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滅茶苦茶怖い人だった

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第二章

「あのお客様を前にして」
「凄いオーラですからね」
「いつも通り」
「あのオーラを受けても平気ですか」
「南さんひょっとして大物でしょうか」
「まさか」
「ご注文が入りました」
 だが紀子は戻ってきて平然と言ってきた。
「ハンバーグ定食です」
「あの、南さん」
 その紀子にだ、黄川田は強張った顔で言った。
「いいでしょうか」
「どうしたんですか?」
「あのお客様ですが」
 その彼のことを話すのだった。
「うちの常連の方ですが実は元外国人部隊なんですよ」
「そうなんですか」
「フランス軍の。八条警備の格闘技指南役だったんです」
「そうですか」
「はい、そしてです」
 そのうえでというのだ。
「コマンドサンボの達人で多くの戦場を潜り抜けてきた」
「凄い人ですか」
「戦場で何十人もその手で倒してきたんですよ」
「えっ、何十人も」
「ですから穏やかですが」
 その雰囲気と外見はというのだ。
「非常に強くて。オーラも感じましたね」
「いえ、お客様ですから」
 紀子はなにでもないといった返事で答えた。
「確かにオーラは感じましたが」
「お客様だからですか」
「あの方も。どんなお客様でも礼儀正しく親切にですね」
「それはそうですが」
「ですから接客させて頂きました。駄目でしたか?」
「それでいいですが怖くなかったのですか」
「全く、お客様ですから。ではハンバーグ定食お願いします」
 笑顔で言ってだった。
 紀子は次の客の注文を受けに行った、黄川田はその彼女を見送って他の店員達に囁いた。
「あのお客様が怖くないとは」
「凄いですね」
「大物ですね」
「間違いなくそうですね」
「あの娘は」
「オーラを感じても怖くないとは」
「かなりの器です、どうやらです」
 考える顔でだ、黄川田は述べた。
「私はとんでもない大物をお店に迎え入れましたね」
「そうですね」
「いや、凄い娘です」
「凄い娘が来ました」
「本当にそうですね」
 他の店員達も頷いた、そしてだった。
 紀子はこの店で働き続けたがどんな客が来ても物怖じです、誰に対しても礼儀正しく親切だった。それでだった。
 評判の店員になり客達だけでなく黄川田達店員も頼りにする様になった、非常にいい娘がいて有り難いとだ。


滅茶苦茶怖い人だった   完


                   2022・7・21 
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