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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第4章 姉妹編
  第15話 来訪

「はぁ?英雄感謝祭?」
アレンはフェアリーテイルの酒場で、ミラの作ったチャーハンを頬張りながら、隣に座るジェラールの言葉に疑問を投げかける。マグノリアだけでなく、すでに王国中に知れ渡っていることであった。だが、アレンは療養もあり、ほぼすべての時間を医務室で過ごしていたため、世情に疎かったのだ。
「ああ、アレンがアクノロギアを斃したことに対する祝宴だそうだ」
「いや、だから斃してねえって」
「撃退したのは事実じゃない。それに、街も王国もあなたのおかげで最小限の被害で済んだのよ?」
ジェラールの言葉を否定するも、再度それをミラに否定されてしまう。
「アレンが目を覚まさぬうちから、王国の使者が何度か足を運んでくれてな。国を挙げてのお祭りだそうだぞ」
「王国中のギルドや住民が参加するのよっ!楽しみね!!」
ジェラールとミラはとても嬉しそうに話しているが、当の本人の表情は暗い。
「…それ、どんだけ集まるんだよ…なんかめんどくさそうだな…」
「そういうな、国王陛下と姫殿下直々に、お礼をしたいそうだぞ」
エルザが3人の話に入り、誇らしげに語る。
「いや、それ謁見ってことだろ?堅苦しいのは評議院だけで十分だよ」
「もう決まったことだ。今更言っても仕方ないだろう?」
アレンはジェラールの言葉にため息をつくと、肩ひじをついてむすっとしている。
「で、それはいつあるんだよ」
「えっと、ちょうど2か月後…だったかしら?」
「首都クロッカスは、準備で大忙しだそうだ」
アレンの問いにミラとエルザが答えると、ジェラールが思い出したかのように、アレンに質問する。
「そういえば、ずっと気になっていたんだが、アレンは前にエーテリオンから逃れた後、4年間もどこにいたんだ?」
「あ、それわたしも気になってたのよ」
ミラも被せるように声を掛ける。
「あー…それはな…」
アレンは真実を言うか迷っていた。だが、遠い大陸に飛ばされていたといっても、1.2年であればまあ、何とか通るとも思ったが、さすがに4年だからなー、とグルグルと頭の中で迷いを巡らせていた。
「どーせ、別のギルドやら街で女でも作って遊んでたんだろ」
話を聞いていたのか、カウンターからほど近いテーブル席に座ったラクサスが口をはさんでくる。
「…アレン?どういうこと?」
「ちょっと詳しく聞かせてくれないか」
ミラとエルザが不穏な空気を醸し出しながらアレンへと詰め寄っていた。
「い、いや、そんなんじゃねえって…ただ…」
「ただ、なんだ?」
「気になるわねー」
「母さん、奇遇ね、私も詳しく聞きたいと思ったところよ」
「…何してたか、占ってあげようか?」
アレンの言葉に耳を傾けていたであろう、カグラ、ウル、ウルティア、カナが参戦する。
「ラクサス!てめぇ!!」
「おいおい、俺は悪くねえだろ?あんたが本当のことを言えば済む話だろ?」
「その本当のことが言いにくいから困ってんだろうが!」
「…アレン、その発言はちょっとまずいんじゃないか?」
ラクサスの挑発に乗せられ、発してはいけない言葉を放ったアレンに、ジェラールは呆れた様子だった。
「ほう?言いにくいことなのか?」
「一体何かしら~?」
エルザとミラの手が、アレンの肩に食い込む。すでにアレンの傷は完治に近い状態であり、そうなると、もうこの女連中はアレンに容赦するようなことはないである。
そんな風に、カウンター席で不穏な空気を醸し出しているのを、ラクサスの隣のテーブル席に座るナツ達が眺めていた。
「はぁ、アレンが戻ってくるといつもあんな感じだな」
「7年前となんもかわってねーな」
「あいっ!」
グレイとナツが珍しく喧嘩をせず、共通の話題で盛り上がっている。それを見て、珍しいなと思いながら、ルーシィが疑問を投げかけた。
「へー、7年前もあんな感じだったの?」
「ああ、そうだよ。ウル、ウルティア、ミラ、エルザ、カグラ、カナ。あの6大凶悪女共がアレンを取り合っ…ゴンッ」
ルーシィ質問に、丁寧に答えようとしたナツだったが、カウンターの方から飛んできたビンが頭にぶつかり、言葉が紡ぎを迎えることはなかった。
「って!何すんだー!!この…や…」
ナツはビンが飛んできた方向へと声を張り上げたが、その声が徐々に小さくなる。
「「「「「「なんか言ったか火吹き野郎」」」」」」
6大悪女が声を合わせてナツを威嚇する。
「い、いえ。何でもないです、はい」
「よわっ!」
平謝りするナツに、ルーシィが思わずツッコミを入れる。
「あー、もうわかったよ。本当のこと話すよ」
アレンはこのままではおさまりがつかないと判断し、意を決して真実を語った。
「俺は、過去に行ってたんだよ。今からおよそ100年前の過去にな」
「おいおい、冗談だろ?」
「つくならもっとマシな嘘をつけ!」
ラクサスとエルザが空かさず声を掛ける。
「ほら!だからいいたくなかったんだよ。どーせ信じねーと思ってよ」
「あら、私は信じるわよ?」
アレンの不貞腐れた様子に、ミラが宥めるようにしていった。
「本当なのか?」
「にわかには信じがたいわ…」
ウルとウルティアが神妙な面持ちで言った。
「本当だっての。だから4年間も帰ってこれなかったんだよ。あの日天狼島で再会したその日だよ、こっちに戻ってきたのは」
アレンはめんどくさそうに言葉を繋げた。
「もしそれが本当なら、よく戻ってこれたな」
「まあな、ほぼ賭けみたいなものだったが…。結局過去に飛ばされた理由もわからずじまいで、謎は謎のままだがな」
ラクサスが感心したように、アレンへと視線を向ける。
「ちなみに、その賭けみたいな方法とは、いったい何だったんだ?」
エルザはどうやら過去から現在へどうやって戻ってきたのか興味持っているようだった。
「…あー、悪いが、それはノーコメントだ」
「むぅ…なんだかオチをお預けされた気分だな…」
「まあ、もし話す機会があれば、そのうちな…」
エルザが不貞腐れた様子であったが、アレンは何とかごまかしてその場を乗り切った。
…さすがに今の段階で黒魔導士ゼレフと関わりがあったことは、口が裂けても言えなかった。これ以上話がややこしくなってたまるか!といった様子で、アレンは話題を変えようとする。しかし、この暫くした後、アレンに思いもよらぬ来客があり、それにアレンだけでなくフェアリーテイル中が大荒れになることを、アレンはまだ知らなかった。

マグノリアの街は、先の天狼島で起こったアクノロギアの出現による被害が少なかったこともあり、街の復興にはさして時間を要しなかった。加えて、死んだとされていたフェアリーテイル魔導士、アレン・イーグルが実は生きており、アクノロギアとの戦いの傷も癒えてきたということで、マグノリアはいつも以上に、活気に満ち溢れていた。飲食店など各店舗内では、連日その殆どがアレンの話題で盛り上がりを見せていた。更に2か月後に控えるアレンの生存とアクノロギア撃退を祝した『英雄感謝祭』が、首都クロッカスにて行われるということで、盛り上がりに拍車をかけていた。
そんな活気あふれるマグノリアの街に、淡い赤色のニスデールを纏った奇妙な2人が歩いていた。体格からして女性であることは窺い知れるが、ニスデールのフード部分が深く、顔はよく見えない。そんな二人は、マグノリアの街の大通りで足を止めると、ふと会話を始めた。
「どうやら、アレンさんはこの里…いえ、街でもとても有名なようね」
「はい、。他の街に比べ、アレンさんの名を耳にすることが多いと感じます」
2人は、透き通るような綺麗な声をしていた。
「つい1か月前までは死んでいた、とされていたものですから、とても心配しましたが、諦めなくてよかったわ」
「はい。しかし、アクノロギアという黒き竜。あのアレンさんをして死に瀕するほどとは、いか程の力を有しているのでしょうか」
2人はそんな風に会話をしながら、再度歩み始める。
「相当なモンスター、竜なのでしょう。ですが、それもアレンさんに会って直接お話をお伺い出来れば、すべてわかります」
「はい。急ぎ、フェアリーテイルなるギルドに向かうとしましょう」
そうして2人は大通りを抜け、アレンを訪ねるため、フェアリーテイルを目指して歩いて行った。

場面は、フェアリーテイルの酒場へと戻る。当初、アレンが比較的平常時まで回復したことを知った、マグノリアの住民やファンの女たちが、このフェアリーテイルに詰めかけることも多々あったが、英雄感謝祭が開催されることもあり、徐々にその波は落ち着きを取り戻しつつあった。フェアリーテイルへアレンに会いに来たという者に対して、アレンはできるだけ丁寧に接していたこともあり、好感度は更に増す一方であった。
来客も減り、加えてフェアリーテイルの仲間に対しての修行開始まで、まだ数日あるために、仲間と会話をしながら、ダラダラと過ごす時間が増えたアレンであったが、その状況が一変する事態が起こる。
事の発端は、フェアリーテイルのメンバーの一人が、「なんだか怪しい身なりをした2人がフェアリーテイルに向かっている」という情報であった。その者の話によると、評議院ではなさそうな雰囲気であったため、フェアリーテイルは些少の警戒に留めていた。
アレンも、「どうせどっかの国か街から噂を聞きつけてやってきた人だろ」というように軽く思っていたため、変わらずカウンターでエルザやミラたちと談笑していた。先ほど、華麗に話題を『俺の不在時のフェアリーテイルの様子』にチェンジできたこともあり、気持ちを楽に皆と会話を楽しんでいた。そんな風に過ごしていると、先ほどの奇妙な2人がフェアリーテイルのギルドへと入ってきた。アレンは後ろの様子が騒がしくなったことで、その2人が来たなと思い、ちらっと振り返って確かめる。確かに、淡い赤色のニスデールを羽織る姿は、顔もよく見えないことから、奇妙な2人というのはあながち間違いではないと感じた。とりあえず、不穏な様子も見られないため、カウンターへと向き直り、先ほどまで飲んでいたコーヒーを軽く口に含む。
「何か用かね?お2人さん」
同じくアレンの座るすぐ横のカウンターに、しかしアレンとは違いテーブル部分に座っているマカロフが奇妙な2人に対して声を掛ける。
ニスデールを深くは被っているものの、口元まではフードがかかっていないため、マカロフの問いかけに対し、笑いを生んだ様子が見て取れた。
「やはり、本物でしたわ♪」
「はい、姉さま。来たかいがありましたね」
2人が、軽く会話をしている様子を見ていたマカロフだが、先の質問の返答になっていないため、軽く頭を掻き、どうしたものかと少し悩んでいる。だが、もう一度同じ質問をしようとマカロフが口を開いた瞬間、隣からガシャンという音が聞こえ、マカロフは口を開くのをやめ、そちらに注意を向けた。
どうやら、音の正体は、アレンが思いっきり椅子から立ち上がり、振り返ったために、コーヒーの入ったコップと軽食が置かれた皿が床へと落ちた音であった。
「ア…アレン?」
「どうしたんだ?急に?」
アレンが急に驚いたような動きを見せたため、近くにいたミラとエルザが怪訝そうな表情を見せる。
「お、おい…。嘘…だろ…?」
アレンが今までにない様子で困惑している。ミラやエルザだけでなく、アレンの近くに座っていたマカロフや、ラクサスなどの他のメンバーも疑念を抱く。マカロフは、アレンの視線が先の奇妙な2人に向いていることに気付き、アレンに問いかける。
「なんじゃ、知り合いかね?アレンよ」
しかし、アレンはそんなマカロフの言葉に反応することなく、更に混乱したような様子を見せる。
「そ、そんなはずは…だって、こ、ここは…あ、ありえない…」
アレンの動揺は収まることはなく、息遣いも荒くなっていた。マカロフに次いで、そんなアレンの様子の変化、その元凶に気付いたミラやエルザは奇妙な2人に警戒し始める。
「アレンがこんなに動揺するなんて…一体誰なの?」
「貴様ら…一体何者だ!?」
エルザは剣を換装し、2人に向けて切っ先を向けて威嚇する。
「あらあら、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ♪」
1人の女がそう言って、ニスデールに手を掛ける。もう1人の女も同じ動きを見せる。
ミラとエルザの警戒もあり、酒場全体の視線がその2人に注がれる。ニスデールをガバッと脱ぎ捨てると、その姿が露になる。驚く。
見たところ、年の頃は20代前半であろうか。どちらも黒髪で瓜二つ。また、服装も白を基調とし、要所に金や赤などの装飾が施された、和服のような、同じ服装を身にまとっている。腰には腹巻のような金属製とうかがえる防具を身に着けていた。違いがあるとすれば、目の形と頭につけている髪飾りの数だろうか。だが、何より、ひどく驚いたのはその容姿。超が付くほどの美人であり、可愛らしくありながら、とても美しい顔立ちをしていた。
そんな様子に、ギルド全員が呆気に取られていたが、男連中が口を揃え、大声で奇声に似た声を上げた。
「「「「「「「「「め、めちゃめちゃ美人じゃねーか!!!!!」」」」」」」」」」
フェアリーテイルの酒場に、男どもの怒号が鳴り響く。
「ふふ、あらあら♪」
「………」
そんな声に、髪飾りを1つ携え、垂れ目の方の女性が照れたような声を上げる。反対に、髪飾りを2つ携え、釣り目の方の女性は表情を一切崩さず、言葉も発しなかった。
「おいおい、アレン!なんだよ、この超絶美人な二人は!!!」
「知り合いか!あ、もしかして彼女か、嫁か!!!!」
「なあ、誰なんだよ!紹介してくれよ!!」
グレイにリオン、ビックスローがアレンに詰め寄る。
その反面、女性連中はというと、あっけにとられたといった表情で、ポカーンと口を大きく開けている。だが、一人だけ、何とか正気を取り戻し、アレンに声を掛ける。そう、先ほどまでこの2人に剣を向けていたエルザであった。
「な、なあ、アレン、知り合いなのか?」
その声は留まることを知らないほどに震えていたが、アレンはそれでも反応を示さない。瞳孔は開きっぱなしで、視点も定まっていなかった。
そんな様子のアレンを見た、垂れ目の女性と釣り目の女性は、向き合って視線を合わせる。そして、その視線をアレンへと向け直すと、こう言い放った。
「「お久しぶりです」」
アレンはその声に、暫し沈黙で返していたが、口をパクパクさせながら、何とか声を絞り出した。
「ヒ、ヒノエ姉さん…ミノト姉さん…」
その言葉に、フェアリーテイルの酒場の時が止まる。なんだか最近時が止まる頻度が多い気もするが、この酒場に、そんなことを気にしている者は1人もいなかった。
「「「「「「「「「「ええええええええええ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
フェアリーテイルのギルドが、大きく揺れるほどの声が響き渡った。

アレンが奇妙な格好をしていた女性2人をみて、「姉さん」と言ったことから、フェアリーテイルの酒場はとんでもないことになっていた。
「ど、どうして、ここに…」
アレンは少し正気を取り戻し、2人に問いかける。
「あら、それは私たちがお聞きしたいことですわ♪」
「アレンさんがカムラの里から忽然といなくなってしまわれたので、心配致しました」
笑顔の絶えない垂れ目の女性ヒノエと、クールな表情の釣り目の女性ミノトは、アレンの言葉に、ゆっくりと、優しさを含んだ物言いで答えた。
アレンはその言葉に返答する前に、覚束ない足取りで、先ほどまで座っていた椅子に腰かける。そして、膝に肘をつき、両手で顔を覆った。だが、そんな様子をお構いなしに、ギルドの仲間はアレンに質問を浴びせまくる。
「お、おい、アレン、姉さんってどういうことだ!お前のお姉ちゃんなのか!」
「なんでこんな美人な姉ちゃんがいるんだよ!」
「羨ましいぞ!この野郎!!」
男性チームのナツ、グレイ、ギルダーツが大声で叫ぶ。
「じ、実の姉なのか!なあ、アレンッ!」
「ど、どういう関係なの!!」
「詳しく教えてほしい!」
女性チームのエルザ、ウルティア、カグラが畳みかけるように声を掛ける。
だが、アレンは同じように両手で顔を覆っており、それに答えようとはしない。自分に言い聞かせるようにして、アレンは何度か頷くと、両手を顔からどかし、ヒノエをミノトの方へ顔をあげる。間違いない、この顔、服装、声、話し方。本物のヒノエとミノトであった。
「わ、わかった。ど、どうしてここにいるのかは、互いに一旦置いておきましょう。あ、あとで3人でゆっくり話しましょう」
「ええ、私は構いませんよ♪」
「姉さまがそうおっしゃるのであれば、私もそれで構いません」
アレンの言葉に、2人は肯定の言葉を発した。
「なあなあ、アレン、誰なんだよ、この2人は!姉ちゃんなのか?」
ナツが早く教えろとばかりに、アレンの肩を揺さぶる。
「ふふ、アレンさんと私たちに血のつながりはありませんわ♪」
「アレン様と私たちは、幼馴染です」
ヒノエとミノトが、アレンの代わりにナツの質問に答える。そうして、再び、もう何回目?といった感じであるが、またしても酒場の時が一瞬止まる。そして、
「「「「「「「「「「お、おさななじみだとーー!!!!!」」」」」」」」」」
酒場に再度声が張り上げられ、ギルドに揺れがおこる。
「幼馴染とは、俺とエルザのようなものか?」
「俺とグレイみたいなものか…」
「こ、こんな綺麗で美しい姉妹?と幼馴染だと…アレンこの野郎!」
男性チームのジェラール、リオン、ギルダーツが声を発する。
「お、おさ、おさな、幼馴染って、その、あれか、アレン!」
「た、ただの幼馴染なんだよね!その、特別な関係とかではなく…」
「ちょっと、アレン!詳しく教えな!」
女性チームのウル、ミラ、カナが声高らかにアレンに詰め寄る。
「そうですねえ…一緒にお風呂に入ったり、あっ!一緒に寝たこともありましたね!♪」
「ちょ、ヒノエ姉さん!その誤解を生む言い方やめてくださいよ!」
「アレンさん。誤解ではなく、事実ではないですか」
「ミ、ミノト姉さんまで…だって、それは…」
アレンとヒノエ、ミノトの会話は終わりを迎えることはなかった。そう、はい、もう言わなくてもわかりますね。
「「「「「「「「「「なんだとーーーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」
酒場に大声が…もう言わなくてもいいかな、これ。
「おい、アレン!どういうことだ、一体!」
「いくつまでだ、いくつまで一緒に風呂入って寝てたんだ!!あぁ!!」
「…ギヒッ!こりゃ面白くなってきたな」
男性チームのマカオ、ギルダーツ(食いつき過ぎ)、ガジルが問いかける。
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
女性チームは…もうライフがゼロのようであった。皆真っ白に燃え尽きていた。
「だあー!もう!!だから…」「腑に落ちねえな」
アレンが何とか言い訳をしようとした言葉は、ある男の言葉で遮られる。
「ラクサス?」
アレンがそう呟くと、皆がラクサスの方へ視線を移す。
「いくらアレンが若々しいとはいえ、もう30代前半だぜ?だが、あんたらは俺と同じくらいの、20代前半ってところだ。幼馴染っていうには、ちと無理がねえか?それに、なんであんたはこの2人を姉さんって呼ぶんだよ?どう見てもあんたの方が年上だろ」
ラクサスの言葉に、酒場が一度正気を取り戻す。
「違う…違うんだよ…ラクサス」
「あ?何が違うんだ」
アレンの困惑した声に、ラクサスは怪訝そうに答える。
「姉さんの…2人の耳と手の指、足首を見てみろ?」
「んだよ、それがなんだって…いうん…だ…」
アレンの言葉通り、ラクサスは2人の容姿を今一度よく確かめる。そして気付く。あることに。それと合わせて、ヒノエが両手をラクサスの方へと向ける。
「お、おい、指が、4本しか…ねえ…」
ラクサスは、持っていたコップを床に落とす。
「あ!よく見たら耳がとんがってんぞ!」
「ほんとだ!足もつま先立ち?か、踵が…ない?いや、足先と踵の間が長いぞ!」
ナツとグレイもアレンの言葉通りに言われた箇所を見て、驚愕の声が上がる。
他のメンバーも、「な、なにー」だの、「ほ、ほんとだー」だの、「どうなってんだー」と声を高らかにする。
「2人は人間じゃねえんだ…」
アレンの言葉に、皆が固唾を呑む。
「竜人族なんだよ…」
酒場を静寂が包む。そう、そうです。また時が止まったような静寂です。
「「「「「「「「「「りゅ、りゅうじんぞくーーーーーーーー」」」」」」」」」」
「竜人族って、竜に人に一族で竜人族か!!ドラゴンなのか!!」
「そんな種族がいるのか!」
「す、すげーっ!」
男性チームのナツ、ジェラール、エルフマンが声を上げる。
「ほう?そんな種族がいたとは…」
「聞いたこともありませんわ」
「すごいね、シャルル!」
「ええ、驚愕だわ…」
復活した女性チームのエルザ、ジュビア、ウェンディにシャルルが口を開く。さて、暫く驚きを見せていたラクサスであったが、頭を振り、何とか話を戻す。
「おい、アレン!俺が聞いたのは幼馴染ってのはおかしいだろってことだ!いや、そりゃ竜人族ってのにも驚いたが、それがどう関係あんだよ!」
ラクサスの質問にアレンはため息をつくように言葉を返す。
「それが、大ありなんだよ…」
「だから、どういう意味なんだ」
「ふふ、単純に寿命が違うんですよ♪」
ラクサスの質問に、ヒノエが口を開いた。
「…どういうことだ?」
「私たち竜人族の寿命は、人間の寿命の約5倍。400年ほどになります♪」
再三、酒場に静寂が訪れる。
「「「「「「「「「「400ねーーーーーーーん」」」」」」」」」」
これまで、何とか驚きを表情に出さないでいたマカロフであったが、その寿命の長さを聞いて、目から目玉が飛び出るほどの驚きを見せた。
「ってことは、この2人もそうってことか!!」
「400年って一体どんな感覚なんだ…」
ビックスローとフリードが狼狽しながら声を上げた。そして、ラクサスは何かに気付いたようである。
「ちょ、ちょっとまて、失礼を承知できくが…あ、あんたら2人は今、いくつなんだ?」
ラクサスの心臓は、この上ないほどにバクバクであった。
「ふふ、今年で120歳になりますわね♪」
「私達は双子ですので、私も姉さまと同じく、120歳となります」
…驚きで声が出ない。この言葉はおそらく、この時のためにできたであろうと言わしめるほどに、綺麗に合致していた。
マカロフは1人、「わ、わしより上か…」と大口をあけて驚いていた。
「ふふ、驚かれるのも無理はありませんわ♪」
ヒノエはクスッと笑って見せた。
「…アレン、お前が何を言いたかったのか、今わかった。幼馴染ってのはあれか…3人とも幼かったんじゃなくて…お前だけ幼かったってことか…」
「…はは、さすがはラクサス、よくわかったな…。お前こそ真の名探偵だ」
ラクサスとアレンは、酷く疲れ切った様子であった。
「あらあら、私達は、3人とも幼かった、なんて一度も言っておりませんわ♪」
「ラクサス様?の言う通り、幼かったのはアレン様だけで、当時から私達の容姿は今とさほど変わりません」
ヒノエとミノトがラクサスの推理を肯定するように言葉を放つ。
「ちょ、ちょっとまて、じゃあ何か?アレンは幼いころ、この姉ちゃん、今とあまり容姿が変わらない姉ちゃんたちと一緒に…風呂入ったり寝たりしてたってことか?」
ワカバが困惑したように言葉を発する。
「ワカバ…みなまで…いうんじゃねえよ…」
アレンは今にも泣きだしそうに言葉を発する。その言葉の意味を理解した女性…アレンに恋心を抱いている女性が、砂と化して消えかかっていた。
「ふふ、私達2人は、アレンさんが赤ん坊の頃から知っておりますわ♪」
「ミルクをあげたことも、オシメを変えたこともありましたね、姉さま」
ヒノエとミノトが畳みかける。もうやめてあげて欲しい。過去をひけらかされたアレンと、特定の女性を見て欲しい。まるで、世界が終わったように、真っ白に燃え尽きている。
「は、はい。質問です!」
そんな中で、ルーシィが手をあげて、ヒノエとミノトに声を掛けた。
「はい、なんでしょうか?♪」
「あ、あのお二方の寿命が400年で、今は120歳ということだったんですけど、その、成長とか老化とかはどういう仕組み…というか進み方なんですか?どうしても120年生きていらっしゃるとは思えない見た目なので…」
「いい質問ですね。ミノト、説明して差し上げて♪」
「はい、姉さま。私たちは人間の5倍の寿命とお話ししましたが、それに反比例する形で、身体及び精神の成長と老化は、人間の5分の1の速度で進行していきます。つまり、私たちの身体と精神の年齢は、人間の年齢で考えると、120割る5で、24歳ということになります。ですから、私たちは120年生きておりますが、身体もそして精神年齢も人間の方でいうところの24歳ということになります」
ミノトが淡々と説明をする。
「つまり…」
ミノトがマカロフの方を見て、手を向ける。
「私たちの方が、長く生きてはおりますが、竜人族は成長が遅いため、精神的な年齢も同様に、あちらにお座りになっておられるご老人の方が上、ということになります」
…驚きすぎると、人間は言葉を失うというが、本当の本当に驚きすぎると、意識を失いかけるのだな、としみじみ思う、フェアリーテイルのメンバーなのであった。
 
 

 
後書き
・ヒノエ、ミノト:モンハンライズに登場する、カムラの里のクエスト受付嬢。竜人族で、アレンとは幼馴染。他、性格や好みなども、モンハンライズの原作通り。アレンから姉さんと慕われている。※他、細かい設定に関しては次話以降
・竜人族:人間の約5倍、400年の寿命をもつ珍しい種族。手や耳、足など人間と身体構造が異なる部分もある。寿命が長い反面、成長や老化が遅く、人間が1年で成長するところを、竜人族は5年かかる。また、人間に比べて膂力が高い。 
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