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イベリス

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第五十七話 梅雨だからその七

「入れ墨は入れていないよ」
「そうですか」
「兎角真っ当な人は入れるものじゃないよ」
「漫画は漫画ですね」
「うん、あの漫画は特にね」
「人気はあってですね」
「面白くてもね」
 このことは事実だがというのだ。
「アウトローの世界しかも人が普通に死ぬ様な」
「過激な世界ですね」
「普通の不良の世界じゃないからね」
「ヤクザ屋さんに近いですか」
「実際成長したらそんな組織になってるね」
「はい」
 咲は漫画の知識から答えた。
「そうですね」
「そうした世界と真っ当な世界は一緒に出来ないよ」
「現実として」
「そうだからね」 
 それでというのだ。
「あの作品は好きでもファッションはね」
「真似したら駄目ですね」
「ましてあの作者さんはずっとアウトローかそれに近い作風を描いてきたから」
「そうした人ですか」
「まあマガジン伝統のヤンキー路線をね」 
 それをというのだ。
「受け継いでいる作品だね」
「ヤンキー路線ですか」
「昔からマガジンはそうなんだよ」
「ヤンキー漫画多いんですね」
「昭和の頃からね」
「それは古いですね」
「どの雑誌にも常に一作はヤンキー漫画あるんじゃないかな」
 マガジンと名前が付く雑誌にはというのだ。
「はっきりとは言えないけれど」
「どの雑誌にも一作はですか」
「不良が主人公だったりするね」
「それはある意味凄いですね」
「まあこれ言うと大抵の出版社の雑誌がそうかも知れないけれど」
「マガジンの系列はですか」
「昔から目立つんだよね」
 ヤンキー路線の作品がというのだ。
「調べたら」
「そうなんですね」
「それで人気作も多くて」
「あの漫画もですか」
「そうだよ、GTOもそうだったけれどね」
「あれ学校の先生の漫画ですよね」
「いや、最初は不良漫画だったんだ」
 部長は咲にこのことを話した。
「湘南純愛組っていうね」
「ヤンキー漫画だったんですか」
「GTOはその続編なんだ」
「そうだったんですか」
「ドラマ版はもう別ものと考えた方がいいね」
 人気を博したこちらはというのだ。
「あっちはヤンキー色あまり感じられないから」
「というかドラマあったんですか」
「あっ、小山さん知らなかったんだ」
「はい、それは」
「まあ前の世紀の話だしね」
「私達が生まれる前ですよね」
「そうだよ、僕もレンタルで観たよ」
 そのドラマはというのだ。
「原作は倉庫にあるけれどね」
「あるんですか」
「大人気作だったからね」
 それでというのだ。
「全巻揃ってるよ」
「ひょっとして湘南純愛組も」
「あるよ、それに今は電子書籍でも読めるよ」
 こちらでもというのだ。 
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