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お芝居の彼氏から

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第一章

                お芝居の彼氏から
 春日宏昌一七六程のすらりとした背で卵型の顔に黒いショートヘアとやや目が小さい穏やかな顔の彼は今驚いていた。
 何とだ、職場の先輩の山本凛一五八程の背で黒く長い髪の毛を奇麗にセットしていてはっきりとした顔立ちで日本離れした美貌とスタイルを持っている彼女から頼まれたのだ。
「最近親が五月蠅くてね」
「早く相手を連れて来いってですか」
「いないって言ってもよ」
 それでもというのだ。
「兎に角結婚を前提としたね」
「そうした人をですか」
「釣れて来いってね」
「そうした人は実際にいないと駄目ですよね」
 首を傾げさせつつだ、宏昌は凛に問うた。
「そうですよね」
「彼氏さんね」
「それもかなり仲が進展した」
「そうだけれどね、もうそうした相手無理にでも見付けろってね」
 その様にというのだ。
「うちの親言ってきてるのよ」
「理不尽ですね」
「実は実家天理教の教会で」
「そうだったんですか」
「私ひとりっ子で跡継ぎなのよ」
 この事情を話すのだった。
「天理教の教会は出来ればだけれど」
「何かあるんですか?」
「夫婦揃っての教えだから」
「旦那さんが必要なんですか」
「そうなの、私も二十九だし」
 その年齢になったからだというのだ。
「もういい加減お婿さん迎えて」
「教会を継げってですか」
「言われてるのよ」
「それで無理にも言ってきて」
「うちの親どっちも強引なところがあるから」
「それで僕にですか」
「その場取り繕いたいから」
 その為にというのだ。
「お芝居でね」
「そうした人ということで」
「一緒に実家に来てくれる?」
「わかりました」 
 何でこうなると思いつつもだ。
 宏昌は頷いた、そしてだった。
 凛に連れられて天理教の教会彼が住んでいる街から駅で五つ位離れたそこに行くとだった。
 大きな瓦の屋根の広い庭を持つ家に案内された、宏昌はその家を見て驚いた。
「お屋敷じゃないですか」
「うちの家教会だから」
「いや、大きいですね」
「そうかしら」
「そうですよ、先輩のお家ってこんなに大きいんですか」
「ここ結構田舎で土地あるし」
 凛は驚いている実篤に何でもないという顔で答えた。
「古い教会で所属の教会も多いし信者さんもね」
「多いんですか」
「だからね」
「こうした教会ですか」
「ええ、じゃあお父さんとお母さんと会ってね」
 凛は背広姿の宏昌に言った、自分は白いシャツに赤のズボンといった格好だった。そのラフな服装でだ。 
 初老の黒い法被を着た夫婦に彼を紹介した、宏昌はたどたどしく凛と付き合っていると言った。そして自分でも駄目出しする位の下手な芝居を続けたが。 
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