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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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19話 善意のLandscape

少し時は遡る—————————




ちょうど竜介がランニング中のこと。すなわち才たちがサウザーと交戦中の時の話。サウザーは竜介もといクローズにも刺客を送っていた。









「お前——————小原.......魁だったか?」
「ああ。クローズ、お前を倒させてもらう。」
「そいつはお断りだぜ!」
「まぁ..........黙って倒されてくれるわけないか.........」
「(ん?才からメールだ——————)」





竜介は音は鳴らないものの、バイブレーションでその便りの存在を気付く。その内容を相手に気づかれない程度にチラリと覗き見する。この瞬間に隙を見せるような動作を見せた暁には最悪、自分の命が喰われてしまう。だからこそ慎重に————————頰が緩んだ。





「(了解———————!)」
「魁、お前は—————何がしたいんだ?」
「どういうことだ?」
「お前を王様だって言ったのはそのアークっていう奴なんだろ?そうだとして、そんな奴の命令通りに動いていて良いのかって言ってるんだ。」
「アークの意思は絶対だ!!」
「他人に決められた夢は他人の夢だ。お前の夢じゃない!そんなの王様じゃない!!」
「黙れ!!」





竜介に言われた言葉に図星を当てられたように怒る魁。互いに変身アイテムを取り出して戦闘準備を始める。竜介はビルドドライバーを腰に当てがうと、自動展開され、腰に巻き付けられる。もちろんそれはサガも同じ。





≪ボトルバーン! クローズマグマ!≫





クローズマグマナックル———————そのメールこそ、竜介にそれを使うことを許可する文言が書かれていたのだろう。才もなぜ使用できたかは未知数であるが、それ故に強力であるから許可した。明日早く寝なければならない竜介たちには持ってこいだ。


ビルドドライバーにドラゴンマグマフルボトルを差し込んだナックルをセットし、そのレバーを回す。





≪Are you ready?≫





『準備は完了しているか?』その旨を問う。これはただ単に準備を言っているわけではない。何かのために戦う準備はできているかを問うものでもある———————!





「「変身(!)」」





≪極熱筋肉! クローズマグマ! アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!≫






≪ヘンシン!≫





極熱の装甲とは対照的な優雅なシャンデリアのような装甲のサガ。視点を変えればどちらも美しい。


先制攻撃はサガであった。何かで塗り固めたように作られた自分の存在意義、夢。それを崩された時に人間というものは怒るか絶望するかの2択しかない。傾向ではあるが、プライドの高い者が取る選択というのは前者の方が圧倒的に多い。


ジャコーダーの触手1つ1つがかなりのトン数を秘めている。ファンガイア然り、グロンギなど民族的な怪人ならこの怖さが身に染みてわかっているのかもしれない。


だが、クローズマグマには通じない。クローズはその場に立ったままジャコーダーの触手を受け続ける。もちろんムテキではないので、多少のダメージは喰らっているものの、マグマアーマーが致命ダメージを拒絶する。


むしろ、その高温高圧によりジャコーダーの方が傷ついているように思う。





「ちょこちょこやってんじゃねぇ!!!」
「!!!」




ジャコーダーによる中距離攻撃を突破して、リーチを縮める。クローズマグマの力は遠距離ではなく近距離で発揮されるものだ。


極熱を孕んだ一撃がサガの腹部にヒット。続いて顔にワンツーパンチ。さらに、ミドルキックをその腹に喰らわせる。猛烈すぎる連続猛攻撃にバランスを保てずについに倒れ込んでしまう。





「ぐっ——————」
「お前じゃ俺には勝てねぇ。他人に決められた夢を持つお前が、俺に勝てるはずがねぇ。」
「五月蝿い!!」





≪ウェイクアップ!≫





奇怪な言葉とともに放たれる必殺技———————この必殺は今までで処刑できなかった奴はいないのだろう。でも奴はもう処刑人ですらない。


クローズは自身の体を貫こうとしていたジャコーダービュートの先端を受け止める。普通なら貫かれてお終いなのだが———————


さらに鞭のように長くなっていたことから、クローズはその鞭で持ち主であるサガを振り回して、空中に打ち上げる。それをチャンスと見たクローズは——————





≪Ready go!≫



≪ボルケニックフィニッシュ!≫









極熱必殺技————————そう呼ぶにふさわしいライダーキックがサガの体にクリティカルヒットする。エグゼイドのライダーシステムならば、間違いなくPERFECTと判定するであろう。 



サガの装甲が再び、元々の装着者自身へと姿を変える。





「なぜ..........なぜ俺は勝てないんだ!?」
「何度も言わせるな。お前は自分で王様になるって決めてないからだ。」
「王になると決めたとして!何になるんだ!」
「お前は決められたことしかやってない。だから自分で行動しろ!サウザーの命令で行動するな!」
「自分でやったところで結果は同じだ!!」
「——————じゃあ、試してみるか?」
「何?」
「明日、海開きがある。そこでお前らはスクールアイドルの評価を徹底的に落としてみろ。」
「誰がお前の命令なんか.......」
「じゃあ、お前の結果は同じってことの証拠にはならねぇ。そして——————あいつらスクールアイドルは自分で動いてる。自分で行動する力ほど強い力はない。」
「———————いいだろう。」







そして———————その結果は、サウザーの意見は内浦の皆に振り向きもしなかった。



そればかりかスクールアイドルAqoursのリーダー——————高海千歌の要望に応えた。






〜〜〜〜〜



「高海千歌———————!」
「..........................」
「とんだ恥をかかせてくれたな.........!この私に刃向かうことがどういうことが教えて差し上げよう———————魁、今こそAqoursおよびエグゼイドを封じるアイテムをアークに製作させる。」
「しかし———————」
「何だ?私に意見でもあるのか?」
「いえ—————」
「当たり前だ。私の意見こそが絶対。そもそも君の意見など聞いていない..............」
「はい—————」
「君が王であれば、私は皇帝(サウザー)だ。皇帝に逆らえる王など存在しない—————!」




兆一郎はサウザンドジャッカーを魁に渡す。そして魁は内浦を一望できるベランダまで出る——————





「キバット!」
「俺に何か用か?—————魁。」
「これをアークに—————————!」
「なるほど............俺を使い走りになるのも気に喰わんが、俺もまたアークに生み出された者—————いいだろう。その要求承った。」





キバット————正確にはキバットII世と言った方がよいか。サウザンドジャッカーは魁の手元から離れ、キバットII世へとその持ち主を変えていく。


そして飛び去ってゆく——————どこに有るかもわからない。


アークの意思の根元。その事実(データ)を携えた闇がこの内浦に蠢く———————



—————※—————





「え!?竜介先生は知ってたんですか!?」
「元はと言えば俺も内浦出身だ。内浦の魅力くらい知ってるよ。」
「じゃあ何で教えてくれなかったんですか!?」
「千歌も言ってただろ?自分たちで気づけなかったらスクールアイドルやる資格ねぇって。」
「俺たちだけに教えてくれればよかったじゃないですか!!」
「そんなもんじゃねぇ———————内浦の魅力ってのは人に教えるようなものじゃない。」
「——————何だろう、妙に納得できるな..........」





俺たちが竜介先生のそれを聞いて納得できる理由はただ一つ。俺たちが魅力に気づいたから————————この一点に限る。そして何より、その魅力というのは言葉に形容させることができないようなものだということだ。俺も善意という言葉で片付けているが、正確なものはわからない。というより著せば、その価値というものが大きく値下がりしてしまうような貴重な存在。





「それに——————アイツにも分からせてやりたかったんだ。」
「アイツ?誰のことですか?」
「いや——————別に。」
「ま、いっか。それより!問題はどんな《b》景色《/b》を創るかですよ!!」
「それはお前の仕事だろ?」
「ちょっとぐらいアイデアくれたっていいじゃないですか!オイ虎太郎!お前もちょっとは焦れよ!!」
「焦ったって仕方ないだろ?気長に考えるしか。」
「そうだけど...........うーん——————」





内浦の魅力はわかったところでそれをどう表現するかだ。先ほども言った通り、言葉で著すのが困難であるのにどうやってそれを実物に表現すればいいかの話だ。この状況を端的に表すならば、スローガンが頭の中では浮かんでいるのにそれを文字にできていない運動会のようだと表現できる。





「善意ね............善意とは、相手にとって喜ばしい事を行う...........喜ばしい事をされたら相手は..........?」
「あたたかい気持ちになる。」
「え?」
「だから、相手に喜ばしい事をされたら俺たちって心がパァっとなるだろ?それがあたたかい気持ちになるって事だよ。」
「なるほど———————あたたかい..............輝き.............!!!!!!!!!」





そう、ここで俺の脳に稲妻が走る。思いつき、閃き。まるで受験中に難解な問題の解法をビビッと思い出す受験生かのようにひらめきが舞い降りる。その舞い降りは絶対に無駄にしまいと急いで携帯電話を起動する。話し相手は———————





「もしもし?あ、家にランタンみたいな物送ってくれないか?———————大丈夫?サンキュー!」
「誰に電話したんだよ............」
「じいちゃんの召使いみたいな人.............かな?」
「みたいな人って何だよ。」
「いや実を言うと俺、祖父ちゃんに最近会ってないから電話の主も誰かわからないんだよ...............」





この世界にとってメタ的な事を言うと、実は祖父ちゃんにはまだ会っていない。無論記憶はだんだんと蘇ってはきているものの、どうやらその人を思い出すにはその人について他者から紹介される必要があるようだ..........その割には転生前の記憶がほとんど消えている。そんな記憶忘れた方がいいのだが.................


それはそうと、今度正式に祖父ちゃんに挨拶に行こうと思っている。スパコンとかも貸してくれてるんだからそれくらいしないとな。でも裏の顔はこの日本ならず世界を裏から支配する王みたいな存在だもんな..........会うのにも若干の勇気も必要だな。





「それはそうとランタンを大量に——————って一体何に使うんだ?」
「あたたかさ——————輝き—————あたたかい輝き。この町にあるのは強い輝きじゃないけど、優しい沢山の輝きだ。そんな沢山の輝きを表現する最高の品物だと思わないか!?」
「なるほど——————良案だな。」
「だろ!?よし!虎太郎、もう暗くなってきてるが急いで設計図を作ろう!場所はあの海岸で飛ばそう!」
「飛ばす?」
「ああ、俺の構想の中には内浦っていう存在を狼煙あげるためにはこの大空に飛ばすことが1番いいと思ってる。」
「そうか——————それも視野に入れて調整しよう。竜介先生はチラシ配りとランタンの積み込みとかよろしくお願いです!」
「おう!!任せとけ!!」
































「さて——————この場所は潮位によっては、飲み込まれる場所があるだろう。そこを考慮して考えれば、この辺が妥当だろ。」
「ああ、でもここからじゃ見にくいかもしれないな。」
「じゃあ—————」
「おーい!!!才くーん!!!!!」
「おっ、千歌。お前歌詞は出来上がったのか?明日はライブだぞ?」
「当たり前だよ!!さては千歌をバカにしてるな〜?」
「ああ、バカにしてたw」





俺の生やした草に不機嫌そうに膨れっ面を俺に見せる千歌。こんな表情を見るのは小さい頃からも頻度が多い———————だからこそ、こんなにも愛らしく感じるのかも知れない。





「何だろう—————これも運命なのかな?」
「何が運命だって?」
「私さ——————何もないって思ってた。こんな場所は地味って思ってた。でも——————よく考えたら、全く違ってた。内浦にいたから梨子ちゃんにも出会えた。虎太郎くんにも出会えた。竜介先生の教え子になれた。曜ちゃんや、才くんともずっと一緒だった。この内浦が今の私の全てを創ってくれた。内浦が運命を変えてくれたんだよ!」
「そうだな——————俺も内浦出身でよかった!」
「え?」
「え?じゃねぇよ!———————千歌、お前だけが感謝してると思うなよ?俺だってそうだ————————ここに生まれたから千歌に出会えた。スクールアイドルを支えられた。正直な話、最初は使命のように思ってた————————けど、いつの間にかお前らといるのが楽しくなった。お前らは俺にとっての輝きそのものだ!」
「才くん————————!」





そう、これは嘘偽りない真実だ。最初はオーマジオウに与えられた使命を全うするだけだった。———————でも、この内浦に来てから、スクールアイドルを支えたい。守りたいと切に思うようになった。それこそ間違いなく、この町のぬくもり。この町に冬なんて来るはずもない。このあたたかさが受け継がれる限り、絶対に!だから——————全力で守り抜いてやる!!





「ほんと、才くんはずるいよ。」
「え?」
「才、ここでいいんじゃないか?」
「おう!そこがベストマッチ———————稜!?」
「稜くん!!」





虎太郎が最適解を導き出したすぐ後に現れた稜。話をするにはベストタイミングかもしれない。おそらく、変身するつもりではないだろうと殺気の強度ようなものを感じ取って、高を括る。





「お前ら——————ようやく気づいたようだな。この町の良さに。」
「ああ、それがわかったからこそ俺は何があっても内浦(この町)を守り抜く!だから———————俺たちと一緒に戦わないか?この町を脅かす奴らと。」
「俺には———————お前らと一緒にいる資格などない。」
「そんなこと『あるんだよ!!』
「俺は——————アイツらを守れなかった..................守るべきものを.........守れなかったんだ。」





涙なら今すぐ出そうなほどに悔やんでいた。でも、もう出ない。もう枯れ果てて残っているのは誰かに対しての憎しみしかないのかもしれない。俺には一生分からないかもしれない悲しみ。でもたとえその気持ちを理解できなくとも、俺は同情の気持ちでいっぱいだった。





「千歌!——————お前には、覚悟があるか?」
「覚悟——————?」
「ああ!全てを受け入れる覚悟。決して諦めない強い覚悟。お前にはそれが有るかと聞いているんだ!!」
「——————分からない。」
「何だと!?」
「そんなの起こってみなきゃ分かんない。でも、私は諦めたくない!中途半端になんか終わりたくない!!!!!」
「そうか———————なら、存分にやってみるといい。






























この夜空を照らしてみろ。」





















































夢で夜空を照らしたい








—————※—————

















「終わったな———————」
「ううん、違うよ。むしろ始まりなんだ——————ここから!」
「確かになw」
「この町でもできる!スクールアイドルが——————

























































ここから始められるんだ!!!!!」



















 
 

 
後書き
次章予告


「PVを作り終え、ネット上にアップするとそれは瞬く間に大反響!そして俺たちは東京のスクールアイドルのイベントに招待される—————」
「だがしかし!そこで新たなライバルSaintsnowが現れる。」
「そしてサウザーのスクールアイドル絶滅計画が今始動する————」
「え!?」
「これからは私の時代だ——————」







今回でスクールアイドル始動編が終了————と言ったところでしょうか?
そして次章はいよいよ第1期のクライマックスに入って来ます。


余談ですが、オハラエンタープライズの日本支社は東京に存在しています。ただし兆一郎はオハラエンタープライズのCEOですので、お忘れなく。
ほんといい性格してるよ、サウザー殿下...........
 
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