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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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表と裏と

<ロマリア>

「その通り…リュカの言う通り、私達は互いの種族を快く思っていない…」
エルフの女王はリュカに話の続きをさせたいらしく、食い入る様に見つめ続ける。
其処へ…
「お待たせしました!リュカ殿ご要望のピザでございます!」
この会議室にラングストンがピザを持って入ってきた。

「あ、後にせんか!」
「何を言われます陛下!?リュカ殿が望んだ物ですぞ!急がねば、機嫌を損ねて帰ってしまうやもしれません!」
そう言いながらラングストンはリュカの前にピザを置く。

「……………何…これ?」
「はい!リュカ殿ご要望の『シーフードピザ、魚介類抜き』でございます!」
リュカの目の前に置かれたのは、ピザ生地の上にトマトソースとチーズだけを乗せ焼き上げた、丸い具のないピザらしき物体だ。

「お前…具は?」
「シーフードピザですから!魚介類以外の具はございません!ご所望通りでしょ」
ラングストンはリュカに満面の笑みで答える。

「お前…ムカつくね!…ロマリア王…何コイツ!すげぇ笑顔で嫌がらせしてくるんだけど!?」
「ふぉふぉふぉ、ラングストンは頼りになる部下だ。余のお気に入り!」
「良いなぁ…僕も部下に欲しいよ…いや、息子にしたいね!!」
「ありがとうございますリュカ殿。でも全力で拒絶させていただきます!私に貴方様の部下や息子は勤まりません…胃がやられてしまいます!」
ラングストンは笑顔を崩さず、リュカの要望を断り切る。


「で、リュカ…食事も届いた事だし、さっきの続きを話さんか!」
「…何だっけ?」
リュカは具無しのピザを頬張りながら、キョトンとした顔で問い返す。(勿論ワザと…)
「だから人間とエルフは、互いに快い感情を持ってない…で、どうすれば良いのかって事だ!」
「そうですよリュカ…我々の互いに対する負の感情は根強い!払拭するのは容易ではないでしょう…私もお前に出会わなければ、人間が嫌いなままでしたから…」
ロマリア王もエルフの女王も、互いの言葉に頷きながらリュカの言葉を待ち侘びる。

「それそれ…払拭しようと思うから、事態は前に進まないんだ」
「………で、では…どうせよと?」
「互いの種族が、相手の種族に抱いている感情は間違ってはないんだ!事実エルフは強大な魔力を有し、何時でも人間を滅ぼせるし…人間は利己的で凶暴、他種族に対する迫害心を常に秘めている…」
ロマリア王とエルフの女王が頷く…2人だけではない!カリーもアルルも、ロマリア王に側で控えるラングストンも頷いている。

「つまり、その事実は覆せず…我ら種族間の隔たりは、消え去る事はないのか…」
「違うって!何で覆そうと考えるんだよ!良いかい?先に言った事実は、100有る内の1つにすぎない…まだ両種族が知らない事が沢山あるんだ。それを解ってもらう努力をすれば良いんだ!」
ロマリア王の嘆きに、リュカは何時もの軽い口調で答える。

「カルディア…君は僕の何を知っている?」
「え!?…え~と…リュカは人間の冒険者で、魔王バラモスを討伐する勇者アルルと共に旅している。聡明な男で心優しい…そしてベッドでの○○○は凄く激しくテクニシャンだ!今、私はお前に恋してる!」
急に振られたエルフの女王は、思わず想いの全てを打ち明けてしまう。

「うん。赤裸々にありがとう!…でも、それが全てでは無い!『バラモス討伐に共に旅立った』と言ったが、それは微妙に間違いだ!僕はバラモスなんてどうでも良い。討伐できなくても構わない。何故なら僕はこの世界の人間じゃ無いから…元の世界に戻る方法を探し歩いているだけ…」
リュカの言葉に驚きを隠せないロマリア王とエルフの女王!

「更には『聡明で優しい』らしいが…どうかな?僕は美女を見れば口説きまくる。この世界でも変わらない…その結果、イシスの女王を孕ませてしまった!それだけならまだしも、僕は子育てに協力することなく、この世界を去ろうと考えている。何故なら、元の世界にも愛人が居て、彼女等との間にも子供が居るから…果たしてその事実だけを見ても、聡明で優しい男なんて言えるのかな?」
リュカは自分をさらけ出した…自分は思っている様な男ではないのだと。


「し、しかし…それでも私にとってリュカは、聡明で優しい…私の恋い焦がれる男性です!それに間違いはありません」
エルフの女王は立ち上がり、少し涙ぐみながらリュカを見据え言い放つ。

「ふふふ…つまり人間やエルフも同じなんだよ。利己的に見られる人間も、優しい心を持っていて共存を願っている者も居る…人間を見下しているエルフにも、人間を愛し共に生きて行きたいと考える者も居る………良い面も悪い面も含めて、互いの種族に理解させるのが、エルフと人間の共存共栄への道なんだ。互いの都合の悪い面を覆い隠すのでは、直ぐにボロが出て、より憎しみ合う結果になってしまうんだ!」
エルフの女王は腰を下ろし、ロマリア王と共に事の困難さに思いを馳せる。

「父さん…それは凄く難しい事ではないのですか?」
「あぁ、そうだよティミー…だから最初に言ったろ…『とても簡単で、凄く難しい』って!でも共に生きて行く以上、互いの欠点は見えてしまう。良い面だけを信じ込まされて、実際に悪い面を目の当たりにしたら、『良い面』として語られた事が幻になり、『悪い面』だけが真実になるんだ!」


暫くの間、室内に沈黙が流れる…
皆がリュカの言う事を理解し、そして難儀である事を思い悩んでいる。
「リュカ…私は貴方の子が欲しい…」
唐突に…エルフの女王が唐突に爆弾発言を投下した!

「……………そう言われても…僕の息子のティミーは、このアルルと付き合ってるんだ。欲しいと言われてもねぇ………」
リュカはティミーとアルルを見ながら、エルフの女王の要求を有耶無耶にしようとした。
「違う!お前との間に子供を作りたいと言ったんだ!」

「分かってる…分かってるよ、そんな事は……ただ、僕の勘違いであってほしかったからさぁ……でも何、いきなり!?」
「私が愚かだったばかりに、娘のアンを失う結果を招いてしまった…しかもエルフと人間の架け橋的存在になるはずの娘を失った…そして今更に人間との共存を望む様になったのだ…」
エルフの女王は、泣きながら過去の愚かさを語る。

「今度は私が犠牲になるべきなのだ!同族に罵られようが、人間との間に子を宿し、その子を希望の象徴として、人間と共存共栄を進めて行きたいと思っている!勿論その対象にリュカを選んだのは、私の個人的動機が含まれてはいるが………奥様の前で、この様な破廉恥な申し出…真に申し訳なく思います!しかしどうか、我らエルフと人間の架け橋として、ご協力をお願い致したい!」
エルフの女王は凛として表情でリュカと向き合い、真摯に要望を述べた。
誰もがリュカの答えを待った…
何時もの調子で答える事を…



 
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