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片方の髭

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第三章

「恥ずかしいものだ」
「あれで強いと言われても誰がそうだって思うんだ」
「遊んでばかりで酔い潰れて」
「それで髭をああして剃られる連中なんてな」
「遊んでいないで訓練しろ」
「そしてしっかりしろ」
「遊ぶ金欲しさに武具を売るな」
 ハンガリーの者達はそんな兵達を嗤って話した。
「さもないと戦争に負けるぞ」
「それもみっともなく」
「もっと笑われるぞ」
「それが嫌ならしっかりしろ」
「遊んでいないで訓練しろ」
「武具も売らずちゃんと手入れしろ」
 指を差されて嗤われた、それを受けてだった。
 兵士達も縮こまりそれからは真面目に訓練をして武具も質に入れずしっかりと手入れをして過度に遊ばずだった。
 しっかりとした者達になった、マティアスはその状況を見て家臣達に話した。
「どうだ、これは」
「はい、これはいいですね」
「あの者達も心を入れ替えました」
「嗤われて」
「そうなりました」
「そうだな、下手に叱ったり処罰するよりだ」
 王は玉座から笑顔で話した。
「ああしてだ」
「悪戯を仕掛ける」
「油断しきっているところを」
「そして恥をかかせる」
「その方がいいのですね」
「そうだ、そうした時もあってだ」
 そうしてというのだ。
「まさにだ」
「あの時がそうでしたね」
「お陰であの者達も心を入れ替えました」
「今ではすっかり真面目に訓練をしています」
「武具も整えていますし」
「戦になっても頼りになりますな」
「そうだ、ではこれからもこうしたことがあればな」
 王は家臣達に笑ったまま話した。
「余はこの様にするぞ」
「その方がいいので」
「そうされますな」
「悪戯を以てことにあたりますか」
「そうだ、そう思うと悪戯もまたよしだな」
 玉座で言う王は王と言うよりはか悪戯っ子の様な顔であった、だが国の者達は誰もがその王を褒め称えた。これにより軍が強くなったのだから。ハンガリーに伝わる古い話の一つである。少しでも多くの人が読んでくれれば幸いである。


片方の髭   完


                2022・1・17 
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