| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔理沙が幻想郷全部入り

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

(霊夢……どうか幸せになって)

話を聞き終えた後で、魔理沙は霊夢に謝罪した。それから、二人でこれからのことについて話し合ったが、特にこれといった良い案が出てくることは無かった。話し合いが終わると、魔理沙は疲れているだろうから休めと言って部屋を出ていこうとする。そこで、霊夢はずっと疑問に思っていたことを尋ねた。なぜ自分を連れ出したのかと。すると魔理沙は一瞬躊躇う素振りを見せたが、意を決したように口を開く。それは自分が外の世界にいた時に知り合った友達に似ていたからだ、と。そう言われてもピンとは来なかったが、とりあえず納得しておくことにした。霊夢は続けて他にも何か自分に出来ることがあれば協力させて欲しいと告げると、それなら少し頼み事があると返ってきた。それは博麗の巫女としての力がどれくらい使えるのか試したいので、この境内にある札を一枚持って外に出てほしいという事だった。霊夢はそれを承諾すると、札を持って外に出て行った。

***
紫が説明を終えると、皆はそれぞれ思い思いのことを呟いていた。その中で藍は一つの質問をした。
紫は幻想郷を守るために結界を張っていると言った。ならば、この世界に存在する他の生物たちにはどんな影響が出る?紫の説明を聞く限りこの世界に住む生き物たちは、外の世界に影響を与えられないように思えるのだが……藍の言葉を聞いた紫は難しい顔をしながら説明を続けた。この世界では妖怪たちの数が多すぎるため、バランスが崩れると妖怪たちが互いに殺し合いを始める恐れがあること。そうなれば幻想郷は簡単に崩壊しかねないということ。だからこそ、幻想郷を守るために結界を張って守ろうとしていること。藍の質問に対して紫は全ての問いに対し、答えられるだけの情報を持ち合わせていなかった。だから紫は幻想郷を守るために尽力していることを伝えた。
その言葉を聞いても、霊夢たちの中には疑念が生まれつつあったのだが、結局その真偽を確かめる手段は無かったのでそれ以上言及することをやめた。

***
その後、二人は神社に戻り今後の方針について改めて話し合う事にした。魔理沙は自分の魔法薬の材料を集めに行くために暫く家を留守にすると言っていたが、本当は美奈を連れて家に帰るつもりだったのだ。しかしその話をすると美奈は、魔理沙と一緒なら幻想郷で暮らしたいという返事が帰ってきた。魔理沙は当然反対したが、それでも美奈の意志は変わらなかった。そこで、霊夢はしばらくの間二人を神社に置いておくことに決めた。その間、美奈には神社の家事を任せることにした。
霊夢は毎日美奈と行動を共にするようになった。最初はお互い距離感をつかむことが出来なかったが、次第に仲良くなっていった。しかし、そんなある日のことだった。魔理沙が材料を集める為に外出した日、美奈が買い物をしてくると言い残して神社を後にした。その時の美奈の様子がおかしいことにはすぐに気づいたが、何が原因なのかまで知る由もなかった為、美奈が帰ってくるのを大人しく待っていた。だが美奈が帰ってこない。いくら待っても美奈が戻って来る気配が無かった。
不安になった霊夢は神社を出ると辺りを探索してみる事にした。
しばらくして霊夢は人里で美奈の姿を見つけることが出来たが、そこには信じられない光景が広がっていた。美奈は複数の人間に取り囲まれており、その中には見知った男の姿もあった。霊夢はその光景を見て、急いで止めに入るが時すでに遅く、取り押さえられてしまった。男は魔理沙の知り合いだと名乗ると、霊夢に向かっていきなりナイフを振りかざしてきた。幸いにも、すぐに霊夢に危害を加えるつもりはないらしく、そのまま神社に連れて帰ろうとしたが、その時霊夢が抵抗したためにやむなく手荒な方法で連れ帰る羽目になってしまった。霊夢は魔理沙の事を頼むと必死で訴えるが、誰も聞いてはくれなかった。
それどころか霊夢は、その日から暴力を振るわれる日々が始まった。霊夢が逃げ出さないようにするためか手足は常に拘束されていた。
さらに食事さえも満足に与えてもらえず、衰弱していく一方だった。
その事を知った魔理沙が救出しようと乗り込むものの、返り討ちに遭ってしまう。魔理沙はそのまま監禁されてしまった。
「……これが全てだ」
藍は静かに語り終えると同時に大きな溜め息を吐いた。それを見た霊夢が悲痛な面持ちを浮かべる。魔理沙が誘拐された理由については大体想像がついた。
「まさか……私のせいだったなんて」
美奈は両手で顔を覆い、肩を震わせて泣いている。その様子を見た霊夢がそっと抱き寄せた。
「気にしないでいいのよ。私が勝手にやったことだもの」
「でも……」
美奈が嗚咽まじりにそう言うと、霊夢は優しい笑顔を向けた。
しかし、それも束の間。霊夢の顔からは表情が消えてしまう。そして霊夢は静かに口を開いた。
美奈は幻想郷へ来て間もない頃は霊夢を尊敬していたが、今ではその姿は見る影もない。しかし霊夢にとっては美奈が自分の娘のように可愛く思えていたので仕方の無いことだった。しかしこのまま放置すれば、いずれ美奈が壊れてしまうことも分かっていたため、どうにかしなければならなかった。だから私は美奈の為に、魔理沙の為に出来る限りのことはするつもりよ。たとえそれで自分がどうなったとしても構わないわ。でも一つだけお願いがあるの。私はこれからしばらくの間眠りにつくけど、その間に霊力の封印を解くことが出来る者がいれば私を起こしてちょうだい。そうしないと今度こそ私は完全に消滅してしまうかもしれないから……。

***
あれから一週間が経過したが、未だに誰一人として目を覚ます者は現れない。霊夢の言った通り、幻想郷に異変が起きた様子は無いようだ。
霊夢は相変わらず眠っている。もうじき目を覚ますのだろう。
そして目覚めた時には、霊夢はこの世界にはいない。そう思うと寂しさを覚えるが、同時に安心している自分もいることに気付く。これでよかったのだと……きっと霊夢の事を大切に思ってくれる誰かが現れてくれるはずだと。
そんなことを考えながら縁側に腰掛けていると背後から声をかけられた。
振り向くとそこには魔理沙がいた。どうやら魔理沙の方は順調に回復したようで、今はいつも通りの服装に戻っていた。
隣に座るよう促すと、魔理沙は遠慮がちにそこに腰掛けた。それからお互いに何も言わないまま時間が過ぎていったが、やがて魔理沙が意を決したように話し出した。
自分は霊夢が幻想郷に戻ってきたら自分の想いを伝えるつもりでいる。その話を聞いた時、美奈は驚いたが魔理沙ならきっと霊夢に似合った良い男性になれると思った。そこで、もし霊夢が起きていたら伝えて欲しいことがあると魔理沙に頼まれる。しかし、魔理沙は困ったような顔を浮かべるだけで、なかなか口に出してはくれない。美奈が痺れを切らせて早く言ってあげてと言うと、魔理沙は大きく深呼吸をして霊夢の方を真っ直ぐに見つめた。
それから一言一句間違えずに言葉を紡ぐ。それはまるで呪文のような、どこか懐かしさを感じるものだった。魔理沙はそう言い残すと立ち上がって、美奈に別れを告げると去って行ってしまった。美奈は呆然としながらその背中を見送ると、しばらくその場に立ち尽くしていた。そして空を仰ぎ見ると、霊夢の事を想う。
(霊夢……どうか幸せになって)
その瞬間、霊夢の身体に変化が訪れる。霊夢は再び目を開くと、目の前にいる存在を視界に捉える。その視線に気づいた少女は、ゆっくりと霊夢の方へと振り返る。少女は目に涙を浮かべると、微笑みかけた後で静かに呟いた。ありがとう……それからごめんなさい。
少女が何を言っているのか分からない霊夢だったが、何かを伝えようとしていることだけは理解できた。だからもう一度よく見ておこうと思い、目を凝らす。すると少女の身体は徐々に透けていき、ついには消えてしまった。その直後、激しい頭痛に襲われて意識を失いそうになる。だが、ここで自分が倒れたら誰が幻想郷を守るのか。だから歯を食いしばって必死に耐えると再び辺りの様子を確認する。そこは神社の寝室であり、傍らには心配そうな顔をした少女の姿があった。そこで初めて自分が倒れていたことを理解すると、美奈に向かって手を伸ばすと掠れた声で話しかける。大丈夫よ……。まだ時間があるはずよ。そう伝えると美奈が泣き出しそうになっているのが分かった。しかし霊夢はそれを止める術を持っていない。せめて少しでも美奈の支えになろうと手を握りしめると、美奈は強く握り返してきた。しかし、それすらも出来なくなるほど体力は低下しており、やがて霊夢の手は美奈の腕の中へ収まると完全に力が抜け落ちてしまった。

***
魔理沙は自分の気持ちを伝えた。それは紛れも無い事実なのだが、どうしても引っかかることがあった。あの日以来、美奈の様子がおかしいのだ。いや、おかしいのは最初からか。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧