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展覧会の絵

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第五話 愛の寓意その九

「あのおっさんまた新しい奴隷が欲しいって言ってたろ」
「そういえばそうか」
「また一人欲しいってな」
「そう言ってたな」
「ああ、言ってた」
 また言う彼等だった。そしてだ。
 その話をしてからだ。菅は。
 他の三人にだ。こうも言ったのだった。
「でな、宮本の奴をな」
「あいつをおっさんの奴隷にしてか」
「それで俺達もいつも通りそのおこぼれに預かる」
「そうするか」
「ああ、それでどうだ?」
 こう話す菅だった。
「宮本雅には恨みもあるだろ、御前等も」
「ああ、いつも叩きのめしてくれるからな」
「あの拳の痛みは忘れねえよ」
「いつもいつもやってくれるてな」
 三人もだ。菅の言葉にだ。
 忌々しげな顔になる。そのゲームセンターの中でだ。
 暗いゲームセンターの中にいるのは彼等だけだった。夜のせいか今は客が少ない。
 そしてその中でだ。彼等はどす黒い顔で話すのだった。
「だからか。あいつもか」
「あいつに仕返しの為にもな」
「盛大にやってやるか」
「おっさんに話して」
 三人も動いた。その話にだ。
 そしてそのうえでだ。彼等はだった。
 塾に入った。清原塾に裏手から。だがその姿は。
 十字は見ていた。ただしその目で、ではない。今の彼の目は隠しカメラだった。
 塾の裏手にそれを置きだ。それで教会で観ていた。それを観ながらだ。
 彼はだ。こう神父に言った。
「やっぱり間違いないね」
「あの理事長と彼等はですね」
「関係がある。それもね」
「個人的なものですね」
「塾についてあらゆることを調べだしているけれど」
 既にそれに取り掛かっている十字だった。
「まずは十階かな」
「その理事長がいるという」
「塾の経営も調べようかな」
「それもですか」
「うん、金銭は人を豊かにもさせるけれど」
 それと共にだというのだ。
「堕落もさせるものだからね」
「そして悪しき者はですね」
「金銭に溺れる」
 そのことを読んでの言葉だった。
「そしてそれと共にね」
「あらゆることに溺れますね」
「人は一旦溺れると何処までも溺れる」
 神に仕えその言葉を述べていく、そうした口調だった。
 その言葉でだ。十字は神父に語っていく。
「ありとあらゆるものに」
「ではあの塾の理事長も」
「おそらく金銭に溺れていて」
 それに加えてだった。
「快楽にも溺れているね」
「そして堕落している」
「一人の堕落はまだいいよ」
 堕落は堕落でもだ。そうした堕落はいいというのだ。そしてその一人の堕落が何故いいのか、十字は神父にこのことについても淡々と述べるのだった。
「それは自分だけのことであり」
「他人には危害を及ぼすことはないからこそ」
「そう。だからいいんだ」
「だからこそ害も少なく」
「その人を戒めればいい」
 その堕落している者をだというのだ。
「そして戒めれば」
「一人の堕落の場合はその戒めで反省しますね」
「罪が浅いからね」
 それ故にだ。一人の堕落はその者もすぐに行いをあらためるというのだ。 
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