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ガリ勉で悪いか

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第一章

                ガリ勉で悪いか
 高田幸一は通っている県内一の進学校で学年トップである、兎角常に勉強に励んでいて机から離れない。
 部活もアルバイトもせずただひたすら勉強をしている、黒髪をセンターで分けていて長方形の顔で四角く度のある眼鏡をかけている。
 その彼にだ、クラスメイト達は言った。
「そこまで根詰めなくてもよくないか?」
「お前東大も京大も模試判定Aだろ」
「どんな学部でもな」
「その模試で日本でトップだし」
「それじゃあな」
「そこまでしなくていいだろ」
「そのトップを維持する為になんだよ」
 幸一はクラスメイト達に参考書を両手に持って開いた状態で答えた。
「だからだよ」
「勉強してるのかよ」
「まさに寸暇も惜しんで」
「そうしてるのかよ」
「そうだよ、勉強しないとな」
 さもないと、というのだ。
「成績ってよくならないだろ」
「それはそうだけれどな」
「東大も京大もいけるっていうのに」
「模試の順番も一位なのに」
「それでもまだか」
「勉強しているんだな」
「そうだよ、これが僕のやり方なんだよ」
 必死の顔で言う、目がやや血走っている。
「別に誰にも迷惑かけていないからいいだろ」
「それはそうだけれどな」
「お前が勉強して何か起こるかっていうとな」
「何も起こってないしな」
「しかもお前他人に意地悪とかしないしな」
「勉強でわからないところ聞いたらちゃんと教えてくれるしな」
「嫌味なくな」
「困っている人が頼んだら助けるのが人間だろ」
 幸一は自分の席に座って参考書を開いたまま言った。
「そうだろ」
「性格はいいんだよな」
「ただいつも勉強してるだけで」
「ただずっと勉強してるからな」
「今言ったんだよ」
「そうなんだ、じゃあ僕は勉強を続けるから」
 こう言って彼は参考書を読み突けた、時折ペンを動かして重要と思われる部分にマークを付けたりもしている。 
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