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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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38話 AqoursのSOUL【魂】



「そうか————————よかったよ。鞠莉にそんなこと言ってもらえてさ。光栄だよ。」
「え.................?」





正直鞠莉との関わりが深いかと言われれば、ようちかなんの3人には遥かに劣ってしまうだろう。実際、この学校で初対面だったわけだし。でもこうやって言ってもらえるってことはこんな俺を信じてくれているということに他ならない。だからこそ光栄なのだ。


だが..................





「才..................仕方ないわね。どんなに世界を凌駕するほどの天才でも所詮は女心までは予測できないってことね。」
「え?」
「そうよね。今の私にもハッキリ言う事なんて..............」
「鞠莉...............」
「さ、そろそろ皆宣伝が終わってるところじゃない?」
「ああ.............」





一応は俺のキャッチボールを受け取ってくれたようだ。だがその投げ方に彼女は不満を抱いているのだろう。俺は良くも悪くも天才だが知識だけだ。彼女の奥深くも深くに隠されたその秘められしものというのを読み取ることは不可能だ。いつか彼女の口から言ってもらわないと.....................


23cm下にある彼女の頭に手を置いて言う。








「帰るか。」






彼女はうんと頷いて俺の歩く後をついていく。彼女の顔がほんのり赤くなっている事に俺は気付いていなかった............................







































—————※—————




















































「それで?チカたちが血の汗を流しながら頑張ってた間に鞠莉ちゃんとイチャイチャしてたわけ?」
「遊んでたわけじゃねぇけど........................俺も鞠莉と表立って関わってなかった気がしたからさ。」
「それ遊んでたのと同じだよね?」





あの後、みんながビラ配りを終わったと連絡を受けて、鞠莉を淡島連絡線乗り場まで送った後にビラがどれくらい無くなったかの報告と当日の最終調整を兼ねての意見交換会を十千万で行なっている。因みに今日に参加者は千歌、曜、果南、梨子、稜、魁、そしてこの俺だ。


だが俺の行動を話した途端にこれだ。そんな悪い事をした覚えはないんだが....................






「いやでもイチャイチャって.................ただ頭に手を乗せただけじゃねぇかよ。」
「は!?」
「え!?」
「あ!?」
「あっ!いや..................」





口を滑らせ訂正に入ろうとしたが、時はすでに遅し。梨子は呆れから来る無表情のまま椅子に座っている。向かい側に座る曜とその隣に座る果南からはハイライトの点っていない昏い視線をぶつけられる。そして千歌は俺との距離30cmまで近寄って、やはり淀んだ瞳+ジト目で圧力をかけられる。





「ふーん—————————随分ご気楽な身分だね〜」
「そもそもイチャイチャしてるかしてないかなんて私たちが決める事だし。」
「あの.............俺たちが何で集まったか知ってるよな?」
「知ってるよ?でもその前に説教だよ?」
「あー!!!!!そうだそうだ!!俺、魁に聞かなきゃいけないことがあったなー!!!!!だから説教してたら時間なくなるから無理だ〜!!!!」
「————————じゃあ仕方ないね(ニコッ)。」





果南の諦めの一言でようやく幼馴染3人のハイライトが元に戻り、千歌も俺との距離を離していく。梨子もハイライトは消えていなかったものの、その堅い表情が和らいでいった。


それが確認できたと一緒に大きなため息が出そうになる。特に俺の幼馴染の3人の真の怖さは俺と稜は身をもって分かっている。3人の恐ろしさ.....................それは今でも変わっていないのだ。





「そうですよ。こんな天才女誑し(ゲーマー)に付き合ってる暇はないですよ(ニコッ)」
「梨子———————清々しいまでの笑顔でなんちゅう事を口に出すんだよ..............てか誰が女誑しだ!!!」





俺の行動を顧みても、女誑しの称号を受け取るに相応しい行動など存在しないのだが...................俺のどこにそんな要素があるんだ?


まぁ確かにこの天才でイケメンで完全無敵の俺を一目見てしまったらそう言われるのも無理はないのかもしれないが...................





「で?俺に聞きたいことって?」
「ああ、正確に言うならお前と繋がってるキバットII世と.............だ。」
「それはいいけど................キバット?」
『俺に何か用か?』
「うわっ!凄いところから登場するな.............」





魁の呼びかけで通気口から登場するキバットII世。コウモリがギリギリ通り抜けられる................................穴か?


冗談はさておいて、本題に入る。





「キバットII世。聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「いいだろう。俺の答えられる範囲内で—————————な。」
「————————『アーク』は何処にある?」
「それは言えない。いや正確にはそもそも《《答えることができない》》。」
「何だと?」





キバットII世の意外な答えに稜は思わず聞き返した。その聞き返しに対してさらに言葉を続けるキバットII世。





「俺が持っているアークの記憶は全てアークに自動的に抜き取られた。おそらく俺を制作したときに機密保持のためのそういうプログラムを仕込んでいたんだろう。」
「そうか...............」
「ねぇ、そもそもアークって何なの?」
「それは確かに気になるよね。意思があるってことは人なのかな?」





梨子が問いかけた根本的な疑問に果南が話に花を盛る。でもその方向性は悪くはない。むしろ良いこと。





「でも人ではないだろう。」
「何でそう言い切れるのよ。」
「梨子、お前も見ただろ?アルティメットクウガの戦い方ってやつをさ。あれを人間が遠隔操作しているのなら、もっとアグレッシブな動きになるはずだ。それこそ人ならざるものの確固たる証拠さ。」
「どうなんだ?キバット?」
「記憶は消されているが..............断片的な物から推察するに、おそらく人ではないだろう。」
「ほらな?」
「でも人じゃないってことは一体何なの?
「ああ.....................おそらく人工知能。或いは................」





曜の質問に対して途中で言葉を詰まらせてしまう。実際、『人工知能』に並び立つ案も思い浮かんではいるのだが........................その有力性が俺の中で確立されていないのだ。だからこそ、確証もない事を言いふらす事はできない。





「或いは?」
「いや...............何でもない。」
「じゃあ、そろそろライブの最終調整を始めよっか?」
「ああ、それもそうだな。」





曜の呼びかけに魁が同調する。ようやく真の本題に入ることができるようだ........................とここで1つ、男3人に呼びかけておく。





「稜、ところでビラ配り中にオハラスペックの装着者はどれくらいいた?」
「俺は伊豆のへそに行ってたんだが.....................ざっと1/4は見た人の中では装着してたな。」
「そんなに—————————これ以上普及されるのはまずいな............」
「最近オハラスペックほんと流行ってるよねぇ〜でも何で普及するのがまずいの?」
「千歌、前にも言っただろ?東京で起きたことは.............オハラスペック装着者が怪人に変身させられたって。」
「魁君、それ本当に?」





梨子が魁にその真偽を尋ねる。それを聞いた魁は何処か申し訳なさそうに答える。





「本当だ。オハラスペックの機能はほとんどが視覚から脳に直接作用する。つまり言い方を変えれば、その《《管理者》》の一存でその人間の操作も可能になってしまう。そこに怪人のデータでも送ったんだろう。」
「そんな..............じゃあ今回のライブも..................」
「それは絶対にさせない—————————多分、オハラスペックで人間を操るには全員を操らない限りは、その操る人間の特定をしなきゃいけないはずだ。」
「じゃあ..............!」
「ああ、小原兆一郎が現れない限りはそれは起こらない。」
「でも現れたら同じじゃ................」
「果南、安心しろ。それをさせない為に俺たちがいるんだ。」
「稜..............」
「稜、魁。多分俺と虎太郎は演出とか舞台設定のことで戦いの前線に出られないだろう。だから—————————」
「ああ、任せろ!!!」





魁から快諾の返事を受けた。正直、今のダークキバがサウザーを変身解除に追い込む力がないだろう。言ってしまえば、ムテキゲーマーかアルティメットクウガ以外でサウザーに敵うライダーはいないだろう。だけど.......................










































—————※—————







































「結局寝れないんだよな..................まぁ、寝なくてもいいんだけどさ。」





最近............と言っても、1ヶ月ぐらい前の話なのだがムテキガシャットの副産物なのか、自身の体すら《《ムテキ》》になりつつあるということだ。ただしこちらは《《万全に戦闘可能な状態を常に維持しておく》》能力...................と言った方が正解だろう。無論、眠りたい時は眠るのだが別に眠らなくとも損害はない。特にライブ前となると興奮で眠れない.................なら、寝なくてもいいのだ。


でも寝ないとなると暇なわけだ。というわけで、俺は一晩中内浦を歩きながら遊覧している.....................不審者に見えなくもない。


そんな今は朝の4時。そろそろ(サンシャイン)が昇り始める頃だろうか..........................





「あっ、花丸!」
「おはようございます、才君。」





三津シーパラダイス付近で偶然花丸と出会ったのだ。太陽が登り始め、富士がその顔を少し覗かせているこの時間帯である。





「もしかしてお前も眠れなかった?」
「ううん。毎日この時間帯に起きてるんだ。」
「そうか...................でもこの時間に起きたら、暇じゃないか?」
「確かにそうずら。だからこの時間帯に散歩してるの。」
「なるほどね......................」





俺が花丸の理由に納得したところで少し行動を共にする間、話にもすきま風が流れた所でようやく花丸が口を開く。





「まさか............こんな風になるなんて思ってなかったずら。」
「?」
「小原兆一郎って人が現れてAqoursを壊そうとしてきたり、内浦をめちゃくちゃにしようとしたり................」
「—————————悪いな。それは全て、仮面ライダーとしての俺の慢心が招いた事態だ。本当に反省してる。」
「違うよ!!才君は悪くないずら!!」
「花丸——————————!」





俺が自分に対して否定的な言葉を投げかけた途端に、花丸は俺の否定を否定する。先ほどまでの優しい表情ではなく、珍しく、熱い表情の花丸。





「才君は結果的にAqoursを救ったずら。竜介先生や魁君が仲間に居たからかもしれないけど、それでも才君がいなければ絶対にダメだったずら!!」
「花丸................」
「マルはAqoursは才君がいなければ成り立たない。才君がいないAqoursなんて、パンがないのっぽパンずら!!」
「それ正しい表現かな!?」
「マルも才君がいなきゃ、スクールアイドルがこんなにも充実した物だなんて思えなかったずら。だから..................」





花丸がそんなにもスクールアイドルを気に入ってくれている—————熱心になっていることに俺は咄嗟に言葉を返す。





「ありがとな。」
「え?」
「花丸にそんな事自分から言ってもらえるなんてな。俺ずっと不安だったんだよ。花丸が無理にスクールアイドルやってるんじゃないかって。もしかしたら、俺の勝手な決めつけでやってるんじゃないかって——————————でも、改めて自信を持ち直せるよ。俺もやった事は間違いじゃなかったって.....................」
「才君!」
「それにしてもこのまま居ても暇だな........................じゃ、このままちょっと散歩するか!」
「ずらっ!!」



















俺と花丸はそのまま太陽昇りつつあるこの内浦を散策に向かうのであった.........................















































—————※—————












































「これで舞台設定は終わったぞ。」
「ああ、ありがとう。」





ついに本番12時からあと1時間になりつつある。そして舞台と舞台裏の組み立てとセッティング、照明、その動作確認云々を全て完了した事を竜介先生から報告を受ける。


ちなみに変身できない虎太郎が舞台装置と照明の操作を、俺が演出をする。





「何か...............久々だな。こんな感じは。」
「え?」
「ほら、ファーストライブの時。あの時みてぇだなって.................」





確かにファーストライブ以降は特に『ライブ』はやっていなかった。PVは直接人前に出るわけじゃないから、人前でのライブはこれが2回目。しかも今回はAqours9人揃ってのライブだ。0を1にする———————————これこそ本当のスタートではないか?





「確かに。でもあの時から考えれば、今こんな状況になってるだなんて思っても見なかったな.......................」
「上手くいかなかったからって暴れないでくれよ?こっちはサウザーのことで忙しいからな。」
「バーカ、上手くいかないわけないでしょうが。俺たちは今までで十分試練を乗り越えてきた。そしてこれからもだ。絶対乗り越えられる。その確率はパーセンテージを軽く超える。」
「さて..............俺も警備に戻るか。ドカーンとブワァっとグウォとなるライブを見せてやれ!!」
「何だよその語彙力の無さは。擬音だらけじゃねぇか。」
「うっせぇ!」





まぁ................頭脳が俺の正反対と言われるぐらいに弱いのはその分、身体能力で補ってるから仕方ないよな?まぁ俺はどっちも兼ね備えてるんですけどね!!!


俺のツッコミに歓びの捨て台詞を吐いて出ていこうとする竜介先生に、ある物を渡す。





「竜介先生、ほらっ。」
「うぉっ、これは.....................」
「ハザードトリガー。これは体に強化剤を浸透させてハザードレベルを上げる装置だ。」
「これ俺のために作ったのか?」
「ああ。これならサウザー相手にも怒りを買わない限りは惨敗する事はないでしょうが.............」





ハザードトリガー—————————仮面ライダービルドに登場するアイテムで、ビルドドライバーの拡張デバイスと言っても宜しいだろう。


圧倒的な戦闘力を生み出す引き換えに、脳がその刺激に耐えられなくなり、自我を失い暴走する。だがそんなデバイスをそのまま渡すわけにもいかない。そこでこの超天才的頭脳で暴走の危険性を取り除くことに成功した。


だが———————————





「前に言ったようにハザードレベルを急激に上昇させてしまえば、前みたいなことが起こるかもしれない。だからこれを使う時は冷静に戦え。冷静に怒りを燃やせ。」
「———————————わかった。」






一言、そう呟いて舞台裏のプレハブ出力室から周りの警備に出かけてしまった。



今現在、沼津駅南口にライブ会場を設置している。無論交通整備に関しては伊口ファウンデーションの名を使わせて貰い、沼津南口一帯を歩行者天国にさせていただいた。基本的に伊口ファウンデーションは非営利ながらも日本のみならず世界中に資金提供を行なっているので、権威でもオハラエンタープライズをも凌ぐだろう。


そして不審者————————特に100兆%とかほざいてるおじさんには最大限の警戒をとあの3人と警備員には報告している。仮に戦闘になった場合は、警備員には退避するように言っている。そして遠くで戦うように—————と。


さて............そろそろアイツらが着替え終わる頃だろうが................





「才くん!」
「1番最初はルビィだったか。」





息を切らしながら舞台裏へと走ってくるルビィ。遠慮なく言わせてもらうと、あまり体力を使って欲しくはないのだが、ここではあえて言及しないでおこう。





「どうした?そんなに息を切らして。」
「あのね................才くん。」
「?」
「ルビィに——————————勇気をくれませんか!?」
「勇気を?」
「朝起きてからずっと心臓が...............バクバクして落ち着かないの。」





なるほど。誰にでもわかるように言ってしまえば、緊張しているわけだ。でもルビィの性格を考えればごくごく自然かもしれない。人見知りの性分な彼女には。でも———————————





「ルビィ。」
「?」
「何で心臓の鼓動が早くなってるかを知ってるか?」
「それは.............緊張してるからじゃ................」
「じゃあ、何で緊張してるんだ?」
「それは..............」
「失敗するかもしれないから—————————そうだろ?」
「うゆ..............」





言葉に詰まるという事は肯定ととっていいんだろう。そもそも緊張というものは失敗などの恐怖から来ることが多い。適度な緊張はパフォーマンス向上につながるのだが、過剰なものであるとそれは足枷となってしまう。そこである持論を展開しようと思う。





「でもな。もう1つの理由があるんだよ。」
「もう1つ?」
「失敗するかもしれないって事はそれだけ頑張ってきたって事だろ?そうじゃなければ失敗するなんて考えられないだろ?」
「才くん——————————」
「俺はずっと見てきたんだ。お前の練習、行動、言動の全て。ルビィ、お前は失敗するのがおかしいくらいに頑張ってるんだよ!!!」
「!!!」
「失敗したっていいんだ。0からステップを踏むのが重要なんだ!!!」
「才くん———————うん!!ルビィがんばルビィ!!」
「そうだ!!」



「才くーん、そろそろだよ〜」
「ルビィちゃんも!!」





衣装に着替え終わった残りの8人に呼ばれたので、出力室を2人で飛び出してその8人と落ち合う。





「舞台で見せるけど............一応始まる前に掛け声やっとく?」
「そうしよう!!才くんも!!」
「いや............俺はいいよ。」
「どうして?」
「俺は何度も言うけど、スクールアイドルじゃないんだよ。それに虎太郎や竜介先生も持ち場についてるんだ。俺1人それに参加は出来ないよ。」
「うーん...................じゃあ!」





千歌が妙案を思いついたようでそれをみんなに話す。俺は聞いた瞬間に呆れたような顔をしてしまった。でも、他のみんなは笑って受け入れてくれたのだ。


そこまでされて俺もやらないわけにもいかない。





「じゃあいくよ————————!」




「1!」


「2!」


「3!」


「4!」


「5!」


「6!」


「7!」


「8!」


「9!」


「……Ω」







みんなが笑顔だ。希望に満ち溢れ、次へと進もうとしている。変わろうとしている。この流れについて来られる奴は誰もいない。









「Aqours!!!!!!サーンシャイーン!!!!」








 
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