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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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35話 赤月の下のForging





「今日は..............月が綺麗ですわね。」






















「月って................お!本当だ!ストロベリームーンじゃん!!」
「ええ!?———————あ、本当ですわね。」
「いや何で驚いてんだよ。」


ダイヤの言葉から俺が月を観察したところ、実際に綺麗であったのでその事を本人に報告すると驚かれた様子でその月を見る。その様子から察するに、本当はストロベリームーンであるという事を知らなかったのだろう。

では何故、月が綺麗などと言ったのだろうか?—————————うーん、わからない。それは後々考えるとしよう。


「さて...............俺はそろそろ帰るか.................」
「あっ、ちょっと待ってくださいませんか?」
「何だ?まだ何かあるのか?」
「いえ、そういうわけではありませんが................お礼を言い忘れておりましたわ。」
「??」
「先日の件は私たちにとって———————因縁以外の何者でもありませんでしたから。改めてお礼を申し上げますわ。」
「礼を言う必要はない。因縁云々関わらず、俺は正義のヒーローとしてAqoursの守護者として当然のことだ。お前らAqoursや内浦の善意を傷つけるような奴を俺のエゴとしても絶対に許せない相手だったからな。」
「才さん......................」
「でもこれで終わったわけじゃない。サウザーはこの一件で俺たちに強い恨みを抱いてるはずだ。それに.............................お前の父親とも...................」
「お父様がどうかされたんですの?」
「俺はお前の父親とは闘いたくないんだ。お前の父親は内浦をサウザーの魔の手から守りたいだけなんだよ。だから俺たちと敵対する理由なんてないはずだ。むしろそういう意味では俺たちと目的は多少のズレはあれど、変わらないんじゃないか?」
「確かに.............ですが..............」


俺が同意を求める疑問符を呈したところにダイヤは不安な顔で俺の質問に応答する。


「ですがお父様はスクールアイドルには猛反対しておりますわ。我が黒澤家はそのような華美すぎるような風潮を非常に嫌いますから。実際、2年前に私たちがスクールアイドルをしていた時にはお父様にお叱りを受けましたから......................」
「それはスクールアイドルの魅力を理解していないからだ。でもそれを理解できない人ではないだろう。少なくとも『和』というものを理解できている人間ならな。」
「ですが..................」


言わずもがなサウザーは明らかにそれを理解できない人間だろう。でもそういう人間はこの世界では極々少数派だ。この国でスクールアイドルに反対している連中はその少数派とスクールアイドルの良さを理解できるのにしていない者たちなのだろう。


「だからさ...................理解させてやってくれないか?」
「はぁ———————?」
「とどのつまり!今回のゲリラライブを《《見に来て欲しい》》んだよ。」
「え!?それは素晴らしいですが..............受け入れてくれるでしょうか................?」
「あの人も分かってるはずだ。スクールアイドルAqoursがどんな物なのか.....................知りたい気持ちはあるはずだ。」
「しかし..............」
「ダイヤ、俺は何度も言ってるだろ?——————できるかできないかじゃない。やるかやらないかってな!!!もし説得するのなら、俺もついて行く。最後は拳を交えなきゃ語れないものも、漢にはあるからな...............」
「そこまで言うのでしたら、承りましたわ。私も才さんの意見には激しく賛成しますわ。」
「ダイヤ———————じゃ、明日な!」


生徒会室を飛び出して行く俺を微笑みながらダイヤは見送ってくれた。けれどもその顔にはどこか、やるせなさを感じられるようなものがあった....................

正直言うと、黒澤天青をゲリラライブに誘って欲しいという提案はその場での突発的な思いつきであると断することができる。無理難題———————そんなことはよく分かっている。でもそれを乗り越えられなければ、この先廃校を帳消しにすることなど不可能に近くなってしまう。




だからこそ—————————必要事項他ならないのだ.......................................





—————※—————






「よし!アップデート終わりっと。あとは実際に使いこなせるかどうかだけど....................」
「才!ちょっと頼みたいことが—————————!」


ドアのノックもなしに、俺の自室に入り込んで来る竜介先生。このようでは自分がコイツらを本当に居候させている主人なのか疑ってしまう。だがそのような礼儀を弁えない行為自体は筋肉バカにはよくあること——————————なのだろうか?

でも実を言うと、この状況は今の俺にとっては望んでいたのかもしれないか


「そろそろ来ると思ってましたよ。」
「俺に新しいアイテムを作ってくれ!!!!!」
「無理です(即答)」
「何でだよ!!!」
「—————————この際だからはっきり言わせてもらうけど、まずクローズマグマを使いこなせてる時点で不自然すぎるのを分かってるのか!?」
「それは......................」


いつもの竜介先生に対して使う丁寧語が崩れたことに事の重大性を少しは理解してくれただろうか?まぁそもそも竜介先生に敬意など払っていないので、たびたび崩れてはいるのだが。


「祝から聞いたんだよ。サウザーと戦った時に、明らかにクローズマグマとは違う能力を発現させていたって——————————」
「そんなの!」
「知らない————————そうだろ?」
「......................」
「無理もない。お前には—————————地球外生命体の遺伝子が宿ってるんだから。」
「え?.....................ええ!?!?もう一回言ってくれないか?」
「何度も言わせんなよ......................浦江竜介のDNAには地球には存在しないDNA型が含まれてる——————脳が筋肉だけでも分かるように言えば、お前は只の人間じゃないって事だ。」
「え!?え!?ちょ、ちょっと待てよ!!!訳わかんねぇって!!!!」


俺の唐突な通告に戸惑う竜介先生。そりゃそうだ。自分が地球外生命体のハーフだと知ったら、誰だって驚きは隠せないはずだ。俺だってついこの間に知ったのだ。ビルド本編での万丈龍我は、地球外生命体エボルトの遺伝子の持ち主だった。だが転生を経験してまで、エボルトの遺伝子がその宿主についていくかと言われれば否定せざるを得ない。だとするとその遺伝子は別のだれかのものということになるが.......................


「訳わかってねぇのはおそらくお前だけだよ。急すぎるハザードレベルの上昇や感情の高ぶりとそこから得られるパワーがお前は俺たちとは桁が違いすぎる。カタログスペックじゃ圧倒的に負けてるサウザーと互角以上に戦える時点でな。」
「それは——————-」
「その遺伝子がどんなものかがよく分からない————————でもそれがその異常なパワーを与えている事だけは真実だ。」
「俺は—————————人間だ。」
「そうだ。俺はお前の————————浦江竜介先生の生徒だ。だからこそ、正義のヒーローとして戦うためにも...............だから今それ以上の力を無理に使えば、どんなことが起こるのか俺にも分からない。」
「でもそれじゃ—————————!」
「ああ、サウザーには勝ち目はなくなる。だからこそ今から特訓をする————————!」
「特訓?」
「そう—————————みんなを庭に呼んでくれ。」




————————————————





「何だよ、みんな呼び出して................」
「だから言ってるだろ。ここにいる5人は——————————って、稜は?」
「ああ稜なら千歌の家に回覧板を届けに行ったぞ。」
「回覧板?——————ああ、確かこの家が最後で1番最初が千歌の家だったか.................」
「だから稜は来ないんじゃないか?」
「そっか..............祝もしばらく東京に帰ってるし..............」
「じゃあ昔のこの3人でって事か!」
「いや俺は—————————」
「いや虎太郎、今日は竜介先生のハザードレベルの向上とお前の暴走克服の布石でもある特訓だ。だからお前にも変身してもらう。」
「————————分かった。お前が言うならやってやるよ。」
「じゃあ虎太郎と竜介先生が戦う—————————それでいいな?もし俺が危険と判断したら俺が止めに入るから。」
「よし!」じゃあ行くぞ!」
「おう。


≪ボトルバーン! クローズマグマ!≫


虎太郎が1号ポーズに似たポーズを決めてアークルの左側のボタンを押して変身する。闇のクウガの装甲が肉体を覆うように展開されかける。

一方の竜介先生はナックルにマグマ竜が描かれたフルボトルをセットし、そのナックルをドライバーに挿す。そしてレバーを回す—————————————巨大坩堝が背後に現れてその極熱物を垂れ流そうとする瞬間でこの文言。


≪Are you ready?≫


覚悟が問われる。もちろんながらそれはビルドドライバーでの変身者だけに問うているだけではないように解釈できる。特にこの状況では闇のクウガに変身し、それ相応の被害が出ることを覚悟しているかというニュアンスにも捉えられる。

一方のクローズに関してはクウガを止め、大切な人達を守る力を手に入れるという事——————————それを問うているように考えられる。


「「変身(!)」」


≪極熱筋肉! クローズマグマ!!≫


マグマが流れ出て、コンクリ化してそこから顕現するクローズマグマ。一方でその体がアークに遠隔操作を受ける黄金の装甲を纏われしライジングアルティメットクウガがこちら側では顕現する。


≪ステージセレクト!≫


流石に家を破壊しかねないので、ゲームエリアに転送する。選ばれたゲームエリアは廃工場。この国ではよく見かけるもぬけの空で創作の世界では、よく喧嘩などの現場になりやすい場所である。


「——————————」
「竜介先生、今のクウガはアークの遠隔操作を受けてます。素の戦闘力はサウザーよりは強いでしょう。」
「おう!行くぜ!!」
「——————————!」
「おっ!」


合図する間も無く放たれた暗黒掌波動を身のこなしで避けるクローズ。そして俺はデータ計測を開始する。1つはクローズの力を、もう1つはクウガの力を探るのだ。

クローズは暗黒掌波動を避けながらリーチを詰めていく。そして自分のパンチが届く範囲に来たところで右フックを喰らわせる。ただその程度では勢いの反動で後ろに数歩後退りするだけであった。

当然追い討ちを仕掛ける————————が、反射的に放たれた波動を喰らってしまう。アルティメットクウガもまた追い討ちを掛けようとするが、それも不意を突くようなキックで押し返される。

今度こそと後退ったアルティメットクウガに追い討ちを掛けようと、ストレートパンチを喰らわす。それは成功したようで、そこからクローズの押しが強くなっているのが誰から見てもよく分かった。ただ————————俺の憂いは少しずつ大きくなっていたのも同時にわかった。


「ハザードレベル10............10.3...........10.5...........もう3以上上がってるなんて................................」
「ウリャァァァァァ!!!!!」
「——————————」
「もう少し様子を見てみるか...........」


俺は既に危険水域に入ったと考えていた。そもそも以前は基本ハザードレベルが5であったクローズが今は7と大きく成長している。そして上がり方もこの10分ほどしか経っていないこの時点で3も上昇しているのだ。そしてその上昇は留まることを知っていない。

でもまだ限界を確かめておきたいという探究心のようなものがそれを諫めた。実際、まだクウガのデータももう少し計測しておきたい。結局傍観という結論に至ってしまったのである。


猛攻に押されていたクウガではあるが、裏を返せば押されているだけである。その装甲を貫通するほどのダメージは喰らわされてはいないのだ。しかし何処ぞの誰かが言ったように、攻撃こそ最大の防御である。だからクローズは攻撃をし続ける。

クローズ渾身のパンチがアルティメットクウガにクリティカルヒットする。距離が離れたところでアルティメットクウガはクローズに手をかざす——————————超自然発火能力である。

これは装甲の一部の原子をプラズマ化して燃やす————————だが、クローズマグマは文字通りマグマの力である。体が燃えてしまってもすぐ消えてしまうのである。

体を燃えた事はなかったかのようにアルティメットクウガに襲いかかる———————が調子に乗りすぎたのか、その拳を掴まれてしまう。そのままアルティメットパンチを喰らってしまい、変身解除までの体力が残り50%を切ってしまう...................


「クソっ————————」
「もうこれ以上はキツいか............................って、ちゃんと話を聞けよ!!!」
「うるせぇ!!」
「———————————————」
「クウガも徐々に強くなってはいるけど——————————クローズの上がり方は異常すぎるな................もう12か...............」


≪Ready go! ボルケニックアタック!≫


八岐の溶岩竜が足元から現れ、クローズの周りに集まる。そしてその極熱物をアルティメットクウガへと流れる。

それだけでは終わらない。マグマが冷めたことで煙が出る—————————それを目隠しに極熱のパンチを炸裂させる。


だが——————————


「うっ...........ウワァァァァァァ!!!!!」
「え!?」
「壊す...................ぶっ壊してやる!!!」


一瞬何が起こったのか判断できなかった—————————数秒してからようやく我に返ってその判断が可能となった。

端的に説明すると、クウガの体に拳が当たった———————その瞬間に突然クローズが暴れ始めた................感情なんてあったもんじゃない。ただただハザードレベルが向上する。

計測していたハザードレベルの棒グラフは飛躍的とはいえどグラフ上では緩やかな右肩上がりだったのが、剣山の斜面のようなそれに変化する。

グラフが指し示すようにクローズは強くなり、アルティメットクウガを追い詰めていく。クウガは膝を着いてこそいないが、その猛攻には不利であると言わざるを得ない。

そしてクローズの言葉の継ぎ接ぎからは『破壊』や『壊す』など雰囲気が悪いものばかりだ。その言葉は俺に竜介先生に対する異物感を嫌になる程に抱かせる。


これ以上はマズい——————————!


バキン!


自分でもこんなにも早く行動できたのかと驚いている。でもこれは真実だ。起こったことを1つずつ説明すると、俺はまず咄嗟にムテキゲーマーに変身。

その時をもねじ曲げるスピードで2人の元に近づいてから、最初にアークルを破壊。次にクローズマグマナックルをビルドドライバーから抜き出す。

それによって纏っていた装甲は解除されたことを見届けたのちに、俺も変身を解除する。すると転送されていたゲームエリア内から追い出され、元の庭に戻される。


「ぐっ!はぁはぁはぁ..................」
「竜介先生、虎太郎!」
「俺は辛うじてマシだ。それより竜介先生が————————」
「大丈夫か!?」
「ああ.......................ぐっ..............」
「やっぱり暴走したか.......................」
「才、お前は暴走するのを知ってたのか?」
「いや..................なんとなくそんな気がしただけだ。確証があったら間違いなく戦わせてなかったよ。むしろなかったからこんな事をしたんだよ。」
「悪魔かよ.................」
「バカ、いいから肩を貸せ。」



———————————————————



「だから今のは!!」
「どんな抗弁を垂れても暴走したって絶対的証拠がある限りは無理だ。」
「才、お前は俺に戦うなって言うのか?」
「そういうことを言ってるんじゃない。無茶な戦い方はするなって言ってるんだ。」


先ほど家に運んでから俺の忠告に徹底抗弁する竜介先生に俺は強い言葉で咎める。俺の目には明らかに危険—————————下手をすれば、アルティメットクウガの危険度すら比にならないほどの物を孕んでいる。


「相手が誰か分かってんのか?俺たちが負けたらサウザーにこの内浦を潰されるんだぞ!?」
「だからこそ!お前が理性を失ったらそれこそサウザーの思うツボだってわからないのか!?」
「それは..............」
「何が見えた?」
「え?」
「クウガに触れた時に何が起こったんだって言ってるんだ。」
「——————————」


俺の命令とも取れる口調に、竜介先生はその重い口を開こうとする。おそらく俺の顔に感性豊かな顔が貼り付けられていないのではないだろうか?
この表情が出る条件というのは今まで自分も気にしていなかったのだが、どうやら怒っているときに1番その表情になる確率が高いそうだ。


「わかんねぇけど...................仮面ライダーがいた。そのライダーが全ての物を壊していた................そっから、俺もよく覚えてねぇ。」
「そうか................」
「才、どうするんだ?」
「分かった。」
「え?」
「そろそろクローズは強化しなきゃいけないと思ってたんだよ。今日の特訓はその問題点と遺伝子の謎を探るための事だ。それとクウガの力を探るためにもな。」
「何だよ〜!!!強化してくれんじゃねぇかよ〜!!!!」
「勘違いしないでくれ。今日でハッキリしたんだ。お前の力は明らかに危険な..............得体の知れない力だってな。」
「はいはい!分かったって!!」
「全く.................筋肉バカが.............」
「はぁ?俺は筋肉バカじゃねぇ!プロテインの——————」
「もうその一本しかないネタは十分だから。」












なんだかんだで俺はこの男————————浦江竜介を尊敬し、信頼しているのだ。恩師としても、仲間としても。



 
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