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アテナイの夜

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第二章

「僕としては」
「お主はな」
「飲んでです」
 葡萄酒、それをというのだ。
「そして歌って踊って賑やかに」
「騒ぐのがいいな」
「その様な哲学だの何だのとです」
「畏まって難しい話をすることは嫌いだな」
「そんなことはアテナ姉様の領分です」
「この街はそのアテナの街だが」
「おっと、そうでしたね」
 ディオニュソスも言われて思い出した。
「そういえば」
「そうだ、だからだ」
「それなら尚更です、姉様には何かと真面目にと怒られるので」
「それでか」
「ここは少し悪戯をしましょう」
「やれやれだな、そなたも父上やヘルメスと同じだな」
 ヘパイストスは弟神の今の言葉を聞いて肩を竦めさせた。
「悪戯が好きだな」
「多少のならいいでしょう」
「多少ではないだろう」
「ははは、それは兄上の主観です」
「そなたにしてはだな」
「多少です。やんちゃもいいではないですが」
「それでアテナや母上に怒られない様にな」
 ヘラの名前も出した、オリンポスの神々の中では母親にあたり怒ると怖い彼女のことを。だが彼女の名前を聞いてもだった。
 ディオニュソスは笑って聞き流してだった。
 一家に葡萄の栽培方法や葡萄酒の造り方を教えてだった。
「パンやチーズや肉と共にですか」
「食べながら飲むとですか」
「尚更いいのですか」
「そうだ、そうしたものを食べつつだ」
 ディオニュソスはもう神の姿を彼等に見せている、そのうえで笑顔で話した。
「より美味くしかも飲みやすい」
「そうですか、ではです」
「人々に売る時にお話します」
「この街の人達に」
「そうするといい、あと本来は水等で割って飲むが」 
 当時の作法も話した。
「しかしそのまま飲むとこれまた美味いぞ」
「わかりました、ではです」
「このアテナイの人達にもそうお話します」
「その様に」 
 真面目で素直な一家は神の本心に気付かぬままにだった。
 頷きその様にした、それを見届けてだった。
 ディオニュソスはヘパイストスと共にアテナイを後にし旅をさらに楽しんでからオリンポスに戻った。
 するとだった。
 アテナが完全に武装したうえでディオニュソスの館に来て眉間に青筋を立てて言ってきた。
「弟神よ、貴方の仕業ですね!」
「あっ、アテナイはどうなってますか?」
 ディオニュソスはヘパイストスと共に飲んでいた、そのうえで姉神に応えた。
「多分皆楽しんでいますね」
「葡萄酒を飲んで毎晩乱痴気騒ぎをしています」
 アテネは怒った声で答えた。
「服を脱ぎ飲んで歌って」
「いやあ、それはいいですね」
「よくありません、挙句は貴方の神殿を建ててです」
 そうしてというのだ。
「感謝さえしています」
「それは何よりですね」
「真面目で哲学を語る私の民をそうするとは」
「いつもそうなんて面白くないじゃないですか」
 ディオニュソスは飲みつつ何でもない声で応えた。
「全く」
「だからですか」
「葡萄酒を教えてです」
 葡萄の栽培と共にというのだ。 
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