猛練習

「殴ったり蹴ったりも酷いし」
「言葉の暴力もかなりで」
「問題ですよ、あれ」
「体罰は只でさえ問題なのに」
「暴力が過ぎますよ」
「そのことも問題ですよ」
　教師達も話した、そしてだった。
　彼等は平穏のことを校長にも話した、彼にしても既に平穏のことは聞いていた。それで厳しい目で言った。
「あんなことは駄目だな」
「部が強くなるとかではないかと」
「その前に生徒が潰れます」
「兎跳びとかハードワークでそうなります」
「それに暴力も酷いですし」
「あんなことを続けていたら問題になります」
「今のうちに何とかすべきです」
　教師達は校長に口々に言った。
「ＰＴＡが事態を知るのも時間の問題です」
「これが外部に漏れたらまずいですよ」
「今はネットですぐに拡散されます」
「そうなったら手遅れです」
「学校に抗議が山みたいにきます」
「そうなってからじゃ遅いです」
「もう教育委員会に通報がきたとのことだ」
　校長は教師達にこのことを話した。
「あまりにも酷いとな」
「通報があったんですか」
「じゃあ今にもですね」
「問題になりますね」
「そうなりますね」
「そうなるな、もう手遅れかも知れないが」
　それでもとだ、校長は言った。
「手を打つ」
「宜しくお願いします」
「このままじゃ大変なことになります」
「学校がバッシングを受けますし」
「何より生徒が壊れます」
「そうなってはどうしようもないです」
「そうだな」
　校長は頷いてすぐに答えた、そうしてだった。
　校長室に平穏を呼び出し彼自身に告げた。
「君は暫く休んでもらって剣道部の顧問は辞めてもらう」
「何でですか、私はです」
「部を強くするんだな」
「そうしていますし実際に」
　平穏は自分に非はないという顔で言った。
「練習をさせて練習試合でも」
「以前とは見違えるまでにだな」
「強くなっています、全国大会も」
「夢じゃないか」
「はい」
　そうだというのだ。
「そうなっています」
「確かにな。しかしだ」
「しかし？」
「君のそのやり方ではだ」　
「問題がありますか」
「全国大会に出られるかも知れないが」
　それでもというのだ。
「君は生徒のことを忘れていない」
「生徒！？」
「そうだ、生徒を毎日剣道漬けにして縛って鞭打っている」　
　その過酷な部活動の内容を指摘した。
「それで考えているのか」
「生徒！？生徒も強くなればいいじゃないですか」
　これが平穏の返事だった。