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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第6章 英雄感謝祭編
  第27話 パーティ

 
前書き
主人公のアレンのイラストが完成したことを祝し、臨時で1話投稿させて頂きます。
 

 
玉座の間での王女失神事件の次の日の夕方、王城の大広間では、本来英雄感謝祭で予定されていたことを含め、今回の竜種撃退を祝してのパーティが執り行われていた。男女問わず、皆おめかしをして参加していた。
黄金のように輝く会場に、豪勢な食事。そのような場所に、魔導士たちが一堂に会していた。
アレンは、タキシードを着ると、会場へと足を踏み入れた。
「おー、こいつはすげーな」
「まあ、さすがは王城ってところだな」
アレンと共に会場に入ったグレイが、満足そうに呟く。そうしていると、アレンの元へ2人女性が寄ってくる。
「アレン!タキシード、とっても似合ってるわよ!」
「…かっこいい」
赤いドレスを纏ったミラと青いドレスを纏ったカグラが、嘗め回すようにアレンを見つめる。
「そういうお前らも、すげえ綺麗だぞ」
アレンの言葉に、2人は顔を真っ赤にして俯いた。
「おうっ!アレンも来たか!」
「おせーぞ!アレン!」
エルフマンとカナも声掛けてくる。
「お前それ似合わなすぎだろ…ガジル」
「この一瞬で服を脱ぎ捨てた奴が言うな!」
その後ろでグレイとガジルが軽口を叩く。そんな折、エルザがモゾモゾとした様子でアレンに近づいてくる。
「お、おいアレン…その…どうだ?似合っているか?」
エルザの声に反応するように、アレンは振り返り、見つめる。エルザは黒いドレスを身にまとっていた。
「ああ、とても素敵だぞ、エルザ」
「そ、そうか…///」
エルザは顔を真っ赤にして小さく呟いた。
「ヒノエ姉さんとミノト姉さんは、いつもの格好なんですね…」
「あら、私たちにとっては、これが正装ですものっ♪」
「はい、姉さまの言う通りです」
ヒノエとミノトの代わり映えしない姿に、アレンは苦笑いしながら声を掛けた。
「そういえばアレン、ナツは一緒じゃねーのか?」
「あ?俺は一緒じゃなかったぞ?」
「そういや、見てねーな…」
グレイの言葉に、アレンが答えると、ガジルが悩むように口を開いた。アレンは特に気にも留めずに、辺りを見回す。
フェアリーテイルのメンバー含め、皆が楽しそうにパーティに参加していた。そんな雰囲気に、アレンは思わず笑みを浮かべる。
そんな風にしていると、アレンに声を掛けてくるものが何人かいた。
「失礼、アレン殿」
「ん?おお、あんた、確か聖十のジュラさんか」
アレンは声を掛けてきた人物を見つめながら答えた。
「此度の戦い、ご一緒できて何よりだった」
「こちらこそ、手を貸してくれてありがとな。同じ聖十同士、これからもよろしく頼むぜ」
「何をおっしゃいますか。あなたと私とでは、力も格も違います」
「んなことはどうでもいい。大切なのは、それをどう使うか、だろ?」
アレンはジュラの言葉を掬い上げるように会話をしていた。
「ははっ!その通りですな…して、アレン殿。私のギルドに、ぜひあなたにご挨拶したいという者がいるのだが、よろしいか?」
「ん?そりゃもちろん。大歓迎だ」
「ありがたい。おい、お前たち!!」
ジュラは少し離れた位置にいる4人に声を掛ける。
「あんたがアレンかっ!俺はトビーだっ!!会えて光栄だぞっ!」
「キレんなよ…。アホが失礼した。俺はユウカだ。よろしく頼む。」
犬のような見た目をした、見るからにアホそうなトビーとめちゃくちゃ眉毛の太いユウカという人物が声を掛ける。
「おう、よろしくな」
アレンは短く、それでいて丁寧に答える。
「私はシェリーと言いますわっ!アレンさん、とっても素敵ですわ。これぞ、愛!!」
「あ、わ、私はシェリアといいます…よろしくお願いします!」
謎の愛を語る女と、ウェンディくらいの小さな女の子が続けて声を掛けてきた。
「あ、愛?…まあ、よくわからんが、シェリーだな?…よろしく。そっちの可愛らしいシェリアちゃんは、ウェンディと一緒に皆を回復させてくれた子だよね?ありがとうな」
アレンはそう言うと、シェリアの頭を撫でる。
「あうっ…///わ、私はそんな…」
シェリアは大分恥ずかしそうにしている。そんな2人と関わっているのを見た特定の女性たちが、謎のオーラを放っていた。
「ニャー!なんか不穏な空気が漂ってるニャ!!」
「おお、ミリアーナ…って、お前それ…ドレス…なのか?」
ミリアーナの姿を見た、アレンは思わず呆れてしまった。ドレス前面に、デカデカとプリント?された猫のイラストがくっついていたからだ。
「ネコネコのドレスニャ!あ、そんなことより、ほら、フレア!この人がアレンさんだよ!」
ミリアーナはアレンの呆れ顔を物ともせず、フレアの腕を引っ張ってアレンの前に立たせる。
「は、はじめ…まして…人魚の…踵の…フレア…です…あなたの…ファン…です」
フレアはもじもじしながらアレンに話しかけた。
「おお、そりゃどうも。こっちこそよろしくな!フレア」
アレンのニカッとした笑いに、フレアは恥ずかしそうに目を伏せた。そんな様子のフレアに不思議な子だなー…と考えていたアレンであったが、謎の飛来物によりそれを遮られ、転倒してしまう。
「メエーン!!」「ゴハッ!」
どうやら、エルザにちょっかいを出していた一夜が、殴り飛ばされ、アレンの元へと振ってきたようだ。転倒したアレンの顔に覆いかぶさるようにして、一夜が乗っていた。
「す、すまない、アレン、大丈夫か!?」
「ニャー!大丈夫かニャ!!」
「…この人…なんか…キモい…」
エルザはアレンに駆け寄りながら声を掛けた。それに続くようにミリアーナとフレアがそんな風に会話をしていると、またも一夜が空中へ飛んでいく。
「アレンに何してんの!この変態!!」
「メエーン!!」
アレンの顔に腹を擦り付けるようにしていた一夜を、カグラが蹴り飛ばしたようだ。
「いてて、っておい、カグラ。何やってんだよ…」
「な、なにって…変態がアレンを襲ってたから…」
「襲われてねーよ!全くお前は…済まない一夜、大丈夫か?」
アレンは蹴り飛ばされた一夜の元へ駆け寄る。そんなアレンの様子にエルザとカグラがプクッと頬を膨らませる。
「いや、大丈夫だ。私の方こそすまない」
一夜はさっと立ち上がる。そんな一夜とアレンの元に、4人の人物が駆け寄ってきた。
「一夜さん、大丈夫ですか?さすがはアレンさん。あちらの短気な女性方と違ってお優しいのですね!」
ジェニーはエルザやカグラの方を見て、挑発するような物言いで言い放る。
「「もとはと言えば一夜が変なことするからだろうが!!」」
エルザとカグラは、この上ない怒りを露にする。
「…やはり、かっこいいな。アレンさん」
「素敵だなー…」
「俺は、そんな風には思ってないんだからな…」
相変わらずのヒビキ、イヴ、レンの3人にアレンは苦笑いを浮かべる。
「天狼島といい、今回と言い、青い天馬には本当に感謝してる。…そういえば、マスターボブは来てないのか?」
ボブという名前を聞いて、少し離れた位置にいるグレイやリオンが身震いしたように震える。
「すまない、マスターは急用で先にギルドへ戻ってしまってね…アレンさんにとても会いたがっていたよ」
「あー、そうなんか…俺も会いたかったな。それに、礼の一つくらい言いたかったんだが…またの機会だな」
「…そういえばアレンはあの人大丈夫だったんだよな…」
「…俺ら以上に言い寄られてるのに…すげーもんだぜ…」
リオンとグレイは、ボブの容姿などを思い出しながら呟き、再度身体を震わせる。
「ああ、そうだアレンさん。マスターに顔を出してくれるのも含め、今度青い天馬に遊びに来ないかい?」
「おお、それはとてもいいアイディアですわ、一夜さん!」
「ついでにアレンさんにホスト、やってもらいましょうよ!」
「それじゃあ近いうちにお邪魔しようかな…。ホストか、折角だし、やってみようかな」
一夜の提案に、ジェニーとイヴが乗っかる。アレンもその提案に乗る形で話がトントン拍子に進んでいた。アレンの発言に、特定の女性たちが驚き、アレンのホスト姿を想像して鼻血を出したことは、言うまでもないだろう。
一夜たちとの会話を終えたアレンは、近くにいたウェイターからジャンパンの入ったグラスを貰い、口にする。それを見計らったように、またもアレンに声を掛けるものが現れる。
「あ、あの…アレンさん…」
「ん?おお、ミネルバ!怪我はもう大丈夫か?」
ミネルバは緊張した面持ちでアレンに声を掛ける。
「はい…もう大丈夫です…あの…じゃな…」
「そっか…ん?どうした?」
ミネルバは言いにくそうにゆっくりと口を開いた。
「その…アレンさんには…か、彼女はおるのか?」
ミネルバの発言に、女性陣を中心に衝撃が走る。
「え?彼女?…あー、今はいないけど…」
アレンの発言を聞き、ミネルバの顔がパアッと晴れる。そんな様子を見て、14歳くらいの少年2人がミネルバの足元に寄ってくる。
「よかったですね!お嬢!これでお嬢がかの…ゴンッ!」
「ああ…まあ、そうなるよね…」
金髪の男の子が、ミネルバの拳骨を喰らい、それをみた黒髪の男の子が呆れた様子で言葉を発した。
「おい、ミネルバ!可哀そうじゃないか!」
「っ!ああ、すまない。スティング、大丈夫か?」
ミネルバはアレンに軽く怒られたことで、動揺しながらスティングを起こす。
「ってて…ひどいっすよ、お嬢…」
「大丈夫そうだな…スティング君、でいいのかな?」
アレンに名前を呼ばれたスティングは、ミネルバと同じようにパアッと顔を輝かせる。
「はい、スティングです!!こっちはレクターと言います。アレンさんに会えて光栄です!!」
「僕はローグと言います。こっちはフロッシュです」
黒髪の男の子、ローグもアレンへと自己紹介をする。そのあとに続き、2人のエクシードも挨拶を交わした。
「そっか。よろしくね」
「「はいっ!!」」
2人はアレンの言葉に、嬉しそうに返事をした。
「…ところで、スティング君はさっき何を言おうとしたんだい?」
「あ、それは…」
「や、やめんか!!アレンさん、たいしたことじゃない…気にしないでくれ…」
スティングが再度言おうとしたが、焦ったようにミネルバが制止する。
「ん?まあ、それならいいけど…」
アレンが不思議そうに首を傾けていると、ウルティアが声を掛けてくる。
「ねえ、アレン?ナツ知らない?」
「あー、それさっきグレイに聞かれたんだが…俺も知らないんだよ」
「んー、おかしいですねー。あのナツさんがこんな騒ぎの中心にいないなんて…」
「ほんと、どこいっちゃったのかしら…」
ウェンディとシャルルも、変な意味で心配しているようだ。そんな風に頭を悩ませていた4人であったが、とある人物の登場により、それは収束を迎える。
コツコツと音を鳴らしながら、水色と白色のドレスに身を包んだ女性がアレンへと近づく。
「アレン様…」
とても美しい顔立ちと、綺麗な翡翠色の髪の毛。ヒスイ王女であった。
「これはこれは、ヒスイ王女…いかがされたのですか?」
ヒスイの登場により、ウルティア、ウェンディの顔にほんの少しの曇りが見える。シャルルもどうなるのかと冷や冷やしている様子であった。少し離れた場所にいる女性陣や魔導士たちも、固唾をのんで2人の会話に聞き耳を立てているようである。
「いえ、その、パーティの方、楽しんで頂けているかなと思いまして」
「ええ、それはもちろん。このようなパーティを開いていただけて、皆を代表して御礼申し上げます」
アレンは、丁寧に頭を下げる。
「お、おやめください。アレン様はじめ、頭を下げなければならないのは私達王家の方なのですから…」
「ふふっ。そのお話は、昨日決着がついたではありませんか」
アレンは、ゆっくりと頭をあげると、笑ってヒスイに言葉を発した。
「そうでしたね…。その、私の罪を…その…」
「…どうかされましたか?」
ヒスイがどこか恥ずかしそうにもじもじとしているのを、アレンが問うように声を掛ける。
「えっと…っ!アレン様!」
「は、はい…なんでしょう?」
ヒスイは意を決したかのように、じっとアレンの顔を見つめる。その顔は、恋する乙女のように…というか実際そうなのだが、真っ赤に染まっていた。
「もし私のことがお嫌いでなけらば…私とこんy…ッ!」
ヒスイがとんでもないことを口にしようとしているのを見て、ウルティアやウェンディが止めに入ろうとした。しかし、それよりも先に会場全体の注目を集めるような出来事が発生する。
「皆の衆!!王様の登場だ!!はっはっは!」
「こ、これ!返さぬか!!」
…会場の2階部分の、王族専用の扉から、こともあろうに王様が登場する…はずだったのだが、それはまさかの王様の格好と冠を被ったナツであり、驚きと困惑で皆の目が点になる。
王様は必死にナツに問いかけ、後ろに控えるダートンも狼狽している。
「「「「「「「「「「なーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
会場全体に、悲鳴にも似た驚きの声が響き渡る。
「俺が王様だー!!王様になったぞー!!かーっかっかっか!!」
そんな様子を見て、皆の顔に、とくにフェアリーテイルのメンバーの顔に呆れを通り越して憐れみの表情が生まれる。
「あっのバカ…」
「なんてことを…」
ウルティアとうウェンディが震えた声で、小さく呟く。
驚きと心労は、フェアリーテイルのマスターであるマカロフも同様であるらしく、マカロフに残った左右の白き毛髪が、風に流れて無残にも飛んでいく。
「………消すか…」
アレンは小さく呟きながら、一歩前に足を進める。それと同時に、横からぷっと笑いが漏れた。
「ふふっ…ふふふっ」
笑いの正体は、ヒスイ王女であった。
「ヒ、ヒスイ王女…」
「わ、笑い事では…」
アレンとウルティアは、そんなヒスイ王女の様子に、困惑したように声を発したが、ヒスイ王女が比較的大きな声で笑っているのを見て、その笑いが徐々に周りへと移っていく。
次第にその笑いは会場全体を包み込み、焦りを見せていた国王やダートンも、その笑いにつられて表情をにこやかなものにかえる。
つい先日まで、絶望と恐怖が支配していたこの王城は、今までにない笑い声に包まれていた。
ちなみにこれは余談なのだが、パーティを楽しんでいる魔導士たちに混ざり、フェアリーテイル初代マスター、メイビスの思念体が紛れ込んでいたことに、フェアリーテイルのメンバーが度肝を抜かれたという事件も、発生していたとか…。

ナツの王様強奪事件…ではなく、王城でのパーティを終えたフェアリーテイルのメンバーは、先の竜種襲撃において奇跡的に軽微な被害で済んだホテルベルモンドへと戻った。
パーティがあったため、首都クロッカス含め夜遅くまでドンチャン騒ぎであった。しかし、
女性陣はいつぞやの酒カス女暴動事件での失態もあり、特にこれと言った問題が起こることなく、平穏な夜を過ごすこととなった。アレンは、ホテルの屋上に上り、屋根に寝っ転がる。ホテル内にいると、男女問わず声を掛けられるため、落ち着きたいという気持ちでこの場所に足を運んだ。煙草に火をつけて深めに息を吸い、煙を吐き出す。吐き出した煙が空へと消えていくのを眺めていると、後方から声を掛けられる。その声とこの場に居合わせるという二つの条件から、アレンはそれが誰であるのか、目線を向けずと認識できた。
「とてもよい夜ですね…」
「…初代」
アレンは、小さく呟くと、アレンの隣に腰かけるメイビスに視線を向けた。
「…天狼島では、命を救って頂けたみたいで、ありがとうございます」
「お礼はいりません。私はあなたの力をお借りしただけです」
メイビスは、落ち着きを持った声でアレンへと返答する。
「…もしあの時、初代がフェアリースフィアを発動していなかったら私は死んでいました」
「確かに、生きていた可能性は限りなくゼロに近かったでしょう…」
メイビスの言葉を聞き終えた後、アレンは小さく笑って見せる。2人の会話はそこで一度沈黙を挟む。アレンには、メイビスがなぜわざわざ自分と2人きりになれる時に姿を現したのか、なんとなく予想がついていた。
「…あなたは今を生きる人。ですが、100年前…ゼレフに会っているのですね」
「ええ…ご推察通りです。まだ初代がご存命の頃、ゼレフから聞いたんですか?」
アレンは予想が当たっていたことに、特に表情を変えることはしなかった。
「詳しくは聞いていません。…ですが、友人だと、彼は言っていました」
一瞬、メイビスから不穏な雰囲気が流れてくる。それを察したアレンは、すっとメイビスから目をそらす。
「あいつは…ゼレフは…どうやら道を踏み外したのかもしれませんね」
「…恐らく、いえほぼ確実にそうでしょう」
黒魔導士ゼレフの噂は、至る所で聞き及んでいた。正直言い噂は聞かない。それどころか、ゼレフを掲げ、謎の教団や闇ギルドが暗躍していることも知っていた。
「俺には、アンクセラムの呪いを解くことは、ゼレフを殺すことはできなかった」
アレンの言葉に、メイビスは目を見開いた。当時ゼレフが理解していたかは不明だが、アレンはわかっていたのだ。100年前、元の時代に帰る間際にゼレフに言われた、「殺してほしい」という言葉。その願いを聞き入れることができないことを。
「…それは純粋に呪いのせいですか?それとも、友情のせいですか?」
「…さあ、どうでしょうね…。自分でもわかりません」
アレンはそう言うと、煙草を深々と吸い込む。吸い終えた吸殻を魔法で燃やすと、アレンは屋上から姿を消した。
その様子を見守り、暫く無人となった屋上でメイビスは考え込むように空を見上げる。そして、くすっと笑って見せた。
「嘘が下手な人…あなたにとってあの人は…」
メイビスは言葉を紡ぐことなく、アレンを追いかけるように屋上から姿を消した。

首都クロッカスに襲来した竜種襲撃事件に際して、評議院はフィオーレ王家に対して事情を聴きながらも、その原因をバルファルクとしながらも、王家が一枚嚙んでいたことに関しては一般公表しない方向で話を進めた。この事件の全貌を知っているアレン含めたフェアリーテイルや戦闘に参加した魔導士ギルドに対しても情報統制を徹底するように命令を下した。もし、先の事件の引き金を引いたのが王家の、それも国王と王女中心に行われたものであることが国民に知れ渡った場合、王家の信用の失墜に繋がりかねないとの判断であった。評議院も戦闘に参加した魔導士ギルドも王家のすげ替え含め、それを望んでいないということもあり、王家に対して具体的且つ公開的な罰則を設けることはなかった。そのため、公表内容は、『バルファルクという竜を首謀者とした首都クロッカスの襲撃』とした。また、それと同時に、評議院はある決定を下し、それを大陸中に伝達することになる。その内容は、『フェアリーテイル魔導士アレン・イーグルの永久聖十大魔道士の称号をそのままに、【序列特位】に任命する』というものであった。この決定通知を受けた大陸全土は、アレンが、序列1位のゴッドセレナを超え、大陸一の魔導士であるということを、評議院が正式に公表したと認識、判断するに至った。これ話題が、先の襲撃事件に続き、大陸全土で盛り上がりを見せることになったのは言うまでもないだろう。しかし、三天黒龍に劣るとはいえ、人類の敵とも言うべき新たな龍、古龍といわれるものの出現は、評議院を中心に更なる警戒と懸念を生んだことも確かであった。

フェアリーテイルの魔導士たちがマグノリアに帰還すると、大通りの側道を埋め尽くすほどに住民が集結し、フェアリーテイルの帰還を歓迎していた。首都クロッカスで行われた英雄感謝祭、それを狙ったかのように起こった竜種の襲撃と撃退。その戦闘の様子は、ほぼリアルタイムで放映されていたらしく、その戦勝と功績を称えるようにして出迎えていた。
アレンを中心に、フェアリーテイルのメンバーの姿を見た住民は、黄色い声を上げながら手を振ったりして喜びを表現していた。歓迎ムードのマグノリアの様子に、大通りを闊歩する魔導士たちも、照れくさそうにしていた。
その影響は、フェアリーテイルの日常にも変化を与えた。今までとは比べ物にならないほどの仕事依頼の急増や、フェアリーテイルへ足を運ぶ人の増加などにより、少しずつ日常を取り戻しつつも、魔導士たちは嬉しい悲鳴をあげるに至った。
 
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