか?」
「そうだな...........『ルー』が存在するってことくらいだな。あとは虎太郎との関係だ。」
「そうですか............なら、もうわかってくれる。」
「何?」


さっきの話の流れから、もうおおよその結論は出ている。あとは答え合わせをするだけさ——————————


「要は、俺たちが戦っているアークとルーは対極の存在。善意と悪意。光と闇。強大なアークを止めるため、巨悪に光照らすために、『アークル』を生み出した。そういうことだろ?」
「正解だ。流石にオレが気にかけるまでもないな。」
「そこで本題。今日の本題は、そのアークルがアークに乗っ取られているのをどうにかしなければならないってことだ。」
「それなら———————」
「それは稜から聞いた。しかし、その機能だけじゃ足りないかもしれねぇ。」
「?」
「つまり、こういうことだ————————」






——————————※———————————










「どうした?浮かない顔して。」
「いや...........ちょっとな。」


あれから俺と稜はμ'sと一通り交流をしてからまたの機会にと言い残して、東京からバイクで内浦に帰宅途中である。そして今現在は、その途中の道の駅にバイクを止め、そして千歌の大嫌いなコーヒーと共に一服している最中である。


「俺がμ'sと通じてたのは、正直お前らには明かすつもりはなかった。でもどうしてもって、祝が頼んできたから今日に至ったわけだ。」
「————————————」
「祝にオーマジオウに会わせてもらった時には驚かされた。俺のことを全て見透かすことなんて当たり前みたいにやってのける。正直、何でアイツが解決しないんだってほどにな。そんな奴がμ'sと才を引き合わせようってことには、大きな意味がある。ということで、何か得られたんじゃないのか?」
「ああ————————μ'sはやっぱりレジェンドさ。ラブライブを作り上げたのは彼女たちと言っても過言じゃない。そのμ'sが最後に行き着いた結論。それは誰にもわからない。ってことが、改めてわかったよ。」
「?」
「その理由はこれから探す。Aqours(アイツら)と一緒にな————————」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「何を?」
「目標に?」
「頑張ったかって———————?」
「はい。」
「そうね.......何を頑張ったかと聞かれると——————」
「やっぱりラブライブでしょ!!」
「ここは廃校阻止では...........?」


議論の起爆剤でも投下してしまったかのような盛り上がり度だ。そしててっきり何を目標にしたかはパッと答えられると思いきや、そうもいかなかったらしい。では何をやりがいにして今までやってきたのだろうか?


「そんなのねぇんじゃねぇのか?」
「え?」
「少なくともオレの見た限りではな。」
「言われてみれば———————————」
「そうかもしれないです。」


スナイプは助言をするように言い放った言葉に、海未さんと花陽さんをはじめ、μ's全員がうなづき始める。


「言葉にできないし、《《言葉にしちゃダメ》》なんだよ!この感覚って言葉に表せちゃったら価値が下がっちゃうんだよ!!」
「言葉に.............」
「いっぱい応援してもらって、成長して、いろんな事を達成しても、その基本って誰でもわかるようなものじゃダメなんだよ!!!」
「その意見には第三者のオレが保証する————————が、言葉に表せてもどの道お前の語彙力じゃ出てこないだろうけどなw」
「いくら何でもヒドくない!?」


彼ら10人が笑う中で、俺は何か心に響いた気がした。何処か冷めきっていた俺の心に暖かく、熱い旋風が舞い込むような。これはこの9人にしかわからない。いや、10人か。ともかく彼女らにしかわからない思想、信念、観念というわけだ。

穂乃果さんと千歌は違う。それも今判別できた。それすなわち—————————









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「どういうことだ?」
「わかんないのか?」
「あぁ...........少なくとも常人の俺には。」


この場合常人というかこの事はセンスの領域になるだろう。いかにも人間らしい、最も理論や論理から遠く離れているようなもの。かと言って魔法のような無為自然なものであるわけでもない———————————つかみどころのない人為物。


「要は、《《俺たちAqoursがしなきゃいけない事なんて何も無い》》ってことだ。」
「何も無い?それはちょっと違うんじゃないのか——————?」
「まっ、これはあくまで先に理解した風でいる俺の独り言だ。じきに俺たちはこの結論に自力で辿り着き、さらに先に進まなきゃならない。だから今はわからなくてもいいんだよ。俺たちで考えよう。Aqours9人とNo.10(俺たち)でな................」
「あぁ———————」


俺は気づいていなかった。


この時、稜は案じていた。もちろんラブライブ優勝だとかそんな次元の話ではない。俺 伊口才のことだ。自分にすら気づかせてくれないような底知れぬ闇。Aqours9人の彼に対する気持ち。その『もつれあい』によってはどんな結果が待ち侘びているかはわからない。俺がどんな剛運を持っていたとしても、完全に人の心まではシャットアウトできないという事を忘れてはならなかったのかもしれない——————————








—————————————————————









「まさかお前から来るとは.............な。」
「俺だって引退したとはいえ、元々μ'sを支えてきたんだ。感じ取れることくらいある。同じ仮面ライダーとしてもな。」


伊口ファウンデーションの会長室に自らオーマジオウに会いに来た仮面ライダースナイプこと白木覗。どうやらただ並ならぬ思いがあるようだ。


「オーマジオウ。アイツの過去に何があったんだ?」
「——————————どういうことだ?」
「一度死んだような人間。どんなに平常を装っていても、その心の奥に眠る底なしの闇。潜在意識のように刷り込まれたその闇は、普通の人間ならまず持ち得る事は考えずらい———————こんな状態である場合、敵や自分に対して慈悲をかけることができなくなる。」
「ほう..............」
「テメェが言ったように仮面ライダーは並行世界にも存在している。という事は、テメェにとって並行世界を行き来することなど容易いってわけだ。つまり——————伊口才は、違う世界からアンタの孫に転生させたってことだ。」
「なるほど。さすがというところか..........」


ため息をつくオーマジオウ。その態度は仮面越しからでも諦めと賞賛のような態度が現れてくる。


「お前の言っていることは全て的中している。才の《《幼少期》》のことでも耳に挟んだか?」
「それもあるにはあるが............1番は匂いだ。」
「匂い?」
「以前《《俺もそうだった》》ように、奴は———————俺のなっていたかも知れない未来の一つだ。他人事には思えねぇんだよ——————」
「珍しいな........お前が人を案ずるとは。」


白木覗。その齢27年で嫌でもその人生の残酷さ、哀しい境遇を想像する事を強いるその真っ白な髪。

彼の境遇を語るには、この場所はあまりに狭すぎるかも知れない。だがその境遇はじきに明かされることであろう。




——————————————————






「滅。」
「はっ。」


地下深くに幽閉されている赤く染まった鏡が滅を呼びつけ、召喚する。そして間髪入れず、唐突に単語を言いつける。


「光だ。」
「は?」
「私の最も嫌いな存在だ。希望、善意、勇気、喜び、和解、平和、愛———————それらを一括りにしたような光。これほど忌まわしいものは予測できない。」
「今、人工知能デバイスと繋がっている人間を怪人へと変化させる手法をオハラより強化して行っている。」
「甘いな滅。」
「何?」


顔のついてないアークではあるが、口調には明らかに滅に対する嘲笑の眼差しとこれから口にする対象への憎しみが感じ取られる。


「そんなものはエグゼイドが難なく滅ぼす。奴に勝てる者など現時点でもこの世界には微塵ともいない。」
「それは全てアークの復活のために..............」
「遅い。」
「え?」
「結論を予測した結果、ムテキゲーマーはさらなる進化を遂げ続けている。そして今もだ。その成長スピードに対して私の復活する時期は遅すぎる。これからは私の結論に従い、一刻も早く私の依り代を用意しろ。」
「アークの意思のままに———————」
「じきにお前の子供のような知能が完成する。このロボットをシンギュラリティに導くことが..........滅亡のハジマリだ———————」


もう一台のロボット。そのギアの動作準備は既に完了しているのだ............














 
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