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お母さんを見習って

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第一章

                お母さんを見習って
 中本美優は母の穂香に非常によく懐いている、五歳になるが歩ける様になってからずっと母の後をついてだった。
 そうしてだ、母の言うことを何でも聞いてだった。
「何でもだな」
「お母さんの真似するよね」
 美優の兄で中学三年になる家の息子の潤一郎は父の実篤に言った、薄茶色の癖のある髪を真ん中で分けて面長で切れ長の目を持つ中性的な顔立ちだ。背は中学生では高い方だ。バスケ部ではレギュラーである。
「いつも後ろにいて」
「ああ、あんなに懐くなんてな」
 父は息子がそのまま成長して髪の毛をオールバックにした顔で応えた。痩せているが少し腹が出て来ている。
「思わなかったな」
「そうだよね」
「顔も母方だしな」
「このままだとお母さんそっくりになる?」
「なるな」
 父は否定しなかった。
「間違いなく」
「そうなるんだ、やっぱり」
「お母さんにな」
「えっ、お母さんに似たら」 
 どうなるかとだ、息子は父の話を聞いて怯える顔になって言った。
「気が強くて怒ると怖い」
「芯が強いとは言わないんだな」
「普段は優しいけれど」
 母のことをこう言った。
「悪いことしないし言わないけれど」
「気が強くてか」
「怒ると怖いから」
 このことは事実でというのだ。
「ああなるのかな、凄く可愛いのに」
「いや、お母さんも美人だろ」
 父は自分の妻だからこう言った。
「そうだろ」
「まあそれはね」 
 母は黒髪を後ろを刈り込んでまでして短くしてセットしたショートヘアで顎の先がすっきりした顔できりっとした目に引き締まった唇と高い顔を持っている。一六七位の夫より十センチ程低い背でスタイルもいい。
「そうだけれど」
「健康的なな」
「けれど美優はお祖母ちゃんそっくりだよ」
 潤一郎は言った。
「色白でお顔は少し面長で」
「大きな垂れ目でな」
「髪の毛の感じも」
「けれどな、お母さんと一緒にいたらな」
「あっちの顔だし
 母方の祖母そっくりでというのだ。
「ああした性格になるんだ」
「お祖母さんも実は気が強くてな」
 美優が血を受け継いでいる彼女もというのだ。
「怒ると怖いんだ」
「ああ、それ僕も聞いたよ」
「だからな」 
 それでというのだ。
「これからな」
「気が強くて怒ると怖くなるんだ」
「そうなるだろうな」
 五歳の娘、ずっと妻の後ろをついている彼女を見て言った。そして見るとだった。
 美優はいつも母を憧れの顔で見て目をキラキラとさせているが。
 兄には自分が悪いことしたと思うとだ。
「お兄ちゃんそんなことしたら駄目」
「うっ、厳しいな」
「お母さんが言った通りにしないと」
 ジト目で指差して言ってくる、そして。
 一緒に遊ぶ男子達に対してもだった。 
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