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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第2章 天狼島編
  第11話 メイビス

評議院は、天狼島でのアレンとアクノロギアの戦いに、4年前と同様に、エーテリオン投下を決定した。エーテリオン投下に際して、王国及びマカロフから猛烈な反発を受けた。また、その反発は評議院内部にも同様に発生し、特に若い評議員から抗議の言葉が上がっていた。
だが、それでもアレンが絶対に勝てる保証がない以上、評議院としてはそう決断せざるを得なかった。
評議院の決定権を担う、上級魔導士であるオーグやベルノ、ホッグは、前回のエーテリオン投下の際には「やむおえず」と投下に賛成していた。しかし、前回の投下による評議院の信用の失墜、及びその後の世論の反発もあり、今回のエーテリオン投下については反対の意を示していた。加えて、前回の投下でアクノロギアを滅することができなかったことも、投下反対と声を上げる要因となっていた。
しかし、議長であるクロフォード・シームが投下を推し進めようとしたこと、上記メンバー以外の上級魔導士の賛成や中立、前回絶対の反対を示していたヤジマが現在は引退してしまったことも相まって、エーテリオン投下を中止するという決定には至らず、猶予を設けるに留まった。
それを受け、反対派の上級魔導士や評議員並びに王国側は、アレンが日没までにアクノロギアを倒すという結果を信じる、という選択しか道がなかった。
そんな、苦渋の決断を下した上級魔導士たちの元へ、一人の監視部隊の評議員が報告にくる。
監視部隊は、拘束部隊のラハールから、アクノロギア出現の報告を受けてからというもの、アレンとアクノロギアの戦いを、魔水晶映像によって監視していたのだ。
「失礼いたします!天狼島にて、動きがありました!」
その評議員の報告は、上級魔導士たちに衝撃を与える内容であった。

天狼島での戦いは、すでに8時間が経過し、アレンとアクノロギア、両者ともにダメージも疲労も、限界に達していた。
「はぁ、はぁ…どうやら、もう、限界みたいだな…アクノロ…ギア…」
「ガァ…ぬかせ、それはうぬも…同じこと…」
アレンもアクノロギアも、息絶え絶えと言った様子であった。
「悪いが…これで、終わらせてもらう…」
「奇遇だな…我も、同じことを考えていたわ…っ!」
アクノロギアの言葉を聞き終えると同時に、アレンは疾風の如くアクノロギアの顎の前に移動する。
「(こやつ…まだこれほどのスピードを…)」
アクノロギアはアレンのスピードに驚きながらも、アレンが太刀を下から上を振り上げようとしているのを察知し、回避行動をとる。
しかし、アクノロギアの回避は間に合わず。太刀が顎先を深く斬り裂く。
「ガアアアアアアアアッ!!!」
顎から伝わる痛みに、悲痛の声を上げる。だが、アクノロギアも反撃に転ずる。
頭をアレンの足元に近づけ、思いっきり空へと打ち上げるようにして攻撃する。
「がっ⁉」
アクノロギアの突き上げの頭突きをモロに喰らったアレンは、血を吐きながら、空へと飛ばされてゆく。
「終わりだ!!アレーンッ!!!」
アクノロギアは空へ打ち上げられたアレンに向け、口を大きく開ける。
アクノロギアの口には白い膨大な魔力が発生し、それが円盤のように圧縮される。
黒竜の咆哮。それも限界まで魔力を圧縮しての咆哮。その咆哮は。島など一瞬で消し去り、国ですらも滅亡させるほどの威力を持つものであった。
それを見たアレンは、力を振り絞り、刀を構える。
その刀からは、黒い稲妻のような波動が発生する。次第に黒い波動は、周りに淡い桃色のオーラを纏い始める。
刹那、アレンの刀から、桜吹雪のような雰囲気を漂わせたオーラが爆発する。
「それは…こっちの、セリフだーっ!!」
瞬間、アクノロギアが魔力の圧縮をやめ、咆哮を放つ。その魔力に、天狼島の大地は大きく沈み込み、大地に亀裂が走る。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」
アクノロギアの咆哮は、轟音を発しながら、空に浮かぶアレンを飲み込まんと進撃する。
「桜花・気刃兜割りー――ッッ!!!!!」
アクノロギアの咆哮が発せられたのを見て、アレンがそれを受け止めるように太刀技を放つ。アクノロギアの咆哮とアレンの太刀技が空中で相まみれる。
衝突の瞬間、ドンっという音と共に、一瞬、世界が静止したような静けさを生む。
刹那、人智を超える衝撃が空を支配する。
白の衝撃と桃黒の衝撃が押し合うようにして、雷のような波動がバチバチと発生する。
拮抗していた両者の技だが、アクノロギアがさらに力を籠めることで、進展を見せる。
「我は…全てを…破壊するっ!!!!!!」
アクノロギアの咆哮がさらに威力を増し、その力がアレンの太刀へと伝わる。
「ぐうっ!ぐおおおおおぉぉぉ!!!!!!」
アレンは空へと押し上げられるように、少しずつ後退する。負けじと、全身の傷から血を吹き出しながら、アレンが最後の力を振り絞り、太刀に力を籠める。
「ぐぐぐぐっ!!…があああああああああっ!!!!!!!」
叫びと共に、アレンの太刀から強大な閃光が舞い上がる。その閃光は、アクノロギアの咆哮を切り裂き、アクノロギアの口まで押しきる。
「ぬっ!!」
アクノロギアの驚愕と同時に、アレンの太刀がアクノロギアの頭を捉える。
アレンの太刀が、アクノロギアの頭を両断した。それと同時に、アレンの太刀、無明刀【空諦】が中腹でバキンッと折れる。
折れた切っ先側が空高く舞い上がると同時に、アクノロギアの頭を両断後も勢いを止めない折れた鍔側が地面へ、大地へと突き刺さる。
衝撃を受けた大地は、強大な轟音と共に、四散し、文字通り大地を、島をひっくり反す。
島には強大な、アクノロギアすらすっぽりと収まる大きな穴が生まれる。それは、底が見えないほどの大穴となり、アクノロギアが静かに落下していく。
巻き上げられた岩が、地面が空へと飛散し、ドカドカと島だった場所へと散乱していく。
アレンの折れた太刀の切っ先側が、岩へと突き刺さるのと同時に、天狼島に、静けさが戻る。
頭を真っ二つに割られたアクノロギアは、ピクリとも動かず、更に深く大穴へと落ちていく。
アレンは、ふらふらと今にも倒れそうな様子で、大穴の端で落ちていくアクノロギアを視界に入れる。
端から見れば、ギリギリのところで、アレンが勝利を収めたように思えるだろう。
だが、アレンは衝撃的な言葉を残して倒れることとなる。
「…そうか…俺では…お前を…殺…せ…ない…の…か…」
アレンの手から折れた太刀が零れ落ちる。
太刀が大穴の端擦れ擦れで地面に落ち、カシャンッと音を立てる。
アレンは、そのまま倒れこむようにして意識を失い、アクノロギアと同じ大穴に落下していった。

天狼島へのエーテリオン投下まで、残り2時間を切ったところで、エルザが首から下げるペンダントに、大きな変化が訪れる。
急激に、花が放つ光が失われていったのだ。
「っ!アレンっ!!!!」
点滅するかのように光が小さくなる。
「おいおい、嘘だろ!!!ここまで来て…」
グレイが悲痛の叫びをあげる。
直後、今までとは比べ物にならない衝撃がこのハルジオンの街を駆けめぐる。
大気が悲鳴をあげるような衝撃は、その場にいるもの全員を戦慄させる。
「これは…っ!最後の衝突…ってところか…」
ラクサスが、静かに、しかし感情を含めた言い方で言葉を発する。
時間にしておよそ10数秒であっただろうか…。その衝撃も、鳴り響くような「ドゴオオオオオンッ……」という音を残し、先ほどまで間隔を開けて発生していた轟音や、風がピタッと収まる。
ペンダントの光は、更に弱弱しいものとなる。
「っ!勝ったのか!」
ナツが、徐々に平時へと収まりを見せる空を見つめながら言う。
『こ、こちら評議院!こちら評議院!!』
街の空に浮かぶ、ラッパに羽の生えたような魔道具、魔道放送機から、音声が流れる。
その声に、フェアリーテイルのメンバーだけでなく、街の住民も意識を向ける。
『現在…天狼島に出現した、黒竜アクノロギアに…!フェアリーテイル魔導士アレン・イーグルがっ…!!』
皆が目を見開き、全神経を集中させてその声を聴く。待ち望んでいる、結果と共に。
『…っ!!勝ー利しましたーーーーーーー!!!!!!!!!!!』
評議院の報告に、短い間をおき、
「「「「「「「「「うおーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」」」」」」」」」」
と、ハルジオンの街に、天を突かんばかりの歓喜の声が鳴り響く。
フェアリーテイルのメンバーも、その報告に、涙を流し、肩を組みあったり、抱き合ったりしている。
歓喜は暫く続いていたが、その歓喜に同調せず、歩みを進めるものがいた。
「エルザっ!」
「アレンを、アレンを助けに行くぞ!!」
その言葉と共に、ペンダントを仲間にかざす。皆が目を見開く。
ペンダントの放つ光が、更に、更に弱くなり、まるで砂粒のようなものとなっていた。
「このままでは…アレンがっ…!!」
エルザは涙混じりの声を上げ、皆に伝える。
フェアリーテイルは、皆で顔を見合わせ、ハルジオンの港へと駆け出して行った。

マグノリア。
ハルジオンと同じように、魔道放送機からアレンの勝利を告げられ、歓喜の声に包まれていた。アレンの所属するフェアリーテイルのある街であり、アレンとの交流も深かった街の住民は、ハルジオンをも超える歓喜の声を響かせていた。
マグノリアの街を巡回していた残存組のフェアリーテイルも、同じく歓声を上げたり、膝から崩れ落ちて涙を流したり、固まったように動かないものがいたりなど様々であったが、アレンの勝利を心から喜んでいた。
そんなマグノリアの街の上空に、一隻の艦が見えた。
「あ、あれは、青い天馬の…」
マカオが空を見上げながら呟く。
空を飛んでいるのは、青い天馬が所有する魔道爆撃艇『クリスティーナ』であった。
「っ!フェアリーテイルのギルドに向かってるぞっ!」
ワカバが天馬の進行方向を確認しながら声を上げる。
「なんで、青い天馬がここに…」
マカオが呟くようにして声を発する。
「っ!もしかして!天狼島まで連れて行ってくれるんじゃねーか?ハルジオンの港は全壊って言ってたから、多分無事な船もないだろっ!このままアレンを天狼島に放っておいたら、本当に死んじまうぞっ!」
青い天馬とは、六魔将軍討伐の際に協力をした過去があり、今回の件を知り、駆け付けてくれたのだ。
ジェットの声に、皆が納得したような表情を見せ、クリスティーナを追うようにして、フェアリーテイルのギルドへと戻った。

「お、おい…どうすんだよ…」
困惑したような声を上げたのは、ナツであった。
アレンを天狼島より救出しようと、船の停泊する港へと急ぎ、足を運んだのだ。
冷静に考えれば、この状況は予想ができた。
「っ!そうだ…港は…」
ジェラールが苦痛の声を上げる。
ハルジオンの港は、天狼島からの衝撃に加え、高潮の影響もあり、壊滅状態であった。船の発着所は見る影もなく、船と思しき残骸は、陸に乗り上げてしまっている。
フェアリーテイルのメンバーは、皆魂の抜けたような顔をしていた。
だが、そんな様子であったメンバーの中で、一人服を脱ぎだし下着姿となる。
「っ!ウルティア!!」
エルザがウルティアに声を掛ける。
「泳いでいく」
ウルティアは小さく呟く。
「無茶言うんじゃねー。天狼島まで何十㎞あると思ってる!」
ギルダーツがウルティアを制止するように声を掛ける。
「それでもっ、行かないとっ…」
ウルティアがギルダーツに言葉返していると、空から奇妙な音が聞こえた。
「っ!あれは!」
リオンが空を見上げる。
「クリスティーナ!青い天馬さんの!!」
ウェンディがその正体に気付く。
「っねぇ!あれなら、天狼島まで行けるんじゃない!しかも船よりも早く!」
ルーシィが叫ぶように皆に伝えると、皆の表情に光が差し込む。
それを認識したように、クリスティーナがフェアリーテイル天狼組の集まる港へと着陸する。
「全員無事かっ!!」
クリスティーナから顔を出したのは、マカオであった。
「「「マカオ!!」」」
それ以外の残存組も、続々と顔を出す。
「それにみんなも!!」
レヴィが嬉しそうに声を上げる。
残存組の顔を見て、天狼組のメンバーに笑顔が浮かぶ。
「青い天馬の一夜って奴らが、クリスティーナを引っ張ってきてくれたんだ!天狼島まで乗せてくれるらしい!早く乗り込め!!アレンを助けに行くぞっ!」
マカオの言葉を聞き、天狼組はクリスティーナに乗り込み、フェアリーテイル全メンバーで天狼島へと向かっていった。

クリスティーナの速度は、海上を進む船よりも速く、天狼島へは小一時間で到着した。
だが、花の光から見て、アレンが死にかけているという状況下においては、その時間は恐ろしく長く感じられた。
艦内において、いつもなら、一夜がエルザに求愛行動を起こすところを、まるで一切興味がないといった様子を見せていた。それを見たヒビキが、声を掛けるが、「そんなことをしている場合でない…メェーン…」とヒビキに一言伝えていた。
そんな様子を見ていたエルザは、少し、そうほんの少しだけ、一夜に好感を持った。まあ、状況的には当たり前なのだが…。
そんな風に、なんとか気持ちを落ち着かせながら向かっていると、その気持ちをことごとく壊す事態に見舞われる。
エルザが首から下げるペンダントが、完全に光を消失させたのだ。
皆が絶句する。エルザはペンダントを首から外し、掌にのせ、何度も確認する。だが、光が消失している事実は変わらなかった。
他のメンバーも膝から崩れ落ちたり、目から光が消えていくような表情を晒すものまで現れた。そんな絶望が支配する中、ナツの声が小さく響く。
「…死んでねえ…死んでねえっ!前にもそうやって消えたが、生きてたじゃねーか!!!」
その声を聴き、エルザが小さく答える。
「ああ、そうだ…そうだ。あともう少しで着く。だから、頼む…生きていてくれ…アレンッ!」
エルザが発した言葉が、皆の精神を何とか繋ぎ留める。そうしているうちに、操舵室にいたイブが皆に声を掛ける。
「皆さん、天狼島が見…なっ!!」
イブの言葉は、途中で途切れ、驚愕の声に変わる。そんな様子を察知し、皆が窓や船首から天狼島を見ようとする。絶句する。
天狼樹は完全に根元から折れ、しかも折れた天狼樹がいくつもの残骸となり、海へと浮かんでいる。元は一つの島であったはずの大地が、粉々に砕け散っている部分も見て取れ、島は大きく5つほどに分断されていた。
「な、なあ、あれ…天狼島…だよな?」
「なんて…ことだ…」
ビックスローが途切れ途切れに口を開く。
その言葉に呼応するように、カグラが答える。
だが、それ以上に深刻なものを発見した者がいた。
「おい、島の真ん中あたりを見ろ!!」
グレイがそう告げると、天狼島であったと思われる島の真ん中あたりを見渡す。
「おい、ありゃ…穴…か?」
「こんなの…ありえない…」
エルフマンとエバが、吹けば消えるような言葉で答える。
皆の顔に驚きが、これでもかというくらいに浮かび上がっている。
「っ!あの大穴の傍に停めてくれぃ!!」
マカロフがイブに伝え、クリスティーナは大穴のある近くへと着陸した。

皆がその大穴の近くに降り立ち、最初に感じたものは、底知れぬ恐怖だった。
大穴の大きさは、直径およそ50mほど。加えて、大穴の遥か下から、言葉では言い表せないほどの禍々しいほどの魔力を感じとったからだ。
大穴を覗き込むが、穴の底は見えない。
「おい、これ、一体どこまで続いているんだ…」
「…まじか…」
ワカバとマカオが物珍しそうに大穴を眺めている中、大穴の傍を中心に皆がアレンの名を呼び、探し始める。
穴の周りを調べているうちに、あるものを見つける。
それを最初に見つけたエルザは、言葉を失い、呆然と立ち尽くす。そんな様子を見たラクサスが、声を掛ける。
「おい、どうしたエルザ、ボーッとして…ッ!」
そこには、刀身の真ん中部分からポッキリと折れ、何とか大穴から落ちない位置に鎮座する太刀があった。遠目で見てもわかるほどのヒビや刃こぼれが見える。加えて汚れもひどく、血の汚れの上にさらに血を塗りたくったような様相であった。
そんな風にエルザとラクサスが呆気に取られていると、ハッピーとナツが大声でこちらに呼びかけてきた。
「おーい、アレンの刀の先っちょ見つけたぞー!」
ナツは刀身の峰部分を持ちながら、エルザ達の方へと駆ける。
皆がその声に反応し、エルザ達の元へと集まる。地面に落ちているもう片方の太刀を見て、絶句する。
「お、おい…こいつは…アレンの…」
「ナツが持ってる刀の片割れ…だよね…」
ガジルとレヴィが言いにくそうに口を開く。
「こ、この、位置に落ちてるってことは…」
「そ、そんな…まさか…」
カグラとミラが目に涙を浮かべながら答える。
「穴に…落ちた…のか…」
カナが震えた声で小さく呟く。
それを聞いて、エルザが膝から崩れ落ちる。
「おい、エルザ…」
ラクサスがエルザを支えるように、肩に手を置く。
「…間に、合わなかったのか…私は…」
その言葉を聞いて、皆が俯く。
ラクサスも、エルザの様子を見ていられないのか、強く、瞼を閉じる。
皆が、言葉にならない絶望を現していると、後ろから、聞き覚えのない、綺麗な声が聞こえた。
『いいえ、間に合いましたよ』
その声を聴き、皆が後ろを振り返る。
「あんたは…」
「誰だ…?」
長い金髪ブロンドを腰よりさらに下まで伸ばし、頭に羽のような装飾を持った少女がいた。
その少女は、なんと素足で地面に立っていた。
「お、おお…あ、あなたは…」
マカロフが狼狽したように声を漏らす。
「マスター?…お知合いですか?」
ウェンディがそんなマカロフの様子を心配そうに見つめる。
そして、少女がフェアリーテイルのメンバーに近づき、意を決したように見つめる。
「私は、メイビス。フェアリーテイル初代マスター、メイビス・ヴァーミリオン」
皆は少し間を開け…
「「「「「「「「「「えーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」
と驚いて大声をあげる。
すると、メイビスと名乗る少女は宙に浮き、穴の方へ向かっていく。
「アレンさんは、この穴の下におります」
その言葉を聞き、皆が驚きと苦悶の表情を浮かべる。
「じゃ、じゃあ…やっぱりアレンは…お、落ちたんだゾ…?」
ソラノが泣きじゃくりながら答える。
「はい、ですが、無事です」
メイビスの言葉に皆が目を見開く。
「わたくしは、アレンさんがアクノロギアを倒したその時、皆さんとアレンさんの、絆と信じあう心のすべてを魔力へと変換させました。あなた方の思いは、離れたこの地にも、届いておりました」
そういい終えると、穴の下から黄色とも金色ともとれる光が生まれる。その光に気付き、皆が穴を覗き込むようにして見つめる。
「そして、それを用いて妖精三大魔法の一つ、妖精の(フェアリースフィア)を発動させました」
すると、その光の根源ともいえる、直径2mほどの光の球が地上へと姿を現す。
その光の球、フェアリースフィアの中に、アレンがいることを確認したフェアリーテイルは、皆大粒の涙を流し始める。
「あらゆる悪からギルドを守る絶対防御魔法。そして、そのまま凍結封印させ、アレンさんの命が途切れるのを防ぎました」
アレンを包んだフェアリースフィアは、穴から少し離れた位置へと着地し、次第にフェアリースフィアが消えていった。
皆がアレンに寄り添い、安否を確認する。体中は傷だらけで、所々骨らしきものも見えていた。皆がアレンの姿に絶句している様子を見て、続けてメイビスが告げる。
「生きています。ですが、見ての通り、あまりのダメージと疲労のため、助かるという保証はありません」
メイビスの言葉を聞いて、皆がウェンディに声をかけ、ウェンディが必死に治癒魔法をかける。
「ですが、彼ならばきっと、再び目を覚まし、皆と共に、この先を歩んでいけることでしょう」
その言葉と共に、メイビスは両手を広げる。すると、崩壊し、損傷しきった天狼島が、ゆっくりともとの姿へと戻ってゆく。
「…なんと、初代がアレンを守ってくれたのか…」
マカロフが目尻に涙を浮かべ、呟く。
そんなマカロフの言葉に、メイビスは首を横に振る。
「いいえ、私は幽体。皆の力を、アレンさんの力を魔法に変換させるので精一杯でした」
メイビスの身体に光の粒子が舞い上がる。
「ゆるぎない信念と絆は、奇跡さえも味方につける…」
その様子を皆が見つめる。
「良いギルドになりましたね、3代目!」
そう言い残し、満面の笑みを浮かべ、メイビスは光と共に消え去った。
暫くそんな様子を見ていると、「んっ…」と呻き声が聞こえる。
その呻き声が一体どこから聞こえてきたのか、皆は一瞬で理解する。
「アレンさんっ!」
治癒魔法をかけていたウェンディが、それにいち早く気付く。
他の者も皆、一目散にアレンの元へと駆け寄る。
「み、みんな…?」
「ああ…ああっ!アレン!!…本当に…よかった…」
エルザは、泣きじゃくりながら、アレンの手を掴み上げる。
「…ぶ、無事…か?」
アレンの消え入りそうな一言に、皆の目からさらに涙があふれる。
「っバカ…あ、あなたが…それを…言わないでよ…」
ミラが地面に伏しているもう片方の手に重ねるように自分の手をのせながら、アレンに途切れ途切れに言葉を発する。
「…ははっ…それ…も…そう…だ…な…」
エルザの手からアレンの手が零れ落ちる。と同時に、まっすぐと上を向いていた顔も、横へストンッと向きを変える。
「っ!お、おい!アレン!!」
「う、嘘だろ!!!」
ナツとグレイが信じられないといった様子で声を上げる。皆も、ひっと言葉にならない声を上げる。
他の皆も、アレンの名を口にする。
「大丈夫です…気を失っただけです…でも、私の力だけでは…」
ウェンディが悔しそうに声を発する。
エルザは一瞬正気を失ったが、気を失っただけというウェンディの言葉に、キッと目を吊り上げる。
「アレンの治療のためにも、急ぎ、戻るぞ!!フェアリーテイルに!!!」
「「「「「「「「「「おおおおーーー!!!!」」」」」」」」」」
エルザの言葉を皮切りに、皆が大声で返事をし、アレンを抱える。
そして、クリスティーナに乗り込み、フェアリーテイルへと向かう。
実に、アレンにとって、7年ぶりのフェアリーテイルへの帰還となった。
 
 

 
後書き
今回も読んで頂き、ありがとうございます。
メイビスの行動と、フェアリースフィアの発動に際する力並びに効果を軽く改変しておりますが、ご了承ください。また、アンケートのご協力ありがとうございます。途中経過を見ていると、参戦させる流れになっておりますね!…少しずつ、ストーリにどのように組み込むか考えていきたいと思います。次回もよろしくお願いいたします。

・桜花‐気刃兜割り:モンスターハンターライズで登場する、太刀技を参考に、アレンジしております。一体桃色の、黒色のオーラとはいかに…。
 
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