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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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36話 譲れないPride

寝静まった内浦今日この頃—————————カタカタとキーボードの打撃音だけが伊口邸に鳴り響いていた——


「アルティメットクウガの力の根源...............この謎が解ければ............」


とは言ったものの、完全解析まではあと数日...................いや十数日必要かも知れない。でもこのままクウガが『アーク』の手元から解放できるのなら、その数日は払う価値があるだろう。


それにただただ解析していくわけじゃない。別の作業も並行する——————そう、クローズの強化アイテムだ。


おそらくこの間にサウザーは自身のライダーシステムを強化するだろう。正直、サウザーがライダーのデータを持っていることに少しばかり不安感を覚えている。この先どんな強力な悪の仮面ライダーがサウザーに召喚されるかわからない以上、その不安を拭うためにガシャットの開発を急ぐしかなかった。


でもそれだけでは自身の強化だけを行っているのと同意義であり、他のライダーのカタログスペックが弱ければいくら奮闘したところで俺の代わりどころか時間稼ぎすらさせてくれないかも知れない。





「ビルド系ライダーの強化にはフルボトルを作成しなきゃいけないんだけど....................ん?そもそもフルボトルを作るよりも————————!」





ビルドガシャット———————それが思い浮かんだ。一通りデータを確認した時、ビルドドライバーにユニットを差し込んで変身しているフォームを偶然思い出したのだ。



それをクローズ用に改良出来きれば—————————!





「やっぱり俺って天才だな————————!よし!早速取り掛かるか!!」
















































—————※—————








































「いや〜暑いね〜!でも猛暑日ほど気持ちが昂ってパフォーマンスの向上に繋がるってよく言うだろ?」
「言わないよ!!!いくら何でもそんな言葉は言わないよ!!」
「そうか............こんなこと言っとけば、信じ込んでくれると思ったんだけどな................」
「自分のところだけビーチパラソルて涼んでたら説得力ないわよ。」





善子から当然のツッコミを喰らう。だが俺も善子のダークファッションにはツッコミたいことこの上ない。黒は太陽の光を吸収しやすい色であるから、この烈火の猛暑日に浦の星の屋上で着るには1番不効率な服だ。そこまでして堕天使を突き通すその心意気..................気に入った!


でも俺だけが言われるっておかしくないか?虎太郎と魁と稜もこの傘の下にいるのだから同罪じゃね?


ここで今まで口を閉ざして練習風景を見ていた稜が俺に話しかける。





「才、そろそろ開始から1時間経つぞ。」
「もうそんなに経ってたのか....................そろそろ休憩に入るか!」
「ふぅ...........やっとずら...........」
「お疲れ。」
「あ、魁君。ありがとう。」





倒れ込んだ花丸とルビィに魁はミネラルウォーターを渡す。


前にも言ったかもしれないが、魁は今までとは見違えるほどに変わったと他人の俺が評価できる。本人に言ってもそこまで変わっていないと言うかも知れないが、ここにいる残り14人に聞いても変わったと答えるだろう。やっぱり王になるセンスがあるのだろうか?



—————————何か急に腹が立ってきたな...............





「しかめ面を顔に貼り付けてどうされたんですの?」
「ダイヤ————————複雑な気持ち..................なのかな?」
「はぁ———————?」
「ところでダイヤ、昨日言った件はどうなったんだ?」
「え———————あぁ.........あの件ですか?」
「あの件?」
「どの件?どの件!?」
「ちょっ、お前ら近いって!!」




俺の話をこれ見よがしに俺との距離を詰めてくるAqoursの残り8人。そんなに気になる話題なのかと聞き返したくなるが、稜や魁もその内容に興味があるようなので早々に話すことにする。





「ダイヤに頼んでおいたんだよ。ダイヤの父親————————黒澤天青をこのゲリラライブに招待して欲しいってな。」
「「「「「「「え!?!?」」」」」」」
「そんなに驚くことか?」
「いや驚かない方がおかしいだろ!仮にも俺たちは敵対してるんだぞ!?」





稜は俺が警戒感ゼロなのを見て危機感を抱いたのか、俺に対して警告とも取れる忠告をする。


確かに昔に果南達を守りきれなかったという面で稜一種のトラウマのようなものを抱いているかも知れない。だからこそ共闘する前はとんでもなく強硬姿勢だったし、Aqours☆HEROESになってからも強硬派であることには変わりない。でもそんな状況を続けていれば、戦わなくてもいい人間とも戦わなくてはならないかも知れないからだ。ちょうど昔の稜と俺たちのように。




「敵対してるのがおかしいんだよ。黒澤天青の目的はこの内浦の体制を維持すること——————————つまり今のところは目的は同じなんだよ。」
「でもスクールアイドルを認めないんじゃ、その先に進めないじゃねぇか。」
「そのためにライブをするんでしょうが。この国は今、3派に分割されてる。その大多数はスクールアイドルのことを知らない人だ。それに反対してる人のほとんどもよく分かってないで反対してるはずなんだ。確証を持って反対してるなんてごく少数なはずだ.................」
「私は—————————!」





小競り合いになりかけていたところを千歌が諫めるかの如く、口を挟む。





「私は来てもらいたいかな。だって、その人はスクールアイドルのことがよく分かってないんでしょ?だったら知ってもらういい機会だよ!!」
「確かにそうだね。鞠莉のお父さんじゃないんだから、いきなり潰すってことはないと思うよ。」
「果南—————————全く。お前らって奴は.................お人好しだな。お前も、他の奴らもさ。」
「じゃあ...........!」
「俺だけでその意見をねじ曲げるわけにはいかないだろ?」
「よし!———————って、まだ結果も何も聞いてねぇじゃねぇか。」





元はといえば、俺とダイヤが話しているのを見て他8人が突撃してきたから結果すら聞けていないのだ。





「それでダイヤさん。結果の方は........................」
「———————————単刀直入に言わせてもらいますと、保留..............限りなく拒否に近い反応でしたわ。さらにまた黒澤家の恥になると私もお叱りを受けたところですわ。」
「そんな...........せっかく観に来てもらおうって決めたのに———————!」
「想定内だな。」
「え?」





俺の吹っ切れたかのような言動に嘆きの言葉を口にした曜を始めとする連中に驚かれる。





「想定内って———————」
「そのままの意味だ。単に誘っただけじゃこうなる事は明確だった。」
「じゃあどうするつもりなの?」





梨子の困惑したような顔から発せられた言葉に俺はお得意の自信満々の解答を皆に打ち明ける。





「堅苦しい奴には何言っても聞かないんだ。だったら、《《拳で》》示すしかないよなぁ?」
「は?」
「ひぃ?」
「ふぅ?」
「へ?」
「ほ!」
「何が『ほ!』よ。アンタが意味わかんないこと言い始めて始まった流れだって分かってんの?」





ダイヤ→ルビィ→曜→千歌の順でハ行を唱えてたから乗っただけなんですが?当たり前だよな?





「才、お前..............戦闘狂なのか?」
「お前ら男だろ!?男同士が話し合いで鎮まれなくなったら拳で語り合うしかねぇだろ?」
「いやならねぇよ!!拳で語り合うとかどんだけ昔—————————の話なんだよ!!」
「今の間は何だよ。あたかもそんな人がいたかのような間の取り方するなよ。」
「なるほどな———————俺は才の意見に賛成だな。」
「は!?魁!お前もかよ!!」
「俺と才は喧嘩して融通が効かなかったら拳で語り合ったから、その気持ちはよくわかるんだよ。」
「ちょっと酷くない?この平和的なスクールアイドル部にこんな殺伐とした2人がいるっておかしくない?」
「まっ、まずは俺たちで直談判しに行こう。身内のダイヤだけじゃ説得にならないからな。」
「不安しかありませんわ.........................」








—————※—————





「たのもー!」
「ちょっ、冗談でもやめてください!仮にも貴方はお父様と対立していらっしゃるお方なんですよ!?」
「それにジム巡りじゃないんだから................」
「一回やってみたかったんだよな〜!!」





曜が言ったポケットサイズの獣が出てくるアニメ、某主人公の真似をしたいという人はいるのではないだろうか?だが道場破りというのは基本的に、負ければ半殺しされてしまうものが多い。


それに皆も分かっているとは思うが、黒澤家は武道の達人がいる道場であるわけではない。ただ古い歴史が続いていて、その影響で武装————————挙句の果てには、魔法の指輪や魔力すら手に入れているのだ。そこを考慮すれば道場破りをするような気持ちで望まなくては—————————あっ、もちろん俺のことじゃなくて他のAqoursのことだからな?




気を取り直して黒澤邸にお邪魔させてもらう。


自身の家柄を高めるつもりはないが、この沼津では伊口邸、黒澤邸、小原邸以外に並び立つ邸宅の規模は存在しないと断言できるだろう。その内の1つであることを鑑みて観覧すると、やはりこの近現代とは相入れない旧日本式の邸宅であると言える。


ちなみに比較であるが、伊口邸はロボットやシステムを重視した近未来的な家である。黒澤と小原は西洋式と和式という面で、伊口と黒澤は近現代式と旧式という面で対立構造になっている。伊口と小原では一見そこまで変わらないように見えて、合理性や人間を想ったものに対して芸術を思いやりすぎたがために舗装されすぎて人間想いでない.....................今表現したことこそが今現在対立している理由そのものではないだろうか?


そんな深い思考を巡らせているうちに、客間の襖の前へと俺の体は運ばれていた。ダイヤは失礼がないようゆっくりと襖を開け——————————





「お父様、先ほどお伝えしたお客様です。」
「ふわぁ...............」
「威厳が...............」
「時代劇みたいずら...............」
「地上における魔界の統率者降臨!」
「はいはい!堕天使発言も時代劇でも何でもいいからそこを退け!」
「って!才君!?!?」





圧巻され驚嘆の声を上げていた千歌やルビィや花丸。堕天使を魅せていた善子を尻目に、ズタズタと音を立ててその和室に入るや否や黒澤天青と反対側に置かれた座布団に座る。そして机に肘をついて両手を組む。


俺は敬意を払わない。それがたとえどんな人物であってもだ。時の王者であろうが、はたまた大会社の社長であろうと妥協はしない。敬意なんか払っていたら、ゲームの世界じゃ自分よりソイツの方が上だって認めることになるからな。だからここでも態度を変えたりはしない———————————!





「————————傲慢だな。」
「生憎俺は何にも屈しないのをポリシーにしてるんでね—————————オイ、お前らも入ってこいよ。」
「えぇと.............お邪魔しまーす..............」





梨子の心配そうな声と共に入ってくるAqoursメンバー。今日はあまり黒澤天青を刺激しないという理由で、鞠莉と魁には竜介先生と一緒に待機を命じている。突然追い返されたらできる話し合いもできなくなってしまうからな。そして先生までここに来てしまったら、話し合いがめちゃくちゃになるかもしれないからな........................


皆が部屋に入り終わってから最後にダイヤとルビィが仲裁の立ち位置としてAqoursと黒澤天青が机を挟んで向かい合うのを見守るように、机の端側に座る。


ひと段落したところで、黒澤天青の口から失望したかのようなため息が漏れる。





「全く騒がしい連中だ。特にその首領がな。」
「首領って言い方が相応しいとは思わないが、一応このAqoursのリーダーは高海千歌っていう普通の少女だ。」
「こんなところまで来て普通って言うのやめてくれない!?」





厳粛な雰囲気を打ち壊すような千歌のツッコミを黒澤天青は気にせずに





「ほう。ではなぜお前が表立って交渉の場に出てくるのだ?お前の言い分であれば、その娘が出て来なければおかしくなるが...............」
「自分で言うのもなんだが、俺はこのAqoursの頭脳部だと考えてる。千歌(リーダー)は心臓。でもこんな場所では(ブレーン)が仕切らなきゃいけねぇだろ?」
「なるほど、ただの若造というわけではなさそうだな。」
「当たり前だ。天っ才だからな!」





俺の急なハイテンションな言動により一層周りの静かさが感じられる。そして嘲笑われるかのように鼻から息を吹きかけられる。





「それならば私が意見を固く持つ者であるということも理解しているはずだ————————」
「そういうわけにはいかない。見るだけでも足を運んでもらう。」
「そんな事に拘ってどうするのだ?第一、私が行ったところで何か大きく変わるのか?」
「ああ、変わるさ。お前も小原にTOBを沼津の学校法人にされたくはないだろ?それは俺たちも同じだ。俺たちが無益な争いを続けているうちに、サウザーはすでに保有株を20%近くに伸ばしてきている。おそらく反スクールアイドル感情が高まった事で株価が急落したんだろう。このまま放置していれば、50%集めて経営権を奪われる。サウザーの思惑の一部が完成してしまうんだぞ!?それだけはお前も阻止したいはずだ!!」
「ならばスクールアイドルを辞めればいいではないか。」
「そうすれば内浦は注目されなくなる。結果は同じだ。その状況を突破する鍵はこれしかないんだよ!!!!」
「————————話にならんな。」





呆れたような表情を見せつけて退場しようとする。だがここで逃すわけにはいかない。ここからは実力だ—————————!





「表に出ろ。」
「は?」
「ちょっと才さん!」
「才くん!そんな血の気の多い事は..............」





俺の言葉。明らかに喧嘩を誘うような言葉だ。そして何とかこの場を丸く収めようとするダイヤとルビィにとっては、不都合の何者でもなかった。





「ダイヤ、ルビィ。ここからは漢の語り合いだ。お前らとしてはこんな事して欲しくないだろうが———————」
「———————わかりましたわ。ルビィ、残念ですが私たちのできる事は終わったようです。」
「わかったよ。お姉ちゃん。」
「というわけだ—————————全力でやらせてもらう。」
「貴様..............いいだろう。私も漢だ。応じないわけにはいかない。」





俺の声がドス黒い声になる————————慈悲を一瞬で捨て去った事を知らせるその声にAqours一同は戦慄した......................















——————————————————————








話し合いの場所を庭———————広大な日本庭園に変える。


俺と黒澤天青以外———————すなわちAqoursの連中は邸宅の縁側でその成り行きを見守る。





「お前と戦うのはこれで最後にしたい。だから———————俺も手加減はしない。」
「小癪な.................!」





≪チェンジ! ナウ!≫






変身の掛け声もなしに変身するソーサラー。おそらくその感情を表に出していないだけで、イライラしているはずだ。そうでなければ仮面ライダーとあろう者がその掛け声を忘れる事はない。





≪ハイパームテキ!≫





背後にそのゲームを象徴するキャラクターと題名が描かれたロゴが現れる。その瞬間からがゲームスタートだ。





「ハイパー大変身。」





≪ドッキーング! パッカーン! ムー!テー!キー!≫






≪ハイパームテキエグゼーイド!!≫





自身の肉体に星屑が纏わりつき、その完全無敵の装甲が形成されて変身完了。純黒の宝石と流星が対峙する。





「ノーコンティニューで————————クリアする。」
「フン!!」





ソーサラーの薙刀がものすごい勢いで俺の頭部目掛けて振り下ろされる。頭部に当たれば、色々と厄介なので左腕で受け止める。そしてその左腕で薙刀を掴み、下方へと打ち付ける。薙刀から伝わった重力でバランスを崩したところにミドルキックを喰らわせる。


ノックバックを受けたソーサラーはすぐさま持ち直して、再び俺の元に寄ってくる。今度は薙刀の長さを利用した中距離で俺の体を切り裂こうとする。だがそんな攻撃は効くはずもない。薙刀を振り払って、パンチを連打していく。その一発一発の威力が——————————《《2倍》》ずつ上昇していくのだ。そう、その重みは常に強くなり続ける....................





「攻撃が...............強くなっているだと?」
「俺は強くなる!!俺の創造力が枯渇しない限り!ムテキゲーマーは無敵であり続ける!!!!」





これがこの前に施したアップデートだ。ざっくり言うと、自分の攻撃が当たれば当たるほど自分のパンチ力とキック力が2倍になる————————そういうものだ。





≪メダジャリバー!≫





仮面ライダーオーズの武器———————メダジャリバー。その威力は次元すらも斬り裂くそうだ。もちろんこれはオーズのガシャットの能力の一部に過ぎない。レジェンドライダーのデータを扱えるという事はその武器をガシャコンウェポンのように扱えるという事である。




今度は俺からソーサラーにどの刀を振るう。ソーサラーは火花を散らしてノックバックを受ける。


先ほど言及した威力に恥じぬ斬れ味だ。狂気的であるかもしれないが、甲冑を斬った時の音が爽快感を体に伝える。





「やっ!!」
「グッ!」
「相変わらず才さんはお強いですわね................」
「違うぞダイヤ。」
「え?どういう事ですの?虎太郎さん。」
「ムテキゲーマーがこの戦いに勝つのは三角形の頂点が3つある事と同じぐらい当然な事だ。問題はその戦いで得るものは何なのか.................」








虎太郎がダイヤに放った言葉。それを達成してこそムテキであるのだ..................


















 
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