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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第3章 帰還編
  第13話 評議院

フェアリーテイルの医務室には、エルザとミラ、カグラが、椅子やベッドに腰かけていた。アレンが治療を受けて横になっていたベットも見られるが、そこにアレンは見当たらなかった。何やら重苦しい雰囲気を漂わせていた。
そんな雰囲気に、リオンとジェラールが先ほどまで心配して声を掛けてくれた。「何でも…ない」と絶対何かあっただろ、というような返答をしたものの、とりあえずそっとしておこうということで、先ほど医務室を出ていった。
暫くそんな雰囲気が医務室を支配していたが、エルザが口を開き、静寂を切り裂く。
「…アレンは、私たちを…その…」
小さく呟くように答えるが、その先を口にできず、黙りこくってしまった。
「嫌われちゃって…るのかな…」
ミラがポロッと涙を流す。
「…まさか、ラクサスにあんなことを言われるとは…」
カグラもどんよりとした様子で答える。よくよく考えてみれば、その前も、アレンと再会を果たした後、何度かアレンをどつきまわしていたことや、素直になれずに嫉妬心を巻き散らしていたことを思い出し、3人はさらに落ち込む。まあ、それに関してはアレンにも非があるのだが…。
「「「はぁ…」」」
3人がそんな様子で落ち込んでいると、医務室のドアがガチャッと開く。
「「「ア、アレン…ッ」」」
アレンが帰ってきたと思い、声を出すが。
「…ウルティア…」
「…何してんのよ、あんたら…ジェラールとリオンが心配してるわよ…」
エルザの声に、ウルティアがまったくといった感じで言葉を発した。
「私たち…アレンを…その…」
「お、お…」
エルザとミラが何とか説明しようとするが、言葉がつまり、中々言い出せない。
「はぁ?…なに?」
ウルティアは少し、イラッとしながら3人を見てめる。
「…怒らせてしまったかもしれない」
「…なにやらかしたの、あんたら」
カグラの言葉に、ため息をつきながら3人に問うた。
「い、いや…その、アレンがシャワーを浴びたいというから…」
「…私が一緒に入ってあげるって…」
エルザとミラが拙く答える。
「…はぁ?それで…まさかアレンに断られたの?」
ウルティアは、ラクサスがアレンを支えながらフェアリーテイルを出るのを見ていた。
それをみて、何か用でもあるのだろうとは思っていたが…。
「いや…ラクサスにいい加減にしろって…」
カグラが言いにくそうに答える。
「…それで?」
「アレンが…ひ、ひいてるのが分からないのかって…うぅ…」
ウルティアが催促すると、ミラジェーンが悲しそうに答えた。
「ああ、そういうことね…だからラクサスがアレンを連れて出ていったのね…」
ウルティアははぁとため息をつく。
「まあ、その、あなたたちの気持ちがわからんでもないけど、さすがに私でもそこまでズカズカ入り込んだりはしないわ…順序ってものがあるでしょうが…ガキじゃあるまいし…」
「「「うっ…」」」
ウルティアの言葉に、3人は胸を撃たれたかのようにさらにズーンッと落ち込む。
「でも、ラクサスが誇張し過ぎってのもあるわ…それくらいでアレンがあんた達に怒って嫌気がさすことはないでしょ」
「だ、だが…」
エルザが言葉を詰まらせる。
「思うところがあるなら、ちゃんと謝ればいいんじゃないの?」
「「「うぅ…」」」
3人は、もどかしそうにそう呟く。
「大体、あんたら3人は…」「あー、すっきりしたー」
「「「「⁉」」」」
ウルティアの言葉を遮るように、ドアが開く音と、誰かの声が聞こえる。
「ん?なーにやってんだ、おめーら」
声の主はアレンで、ラクサスに支えられながら、アレンが戻ってきたのだ。
ラクサスはそんな4人などお構いなしに、アレンをベッドの上まで運ぶ。
「いやー、助かったよ、ラクサス。ありがとな」
「ああ、俺はもう行くぜ」
アレンとラクサスが軽く会話し、ラクサスが医務室から出ていく。
「「「「………」」」」
「何?この謎の空気感…」
アレンはシャワーを浴びている間にウルティアが増えたこと、そしてウルティア含め、4人が黙りこくっている雰囲気に、思わずツッコミを入れてしまう。
「ああ、えっと、アレン?」
ウルティアが拙く声を掛ける。
「ん?」
「あー、その、この3人がさ、なんかアレンを困らせたりしたの?」
ウルティアの言葉に、3人がビクッと震える。
「困らせる?ああ、シャワーのことか?」
アレンの言葉に、3人の身体はさらに震えだす。そして、
「はっはっは!もしかして、俺が怒ってるとかそんな風に思ってんのか?」
アレンは笑いながら声を張る。
「お、怒ってないのか?」
「怒ってねーよ、ありゃラクサスが言いすぎなだけだ。俺は別にどっちでもよかったぜ?」
エルザの質問に、アレンは軽口を叩くように答えた。それを聞いて、3人の表情はぱあっと明るくなった。
「ちょ、ちょっと、どっちでもよかったって…それって、その…い、一緒にシャワーに…入って…」
ウルティアが困惑した様子でアレンに声を掛ける。
「いや、シャワー浴びるのは1人でできるよ。そこまで歩くのがしんどいだけで…まあ、だからさすがにカグラの隅々まで洗ってあげられるにはちょっと…と思ったけど、別に対して気にしちゃいねーよ」
「う、うぅ…」
とんでもない発言をかましていたことを、名指しで言われてしまい、カグラは顔を真っ赤にして俯いている。
「…あんた、そんなこと言ったの?」
「い、いや、その、勢いで…」
ウルティアのゴミを見るような目に、カグラは顔をあげられずにずっと俯いている。
すると、アレンがそっとカグラの頭に手を添える。
「俺を思って、言ってくれたんだろ?ありがとうな」
アレンはそう言ってにこっと笑う。カグラは顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうにしていた。
アレンを思っていたことは事実だが、3人ともそこに邪な気持ちがあったことは言うまでもない。それを見たエルザとミラが、羨ましそうに眺めている。
「ア、アレン…私も…その…」
エルザは、もじもじと照れながら、途切れ途切れに言葉を発する。その様子を見たアレンは、エルザが言い切る前に、エルザの頭にも手を添える。
「ミラとウルティアもおいで…」
その言葉を聞き、ミラは光の速さでアレンに頭を差し出す。
「わ、わたしは別に…」
ウルティアが気恥ずかしそうにしていると、
「いいから…」
とアレンは優しく声を掛ける。
「じゃ、じゃあ…」
アレンの言葉に押されて、ウルティアもアレンの方へ近づく。
アレンは4人の頭を交互に優しく撫でる。
「「「「んっ…///」」」」
4人は、息を漏らしながらアレンの手を堪能する。
「てか、俺よりも、お前らの方が俺に怒ってるだろ?」
「「「「えっ?」」」」
4人はアレンの言葉を聞き、上目遣いでアレンを見つめる。
「…エルザ、ミラ…悪かったな…あの時、怒鳴っちまって…」
「「あっ…」」
2人は思い出したように、声を漏らす。アクノロギアから皆を逃がすときのことを言っているのだと、瞬時に理解した。
「それに、またお別れみたいな感じにしちまってよ…」
アレンの言葉に、4人は暫く黙りこくっていた。意を決したように、ミラが口を開く。
「そ、それは…その、怒ってる…」
「…ごめんな」
「だが…」
エルザが続けて言葉を発する。
「…私たちが弱かったから…」
「…ハデスの時も、アクノロギアの時も…」
カグラとウルティアが苦しそうに答える。
「そんなことは気にしなくていいんだよ…これから強くなっていこうぜ。俺は、お前らが元気に幸せに生きてくれさえすれば、それで…っごほごほ…」
アレンがそう呟いていたが、急に咳き込む。
「「「「っ⁉アレンッ!」」」」
急に咳き込んだアレンに、4人は心配そうに声を掛ける。
「ごほごほっ…ああ、わりい…少しむせただけ…だから」
それでも息を荒くしているアレンに、4人は気がきではなかった。
「や、やはりまだ、痛むのではないか?」
エルザがアレンの背中を擦りながら呟く。
「それを言ったら、皆そうだろ?」
「アレンの傷に比べたら、たいしたことないよ」
ミラがそっと呟くように答える。
「はは、それもそうか…」
そんな風にして、ほのぼのとした雰囲気は、酒場の方から聞こえる怒号で、一瞬にして崩壊することになる。
「なんだか騒がしいな…」
カグラがそう呟くと、
「ちょっと様子を見てくるわ」
と言ってウルティアが医務室から出ていく。
「多分、あいつらだろうな…」
アレンがボソッと呟く。
「なんだ、心当たりでもあるのか?」
エルザが声を掛ける。
「まあ、な…」
アレンはどこか疲れた様子でそう答え、気だるそうにベットから身を乗り出した。

「静粛に願う。私は評議院拘束部隊のラハールと申します」
突如、フェアリーテイルに現れた集団の先頭に立っていた男がそう声をあげる。
集団の服装から、名乗らずとも評議院の集団だということは、誰の目から見ても伺うことができた。
そんな評議院の登場に、フェアリーテイルの酒場の喧騒は一瞬収まる。そして、
「評議院の連中が一体何の用だ⁉」
ナツが酒場のテーブルに足を乗せ、威嚇するように声を張り上げる。
他のメンバーも、同じように声を上げたり、怪訝な表情で見つめる。先のアクノロギアとの戦いを繰り広げていたアレンに、エーテリオンを放とうとしていたことは、皆知っていたからである。
4年前にも打ち込み、謝罪を受けてはいたが、そんな過去を忘れてか知らずか、再びエーテリオン投下という判断を下した評議院への不信感は爆発寸前であったのだ。
ラハールも、そんなフェアリーテイルの雰囲気を感じ取る。ラハールは、今回のエーテリオン投下に関しては、反対派であった。後ろに控える評議員の集団も反対をしていたものが多い。しかし、一部隊長である彼に、上級魔導士たちの決定を覆せるわけもない。また、今回こうしてフェアリーテイルに赴いた理由に関しても、正直、納得がいっていない内容のものであった。しかし、彼にとってはそれが仕事。上から命令されたことであれば、多少の理不尽は受け入れなければならない。恐らく、いや確実にこれからフェアリーテイル、そしてある男に対して要求する内容は、フェアリーテイルから大きな反感を買うことは間違いない。最悪、戦闘になると予想していた。
そんな感情を押し殺すように、ラハールが口を開こうとすると、2階の踊り場から声が聞こえた。
「俺に用があってきたんだろ?」
「ちょっと、アレン。動いて大丈夫なの?」
隣にいるウルティアが心配そうにアレンに近づく。アレンは踊り場の手すりに身を預け、前のめりになりながら1階を見つめる。
その声にラハールや他の評議院だけでなく、フェアリーテイルのメンバーも反応する。
「アレン。動いて大丈夫なのか?」
「まあ、なんとかな」
1階で酒の入っている大樽を抱えながら、カナが心配そうに尋ねる。
エルザとミラ、カグラも医務室から出てきて、1階の様子を伺っていた。
「ラハールさん、だっけ?俺に用があって、わざわざここまで来たんだろ?さしずめ、評議院議長からの命令かな?」
アレンの言葉に、ラハールは呆気に取られていたが、少しして落ち着きを取り戻す。
「話が早くて助かるよ。アレンさん」
「んで、評議院様が一体アレンになんの用だ?」
グレイが挑発するように評議院に声を掛ける。ちなみに、彼がパンツ一丁で挑発的な言葉を発していることは、言うまでもない。
「単刀直入に申し上げます。フェアリーテイル魔導士、及び聖十大魔導士アレン・イーグル」
「はは、聖十大魔道士、懐かしい響きだな」
アレンは評議院に名前を呼称されても、あっけらかんとした様子であった。
「天狼島でのアクノロギアとの戦闘において発生した、港町ハルジオン等市街での市民に対する被害及び器物破損、並びにアクノロギアに関する事情聴取のため、あなたを評議院に連行致します」
その言葉に、フェアリーテイルの酒場は一瞬凍り付く。
「…そうきたか」
アレンはてっきり、この場で話を聞かれるとばかり思っていたため、まさかの連行というラハールの言葉に少し驚きを見せる。
アレンが一言発しても、フェアリーテイルの酒場は凍り付いたままであった。驚きはもちろんある。だが、それ以上にこの上ない怒りに、皆言葉が出なかったのである。
「ふ、ふざけんじゃねーっ!!!アレンを連行だと!!」
「アレンは街を、王国を救ったんだゾ!!」
「器物破損って…アクノロギアと戦っていたんだ!仕方ないだろう!!」
ナツ、ソラノ、リオンが声を張り上げて異議を唱える。
「これは、上級魔導士及び、評議院議長クロフォード様の決定及び命令だ。お気持ちはお察ししますが、異議は認められません」
ラハールは、そんな中でも、毅然として答える。
「こ、こんな横暴…っ」
「必死に皆を守った人に対して…あんまりですっ!」
「そんなの、漢じゃねー!!」
ルーシィは悔しそうに拳を握り、ウェンディは目尻に涙を浮かべ、エルフマンは怒りをあらわにしながら言葉を放つ。
他のメンバーも、ラハールに大声で罵詈雑言を浴びせる。
「アレン!こんな命令に従う必要ねーぞ!!お前からもこいつらになんか言ってやれ!!」
グレイが2階にいるアレンにそう伝えると、酒場中から「そうだ、そうだ!」と声が上がる。
「わかった。大人しく出頭しよう」
「おい!聞いたか評議院共!!アレンはお前らの命令なんかに……ん?」
ナツがアレンの言葉を先読みするように大声をあげるが、アレンの声を頭の中で復唱し、次第にあれ?と疑問を浮かべる。
「大人しく、評議院に行くよ」
再びアレンがラハールに向けて声を掛ける。少しの沈黙の後、
「「「「「「「「「「えぇーーーー!!なんでーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」
と驚きの声が酒場を支配する。
その叫び声を皮切りに、アレンはおぼつかない足取りで、階段を下る。その様子を見たウルティアが「ちょ、ちょっと、本気なの?」と声を掛けると、「ああ」と短く答える。
「ア…アレン。行く必要ないぞ」
ジェラールがそう呟くが、アレンは「大丈夫」と一言だけ答える。
「アレンさんはまだダメージも疲労も溜まっているんですよっ!せめて、先送りとかにはできないんですか?」
ジュビアがラハールに詰め寄るが、ラハールはそんなジュビアを見向きもせずにアレンの方へと歩み始める。評議院としては、一刻も早く先の情報を聞きたいのである。アレンが階段を降りきったところで、タイミングよくラハールが目の前に来る。
アレンはため息をつきながら両手を前に突き出す。その様子を見て、フェアリーテイルのメンバーが、怒りとやるせなさでプルプルと震え始める。死に物狂いで自分たちのために、街のために、国のために戦い、守り抜いたアレンが連れていかれてしまう。2階にいるエルザやミラ、カグヤも我慢ならないといった様子で怒りの表情を見せている。
「っ!!もう我慢ならねー!!!評議院だろうが俺はやるぞ!!!!」
ナツが拳に炎を纏わせながら、評議院を睨みつける。その様子を見て、ラハールの後ろに控える評議員が一斉に臨戦態勢に入る。
他のメンバーも、真っ向から立ち向かおうという姿勢を見せ、ナツと同じように大声を上げて阻止しようとする。暫くそんな一触即発の様子が続いたが、ある者の怒号で収まりを迎える。
「やめんか!!!!!!!!!!」
声の主はマスターであるマカロフであった。そんなマスターの声に、皆が一瞬で静まり返る。
はあ、と小さくため息をつくと、徐に口を開いた。
「ラハールとやら、アレンを本気で逮捕するつもりはないのじゃろう?」
「はい。器物破損などはいわば口実。我々も、そこについて言及するつもりはありません。ですが、此度の件評議院としては、一刻も早く事情を聴いておきたいというのが本音です。拘束期間は2日程度と考えております」
マカロフの言葉に、ラハールははっきりと答える。
「っ!!だったらてめーらがギルドに来て話聞けばいいだろが!!今回もエーテリオン打ち込もうとしたこと、俺らは忘れてねーぞ!!」
ナツが収まりきらない怒りをぶつける。
「黙れ!ナツ!!」
マカロフが再び声を荒げる。ナツは悔しそうに歯を食いしばる。
「ならば…手錠は必要あるまい?アレンを犯罪者のように連行するのは、さすがのわしも許容できんぞ?」
マカロフは低く、唸るような声でそれを告げる。
「もちろんです。元より、手錠をかけるつもりはありません」
「あ、そう?」
その言葉を聞いて、アレンはなーんだ、といった具合で手を下す。
「それと、もうひとつ、ギルドから2名の同行者を出すことを許可してもらう。アレンはまだ歩行もままならん。介助が必要な時もあれば、緊急で体調が悪化することもあるじゃろう。それが許可できないのであれば、評議院の命令であろうと、アレンを連れ出すことは許さん」
マカロフの言葉に、少し悩む素振りを見せるラハールであったが、
「いいでしょう。許可いたします」
それでアレンを連行できるのなら、と責任を負う形で許可を出した。
「エルザ!ミラ!頼めるかの?」
マスターは二人を名指しで指名する。
「っ!もちろんですマスター」
「わ、わかりました」
2人はあたふたしながらも、足早に階段を降りる。
「では、準備ができ次第、参りましょう」
「あいよ」
そうして、エルザとミラがアレンの分も含め、軽い身支度を整える。
その間に、ラクサスが声を掛けてくる。
「…おい、本当にいいのか?俺はフェアリーテイルの一員じゃねーから、どうにでもできるぞ」
「いいんだよ。殺されるわけじゃあるまいし。それに、お前はそれ以上問題を起こすな」
ラクサスの言葉に、アレンが淡々と答える。
アレンはエルザとミラを引き付ける形でラハールたちと共にギルドを後にする。
背中からは、「くそー-っ!!」というナツであろう声が聞こえたが、アレンたちはその声に足を止めることなく、ギルドを去っていった。

アレンとエルザ、そしてミラは、ラハール率いる評議院拘束部隊と共に、評議院へと向かっていた。途中、馬車に乗るまではエルザとミラに支えて貰いながら歩くこともあった。その様子をみたマグノリアの住民は、評議院と共に馬車に乗り込むアレン達の姿を目撃した。、フェアリーテイルと交流の深いものがメンバーに事情を聴きに行き、それを広めるなどした結果、マグノリアの住民からも、評議院を非難する声が上がったのは言うまでもない。
馬車に乗り込むと、アレンは対面に座るラハールへ声を掛ける。
「…仕事とはいえ、あんたも大変だな」
そんなアレンの言葉に少し驚きながら、他の評議員たちと顔を合わせると、アレンの方に向き直り、全員が頭を下げてきた。その様子をみて、エルザとミラが目を見開く。
「…此度の無礼、心からお詫び申し上げる。そして、アクノロギア討伐、心より礼賛申し上げます」
「そう硬くならなくていい、気にしちゃいない。あんたの、評議院の立場も理解しているつもりだ」
アレンがそう呟くと、ラハールは感極まった声で、一言呟いた。
「っかたじけない…」
ラハールのその言葉を聞き、先ほどまで怒りが表情に出るほどであったエルザとミラであったが、二人で顔を見合わせ、苦笑いできるほどにまで落ち着きを取り戻した。…と思いきや、それも束の間。
アレンのケラケラ笑いや明るい性格で、馬車内の雰囲気が少しずつ活気ある雰囲気になる。いや、それ自体はよいのだが、ラハール以外の評議員が「サインください」だの「ずっとファンでした」だのと、男女問わず弾丸のようにアレンに話しかけるため、再びエルザとミラの顔に、「私たちを差し置いて…」と怒りが滲んでいた。

評議院についたアレン達一行は、少しの休憩を経て、上級魔導士たちのいる会議室へと入っていた。エルザとミラは当初、聴取に参加させるつもりのなかった上級魔導士たちであったが、2名の強い希望もあり、同席させることとなった。2人からすれば、ラハールが器物破損などの罪に問うつもりはないとは言っていたものの、もし戦いによる余波の被害を、アレンの責任とされるのを黙っているわけにはいかないという思いが、同席を強く希望するに至ったのだ。
「まずは、半強制的にこの評議院へ足を運ばせてしまったこと、心よりお詫び申し上げる。そして、アクノロギアの討伐、心より感謝申し上げる」
議長であるクロフォードはじめ、すべての評議院が頭を下げて謝罪と感謝の意を述べた。
「…頭をあげてください、皆さん」
アレンは小さく呟き、上級魔導士たちへ声を掛ける。上級魔導士たちが、ゆっくりと頭をあげる。
「俺はただフェアリーテイルの仲間を守りたくて戦っただけです。そして、4年前にエーテリオンを投下したことも含め、俺は別に何とも思っていません」
その言葉に、上級魔導士たちだけでなく、エルザやミラも驚きの表情を見せる。
「ちょ、ちょっと、アレン、この人たちはあなたを…」
「ミラ…」
アレンはミラの言葉に割り込み、名前を呼んで軽く睨む。その目にミラは驚き、委縮する。
「評議院はアクノロギアを倒すため、エーテリオンを投下した。今回の投下計画も、アクノロギアを仕留めるために打ちこもうとした。俺を殺すためじゃない」
「しかし、結果としてアレンの命に危険が及んだことは…」
エルザがアレンの主張に異議を唱えるが、今度はクロフォードによって遮られる。
「確かに、アレンさんの言う通りだ。そして、エルザさんの言う通りでもある」
上級魔導士たちは、もう一度、頭を下げる。
「本当に、すまなかった」
そんな上級魔導士の様子に、アレンは頭を掻きながらため息をつく。
「だから、もういいですって。それに…」
アレンが一度言葉を止め、真剣な表情で上級魔導士に言い放つ。
「俺がもし、あなた方と同じ立場だったら…あなた方と同じ決断をしていたことでしょう。アクノロギア討伐のため、そして、王国、大陸、世界のために」
その言葉に、その場にいるもの皆が目を見開き、固まってしまう。なんという男なのか。これほどの力を持ちながら全く驕らず、自らを危険にさらしたものへ激高することもなく、あまつさえその行為を半ば肯定するような発言をする。
暫く呆気に取られていたクロフォードであったが、ふっと笑いを漏らす。
「どうやら私は、アレンさん、あなたを誤解していたようだ…。あなたは、私が思っていた以上に、素晴らしいお方のようだ。力ではない、人としての格の違いを教えられた気がするよ」
クロフォードのその言葉に、他の上級魔導士も同意の意を示す。エルザやミラは、その言葉に、アレンの姿に、目を見開き、頬を赤くして見つめている。2人が、さらにアレンという男に惹かれたのは言うまでもない。
「それより、本題はそんなことではないでしょう?」
アレンが話の趣旨を変えようと、言葉を生む。
「…そうであったな。アクノロギアについて、色々とお聞きしたい」
「ああ、俺もアクノロギアについてあなた方にお伝えしたいことが山のようにあります」
アレンは、そういうと、アクノロギアとの戦闘で分かったことを淡々と話し始めた。
アクノロギアがまだ生きていること。アクノロギアはアレンの力では殺せないこと。殺せるのは滅竜魔導士かその力を持つもの。アレンにその力を習得するのは不可能なこと。
一つ一つが上級魔導士を驚かせるには十分であり、絶望に近い雰囲気が部屋を支配していた。
「そしてさらに…あいつにはすべての魔法が効きません」
「な、なんだと…」
「で、では…」
アレンの言葉に、上級魔導士たちは言葉を詰まらせる。
「そう、つまり、いくらエーテリオンを打ち込んだとしても、奴には傷一つ、ダメージ一つ与えることはできないというわけです」
衝撃であった。評議院がもつ武力の中でも最高の攻撃性能を持つエーテリオン。それが、魔法が効かないアクノロギアに対しては、全くの無意味であるということであったからだ。
「少し、不可解ですね。もし彼の竜に魔法が効かないのであれば、なぜあなたは殺せはしなくとも、撃退し、勝利を収めたのでしょう?」
ベルノがアレンに投げかけるように言葉を発した。
アレンはその問いに反応するように、太刀を一本換装した。その太刀を地面へと立たせ、言葉を発した。
「私の魔法は、ザ・ナイトという武具を換装させる魔法です」
「ああ、知っておる」
ホッグがその言葉に、短く答える。
「この魔法は、武具の出し入れの時にのみ魔力を使用します。取り出した武具は意識的に魔力を付加させないかぎり、魔力や魔法に一切関与しない、純粋な武具ということになります。よって、私がこれを振るって攻撃をするということは、単純に俺の膂力と武具の力ということです。お判りいただけますか?」
「ちょ、ちょっとまて、では、なにか?お主は刀と己の膂力のみでアクノロギアに傷を負わせ、倒したというのか?」
ミケロが狼狽しながら言葉を発した。驚きなんてものではない。魔力を魔法を使わずにあのアクノロギアを三天黒龍の一角と互角に、いや上回る戦いを繰り広げるなど、到底簡単に受け入れられることではなかった。しかし、評議院監視部隊の報告や、アクノロギアの頭を実際にアレンが断ち切った映像を見ていた上級魔導士は、その言葉を甘んじて受け入れるしかなかった。
「だが、先ほど言っていた通り、それほどの力を有するお主でも、アクノロギアの魂は滅することができないということだな」
ホッグが先ほどのアレンの話をかみ砕くように口を開く。
「ええ、それに関しては、これもお話した通り、滅竜の力を持つものにしか倒せません。ですが、最悪もう一つだけ手段があります」
その言葉に、皆が目を細める。
「その、もう一つの手段とは?」
「…封印魔法、シールマジックの一つ。それも禁じられた封印魔法…『屍鬼封尽』なら、魔法が無効のアクノロギアに対しても、その魂を引きずりだし、半永久に封印できるでしょう」
その言葉に、上級魔導士やエルザ、ミラは首をかしげる。
「聞いたことのない魔法だな…」
オーグが顎に手を当てながら呟く。
「お、お主、一体その魔法をどこで…いやそんなことはどうでもよい!」
クロフォードが驚きながらも、威厳のある声で呟き、椅子から立ち上がる。
「お、お主はあの封印魔法がどのようなものであるのか、知っていてそれを口にしているのか⁉そもそも発動することすら…」
クロフォードは今までにない声でアレンに詰め寄る。
「ええ、承知の上で申し上げております。そして、発動に際しては、私であれば可能だと、申し上げておきます」
「い、一体どんな魔法なんだ、アレンっ!」
エルザが自分の知らない、それもクロフォードの様子から、尋常ではない魔法であることに、畏怖を覚えながらアレンに問いかける。だが、アレンはそんなエルザに見向きをせずにクロムフォードを見つめている。クロムフォードはアレンの目を見つめた後、瞼を閉じながら椅子に座り、ゆっくりと口を開く。
「…禁じられた封印魔法…屍鬼封尽とは、魔法の発動と共に死神を呼び出し、その力をもって相手の魂を肉体から引きずり出し、永久に死神の腹の中に封印するものだ。魔法とは名ばかりの呪われた封印術だ」
クロフォードの言葉に、皆が顔引きつらせる。
「し、死神…」
ミラが口を押えながら震える。
「だ、だが、それならば、はじめからその魔法を…」「ダメなのだ!!」
ホッグが驚きながらも言葉を発するが、クロフォードがそれを遮る。
「…この魔法は、相手だけでなく、魔法を発動したものの魂も死神の腹の中に封印される」
その言葉に、皆が冷や汗を流し、驚く。
「つ、つまり、命と引き換えの魔法…」
ベルノが小さく呟く。
「しかも、封印した者とされた者の魂はまとめて死神に喰われ、喰われた魂は決して成仏することなく、死神の腹の中で永遠に絡み合い、憎しみ合い、そして争い続けると言われておる…永遠にな」
余りの言葉に、皆の表情は、凍り付く。クロフォードは畏怖に苛まれながら、アレンに言葉をぶつける。
「お、お主は、それをすると申すのか。神も恐れる封印を…。死するだけではない、死んでもなお、絶望と憎しみに苛まれることになるという、あれを…」
「じょ、冗談じゃないぞ!おい、アレン、ふざけたことをいうな…そんな魔法…」
「だ、だめっ…」
エルザは今にも泣きだしそうな声を上げる。ミラは消え入るような目で、アレンの手を掴む。
アレンはそんな2人の様子を見て、微笑をもって2人の返事とした。そして、クロフォードの言葉に、真剣な面持ちで、そして威厳のある声で答えた。
「…それが、世界のためならば」
その言葉に、上級魔導士はまた呆気にとられる。これ以上に、これ以上に本物の男という言葉が似あうものは、今後現れることはないだろう。そう思わせるほどの覚悟と心情が伺い知れた。
「っと、かっこよく言って見せましたが、これは悪魔で最終手段です。アクノロギアに対抗できる滅竜魔導士の成長、そして修行や強化。それをもってしてもアクノロギアを滅することができなかった時の、いわば保険です」
先ほどまでの威厳のある声とは打って変わり、アレンは落ち着きを持った声でそう答えた。
しかし、皆の表情は硬いままであった。最悪の場合とはいうものの、つまりそれは、使う覚悟を持っているという意味に他ならなかったからだ。
「…さらに、もう一つお伝えしたいことがあります」
「…まだ、これ以上になにかあるのですか…」
ベルノ疲れ切った様子でアレンに言葉を変える。
「先ほど、アクノロギアに対抗できる力は、竜の力のみとお伝えしました。そして、最悪は屍鬼封尽と…」
「ああ」
ホッグが短く答える。
「今後、もし、アクノロギアと対峙する可能性のある魔導士に、今からお話しすることも含め、お伝え願いたい」
皆が固唾をのんでアレンの言葉を待つ。
「…アクノロギアの攻撃には、相手の魂を喰らう力があります」
「魂を喰らうだと⁉」
クロムフォードが怪訝な声でそう呟く。
「はい。滅竜魔導士が、同属性の魔法を喰らい、力を得ることはご存じでしょうか?アクノロギアは属性を持たないのですが、そんなアクノロギアは、魔法の全てに加え、魂をも喰らう。…もっとわかりやすく言えば、攻撃をした対象の命、寿命を削り取るということです」
その言葉に、皆の顔が再度引きつる。
「ちょっと待て、では、2度もアクノロギアと対峙し、傷を負ったお主は…?」
オーグが震えた声でアレンに問いかける。
エルザやミラも、それに気づき、瞳孔が開く。
「正確には、3回対峙をしております。その際、ご指摘の通り、寿命を削られております」
「…一体何年ほど削られた?」
クロフォードの言葉に、アレンは軽く笑って見せる。その笑いが一体何の笑いなのか、皆が理解できず、怪訝な表情を浮かべる。加えて、エルザやミラは、愛する男の寿命が削られていると知り、ひどく困惑していた。だが、アレンのその笑みが、決して楽観からくるものではないということを、皆がすぐに知ることになる。
「残念ながら、何年という桁ではなんですよ」
「な、なんだと…?」
オーグが困惑した表情を見せる。
「ざっと、20年…と言ったところですね」
アレンの言葉を聞き、その場にいるもの全員が動揺している様子がうかがえる。
「つまり、アクノロギアとの戦闘は、アクノロギアの能力や凶暴性以前に、戦闘そのものがリスクになる、ということです。普通の魔導士や人間が、もし遭遇した場合、逃げるという選択以外、方法はありません」
アレンの口からでた、アクノロギアの情報は、上級魔導士の予想を大きく超え、到底許容できるものではなかった。

 
 

 
後書き
評議院の皆さん、本当に申し訳ありません(棒)
・アクノロギア:三天黒龍の一角。戦闘能力的にはアレンの方が若干上だが、アレンではアクノロギアを滅することはできない。滅するためには滅竜魔導士がアクノロギアを倒すしか手段はない。だが、とある方法を用いれば、封印という形で半永久的に封じることは可能。また、アクノロギアには如何なる魔法も通用せず、あまつさえその魔法を喰らって自身の体力や魔力を回復させることができる。加えて、アクノロギアの攻撃には魂を抜き取る力もあり、魂そのものを抜き取られなくとも、ダメージを喰らうと相応の寿命を削られてしまう。
・屍鬼封尽:ナルトの忍術の一つ。アクノロギアを封印できる唯一の方法。ただし、その力は自身の命と引き換えとなる。
 
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