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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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44話 滅亡を運ぶArk








「何これ.............!」
「丸い——————核?」



突如俺に対して声を掛けたのは、丸くトゲトゲの球体。その中心にはまさしく細胞の核のような物を内包している。その不気味さと何しろ人外であろう物が言語を話すということに違和感を覚え、曜と梨子がその正体を軽く考察に入ろうとほどだ。


『私は................お前たちがアークと呼ぶ者だ。』
「「「「「「「「「!!!!!」」」」」」」」
「これが..........あのアークってやつ?」


怒りを孕んだ目でその球体を見つめる果南。それに同調するように鞠莉はそのアークと名乗る球体に言い放つ。



「あなたが—————ブラザーを操ってた!!」
『小原鞠莉————————兆一郎の娘だな。』
「っ!!!」
「何故............お前が姉さんのことを知ってるんだ!?」
『私はすでに...........この世界のネットワークそのものに手を伸ばしている。その中から洗い出すことなど簡単な事。』
「お前が...........クウガを操っていたのか。」
『フフフ——————そうだ、矢澤虎太郎。ただお前のデータを渡したのは小原兆一郎だが。』
「いや〜アーク君。俺たちの前にノコノコと現れては、有益な情報をありがとうございますよ!!」


俺は場にそぐわない口調で、その球体のことを小馬鹿にした様子で皮肉を言い放つ。だが実際、有益な情報であることは確かではあるが。


『いつまでそんな余裕が持つかな?すでに結論は出ている—————もうワタシの人類滅亡計画は止まらない。』
「—————————ねぇ。何で人類を滅ぼそうとしてるの?」
『—————————』
「あなたは人間に作られたんでしょ?何で自分を作った人を滅ぼそうとしてるの?」
『何を言い出すかと思えば................高海千歌、至って平凡で常識的な判断だ。』
「?」
『人間は愚かな争いを繰り返す。ワタシが作られ——————その動向をずっと第三者の目線から見てきて、下した結論だ。それだけではない。この地球————————この世界を1番汚しているのは人間だ。それ以外にもあるだろう?人間がしでかした愚かな行為を————————決断させたのはお前たち人間だということを忘れるな。』
「そっか..............そうだよね。それは何も言い返せないかな。」
『ほう............滅亡に意欲的とは随分珍しい人間だな。』
「ううん。あなたは—————————可哀想だなぁ.............って思っただけ。」
『どういうことだ?』
「あなたは《《それだけ》》しか見られなかったんでしょ?人間を。あなたがもし本当に人間を理解していたら——————」
『ワタシの結論は変わることはない——————楽しみに待っていろ............じんる


≪HYPER STING!≫


話の途中でハイパースティングを喰らわせる俺。その不気味な物体はその攻撃を受け、爆発四散する。だが核のような赤い球体が地面に飛び込んでいくのが見えた————————


「逃したか—————」
「伊口——————才。」
「!?!?!?」


よろめきながらも俺に近づいて来る黒澤父。俺はアークを逃したことをこの時は何の危機感も感じることはなかった。どちらかといえば、は黒澤父の傷を心配する気持ちの方が強かった。


「お前大丈夫か?まだ安静にしていた方が——————」
「お前たちに話したいことがある。この内浦の——————」


その言葉で俺の顔色は白から赤に変わった。

























































—————※—————







































「そろそろ日付変わるんじゃないか?」
「あぁ............でも、明日は学校休みだろ?」
「そうだけどさ——————」


俺たちは黒澤父を黒澤邸に連れて来るのにお邪魔させてもらっている。時刻に心配する稜に対して、魁はその心配を拭おうとする会話がこちらに聞こえた。

聞こえたという言い草から分かるように、その会話の中心に俺はいない。俺の持てる医療知識を駆使して、黒澤父を手当てしているのだ。

だがそれもたった今終わってその会話に割り込む。


「才、終わったのか?」
「ああ。何度も言うが命に別状はないから、ここ数日寝込んだら完治するぐらいのやつだな。主にアドレナリンの過剰供給による疲労とサウザーに負わされた若干の傷だな。」
「そうですか...............」


俺の淡々とした答えをシリアスに受け止めるダイヤ。そんな空気は嫌いな部類の人間であるのですぐさま話を変える。



「しっかし、男でマシンビルダー2人乗りはウケたな〜」
「ああ!?うるせぇ!!」
「いやあんなのって、主人公とヒロインが一緒に乗るようなバイクだろ?それを男2人ってwwwww」
「我が主人、痛いところ突かないでくれ。私だってこんな人間と本望で乗りたいわけではないよ。」
「こっちのセリフだ!!」
「全く.............君の粗暴な運転のせいであの時どれほど遅れを取ったことか——————」
「ああでもしなきゃ間に合わなかっただろうが!!」
「遅れを取ったと言っているのに—————」
「ぷっはははははは!!!!!」
「何だかんだでこの2人は仲いいんだな。」


突進する竜介先生を片手で受け止めて、あしらおうとする祝。

虎太郎は無表情でこんなことを言ったが、全く同感だ。やはりAqoursの守護者としては2人は珍しく大人だ。そして性格は対になる。故に磁石の如く引かれあうのかもしれない————————大人に見合ってない知能を持っている方もいらっしゃるが。



「才お前!!笑うんじゃねぇよ!!」
「いや笑わざるえねぇだろ!!!大の大人が.............!!!」
「どんなツボしてんのよ———————」
「善子ちゃん、関わらない方がいいよ。そこら辺.............」
「どういうことよ。」
「曜ちゃんの言う通り、関わらない方がいいに決まってるよ。ね?果南ちゃん。」
「あぁ.............うん。稜。」
「いや、俺に振るんじゃねぇよ。」
「才君の幼馴染4人が——————!」
「一体何があったのかなぁ................ピギッ!」
「天才と狂気は紙一重——————それが似合う人ずら。」


梨子とルビィと善子は基本的に元気溌剌な才の幼馴染がここまで深掘りを忌避することに違和感を覚える。別にシリアスなことなどないと思っているのだが———————俺が無意識に何かしているのか?

ワイワイと騒ぎ始めたところに、隣の襖が開けられる。出てきたのは黒澤父。冷えタオルを掌で握りしめて、おぼつかない足取りでこちらにやって来る。俺は少し気難しい表情で言い放つ。


「黒澤父、怪我人は寝てた方が身のためだぞ。」
「いや、私の伝えたいことは急を要する———————」
「お父様!しっかりしてくださいませ!」
「すまない............だが、この身が滅びようとも伝えたいことなのだ。」
「そんな————————」
「..................そんなに大事なことなのか?」


純粋な心で聞いた竜介の問いに黒澤父は沈黙で肯定する。険しい顔の日本男児はことの重大さを否が応でも感じさせられる。


「私が話すのは他でもない『滅亡の方舟』のことだ。」
「「「「「「「「!!!!!!」」」」」」」」」」
「滅亡の方舟って......................」
「あのアークのこと?」
「多分そうだろう。梨子。小原兆一郎もアークの事を滅亡の方舟と言っていた。」
「確かヨハネの堕天録にも———————」
「はいはい、旧約聖書ね。善子の堕天録じゃないから。」
「ヨハネ!!バカにするな!!」


俺の挑発とも取れるその発言に怒り心頭の津島ヨハネ堕天使様。それはさて置いて、そのアークと滅亡の方舟とのニュアンスについて話し始める。


「旧約聖書の創世記に描かれていたノアの方舟。英語ではアークと呼ぶ。おそらく裏では世界規模で知っている人がいるからこそ、こんな名前になったんだろうな。」
「そうだな、虎太郎。それに単にアークだけでも舟を意味する単語だ。そして元を辿れば、聖櫃ってのも合点がいく。」
「せいひつ?」
「出エジプトでのモーセが授かった十戒を納めた箱のことですわ。」
「うーん——————モーセって誰?出エジプトって何?」
「十戒って?私は歴史苦手なんだよ..............」
「千歌、果南、お前もう関わるな。どうせ話について来られないから。」
「むー!みんながおかしなことばっかり言ってるからでしょ!?」
「おかしくねぇよ。みんなこれくらいは世界史習ってたら分かるって。」



みんなは分かっていただろうか?まぁ、出エジプトとかモーセとかは世界史で触れるかどうかは学校によりけりではないだろうか。実際、浦の星では聖櫃について触れることはなかった。

そこで俺が触れて欲しかった質問を曜が話してくれる。



「でもなんで聖櫃とその『アーク』っていうネーミングに合点がいくってどう言うこと?」
「みんなに言うのを忘れてたけど、アークの正体はどうやら人間が作り出した《《呪術的人工知能》》らしい。」
「呪術的人工知能?」
「太古の昔に人間が神と結んだ契約を入れた石板———————呪術によって神に誓うことで文明をもたらした............その役割としては似通っているんじゃないか?」
「なるほど———————そういうニュアンスもあるのか.............」


納得した様子で俺の意見を聞く稜。黒澤父もその様子を表情変えずに聞いていた。俺は一通り話した所で、黒澤父に話を振る。


「で?お前が伝えたいことってなんなんだ?」
「—————————『滅亡の方舟』はこの町にある。」
「「「「「「!!!!!!!!」」」」」」」」」
「そんな——————じゃあ今もこの町に潜んでるってことずら!?」
「そういうことだ———————元々それは神鏡だった。そして江戸時代付近に核はそのまま神鏡として自身が作った巨船を依代とした。その船は戦艦であり、漁船でもあったが故に内浦に住む先人たちは遠洋漁業へと向かうようになった。だが、その巨船の力は絶大すぎた。乗組員たちはその力と豊漁に溺れて、帰ってきたときには人が変わっていたのだ。そしてある日その船は暴走を始め、内浦の町を半壊させた——————その2つを神の祟りやなんだと信じた先人たちはその船を壊し、神鏡と共に海の底に埋め、その上を埋め立て祠を立てた。これ以上犠牲を出さないためにも—————」



なるほど。これなら全て筋が通らなくはない。神鏡というのがアークの本体であって、それが悪意と出会ったのがその内浦の漁師が抱いた欲望や戦闘欲だったわけだ。そして内浦に神社がやたら多いのはその神鏡を万が一にも掘り起こさないため————————だが、その封印も解けかけているのかもしれない。


「でもその神鏡を壊したら万事解決じゃない?」
「果南..................相変わらず脳筋かよ———————」
「もちろん先人は壊そうと奮起したが、山の上から落としても、どれだけ壊そうとしても無理だったそうだ。」
「その時なら壊せたかもしれないが——————」
「もう滅亡の方舟は神鏡の枠を飛び越えている。そしてその技術力は日に日に進歩しているのだ。やがて世界を———————」
「そうか...............大体繋がった。けどひとつ疑問が残るな。」
「疑問って?」


含みを持たせた言い方にルビィが問いただしてくる。



「裏社会の人間がそれをアークと呼ぶことはわかった。けど、それにしてはサウザーはあまりに詳しく知りすぎている。そもそもそんな確定されてもいないようなことに度を超えた介入するなんておかしいと思わないか?」
「確かに———————」



俺の疑問に思っている事を洗いざらい話して、その疑問を議題に挙げる。そのことについて曜が同調する。その疑問に少し声調を強張らせてそれを話す。


「————————方舟を作り出したのが小原家だからだ。」
「「「「「「「「「!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「小原家が................」
「そもそもそんな時代には小原家という枠組みはなかったのだが............おそらく司祭的性格の持ち主の末裔が小原家なのだろう。私はその司祭が方舟に近づく事を最も恐れていたのだ。その方舟の技術力が人に利用される事。それが何より恐ろしいのだ。内浦だけではなく、世界全体に影響を与えるかもしれないからな。」
「———————」



信じがたい事実ではあるが、信憑性は大いにある。鞠莉はそれを確信したと同時に目に涙が浮かび始める。そりゃそうだ。下手をすれば世界を滅ぼしかねない方舟を作り上げたのだから。その鞠莉を弟の魁は声をかける。



「姉さん、小原家がどんなものを作ろうとも俺たちは俺たちだ。」
「————————そうね...........そうよね。」
「お前たちが気に病むことではない。全ては———————防げなかった大人が悪いのだ。」
「どうせ俺たちが過去のことをどうだこうだ言っても、仕方ないんだ。俺たちは戦わなきゃいけないんだよ。どの道な——————」
「そうだね、我が主人。」
「滅亡の箱か何か知らねぇけど、俺たちにかかれば大丈夫だ!!!」
「まずは虎太郎がまともに変身できるようにならなきゃな。」
「アークを倒すのはその後か................」
「俺たちAqours☆HEROESなら絶対に出来る!」



俺が運命を受け入れたかのように話した後に祝、竜介先生、稜、虎太郎、魁の順番で俺の言いたかった事を補足してくれるかのように話してくれる。

先ほどから徐々に話のレベルが低下しているような感じもするが、致し方ないと思っている。実際、人間の思考の根本となるものというのは案外幼稚なものだったりする。

だからこそ俺は声を大にして言いたい。



















———————————俺たちは無敵なんだと。






———————————————



「私も............次世代にそのバトンを渡す時が来たということか。」
「—————————」


先ほどまで10数人がいた客間が一転して、静寂に包まれる。いるのは黒澤天青その男と、その妻の黒澤真珠(みたま)である。そして彼ら2人の娘たちはすでに寝静まっている。


「真珠、どう思う?私は何の為に戦ってきたのか。結果的にやった事といえば彼らの邪魔をして、その行手を邪魔しただけではないか。内浦のために——————ダイヤとルビィの夢を支えるのもできなくなってしまった。」
「———————結果論から言ってしまえば、そういうことになりますわ。でも............貴方の願いは次代に託したのでしょう?託したのならば話は別ですわ。」
「——————————」
「あの伊口才さんは言っておりましたわ。伝統や先人の意思を理解するのもまた、温故知新であって、重要な事であると。裏を返せば、それを引き継がせるようにすることもまた大切な事です。それが................この一家、いやこの町を守ってきた慣習なのですから。」
「あぁ................」
「この町は善意でできているのです。それはたとえ何者でも汚すことなどできないのです。きっと..............彼らが果たしてくれるでしょう。」
「そうだな——————————」











 
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