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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

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霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の七

 
前書き
◇今話の登場ハンター

◇ヒスイ・ムラクモ
 ユクモ村で活動していた心優しい少年ハンターであり、その内には本人すらも把握していないほどの才覚が秘められている。武器は鋸斬りヒ首【直参】を使用し、防具はガララシリーズ及びギザミシリーズの混合装備を着用している。当時の年齢は16歳。
 ※原案は八神優鬼先生。

◇ベン・イライワズ
 カムラの里でも活動していた壮年のハンターであり、酒好きで豪快な人情派。武器は里守用防衛鉄笛Iを使用し、防具はジャナフシリーズ一式を着用している。当時の年齢は48歳。
 ※原案はレストレーション先生。

◇ヴェラ・ドーナ
 タンジア出身の女性ハンターであり、礼儀正しい振る舞いを見せる一方で、状態異常に陥ったモンスターの姿に快感を感じる狂気的な一面も併せ持っている。武器はヴェノムウィングを使用し、防具はネブラシリーズ一式を着用している。当時の年齢は17歳。
 ※原案は未確認蛇行物体先生。

◇クウド・ウォーウ
 情に厚く実直な中堅ハンターであり、仲間達を守るためならば身を挺することも厭わない好漢。武器はポイゾナスベイルIを使用し、防具はラングロシリーズ一式を着用している。当時の年齢は31歳。
 ※原案は秋赤音の空先生。
 

 

 エクサとジュリィの突撃を援護するべく動いているのは、ガレリアスとエレオノールだけではない。ドスイーオス出現の報せを受けた他のハンター達も、砲台を離れてこの通路に急行して来ている。

 このままではラオシャンロンに打撃を与え得る砲弾を現場に届けられない。そのピンチに立ち上がったハンター達は、各々の武器を手に雑魚のイーオス達を蹴散らし、ドスイーオスに挑まんとしていた。
 ガレリアスらに続き、エクサ達の援護に動き出していた剣士達は、狭い通路内だろうと構うことなく己の刃を振るっている。

「ジュリィさんの突撃とエクサさんの属性解放斬りなら、あのドスイーオスにも通用するはず……! ベンさん、俺達も行きますよッ!」
「お〜うよぉッ! そろそろ良い感じに酔いも回って来たことだし……いっちょ景気の良いメロディをくれてやるぜぇ、ヒスイッ!」

 「鬼蛙」テツカブラの素材から精製された太刀――鋸斬りヒ首【直参】。その刃でイーオス達を薙ぎ払うヒスイ・ムラクモは、ガララシリーズとギザミシリーズの混合装備で己の身を固めている。
 ユクモ村で活動していた過去を持つ、心優しい少年だった彼は今――その心を鬼にして、迫り来るイーオスの群れを迷うことなく斬り伏せていた。クサンテをはじめとする仲間達を救うためならばと、彼は修羅と化す道を選んだのである。

「さぁ〜て……俺もそろそろ、一仕事しちまおうかなぁッ!」

 そんな彼のサポートに徹している、ジャナフシリーズ一式を纏うベン・イライワズ。彼は美酒に酔いしれた貌でありながらも、その手にある狩猟笛で華やかな音色を奏でていた。
 カムラの里で活動していた際に貰い受けた、里守用防衛鉄笛I。その狩猟笛から流れる音楽が齎す効能は、ヒスイの内に眠る秘められし力を呼び覚ましている。

「この力で、皆を守るッ……! はぁあぁあぁあッ!」

 自身の想像もつかないほどの潜在能力。その力が、己の内側から湧き上がって来る感覚に身を委ねて――ヒスイは、行手を阻む数頭のイーオスを、同時に叩き斬るのだった。
 一方、彼ら2人のすぐ近くでは。毒属性の武器を得意としている別のパーティが、イーオスのお株を奪うかのような攻撃を繰り出していた。

「猛毒の苦しみって奴がどんなものか……イーオス共にも思い知らせてやろうぜ。ヴェラ、一気に蹴散らすぞ!」
「うふふっ……承知しましたわ、クウド様。このヴェラ・ドーナが、クソ雑魚共に美しく無様な終焉を齎して差し上げましょう」

 剣モードのポイゾナスベイルIを振るい、イーオス達を斬り払っているクウド・ウォーウ。ラングロシリーズ一式の装備で身を固めている彼は、同じ毒使いの相棒を守るべく、その盾でイーオス達の毒液を凌いでいた。

 そんな彼の影から飛び出したヴェラ・ドーナは、ヴェノムウィングの双刃による艶やかな乱舞を披露していた。ネブラシリーズ一式の防具を纏う彼女は、妖艶な笑みを浮かべて鬼人の如き連撃を放っている。

「あらあら……苦しいんですの? 毒を吐き出す生き物のくせに、毒に侵されて苦しんでおられますの? うふふっ、可愛いですわぁ……滑稽ですわぁ……!」
「……ヴェラ、お前なぁ……」

 毒液を放つ習性を持ちながら、毒属性の武器によって地獄の苦しみを味わっている数頭のイーオス。その様を嗜虐的な笑みを浮かべて見つめているヴェラの貌には、隣に立つクウドも微妙な表情を浮かべていた。

 ――そして、そんな彼らのサポートを受けて。ドスイーオスの懐に辿り着いていたエクサとジュリィは、渾身の一撃を放たんとしている。

「皆っ……ありがとう! このチャンス、必ずモノにして見せるッ! 行くよジュリィッ!」
「言われ……なくたってぇぇえッ!」

 剣と盾に分かれていたエクサのレックスディバイドIが、斧モードへと「合体」し。ジュリィはガトリングランスを腰だめに構えて「突撃」の姿勢を取る。

「……おぉおおおーッ!」
「でぇやぁぁあぁあッ!」

 その状態から放たれる最高火力の一撃。属性解放斬りと、全速力での刺突が、同時にドスイーオスの眉間へと炸裂したのだった。

 そこから飛び散る激しい鮮血と悲鳴の咆哮が、その威力を何よりも物語っている。そして彼らは、ここに来てもなお慢心することなく――「追撃」の道を邁進するのだった。

「よぉし、効いてるッ……! 皆ッ、一気に畳み掛けろぉおおーッ!」

 フィレットの狐刀カカルクモナキII。カヅキのユクモノ太刀。イーヴァのウォーメイス。ルドガーのレッドビート。ガレリアスのディアブルジート。エレオノールの蒼剣ガノトトス。ヒスイの鋸斬りヒ首【直参】。ベンの里守用防衛鉄笛I。鬼人化したヴェラのヴェノムウィング。斧モードに合体した、クウドのポイゾナスベイルI。
 そしてエクサのレックスディバイドIと、ジュリィのガトリングランス。それら全ての得物が、「怯み」という致命的な「隙」を見せたドスイーオスへと向けられたのである。

 斬撃、打撃。狩人達は持てる力と技を尽くし、1分1秒でも速くドスイーオスを討伐するべく、全ての神経を「攻撃」にのみ注いでいた。だが、その「焦り」は回避や防御を疎かにしてしまう。

「ぐっ……あぁあぁッ!?」

 反撃の体当たりに対する反応が遅れてしまった彼らは、全員まとめて吹き飛ばされてしまった。激しく吹っ飛ばされ、石畳に叩き付けられてしまった彼らの防具には、すでに幾つもの亀裂が走っていた。

「こ、この威力ッ……こいつは、まさか……!?」
「くッ……どうやら、その『まさか』のようだなッ……!」

 このドスイーオスが持つ攻撃力は、その異様に発達した体格以上のものだったのである。本来ならば下位ハンターでは決して太刀打ち出来ない、「上位種」のモンスター。その領域に極めて近しい、特殊個体だったのだ。

「だからッ……てえぇえッ!」

 だが、そこまで理解したからと言って引き下がるなどという選択肢はない。上位種のドスイーオスが相手であろうと、彼らは躊躇うことなく継戦の構えを示している。

 ――下位ハンターである自分達の装備だけでは、老山龍の撃退は困難。その原因である火力不足を補うためには、砦内にある狩猟設備を駆使するしかない。ならば、それを阻む「邪魔者」の排除に割く労力を惜しんではいられないのだ。

「皆……やろうッ! 例え上位種だろうと、私達なら絶対に勝てるッ! 私達は、それを証明するためにここまで来たんだからッ!」

 例え自分達が相討ちになるのだとしても、それで老山龍を迎え撃つために必要なものを届けられるのなら、その価値は十分にある。
 それに、これから上位に昇格しようという自分達がこの期に及んで上位級のモンスターに怯んでいては、そもそもこのクエストを引き受けた意味がない。むしろ、上位クエストを受ける前の「予行演習」には最適とすら言える。

「……あぁ、そうだとも。私達は元より、上位昇格を志してここに来ているのだ。むしろ、僥倖と言うべきではないかッ……!」

 それが、後に「宝玉世代」とまで呼ばれるようになる彼らの生き様なのだ。クサンテやデンホルムがそうであるように、彼らにも「前進」の2文字しかないのである。

「アーギル、リリア……行けッ! お前達だけでも、砲撃の手を緩めるなッ!」
「クサンテとデンホルムのこと……任せたぞッ!」
「……はいッ!」
「お前らこそ、イーオス風情にやられるんじゃあねぇぞッ!」

 ドスイーオスの討伐に臨むエレオノール達に促され、砲弾を抱えるアーギルとリリアはこの機に乗じて砲台の元へと走り出して行く。あまりの重さ故にその速度は緩慢であったが、一刻も早く「次弾」を届けようとする彼らの眼は鬼気迫るものとなっていた。

「……言われるまでもないな。そうだとも……上位種だろうと、相手は所詮イーオスだ! やるぞ、皆ァッ!」

 そんな彼らの背を見送ったエレオノール達は、獰猛に牙を剥くドスイーオスを睨み上げ、得物を構え直して行く。毒液を四方八方に撒き散らし、生意気な人間共を喰らってやろうと猛る鳥竜種は、けたたましい咆哮を上げていた。
 この砦の存亡を賭けた狩人達の決して譲れぬ戦いは、ここでも幕を開けていたのである――。
 
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